「ソフトバンク」のIPOが東京証券取引所の承認され、2018年12月19日に東証1部または2部に上場することが決定した。スケジュールおよび取り扱い証券会社は以下の通り。
■スケジュール | ||||||
仮条件提示 | 11月30日(金) | |||||
ブックビルディング(抽選申込)期間 | 12月3日(月)~8日(金) | |||||
公開価格決定 | 12月10日(月) | |||||
購入申込期間 | 12月11日(火)~15日(金) | |||||
上場日 | 12月19日(水) |
■取り扱い証券会社 |
野村證券(共同主幹事)、大和証券、SMBC日興証券、みずほ証券(共同主幹事)、三菱UFJモルガン・スタンレー証券(共同主幹事)、SBI証券、岡三証券、東海東京証券、岩井コスモ証券、水戸証券、西日本シティIT証券、松井証券、マネックス証券、あかつき証券、カブドットコム証券(共同主幹事のグループ証券)、※岡三オンライン証券 |
その他の詳細情報は、以下のリンクを参照。
⇒「ソフトバンク」のIPOの情報の総まとめ! スケジュールから幹事証券、注目度、銘柄分析、他の移動/固定通信事業者との比較や予想まで解説!
2018年1月15日、日本経済新聞が驚くべきニュースを報じた。それは、ソフトバンクグループ(9984・以下SBグループ)が、傘下の携帯事業会社ソフトバンクを東証1部に新規上場させる方針を固めたという内容だ。
この報道に対してSBグループは、即座に「ソフトバンク株式会社の株式上場もその選択肢の一つですが、正式に進めることを決定した事実はありません」というリリースを発表。しかし、2月7日になって「ソフトバンク株式会社の株式上場準備の開始について」というリリースを出し、ソフトバンクが上場準備に入ったことを公式に表明した。
日経新聞では ソフトバンクは、早ければ今年春にも東京証券取引所に上場申請し、秋以降に上場を目指すと報じられている。
ソフトバンクの公開規模は約2兆円?
実現すれば、NTTに匹敵する超巨大IPOに!
報道によると、ソフトバンクグループは、自社が保有する99%のソフトバンク株のうち、約3割を投資家に売り出す計画で、これにより2兆円ほどを資金調達するという。これは、過去最大のIPOだったNTT(9432)の2兆2145億円やNTTドコモ(9437)の2兆1255億円に匹敵する規模。もし実現した場合は、調達した資金を新たな成長分野に投資していくとされている。
■過去に行われた大型IPOの例 | ||||||
社名(銘柄コード) ※クリックで最新チャートへ |
上場日 | 公開規模 (吸収金額) |
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NTT(9432) | 1987年2月9日 | 2兆2145億円 | ||||
JR東日本(9020) | 1993年10月26日 | 9500億円 | ||||
JT(2914) | 1994年10月27日 | 5670億円 | ||||
NTTドコモ(9437) | 1998年10月22日 | 2兆1255億円 | ||||
第一生命(8750) | 2010年4月1日 | 7131億円(※) | ||||
日本航空(9201) | 2012年9月19日 | 6633億円 | ||||
日本郵政(6178) | 2015年11月4日 | 6930億円 | ||||
ゆうちょ銀行(7182) | 2015年11月4日 | 5980億4133万5000円 | ||||
かんぽ生命保険(7181) | 2015年11月4日 | 1452億円 | ||||
JR九州(9142) | 2016年10月25日 | 4160億円 | ||||
※1 売り先指定の211万2900株は除いて計算 |
また、新規の株を発行する「公募」は行われず、SBグループ保有の既存株を放出する「売出」だけとも報じられている。それが事実であれば、IPOによって集まった資金は、上場するソフトバンクではなく、すべて親会社のSBグループに行くことになる。
「1月のニュースを見て『そう来たか!』というのが正直な感想です」
こう話すのは、投資情報サービス会社・フィスコで長年IPO銘柄の分析に携わっている、アナリストの小林大純(こばやし・ひろずみ)さんだ。
