“幸福な人生”を送るための『シンプルで合理的な人生設計』を橘玲さんに直撃！ 自分なりの幸福を定義して“3つの資本”の組み合わせを決めるのが幸福への近道！

ベストセラー作家・橘玲さんに聞く、人生で成功するための”合理的な土台の築き方”とは？

発売中のダイヤモンド・ザイ6月号では、新刊『シンプルで合理的な人生設計』（ダイヤモンド社）が発売後・即重版と絶好調の作家・橘玲さんのインタビューを掲載！ このインタビューでは、今回の新刊に合わせて、人生で成功するための合理的な土台の築き方をテーマに、話を聞いている。

今回は、そのインタビューの一部を公開！ なぜ人生設計が必要か、なぜ合理性が重要か、などをじっくり掘り下げているので、ぜひチェックを！

幸福を手に入れるための土台は”3つの資本”で、
それをどれだけ持っているかで、幸福度は変わる！

──橘さんの新著『シンプルで合理的な人生設計』（ダイヤモンド社）が、2023年3月に刊行されました。6年前に出版した『幸福の「資本」論』（ダイヤモンド社）の続編ということで、待ち焦がれていた読者も多いはずです。橘さんはこの本で、何を伝えたかったのでしょうか？

橘さん　前著『幸福の「資本」論』では、私たちが幸福を手に入れるために必要な土台を「金融資本」「人的資本」「社会資本」という3つの資本（キャピタル）で説明しました。

　金融資本とは、金融市場への投資で得た富。人的資本は、自分で働いて稼ぐ力。社会資本は人的ネットワーク、すなわち家族や友人との「絆」や共同体への帰属意識（アイデンティティ）のこと。3つの資本をどれだけ持っているかで、幸福になれるかどうかが決まるというのが、前著で伝えたかったメッセージです。

　3つの資本を満たしている人は「超充」。バリバリ仕事をして、なおかつ恋人や友だちにも恵まれている人（人的資本＋社会資本）は「リア充」、貯蓄も収入もほとんどないけど、恋人や家族、友だちとの関係は充実している人（社会資本のみ）は「プア充」といったように、資本の充足度に基づいて「人生の8つのパターン」も示しました（下の図を参照）。

橘さん　新しい本では、前著の続編として、最初は「成功哲学」に関する本を書こうと思ったのです。世にあまた出ている成功法則をテーマにした本には、熱烈な支持者がいる一方で、「役に立たない」「期待外れだ」という批判も多いことが気になっていました。

　たとえば、成功哲学を語る本の多くは、「外向的な性格になりなさい」と説いている。世間的に「成功者」といわれる政治家や起業家、芸能人、スポーツ選手などは、社交的で外向的な人が多いからです。

　しかし、性格はそう簡単に変えられませんから、生来、内向的な人が「外向的になれ」と言われるのは、苦痛以外の何ものでもありません。そこで、どんなパーソナリティの人にも受け入れられやすく、実践しやすい「普遍の成功法則」は何かと考え、わたしなりの答えをまとめて書き上げたのが、この『シンプルで合理的な人生設計』です。

──『シンプルで合理的な人生設計』には、人生の土台となる3つの資本のうち、「自分にとって、どれがもっとも重要な資本なのかを合理的に選択し、形成していこう」というメッセージが込められているように感じました。なぜ、合理的な選択が求められるのでしょうか。

橘さん　3つの資本はトレードオフの関係にあるので、どれかを手に入れようとすると、ほかのどれかを犠牲にしなければなりません。

　人的資本を蓄えるために仕事を最優先すると、恋人や友だちと過ごす時間が削られるので、社会資本の形成が疎かになってしまいます。

　逆に、恋人や友人との時間を大切にしようとすると、「仕事は適当に切り上げ、給料が下がらない程度に働けばいいや」という感じになり、労働市場での評判を高めることが困難になる。これでは収入も上がらず、金融資本を大きくできません。

　このように、トレードオフの関係が生じてしまうのは、使える時間が限られているから。イーロン・マスクやジェフ・ベゾスであろうと、一般人であろうと、1日は24時間しかありません。しかも、そこから睡眠や休息、健康のために不可欠な運動などの時間を除くと、1日に使えるのはせいぜい10時間です。

