先週の米国株式市場は、
大統領選挙を前に神経質な動きに
先週の米国株式市場は、大統領選挙を11月8日(火)に控え神経質な動きでした。
週間ベースでは、ダウ工業株価平均指数が+0.09%、S&P500指数が-0.68%、ナスダック総合指数が-1.28%でした。
ダウ工業株価平均指数チャート(日足・6カ月)*チャート画像をクリックすると最新のチャートがご覧になれます。SBI証券HPより拡大画像表示
先週言及したアップル(ティッカーシンボル:AAPL)、テスラ・モーターズ(ティッカーシンボル:TSLA)、アルファベット(ティッカーシンボル:GOOGL)、アマゾン(ティッカーシンボル:AMZN)の各社が決算を発表しましたので、まずそれらを見てゆきましょう。
【アップルの決算発表】
決算内容はいまひとつ。先週発表されたMacの新モデルに期待
アップルの第4四半期(9月期)決算は、いまひとつの内容でした。
EPSこそ予想1.66ドルに対し1.67ドルとかろうじて上回ったものの、売上高は予想469.9億ドルに対し468.5億ドルと未達でした。売上高成長率は、前年比-9.0%でした。
グロスマージン(売上高総利益)は、去年の同期の39.9%からかなり下がった38.0%でした。
注目されたiPhone販売台数は、予想4520万台に対し4550万台と、かろうじて面目を保ちました。しかしこれは、去年の実績4805万台に比べると-5%の数字です。
その他、iPad販売台数は前年比-6%、Mac販売台数は前年比-14%でした。
なおMacに関しては先週、新モデルが発表されました。これにより最近の売れ行き低迷に歯止めがかかることが期待されます。
地域別では米州-7%、欧州+3%、中国-30%、日本+10%、アジア太平洋-1%でした。特に、中国市場が今回もダメだった点が目をひきました。
次の第1四半期(12月期)に関しては、予想753.3億ドルに対し、新ガイダンス760〜780億ドルが提示されました。これは強気なガイダンスと言えると思います。
【テスラ・モーターズの決算発表】
懸念されていた工場の建設も順調で、安心感が漂う
テスラ・モーターズの第3四半期決算は、予想より良い内容でした。
EPSは予想2セントに対し71セント、売上高は予想23.2億ドルに対し23億ドルでした。なおテスラは、今回から会計基準がGAAP(=米国で一般に受け入れられている基準)に移行しました。上に書いたコンセンサス売上予想には古い基準に基づくアナリスト予想が含まれていると思われるので、売上高予想と結果を単純比較することはできません。
第3四半期の納車は、前年比+114%の2万4821台で、予想を300台上回りました。内訳は、「モデルS」が1万6047台、「モデルX」が8774台でした。また、通関中の車両は5065台でした。
遅延が懸念されたギガファクトリーの建設は、スケジュール通りだそうです。「モデル3」の生産・納車開始に関しても、これまで通り2017年下半期を目指していると発表されました。スケジュールの遅延が、目下の投資家の最大の懸念だったので、投資家はホッとしたと思います。
【アルファベットの決算発表】
決算は無難な内容。コア事業も再加速へ
グーグルの親会社であるアルファベットの第3四半期決算は、無難な内容でした。
EPSは予想8.60ドルに対し9.06ドル、売上高は予想220.4億ドルに対し224.5億ドル、売上高成長率は前年比+20.2%でした。
アルファベットの売上の大半は、広告収入です。アルファベットは、広告クリック数全体を示す尺度として「アグリゲート・ペイド・クリック」という指標を使っています。これは、「自社運営のグーグル・ウェブサイトにおけるペイド・クリック(広告クリック数)」とアドセンス広告など「メンバー・サイトにおけるペイド・クリック」という2つの要素を足し上げ(アグリゲート)した独自の指標です。
そのアグリゲート・ペイド・クリックは+33%で、予想の+26%を上回りました。因みに第2四半期は+29%、第1四半期は+29%でした。
アグリゲート・ペイド・クリックが+33%も増えているのに、売上高が+20%しか増えてない理由は、広告単価が下がっているからです。それは「アグリゲート・コスト・パー・クリック」という指標で報告されており、-11%でした。