SBグループといえば、旧日本テレコム、英ボーダフォン日本法人を買収して国内通信事業を拡大し、ソフトバンクを国内携帯電話市場でNTTドコモ(9437)やKDDI(9433)と並ぶ3大キャリアのひとつにまで成長させてきた経緯があり、投資には積極的な会社だ。今回は「株式売却益を2兆円と見込み、新たな投資にあてる」という報道内容だが、小林さんもこれには同意を示す。
「SBグループは、近年も米スプリント、英半導体設計大手のアーム・ホールディングス買収し、昨年にはサウジアラビアと運用額10兆円規模の『ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)』も立ち上げるなど、投資会社としての性格を色濃くしています。世界には投資対象として魅力的な企業はたくさんあり、SBグループとしては、買収によりグループの規模拡大を加速させたい狙いでしょう」(小林さん)
その、買収のための資金調達方法として採用されたのが、今回のソフトバンク上場だ。
「SBグループは、米携帯事業者で傘下のスプリントと同業Tモバイルの合併を計画していましたが、出資比率などで条件が折り合わずに破談しました。資金調達をするならスプリント株を売却することも考えられますが、『情報革命』を目指す孫社長にとって、その核とも言える通信事業を手放す気にはなれなかったのではないでしょうか。ソフトバンク上場は、そんな状況のなか考え出された策だと思います」(小林さん)
資金調達として新たに融資を受けるという選択肢もあるが、SBグループは、2017年9月末時点で約14兆円の有利子負債を抱え、2017年3月期には年間4600億円もの利息を支払っている。
「これ以上の借り入れで利払い負担が増えることへの懸念は市場内外にあり、安定したキャッシュフローが見込めるといえどソフトバンクのIPOで資金を調達したほうが賢明だと考えたのだと思います」(小林さん)
携帯事業会社であるソフトバンクを上場させることで
SBグループは投資会社としての性格が色濃くなる
ただ、ソフトバンク上場は、SBグループにとってデメリットもある。
携帯事業会社であるソフトバンクの2017年4-9月期における営業利益は4339億円で、SBグループの営業利益8748億円のおよそ半分を占める。その稼ぎ頭であるソフトバンクが上場して連結子会社になると、当期純利益の段階で、他の株主の持ち分について少数株主利益として差し引かれてしまう。
しかし、SBグループとしては、「最終的な利益が減ったとしても、ソフトバンク上場で手に入れる資金を使った投資事業の拡大のほうがメリットはある」と睨んだのだろう。
「一般的に、多角経営の企業は『コングロマリット・ディスカウント』といって、企業価値が割り引かれてしまうことが多いんです。多角化している企業は、単体でそれぞれの事業を行っている場合にくらべて、市場からの評価が下がる傾向にあると言うこと。ですが、SBグループの場合は、アリババグループをはじめ孫社長の目利き力には定評があり、むしろ積極的なM&Aによる多角化が、投資家からポジティブに捉えられる可能性があります」(小林さん)
実際、SMBC日興証券は、2017年11月21日発行のレポートで、「ソフトバンク・ビジョン・ファンドは、各分野のナンバー1ユニコーンへの投資を着実に実行していて、投資先の成長やIPO、一部株式の売却による投資収益の実現などが見えてくるにつれてSBグループの株価評価は高まる」と評価。2017年11月下旬時点におけるSBグループの株価9400円台に対して、目標株価を1万700円から1万1000円に引き上げている。
SBグループの投資事業は今後も堅調で、ソフトバンクのIPOはむしろ賢い選択だと判断されているようだ。
一方、ソフトバンク上場のニュースが報じられた際、親会社であるSBグループとその子会社のソフトバンクの「親子上場」であることに難色を示す声も聞こえてきた。しかし、それに関しては「あまり気にする必要はない」と小林さんは言う。
「親会社と子会社が同時に上場する『親子上場』は、親会社からの影響が強く子会社の自律性が保てない、親会社と少数株主の利害が必ずしも一致しないなどの理由から、批判の声が上がりやすいのも確かです。しかし近年は、親子上場に対するネガティブな意見は減りつつある印象です。2015年に上場した日本郵政3社も親子の同時上場でしたが、投資家は非常に盛り上がりました」(小林さん)
親会社による干渉を抑えるため、上場企業の子会社が東証1部に上場する場合、親会社は持ち株比率を65%未満にとどめる必要がある。ところが、子会社が海外市場に上場すると、この規制が緩和される。