　その貴重な時間を何に使うかによって、資本形成が変わってきます。先ほどの「人生の8つのパターン」で言えば、幸せの土台がもっとも充実しているのは、金融資本、人的資本、社会資本の3つがすべてそろっている「超充」ですが、この境地にたどり着くのは、「時間的制約」のためにほとんど不可能に近いでしょう。

 「自分にとって、何が幸福なのか？」を定義し、その土台となる資本の組み合わせを決めることが、合理的な人生設計の第一歩となるはずです。

金融資本を合理的に形成するには、株式インデックスファンドが最適！
金融資本が充実すれば、あとの2つに注力できる！

──どの資本を貯めるのかを選択した後は、それをいかに合理的に形成するのかを考える必要があると思います。考え方のヒントについて教えてください。

橘さん　そもそも合理性とは、「投入した資源（リソース）に対して、より多くの利益（リターン）を得る」こと。これは投資の基本でもあるので、ザイの読者ならよくご存じのはずです。100円を投じて100円しか返ってこない取引より、110円になる取引のほうが合理的であることは、言うまでもありませんよね。

　金融資本を合理的に形成する方法は、徹底的に研究されてきましたが、ファイナンス理論の結論は「株式インデックスファンドに積み立て投資しなさい」です。なぜなら株式インデックスファンドは、数ある金融商品の中で、もっともコスパ（コストパフォーマンス）、リスパ（リスクパフォーマンス※橘さんの造語）、タイパ（タイムパフォーマンス）が優れているからです。
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　個別株やFX、暗号資産への投資を否定するわけではありませんが、株式インデックスの積み立てに一本化すれば、市況分析や銘柄選び、トレードなどの時間をほかに充てられます。これだけで、人的資本や社会資本を形成する時間とのトレードオフをかなり軽減できるでしょう。

──人的資本と社会資本は、どうすれば合理的に形成できるでしょうか？

橘さん　金融資本と違って、合理性だけでは割り切れないのが人的資本、社会資本の難しいところですね。

　人的資本とは、突き詰めれば「稼ぐ力」のことですが、実は世の中でいちばん稼げる商売は、風俗のような“汚れ仕事”だったりします。リスク・リターン比だけを考えるのならそれでもいいでしょうが、社会的評価が得られないとか、自慢できないといったデメリットも多い。

　そう考えると、人的資本の形成においては、金銭的な利益だけでなく、社会的評価もバランスよく得られる方法を追求するのが合理的なのかもしれません。

　社会資本については、そもそも愛情や友情といった感情を、合理的に形成できるのかという疑問を誰もが抱くはずです。でも、人間関係は、長く付き合えば付き合うほど深まるもの。大切な人と長く過ごすためには、時間という限られた資源をいかにやりくりするか、という合理的な判断が求められるわけです。大きな社会資本を持ちたいのなら、配偶者や恋人、親友と一緒の時間をできるだけ確保しなければなりません。

──社会的評価や愛情、友情など、人的資本、社会資本であっても、ある程度は合理的に形成することができるわけですね。

橘さん　こう言ってしまうと身も蓋もありませんが、幸せになるもっとも効率的な方法は「お金持ちになる」こと。つまり金融資本を充足させ、お金のことを心配しなくても済むようにすることです。その状態になれば、あとは人的資本と社会資本のバランスを取ることだけに集中できるわけですから。

　人的資本を蓄積するには、若いころから一生懸命働くことも大切ですが、一方で友だちができやすいのも若いときなので、20代は社会資本の蓄積に力を入れ、30代になったら人的資本の形成に取り組むといったように、人生のそれぞれのステージごとに目標を変えてみるのもいいかもしれません。

──最後に、読者にひと言メッセージをお願いします。

橘さん　3つの資本を合理的に形成するための具体的なヒントをまとめたのが、今回の本です。いずれこの本をベースに、本来書く予定だった「成功哲学」の本を出すつもりですので、気長にお待ちください（笑）。
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