そんなアグリゲート・ペイド・クリックの成長を支えているのが、グーグル・ウェブサイトにおけるペイド・クリックで、+42%でした。ちなみに第2四半期は+37%、第1四半期は+38%、去年の第4四半期は+40%でした。この部分がアルファベットの業績の牽引車の役割を果たしており、コア事業の再加速は投資家を安心させました。
【アマゾンの決算発表】
落胆させられる決算内容。業績のカギを握るAWSの成長率も鈍化
アマゾンの第3四半期決算は落胆させられる内容でした。
EPSは予想82セントに対し52セント、売上高は予想326.5億ドルに対し327.1億ドル、売上高成長率は+29.0%でした。
北米売上高は、+16%の189億ドル、GAAP営業利益は+37%の2.55億ドルでした。また、海外売上高は+28%の106億ドル、GAAP営業利益は赤字の−5.41億ドルでした。
また、アマゾンが提供するクラウドサービスで今後の業績の成長を牽引するだろうと期待される「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」ですが、その売上高は+54.5%の32億ドル、GAAP営業利益がは+101%の8.61億ドルでした。前期のAWSの売上高+58%、GAAP営業利益+126%と比較すると、今回、AWSは明らかに成長率が鈍化しました。投資家は主にこの部分を嫌気しています。
第4四半期は、売上高予想446.5億ドルに対し、新ガイダンス420〜455億ドルが提示されました。営業利益ガイダンスは、ブレークイーブン(損益分岐点)から12.5億ドルが提示されました。因みに去年の第4四半期の営業利益は11億ドルでした。
では次に、今週決算発表するフェイスブック(ティッカーシンボル:FB)とスターバックス(ティッカーシンボル:SBUX)について書きます。
【フェイスブックの決算発表】
ユーザー動画平均視聴時間の過大報告問題の影響に注目
フェイスブックは、11月2日(水)引け後に決算発表する予定です。
コンセンサス予想は、EPSが96セント、売上高が69.1億ドルです。
ちなみに、7月末に発表された同社の第2四半期決算では、EPSが予想82セントに対し97セント、売上高が予想60億ドルに対し64.4億ドル、売上高成長率は前年比+59.2%でした。
DAU(日間アクティブユーザー数)は+17%の11.3億人、MAU(月間アクティブユーザー数)は+15%の17.1億人、広告収入に占めるモバイル比率は84%でした。
フェイスブックは、先日、ユーザーの動画平均視聴時間を誤って大幅に過大に報告していたことを認めました。今回の決算カンファレンスコールではそれが今後の同社の業績にどう影響してくるか、という点に注目したいと思います。
【スターバックスの決算発表】
前回ゼロ成長だったトランザクションの回復に期待
スターバックスは、11月3日(木)引け後に決算発表する予定です。
コンセンサス予想はEPSが55セント、売上高が56.9億ドルです。
ちなみに7月末に発表された同社の第3四半期(6月期)決算では、EPSが予想49セントに対し49セント。売上高が予想53.4億ドルに対し52.4億ドル、売上高成長率は前年比+7.3%でした。
また、既存店売上比較は、予想+5.5%に対し+4%でした。
今回の決算発表では、既存店売上比較、とりわけ前回ゼロ成長だったトランザクション(取引)がどれだけ反発できるかに注目が集まると思います。
【今週のまとめ】
好業績でも反応が薄く、市場の決算発表を見る目は厳しい
先週決算を発表した企業の週間ベースでのパフォーマンスを見ると、アップルは-2.5%、テスラ・モーターズは-0.06%、アルファベットは-0.55%、アマゾンは-5.26%でした。言い換えれば、テスラやアルファベットのように好決算を出した銘柄でも株価は反応薄であり、逆にアップルやアマゾンのように期待外れの決算を出した銘柄の場合、素直に売られたということです。
このように市場の「決算発表を見る目」は厳しくなっています。
したがって、今週のフェイスブックやスターバックスの決算発表も、気が抜けません。
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