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「老後破綻」を避ける、資産形成や疑似家族など自分で用意できるセーフティーネットの作り方とは?ベストセラー『下流老人』著者に聞く!(後編)

2016年3月14日公開(2022年3月29日更新)
ザイ編集部
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世界第3位のGDPを誇るこの国で、今「下流化」の波が老人だけでなく中年や若年層にまで押し寄せている。ベストセラー『下流老人』の著者藤田孝典氏に原因と対策についてインタビューした。その後編をお届け。(前編はこちら

セーフティネットは自分で構築すべき
定年前から地域社会に疑似家族を作る

──個人としてできる下流化対策には、何があるでしょうか?

 セーフティネットを自分で用意するということですね。今の日本の社会保障制度では、老後が安泰とは言えません。だから、網の目のようにセーフティネットを自分で構築しておくんです。

 まずは、資産形成。それも株式への一極集中じゃなくて、いろいろなところに分散して資産を持っておく。ただ、資産形成はセーフティネットの一部分でしかありません。

──ほかには、どんなセーフティネットがありますか?

 定年退職後に働く道が無くなってしまうというのは、リスクが高い。そこで、65歳以上も仕事をできるような状況を整えておくことも、セーフティネットの一つです。第2の人生に備えて仕事に役立つ資格を取ったり、スキルアップを図っておくことですね。

 それから、家族との関係。セーフティネットの一つとして、家族を大切にすることは重要です。すでにお話したとおり、熟年離婚は下流化に直結しますから。

──離婚せざるを得なかった人や、そもそも非婚の単身者もいます。

 本当の家族でなくても、「疑似家族」を周りに作ればよいと思います。サークル活動でも地域の草野球でもなんでも構いません。その場合、重要なのは、早いうちから手を付けること。65歳になってから、急に地域で活動を、と思ってもなかなか溶け込めません。週に1日だけでもよいので、地域活動にコミットメントしておいてほしいですね。

 そうすれば、高齢になって困ったときに助けてくれたり、声をかけてくれる人ができます。家に閉じこもり切りで誰とも接点を持たないのが高齢期の最大のリスクで、それが下流老人化にもつながりますから。

──セーフティネットには、さまざまなものがあるんですね。

 そうなんです。日本は、「老後の備え」と言ったときにお金を重視しすぎです。お金は、当然あればあったほうがよいですが、お金さえあれば安心というわけではありません。セーフティネットは、投資と同じで、あちこちに分散して持っていることが重要です。

 ただ、自分が病気になったり、親の介護など想定外のことが起きる可能性もあり、個人でできる備えには限界があることも覚えておいて欲しいですね。

自分だけの力で何とかしようとせずに
社会保障制度の支援を受け入れる力も必要

──もしも下流に陥りそう、あるいは陥ってしまったら、どうすればよいでしょうか?

 困ったときのために、社会保障や社会福祉の制度を熟知しておいて、いざというときには介護保険や生活保護などの制度を上手に活用することです。そのためには、「他人には頼りたくない」という意識を変えることも必要になってきます。

──介護保険はともかく、生活保護には頼りたくないという気持ちが確かに強いのですが。

 「生活保護に頼るくらいなら死んだほうがマシ」と言う人は多いですね。また、年配の男性には、「嫁と娘以外にはシモの世話はさせたくない」とおっしゃる方もいます。プライドや「自分のことは自分でなんとかすべき」という伝統的な価値観が影響しているのでしょう。

 かつては1億総中流社会で、正社員の男性と専業主婦の妻、子供がいるというモデルケースのような家庭も多く、その時代は家族に頼ることでなんとかやっていけたかもしれません。でも、家族自体が縮小していて、もはや家族だけで支えるのは難しい。家族機能を外部化する仕組みはできているのだから、それを使っていけばいいんです。お金がある人はメイドを雇って世話をしてもらえばいいですし、お金がないなら社会保障制度を利用すればいいというだけのこと。援助する仕組みがあっても、それをうまく活用できないのでは意味がない。「他者を頼る力」や「支援を受ける力」も、ぜひ身につけておいて欲しいと思います。

『下流老人~一億老後崩壊の衝撃』の著者
藤田孝典(ふじた・たかのり)
1982年生まれ。NPO法人ほっとプラス代表理事。聖学院大学人間福祉学部客員准教授。ソーシャルワーカーとして現場で活動しつつ、生活困窮者などへの支援について提言を行なう。2015年6月に上梓した『下流老人』(朝日新書)はベストセラーとなり、版を重ねている。
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