非常に強い相場が続いています。6月1日まで日経平均株価は12日続伸しました。結果、2000年4月12日以来、約15年1カ月ぶりの高値を付けました。12日続伸は1988年2月の13日続伸(2月10日~2月27日)以来、ほぼ27年ぶりの連騰記録です。また、東証1部の時価総額は初めて600兆円を上回りました。
いまは投資マインドが冷めにくい状況
日本株高の主因は円安です。1日のNY円相場は6日続落し、一時は1ドル=124円92銭と、2002年12月6日以来ほぼ12年半ぶりの円安・ドル高水準を更新しました。1日のドル高は、5月のISM製造業景況感指数が52.8と前月の51.5から上昇し、FRBが年内にも金利の引き上げに動きやすくなったとの見方が強まった結果です。
相場がここまで暖まると、そう簡単には投資マインドが急速に冷めることはないでしょう。仮にマインドを冷やすことがあるとすれば、(1)上海株下落→米国株安→日本株安、(2)ギリシャの債務不履行やユーロ離脱問題深刻化→リスク許容度低下→円高、(3)日本での地震や火山噴火等による天変地異の発生、くらいしか思いつきません。
このような良好な投資環境ですので、多くの投資家が多額の収益を獲得していることでしょう。当然、物色の切り口も多彩で、数多くの物色テーマが存在します。ただし、個人的には、その中でも、「マイナンバー」「サイバーセキュリティ」という両テーマは横綱級との認識です。ご存知の通り、マイナンバーは今年10月に全国民への番号通知が始まり、来年1月に運用が始まる予定です。
なお、日本年金機構が約125万件の個人情報を流出した問題を巡り、政府内に専門のセキュリティーチームを立ち上げ、政府全体としてサイバーセキュリティー対策に全力を挙げるということです。また、甘利明経済財政・再生相は、マイナンバー制度に今回の流出問題が与える影響について、「導入スケジュールを変更する予定はない」と答えています。こうなると、10月までは、息の長い「マイナンバー」「サイバーセキュリティ」物色が継続するとみてよさそうです。
マイナンバー関連の注目2銘柄は?
マイナンバー関連のリーディング・ストックは、やはり、ITbook(3742)ですね。1月16日に412円だった同社の株価は、6月1日には2038円にまで化けています。5カ月弱で、ほぼ5倍です。
同社は、コンサルティング事業においては、番号制度に関する業務が拡大し、地方公共団体からの番号制度に関するコンサルティング業務の受注件数では、30自治体を超えて、わが国で一番多い実績と言われています。中央官庁、地方自治体、独立行政法人等の公共機関や民間企業に対して積極的な営業活動も展開しています。最適な番号制度への対応を実現できるよう注力していくことに加え、情報システム全般に関わるコンサルティング業務からシステムの構築・運用・保守までを、一貫して提供できる体制を構築していく方針です。このあたりの経営戦略と受注実績が、市場で高く評価された結果の株価急騰なのでしょう。
ところで、政府は5月29日、カルテや診療報酬明細(レセプト)などの医療情報に番号制度を導入する方針を正式に決めたということです。マイナンバーのシステムと医療関連のシステムを連動させる仕組みを、2018年度から段階導入します。また、医療以外の分野でも、戸籍や旅券、自動車登録などで番号が活用できるようにする方針で、18年にも戸籍法などを改正するということです。
こうなると、社労士事務所・労働保険事務組合・ 一般企業向けに人事・労務管理システムを、クラウド環境のもとでインターネット アプリケーションとして提供している、エムケイシステム(3910)にも投資家の関心が集まりそうです。
ちなみに同社は、マイナンバー制度の施行に伴い、社会保険、労働保険の申請手続きにマイナンバーが必要となるため、セキュリティ対策の一環としてe-Gov(電子政府の総合窓口)電子申請システムの利用による申請手続きが増加するとの想定から、外部連携APIを利用した社労夢システムの電子申請機能の開発を進めてきましたが、5月26日付で総務省行政管理局から最終確認試験を通過したとの通知書を受領しました。
サイバーセキュリティー関連で注目の3銘柄とは?
一方、サイバーセキュリティー関連では、デジタルアーツ(2326)、ラック(3857)、FFRI(3692)などが代表格です。
例えば、デジタルアーツ(2326)は、同社のメールセキュリティ「m-FILTER」とUBIC(2158)が提供するEメール自動監査システム「Lit i View EMAIL AUDITOR」を連携させ、UBICの行動情報科学を応用した人工知能がメールの内容分析から行動パターンを類推することにより、情報漏洩の可能性のある対象者を推測し、機密情報漏洩の対策を事前に講じることができる新たな情報漏洩対策ソリューションを今年夏に提供するようです。
また、ラック(3857)は、同社のセキュリティ監視技術とビッグデータ処理技術を融合させ生まれた「LAC Falcon」を、企業のセキュリティ対策強化に向け本格展開する方針です。また、中期経営計画『TRY 2021 ステージ1』では、売上高500億円以上、ROE15%以上、東京証券取引所本則市場一部という、経営目標を掲げています。このような積極的且つ前向きな中期経営計画が高く評価されそうです。
そして、FFRI(3692)は、これまで法人・官公庁向けに事業を展開してきましたが、昨年12月にリリースしたAndroidモバイル端末向け製品「FFRI 安心アプリチェッカー」を皮切りにコンシューマー市場に事業範囲を広げました。また、今年4月にはコンシューマーのWindows PC向け製品「FFRI プロアクティブ セキュリティ」をリリースしています。ちなみに、現在同社が受注しているセキュリティ・サービスは、新しい知見等、技術的にメリットのある高難度の案件を中心としており、技術的な参入障壁が高く、かつ、高い利益率を確保できるものに限定しているということです。潜在顧客層に厚みが増したことに加え、高い参入障壁が魅力です。
まあ、「マイナンバー」「サイバーセキュリティ」という両テーマに関連する銘柄は、メチャクチャ多数あります。まずは、時価総額の小さい銘柄を攻めて、最終的には時価総額の大きい銘柄が動いて、このテーマ物色は終了することでしょう。それは、一応、国民への番号通知が始まる10月前後ということになるとみています。
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