「つみたてNISA」(積立型の少額投資非課税制度)を利用すると、最長20年間にわたって運用益が非課税で資産を形成できます。商品は途中で変更も可能ですが、「積立」という特性上、頻繁に変えることは望ましくありません。となると、最初の商品選びが重要です。
では、具体的にはどんな商品を選ぶとよいのでしょうか。今回と次回の2回にわたって「つみたてNISA」の商品選びのポイントを説明します。まず今回は、「つみたてNISA」で扱っている商品の大半を占める「インデックス型投資信託」について見ていきましょう。
同じ指数に連動する商品であれば、
原則は「コストの安いほう」を選ぶ
インデックス型投資信託とは、TOPIXや日経平均株価など何らかの指数に連動する投資成果を目指す投資信託のことです。そのため、同じ指数に連動する商品であれば、基本的には同じ投資成果が得られることになっています。
投資成果が同じなら、あとはコストが問題です。ということで、指数が同じ投資信託が複数あった場合には、コストができるだけ安い商品を選ぶのが商品選びの原則です。「つみたてNISA」では購入時手数料はゼロ円(ノーロード)が決まりなので、運用管理費(信託報酬)が安いものということになります。
とは言え、「つみたてNISA」では国内型のインデックス型投資信託は運用管理費が0.5%以下(税抜、税込は0.54%)、海外型なら0.75%以下(税抜、税込は0.81%)と決められています。つまり、はじめからコストの高い商品は対象から除外されているのです。また、この先さらにコストを引き下げた商品が出てくる可能性もあります。コストが低い商品のほうがいいのは事実ですが、コストの低い商品を追い求めて、頻繁に商品を乗り換えたり、1年ごとに金融機関を替えたりするようなことはおすすめできません。
「できるだけコストの安さにこだわりたい」という人は、三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slim」シリーズか、ニッセイアセットマネジメントの「購入・換金手数料なし」シリーズを選んでおくとよいでしょう。なぜなら、どちらも「低コスト」にこだわりを持っていて、他社が運営管理費を引き下げたり、新たに運営管理費を抑えた商品が出たりした場合には、同じようにコストを下げてくる可能性が高いからです。
ちなみに、「つみたてNISA」の対象商品のうち、TOPIXを指標としているインデックス型投資信託は全部で12本(2018年2月2日時点)ありますが、最も運用管理費が安いのは「eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)」の0.17172%(税込、以下同じ)、「<購入・換金手数料なし>ニッセイTOPIXインデックスファンド」の0.17172%。次いで、三井住友アセットマネジメントの「三井住友・DCつみたてNISA・日本株インデックスファンド」の0.1728%となっています。
【※信託報酬の安いインデックス型投資信託はこちら!】
⇒つみたてNISA(積立NISA)のインデックス型投信の中で、信託報酬の安い商品を厳選して紹介! 騰落率や取り扱いのある金融機関にも注目して商品を選ぼう!
純資産総額や基準価額、トラッキングエラーの違いは、
「なぜそうなるのか」という理由を知っておくことが大切
続いて、コスト以外の商品選びのポイントについて説明します。
投資信託の「純資産総額」に関しては、あまり気にする必要はありません。一般的には、純資産総額があまりに少ないと繰り上げ償還のリスクがありますが、インデックス型投資信託の場合、ファミリーファンド方式で運用されているケースがほとんどです。ですから、実際に購入するファンド(=ベビーファンド)の規模が小さくても、大もとのマザーファンドは資産総額が十分にあるため、心配する必要はありません。
また、同じ指数に連動する投資信託でも、商品によって「基準価額」はまちまちですが、こちらも気にする必要はありません。基準価額の違いは、主に運用履歴の違いによるものだからです。たとえば、同じTOPIXに連動する投資信託であれば、基準価額が2万円のものと1万円のものを比較したとき、前者のほうが「高い」ということはないのです。
さて、最初に「同じ指数に連動する商品であれば、基本的には同じ投資成果が得られる」と説明しました。しかし、実際には必ずしも個別の商品と指数とでまったく同じリターンを上げているわけではなく、個々の商品によってもリターンには微妙な差があります。この、個別の商品と指数(ベンチマーク)のリターンの差を「トラッキングエラー」と言います。
指数を上回るリターンを上げているほうがよい商品、と思う人もいるかもしれません。しかし、インデックス型投資信託ではトラッキングエラーが小さい、つまり指数としっかり連動できているほうがよい商品と言えます。トラッキングエラーについてもそれほどこだわる必要はありませんが、気になる人は、各商品のマンスリーレポートや運用報告書を見比べて、指数との差が小さい商品を選ぶとよいでしょう(マンスリーレポートや運用報告書は、各商品のサイトから簡単に入手できます)。
少しマニアックな話になりますが、トラッキングエラーが起きる理由についても簡単に説明しておきましょう。指数に連動する投資信託が、指数と同じ銘柄をすべて購入しているかというとそうではなく、各社ともなるべく少ない銘柄で指数と連動する「運用モデル」を作っています。しかし、指数に組み入れられている個別の銘柄が極端な値動きを示した場合などには、運用モデルにズレが出てしまい、トラッキングエラーが起きるのです。
