「バズる外交官」こと、駐日ジョージア大使のティムラズ・レジャバさんを直撃!
ダイヤモンド・ザイでは、毎号異なるゲストに「お金との向き合い方」について聞くインタビュー記事「おカネの本音!」を掲載している。発売中のダイヤモンド・ザイ2025年2月号のゲストは、駐日ジョージア大使のティムラズ・レジャバさん。
ユーモアあふれるSNSでジョージアの魅力を発信し、注目を集めているレジャバさん。今回は自身の意外な経歴や、ジョージアという国の魅力、さらには独自のお金観についても語ってもらった!
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4歳のときにジョージアから広島に移住することに!
早稲田大学を卒業してキッコーマン社員だった時期も!
──初めて日本に来たのは、幼少期だったとか。
レジャバ 1992年だから、今から32年前。まだ4歳のときです。日本に留学する父に連れられ、一家3人で広島県の東広島市に移り住みました。1992年といえば、前年にソ連が崩壊したばかり。まだジョージアが独立して1年しか経っていない時期です。日本にはジョージア人はほとんどいなかったので、非常に物珍しがられたと聞いています。
──ソ連時代をギリギリ経験し、物心が付くか付かないかのうちに日本にやってきたわけですね。
レジャバ はっきりとした記憶は残っていませんが、ソ連崩壊時は国中が大混乱だったようです。とても留学できるタイミングじゃなかったはずです。それでも一家で来られたことに、日本との深い運命のつながりを感じます。
──その後は、どんな少年時代を送ったのですか?
レジャバ 8歳まで日本で暮らし、いったんジョージアに帰国。小学2、3年は母国、4、5年は米国と、親に連れられて2つの国を渡り歩きました。小学5年生の途中でまた日本に戻り、中学、高校と日本の学校で学んでいます。
ただし、高校在学中の1年間だけ単身でジョージアに戻り、現地のアメリカンスクールに通いました。長く海外生活をしてきたので、自分の国のことをもっと深く知り、自分自身のアイデンティティを確かめたかったのです。
──トータルで見ると、少年期は日本でもっとも長い時間を過ごしたわけですね。日本の大学に進学したそうですが、それも自然の成り行きだったということでしょうか?
レジャバ 日本文学に魅了され、2007年9月に早稲田大学の国際教養学部に入学しました。今でも書くことが大好きで、それがXでのつぶやきにつながっているのですが、大学時代、自分の書いた文章を恩師に褒められたことがきっかけになっています。
──大学を卒業後、キッコーマンに就職されていますね。
レジャバ 就職活動には苦労していたのですが、学部の掲示板に「国際的な人材を募集」という張り紙を見つけ、応募してみたら、採用が決まってしまいまして。ただ、キッコーマンで働いた3年間は、苦労の連続でしたね。担当したのは、スーパーや酒屋さんなどのお客さまに商品を営業する仕事だったのですが、意思疎通がとても難しく、営業成績も思うように伸びませんでした。頑張ってはみたけれど、やはり自分には向いていないと感じ、3年で辞めてしまいました。
──その後、どうされたんですか?
レジャバ ジョージアに戻り、個人で貿易の仕事を始めました。ジョージアはワイン発祥の国として世界的に有名ですが、そのワインを日本に輸出したり、日本の自動車などをジョージアに輸入したりする仕事です。
これが大成功。おカネが入るようになって、貿易以外にもどんどん仕事の幅を広げました。いちばん儲かったのは、オンラインデリバリーの仕事。スーパーなどの商品の注文をオンラインで受け付けて配達するというものです。いまは当たり前のサービスですが、当時はまだ珍しかったので、とても繁盛しました。
そして3年ほど経ったある日、ジョージア外務省から「外交官にならないか?」という思いも掛けないオファーが舞い込んできたのです。
──ビジネスマンから、外交官への転身ですね!
レジャバ 最初に要請を受けたときは、正直、悩みました。でも、自分の生い立ちを考えると、僕ほど日本とジョージアの架け橋という役割にふさわしい人間はいないんじゃないかと思い、やってみることにしたのです。
成長国ジョージアは効率的で透明性が高く、起業しやすい!
どんな人や文化も寛容に受け入れる国民性が魅力!
──ジョージアといえば、栃ノ心や黒海、臥牙丸といった力士が真っ先に思い浮かびますが、ジョージアという国のことについては、残念ながら日本ではあまりよく知られていません。どんな国なのでしょうか?