SBグループは、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの本拠地があり、ソフトバンクの知名度が高いロンドン証券取引所への上場も視野にいれているようだ。それが実現すれば、SBグループはソフトバンク株の65%以上を保有し続けることが可能となり、ソフトバンクの手綱はしっかりと握ったままの親子上場が可能になる。孫社長の奇策といえるだろう。
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「エクイティ・ストーリー」を明らかにすることが
IPOを成功させるカギ
話題性があり、個人投資家はもちろん機関投資家からも注目されるに違いない、ソフトバンクのIPO。「実施するなら年内との報道ですが、その時点で市場環境が好調なら2兆円の資金調達は、さほど難しくないと思います。国内のみならず海外投資家も関心を寄せるでしょうね」と、小林さんは評する。
一方で、懸念がないわけではない。というのも、国内における携帯電話ビジネスは成長期から成熟期へシフトしていて、かつてほどの伸び代はない。家計に占める携帯のコストは増えるばかりで、総務省を中心に政府はキャリアに対して料金引き下げの圧力を強めている。
楽天は、2017年12月に携帯電話事業に新規参入すると発表したが、競争を加速することで一般家庭における通信費のコストダウンを促したいという思惑も感じ取れるほどだ。そうなると、当然、限られたパイを奪い合うことになり、既存のキャリアにとって向かい風となる。実際、楽天の携帯電話事業参入の報道を受けて、3大キャリアの株価は一時下落した。
「携帯事業に成長ビジネスというイメージがない以上、ソフトバンクがIPOを成功させるには、投資家に対して、資金調達後の戦略や成長シナリオといった『エクイティ・ストーリー』をしっかりと明示する必要があります。魅力的な新規事業や、安定したキャッシュフローを背景にした手厚い配当、ユニークな株主優待を打ち出すなど、エッジの効いたアピールが求められます」(小林さん)
近年はKDDIが保険販売を始めるなど、携帯キャリアのビジネスも多角化しつつある。こういった新規ビジネスへの取り組みも訴求につながるかもしれない。
いずれにしろ、業績の伸びが期待でき、投資家に保有メリットがあると感じさせる施策が必要というわけだ。
そうしたエクイティ・ストーリーの一環とも取れるのが、2017年1月31日に発表された、LINEモバイルとの提携だ。LINEモバイルがソフトバンクと戦略的提携に向け基本合意を交わし、今後はLINE(3938)とソフトバンクの2社の下に入る形になるようだ。
「国内7000万人超の利用者を誇るアプリ『LINE』との相乗効果に期待する向きがあるものの、今後の成長ドライバーとして期待できるかどうかの判断は、具体的な施策を待ちたいところです。ソフトバンクにとって、LINEモバイルの提携は『上場のためのストーリーづくり』というとやや言い過ぎな感もありますが、携帯電話業界の地殻変動に対応した動きであり、ソフトバンクにとって今後の成長の布石であることは間違いないでしょう」(小林さん)
ソフトバンクの知名度や規模を考えると
初値騰落率は+10%以上!
IPOが具体化すると、日本郵政3社の上場時のように、新たな投資家の呼び水になる可能性は高く、主幹事証券をはじめとする取扱証券会社には応募が殺到するだろう。現時点では、公募価格などの具体的な数字は出てないものの、「高い初値がつくことも期待できる」と小林さんは言う。
「公開規模(吸収金額)の大きいIPOは、初値が上がりにくい、というのは、IPO投資家の間では常識ですが、ソフトバンクほど知名度のある企業は話が別。3社の合計で1.4兆円だった日本郵政3社のIPOでは3社とも+10%以上、かんぽ生命にいたっては+33%の初値騰落率でした。それを考えると、ソフトバンクも、少なくとも公募価格に対して+10%以上の初値が期待でき、公募割れする可能性は低いと思います」(小林さん)
2016年7月にIPOをしたLINE(3938)は公募価格3300円で初値は+48%の4900円、同年10月のJR九州(9142)の場合、公募価格2600円に対して初値は+19%の3100円だった。
「近年、大型上場の初値形成は好調という認識が投資家の間でも広まっています。ソフトバンクがこれにならう確率は高いでしょう」(小林さん)
今のうちからソフトバンクIPOの情報を集め
ブックビルディング参加の心構えをしておこう!
