公的年金の「繰上げ受給」と「繰下げ受給」の“損益分岐点”を解説!
ダイヤモンド・ザイ4月号は、別冊付録「定年前後の不安を解消!【老後のダンドリ】確認BOOK」が付いてくる! 定年退職の前後には、退職金や年金、雇用保険に関することなど、しなければならない手続きが山ほど出てくる。そこで、この別冊付録では、覚えておくべき手続きを網羅。知らないと損することもたくさんあるため、一つずつきっちり確認するのがおすすめだ。
今回は、この別冊付録から「公的年金」の支給開始手続きについて、知っておきたいポイントを抜粋。支給開始のタイミングをいつにするかによって、もらえる年金額は大きく変わってくるので、ぜひチェックを!(※監修はウーマン・タックスおよびWTパートナーズ代表で、税理士の板倉京さん)。
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年金の「受給開始年齢」は”損益分岐点”で考える!
定年後もバリバリ働く人、長生きに自信がある人は繰下げの検討を
定年退職後の生活の支えとなるのが「公的年金」だが、実は自動的に支給が始まるわけではなく、自分で手続きをしなければならない。支給開始年齢は原則65歳だが、手続きの際に60歳から70歳(※年金改正法が施行される2022年4月以降は、60歳から75歳)の間で選ぶことができるようになっている。
65歳より早く受け取る場合は「繰上げ」となり、65歳より遅く受け取る場合は「繰下げ」となる。繰上げする場合、支給開始時期を1カ月早めるごとに、支給額が0.5%ずつ減額される(2022年4月以降は0.4%ずつ減額)。
一方、繰下げする場合は、支給開始時期を1カ月遅らせるごとに、支給額が0.7%ずつ増額される。たとえば、支給開始時期を10年間繰下げて、75歳からの支給にすると、1年間でもらえる年金が84%もアップする。65歳で支給開始した場合の年間受給額が192万円なら、353万円超になるのだ。
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60歳以降も働いて給与を受け取る場合、繰上げ申請をしても、給与と年金の合計が月28万円(2022年4月以降は47万円)を超えると、年金はカットされてしまう。65歳以降も給与と年金の合計が月47万円を超えるとカットされるので、バリバリ働く予定なら繰下げを選ぶのも手だろう。
逆に、「お金は元気なうちに使いたい」などの理由で、繰上げを検討している人も多いはずだ。そこで参考にしてほしいのが、繰上げ・繰下げした場合の「損益分岐点」だ。繰り返しになるが、仮に繰上げして60歳から年金を受け取ると、支給額は65歳受給スタートのケースより減額される。よって、65歳から受け取る場合と比較すると、どこかで年金の”累計受給額”は逆転する。その損益分岐点となる年齢を示したのが以下だ(※65歳で年金の受給を開始した場合に月額16万円・年額192万円もらえる人の事例)。
60歳から年金を受け取った場合、76歳を超えたところで、65歳からの本来受給の累計額を下回ることになる。さらに、90歳まで生きたとすると、65歳から受給していた場合に比べて、総額864万円ももらえる年金が少なくなる(※ちなみに、2022年4月の年金改正法の施行後は、損益分岐点が80歳まで延びる)。
つまり、長生きすればするほど、繰上げ受給は損してしまうということだ。逆に、繰下げした場合は、長生きしないと損をする。75歳まで繰下げした場合、65歳からの本来受給の累計額を上回るのは、86歳以上になってからだ。
自分が長生きしそうか、そうでもないかを元気なときに想定するのは難しい。しかし、慎重に判断しないと、後で後悔する可能性が高くなる。59歳の誕生日には「ねんきん定期便」が封書で届く。通常のはがきより詳細な内容なので、見込額だけでなく、年金の加入期間や標準報酬月額などに間違いがないかしっかり確認のうえ、定年後の生活を考えるきっかけにしてみてほしい。
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