レジャバ 地理的には、黒海とカスピ海の間に挟まれた、南コーカサスという地方にある小さな国です。大きさは日本の5分の1ぐらい。人口は370万人しかいません。
日本ではあまりなじみがないかもしれませんが、先ほども言ったように、世界的にはワイン発祥の国としてとても有名です。ワインは、いまから約8000年前にジョージアで生まれたんですよ。
──歴史のある国なんですね。
レジャバ しかも、西はヨーロッパ、東はアジア、南は中東に接しているので、いろいろな民族や文化が交わり合う交差点としての歴史を歩んできました。そのためジョージア人は、どんな人や文化でも寛容に受け入れる国民性を持っています。自分たちの国やアイデンティティを守っていくためには、周りの国の人々と仲良くしなければならなかったからです。
──外国人や旅行者にとっては、非常にうれしい国民性ですね。
レジャバ なので、ここ数年はリモートで仕事をしながら長期で旅をするデジタルノマドが、ジョージアにたくさんやって来ていますね。暮らしやすいし、インターネットも整っている。しかも、パスポートさえあれば、会社の登記や銀行口座の開設などがオンラインでできるので、起業しやすいというメリットも。アントレプレナー(起業家)にとっては非常に理想的な国なのです。
──なぜ、そんなに便利な国になったのでしょう?
レジャバ 旧ソ連の影響から、かつては行政が非効率で汚職も蔓延していました。大きく変わったのは、2000年代に入ってから。汚職撲滅や官僚制度の徹底的な見直しといった大改革を行ったのです。おかげで、いまではビジネスのしやすい国ランキングでも、常に上位に入るように。
政府が何に、どれだけ予算を使っているのかというのも、誰でも確認できるようにオンラインですべて公開されています。政治の透明性やIT化という点では、日本よりかなり進んでいるかもしれません。
──レジャバさんがキッコーマンを辞めた後、ジョージアに戻って起業したのも、そうした環境が魅力的だったからですか?
レジャバ そうですね。会社を立ち上げるのがとても簡単だったし、ネット環境などが整備されているので、ビジネスも非常にやりやすかった。ジョージアでもっといろんなビジネスをやるつもりだったけど、外務省に声をかけられたことから、外交官という新しい仕事にチャレンジすることになったのです。
──民間の人材を大使に抜擢するというのも、非常にオープンな対応ですよね。ジョージアという国に、ますます興味が湧いてきました。
お金に縛られず新たな挑戦をすることが未来への投資になる!
今後はジョージアと日本の交流を活発化させるのが目標!
――ところで、レジャバさんは普段、おカネをどのように使っていますか?
レジャバ 食べたいものがあれば食べる、買いたいものがあれば買う、というように、あまり何も考えずに使っています。子どものころから、おカネを貯めようとか、増やそうという発想は全然なかったですね。
ひょっとしたら、これは祖父の影響かもしれません。ジョージアの小学校に通っていた8、9歳のころ、祖父は僕に“魔法の財布”を与えてくれたんです。お菓子などを買っておカネを払うと、財布の中身は減るけど、翌朝には元通りの金額になっている。もちろん、祖父が僕の寝ている間にこっそりと足してくれていたわけですが、子どもの僕は「おカネって、使っても減らないんだ」と無邪気に喜んでいたわけです(笑)。
その原体験があるせいか、今でも貯金をしなきゃという発想はほとんどありません。おカネを使って、いろんな体験をしたり、人と出会ったりしたことが、起業につながり、会社員時代よりも稼ぐことができるようになった。おカネに縛られずに、新たな挑戦をすることが、自分の未来への投資になると思っています。
ただし、大使館の予算は厳格に管理していますよ。ジョージア国民の大切な税金ですからね。
──最後に、大使としての今後の抱負を聞かせてください。
レジャバ とにかく、日本の皆さんにジョージアのことをもっと知っていただき、2国間の交流を活発化させる役割を果たしていきたい。
ある調査では、ジョージア国民にとって「いちばん住んでみたい国」に日本が選ばれています。栃ノ心や黒海、臥牙丸などの力士が活躍し、ジョージアでも大相撲がテレビ放映されたことが人気に火を付けた理由の1つでしょう。
でも、残念ながら、いまのところはジョージア国民の“片思い”で終わっています。おいしいワインや、世界中の観光客を魅了する美しい風景など、きっかけは何でもいいので、ぜひジョージアの魅力を知っていただきたいです。これからもXなどを通じて、積極的に情報を発信していきます。
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