ソフトバンクのIPOは、IPO投資家はもちろん、普段投資に縁のない人の関心も集め、話題沸騰となることは間違いない。IPO投資に興味を持つ個人投資家にとっては、外せないビッグイベントになるだろう。
上場日や主幹事証券会社といった具体的な情報はまだ明らかになっていないが、今から心づもりや準備をしておけば、いざ上場が決まった後に乗り遅れずにも済むだろう。ザイ・オンラインでも、ソフトバンクIPOに関して続報があれば、すぐにお伝えしていこう。
(※2018年11月14日追記)
ソフトバンクのIPOの取り扱い証券会社は、現時点で以下の通り。
■ソフトバンクのIPOの取り扱い証券会社(2018年11月14日時点) | ||||||
証券会社名 (※青文字をクリックで詳細ページへ) |
引受シェア | 口座開設 | ||||
野村証券(主幹事証券) | -% | |||||
大和証券(主幹事証券) [最短翌日に取引可能] |
-% | |||||
SMBC日興証券(主幹事証券) [最短3日後に取引可能] |
-% | |||||
SBI証券(主幹事証券) [最短翌日に取引可能] |
-% | |||||
東海東京証券 | -% | |||||
岩井コスモ証券 [最短3日後に取引可能] |
-% | |||||
松井証券 [最短3日後に取引可能] |
-% | |||||
マネックス証券 [最短2日後に取引可能] |
-% | |||||
カブドットコム証券(主幹事のグループ会社) [最短3日後に取引可能] |
-% | |||||
岡三オンライン証券 [最短2日後に取引可能] |
-% | |||||
みずほ証券(主幹事証券) | -% | |||||
三菱UFJモルガン・スタンレー証券(主幹事証券) | -% | |||||
岡三証券 | -% | |||||
水戸証券 | -% | |||||
西日本シティIT証券 | -% | |||||
あかつき証券 | -% |
【※ソフトバンクIPOの詳細情報はこちら!】
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【2024年12月2日時点】
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◆SMBC日興証券 | ||||
主幹事数(上)/取扱銘柄数(下) | ネット配分・抽選方法 | 口座数 | ||
2023 | 2022 | 2021 | ||
19社 52社 |
24社 47社 |
26社 80社 |
10%:1人1票の平等抽選 最大5%:「ステージ別抽選」※1 |
345万 |
【ポイント】 大手証券の中でもIPOに力を入れており、例年、主幹事数・取り扱い銘柄数ともに全証券会社中でトップクラス! また、国内五大証券会社のひとつだけあり「日本郵政グループ3社」や「JR九州」「ソフトバンク」などの超大型IPOでは、主幹事証券の1社として名を連ねることも多い。10%分の同率抽選では、1人1単元しか申し込めないので資金量に関係なく誰でも同じ当選確率となっているのがメリット。さらに、2019年2月からは、預かり資産などによって当選確率が変わる「ステージ別抽選」がスタート。平等抽選に外れた人を対象にした追加抽選で、最高ランクの「プラチナ」だと1人25票が割り当てられて当選確率が大幅にアップする。 ※1 預かり資産残高などによって決まる「ステージ」ごとに、別途抽選票数が割り当てられる。 |
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◆SBI証券 | ||||
主幹事数(上)/取扱銘柄数(下) | ネット配分・抽選方法 | 口座数 | ||
2023 | 2022 | 2021 | ||
21社 91社 |
13社 89社 |
21社 122社 |
60%:1単元1票の平等抽選 30%:「IPOチャレンジポイント」順に配分 10%:知識・経験・資力と取引状況を踏まえて配分 |
1245万 ※ |
【ポイント】 ネット証券にもかかわらず、主幹事数、取扱銘柄数ともに大手証券会社に引けをとらない実績を誇る。特に取扱銘柄数がダントツで、2023年は全96社中91社と約95%のIPO銘柄を取り扱った。つまり、SBI証券の口座さえ持っていれば、ほとんどのIPO銘柄に申し込めると考えていいだろう。個人投資家への配分の100%がネット投資家へ配分されるのも魅力。1単元1票の抽選なので、多くの単元を申し込むほど当選確率は高くなる。当選確率がアップする「IPOチャレンジポイント」が、資金量・取引量と関係なく、IPOに申し込み続ければ誰にでも貯められるのもメリットだ。また、スマートフォン専用サイトでIPOの申し込みや情報確認ができるのも便利。 ※SBIネオトレード証券、FOLIOの口座数を含んだSBIグループ全体の口座数。 |
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※ 主幹事数、取扱銘柄数はREITを除く。口座数は2023年12月末時点。 |