また、一度に大量の解約があったときには資産を売却して対応するため、トラッキングエラーが起きやすくなります。これに関連して覚えておきたいのが、運用履歴の長いインデックス型投資信託では、中小企業など機関投資家の資金が入っている商品があることです。機関投資家の資金が入っていると、決算期や年度末には解約が増えてトラッキングエラーが大きくなるケースがあるのです。購入前には、過去の運用報告書などで、純資産総額の変動が極端に大きくなることがないかどうか、確認しておくと安心です。
この項目で挙げたポイントは、いずれもそれほど気にする必要はありません。ただ、これから「つみたてNISA」でインデックス型投資信託と長く付き合っていくのであれば、知っておいて損のない知識だと思います。
国内型のインデックス型投資信託では、
「TOPIX」に連動する商品を選ぶのがセオリー
「つみたてNISA」の国内型のインデックス型投資信託は、TOPIX(東証株価指数)、日経平均株価、JPX日経インデックス400の3つの指数のいずれかに連動しています。では、どの指数に連動する商品を選ぶのがよいでしょうか。2018年2月2日時点では、単体の指数に連動する国内型の投資信託は次の32本です。
●TOPIXに連動する商品…12本
●日経平均株価に連動する商品…15本
●JPX日経インデックス400に連動する商品…5本
「わかりやすさ」では日経平均株価ですが、「分散投資」という観点から考えるとTOPIXに連動する商品を選ぶのが基本です。なぜなら、TOPIXは東証一部に上場している日本企業の全2064銘柄(2018年2月20日時点)の指数であるのに対し、日経平均株価の対象となっているのは225銘柄で、ざっくり言ってTOPIXが対象にしている銘柄の約10分の1に過ぎないからです。また、日経平均株価は「ファーストリテーリング(9983)」や「ソフトバンクグループ(9984)」といった、時価総額の高い銘柄の値動きに指数が左右されやすいという面もあります。
一方、JPX日経インデックス400は、日経平均株価やTOPIXとは異なり、定量評価や定性評価に基づいた銘柄によって構成されているのが特徴です。一定の条件でスクリーニングした後で、3年間の平均ROEや累積営業利益などで点数を付けて、スコアの高い順に400銘柄を選定しています。より積極的に日本企業の成長を取っていきたいと考えるのであれば、JPX日経インデックス400に連動する成果を目指す投資信託を選んでもいいでしょう。
海外型では「世界の成長」を取っていくのが基本!
おすすめは、オールカントリーの指数に連動する商品
国内型に比べると、海外型のインデックス型投資信託では指数そのものにあまり馴染みがないかもしれません。「つみたてNISA」のインデックス型投資信託の海外型では、9つの指数に連動する合計38本の投資信託を扱っています(2018年2月2日時点)。わかりやすいように少し整理すると、次のようになっています。
●全世界の株価指数(MSCI ACWI Index、FTSE Global All Cap Index)に連動する商品…6本
●先進国の株価指数(MSCI World Index(MSCIコクサイ・インデックス)、FTSE Developed All Cap Index)に連動する商品…16本
●米国の代表的な株価指数(S&P500)に連動する商品…3本
●小型株を含めた米国の株価指数(CRSP U.S. Total Market Index)に連動する商品…1本
●新興国の株価指数(MSCI Emerging Market Index、FTSE Emerging Index、FTSE RAFI Emerging Index)に連動する商品…12本
この中でおすすめは、「世界の成長」を丸ごと取っていける全世界の株価指数に連動する投資成果を目指す投資信託です。銘柄で言えば、「野村つみたて外国株投信」「eMAXIS 全世界株式インデックス」「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」などが挙げられます。
「つみたてNISA」の対象商品として「全世界の株価指数」に連動する投資信託を扱っている金融機関には、SBI証券や楽天証券、マネックス証券、松井証券などが挙げられます。ただし、今のところ、そのほかの証券会社ではあまり多くの商品は取り扱われていないようです。その場合は、先進国の株価指数に連動する投資信託を選ぶのが基本です。
また、すでに投資経験があり、より高い成長を狙っていきたいという人であれば、新興国の株価指数に連動する投資信託を選んでも構わないでしょう。ただし、新興国の株価は先進国と比べて値動きが激しく、リスクが高くなります。あくまで、投資中級者以上で「つみたてNISA」以外にも資産があるというのが条件です。
次回は、「バランス型」と「アクティブ型」について、今回同様に商品選びのポイントを説明していきます。
【※関連記事はこちら!】
⇒つみたてNISA(積立NISA)を始めるなら、おすすめの証券会社はココだ!手数料や投資信託の取扱数などで比較した「つみたてNISA」のおすすめ証券会社とは?
