2021年6月に行われた注目の2社の株主総会をリポート! コロナ禍で注目を集めるANAホールディングス(9202)と、第2の「大塚家具」とウワサされるはるやまホールディングス(7416)の株主総会のもようとは?
発売中のダイヤモンド・ザイ9月号は、特集「【株主総会】突撃39社」を掲載! 日本は3月に本決算を迎える企業が多く、3月決算企業の株主総会は、例年6月に集中する。2021年6月の株主総会は、昨年に引き続きコロナ禍の自粛ムードの中で開催されたが、ダイヤモンド・ザイは、今年も注目企業の株主総会を取材! 新型コロナ対応に苦慮する企業や、不祥事に揺れる企業など、全部で39社の株主総会リポートを取り上げている。
今回はこの特集から、新型コロナの直撃で大ダメージのANAホールディングス(9202)と、お家騒動が勃発したはるやまホールディングス(7416)の株主総会リポートを紹介!
2021年も昨年に引き続き、コロナ禍で株主総会が開催に!
ライブ配信や人数制限、お土産廃止などが相次いだ!
「株主総会」は社長のアツい事業説明を聞き、株主が経営陣に直接質問もできる年一回の貴重な機会だ。株主ならぜひ参加したいイベントだが、目下、新型コロナの感染拡大を受けて、様子が一変している。
ネット上で総会の様子をライブ配信する企業が続出し、家で気軽に視聴できるようになった一方、実際の会場では席数が減らされ、現地参加については事前申込が必須の企業も。申込多数の場合は、当選者のみが総会会場に入れる。
ライブ配信がない企業で落選すると、株主でありながら総会を見る手段がなくなる。さらに、従来と違って総会参加者へのお土産や、総会後の懇親会も実施しない企業がほとんどで、残念に思っている株主も多いはずだ。
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ANAホールディングスの株主総会の様子をリポート!
コロナ禍の打撃は仕方のないことで、株主からは同情的な意見も
ここからは、実際にコロナ禍で参加のハードルが上がってしまった株主総会の中でも、特に注目度が高い企業の総会リポートを紹介する。
まず取り上げるのは、ANAホールディングスだ。ANAホールディングスはコロナ禍で旅行需要が激減した影響で、2021年3月期決算は売上高が前期比60%減、営業利益は4647億円の大赤字に。創業以来の経営危機だが、株主総会は意外にも平穏だった。この状況では、大赤字も仕方のないことと言えるし、公募増資や銀行借入で1.2兆円調達することで当面の資金繰りに目途を立てて、資金ショートが起きる心配もないからだろう。
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また、ボーナスがゼロになったことや、運行業務のなくなった乗務員たちが防護服の縫製する姿がニュースで報じられるなど「必死さ」が株主に伝わっているので、逆に株主から従業員を大事にするよう提言されるシーンが何度かあった。
今後の見通しについては、ワクチン接種の進んだ米国で旅行需要が急回復したことを引き合いに出し、「日本でもワクチン接種の進展により、旅客需要が今年度末に国内線でコロナ前の水準に、国際線で5割程度にまで回復する」と、今期の黒字転換の根拠を説明した。
なお、以下は株主と経営陣の質疑応答の一部だ。
【質問①】従業員の雇用状況は?
【回答】社員たちには「雇用は守るが賃金は我慢してほしい」とお願いしている。
【質問②】採用の状況は?
【回答】2020年には約4000人採用したが、2021~2022年度の新卒採用は中止して、パイロットと障害者の採用100人に抑えている。再開はコロナ禍の様子を見て検討したい。
【質問③】剰余金があるのだから、それを配当に回すべき。コロナ禍のせいではなく放漫経営のせいだ。
【回答】剰余金の使途は取締役会で決定した。これは法で許されている。
【質問④】ポイント2倍キャンペーンなどポイントをばら撒きすぎだ。
【回答】欠航が多いことで「搭乗機会がなく、ポイントを貯める機会がない」という不満を解消するために行った。
株主総会の内容を踏まえて、経済ジャーナリストの和島英樹さんは次のように分析する。
「今期黒字予想は、ワクチン接種拡大などの『期待』が前提。株価は6月に2951円の高値をつけて、アフターコロナを織込みました。ここから上昇するには、ワクチン以外の好材料が必要でしょう」
はるやまホールディングスの株主総会の様子をリポート!
お家騒動で波乱が予想されたが、意外にもあっさり終了⁉
「弟のせいで、これ以上、社員から犠牲者が出るのは耐えられません」
2021年6月上旬、はるやまホールディングスの社長(※治山正史氏。社長だったのは当時で、6月下旬に取締役会長に異動)の姉・治山(岩渕)典子氏から、驚きの手紙が株主に届いた。手紙は、冒頭の文言からもわかるように、正史氏のパワハラ気質のせいで、社員の左遷・退職が相次いだことなどを批判するもの。同時に、正史氏の取締役選任案への反対も呼び掛けていた。
そもそも、2020年の株主総会では、典子氏や父で創業者の正次氏が選任案に反対し、正史氏の信任率は51%どまりとなっていた。対立が表面化した今年の株主総会はどうなるか、前々から注目が集まっていたのである。
四隅に巨大なカメラが置かれた会場で始まった総会。「さぞ揉めるだろう」と思いきや、質問を1人1問に限るなどして、質疑はわずか23分で終了。法人株主などを手堅くまとめた経営側の完勝だった。個人株主からは「こんな早く質問を打ち切る総会は初めて」「票読みができてるから早く終えたいだけ」との声が漏れた。
なお、以下は株主と経営陣の質疑応答の一部だ。
【質問①】赤字のなか、なぜ配当を出す? 社長や創業家のためだけでは?
【回答】内部留保を維持しつつ、安定配当をするのが基本方針だ。
【質問②】週刊誌に面白おかしく書かれているが事実か? コンプライアンス委員会は開かれているのか?
【回答】(事務局から何回もメモが渡される)開かれています。記事については事実でない場合もある。
【質問③】(再度質問しようとして)1人1問って決められてるんだっけ?
【回答】はい。他の方でないようでしたら、採決に移ります。
株主総会の内容を踏まえて、経済ジャーナリストの和島英樹さんは次のように分析する。
「コロナ禍を受けて消費が激変。紳士服の需要回復は厳しいでしょう。リストラや事業の再構築が必要ですが、経営が一枚岩でないと厳しい。ゴタゴタの会社からは一歩引くべきではないでしょうか」
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