⇒つみたてNISA(積立NISA)対象商品を一覧で紹介! インデックス型投資信託とアクティブ型投資信託、ETFの取り扱い金融機関や信託報酬、騰落率に注目!
(構成:肥後紀子)
ファイナンシャルリサーチ代表。AFP、1級ファイナンシャルプランニング技能士。クレジット会社勤務を3年間経て1989年4月に独立系FP会社に入社。1996年1月に独立し、現職。あらゆるマネー商品に精通し、わかりやすい解説に定評がある。主な著書に『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない』『ジュニアNISA入門』(ダイヤモンド社)など多数。
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投資信託 | 株式売買手数料(税込) | 投資信託 | ||
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【SBI証券の新NISA口座のおすすめポイント】 ネット証券大手の一つで、新NISA口座では日本株の売買手数料無料に加えて、米国株式&海外ETFの売買手数料も無料!「つみたて投資枠」対象商品のほとんどの投資信託を取り扱っており、すべてノーロード(購入時手数料が無料)。投資信託の積み立ては「100円」から可能で、少額から始めたい人に対応。「毎月積立」だけでなく、「毎週積立」「毎日積立」も選べる。三井住友カードなどによるクレジットカード決済「クレカ積立」を利用すると、カードの種類やその他の条件によってポイントが貯まる。「投信マイレージ」では保有額に応じたポイントも獲得できる。「成長投資枠」では米国株、中国株、韓国株、ロシア株(現在、注文停止中)、ベトナム株、インドネシア株、シンガポール株、タイ株、マレーシア株など海外株も豊富。単元未満株(1株から日本株が買える)「S株」は東証の全銘柄が対象で、成長投資枠で投資可能。売買手数料はゼロ円だ。「S株」では積立サービス「日株積立」を開始。株数指定(1 株単位)、金額指定(1000円以上、500円単位)で積立ができるようになった。カスタマーサービスセンターは「NISA・投信土日専用デスク」があり、週末も問い合わせに対応しているのも便利。「J.D.パワー2024年NISA顧客満足度調査 」<証券部門>にて、総合満足度ランキング1位を受賞した。 |
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投資信託 | 株式売買手数料(税込) | 投資信託 | ||
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投資信託 | 株式売買手数料(税込) | 投資信託 | ||
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239本 | 無料 | 無料 | 1137本 | 0.5% |
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投資信託 | 株式売買手数料(税込) | 投資信託 | ||
国内株 | 米国株 | |||
150本 | 137〜2200円 (約定代金による) |
− | 540本 | − |
【SMBC日興証券の新NISA口座のおすすめポイント】 2023年11月から投資信託情報サービス「日興の投信NISA」を開始。数多くの投資信託のなかからおすすめの21本に絞り込んでいるうえ、「なにごともバランスが大事よ」「私は世界の成長にかける」といったタイプごとに5〜6銘柄をピックアップしてくれるので、自分好みのNISA対応ファンドを選ぶ助けになる。SMBC日興証券では一部の投資信託で買付手数料が必要となるが、積立購入(投信つみたてプラン)の場合は全銘柄で買付手数料が原則無料となるので、上手に活用したい。 また、外国株式は、オンライントレードでは取引できないので注意しよう。単元未満株取引「キンカブ」は「100円以上、100円単位」の金額指定で株が買えるのがメリットで、dポイントでも株式投資ができる。「キンカブ」は売買手数料は無料で、100万円以下の買付ならばスプレッドも0%となっている(100万円超の買付時や売却時はスプレッド0.5~1.0%)。 |
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投資信託 | 株式売買手数料(税込) | 投資信託 | ||
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91本 | 実質無料 | − | 332本 | − |
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38本 | 無料 | − | 112本 | − |
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サービス手数料: 資産残高の0.693〜0.733%(年率・税込)※ |
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※手数料などの情報は定期的に見直しを行っていますが、更新の関係で最新の情報と異なる場合があります。最新情報は各証券会社の公式サイトをご確認ください。売買手数料は、1回の注文が複数の約定に分かれた場合、同一日であれば約定代金を合算し、1回の注文として計算します。投資信託の取扱数は、各証券会社の投資信託の検索機能をもとに計測しており、実際の購入可能本数と異なる場合が場合があります。※1 年会費無料のクレジットカードの場合。※2 1約定ごとプランで約定金額240万円までの売買手数料。 |