【今回のまとめ】
1.冷やすことで体積を減らし、運びやすくするのがLNGのねらい
2.米国のシェールガス開発は運搬手段を考えず、市況低迷を招いた
3.巨大なインフラ投資を可能にするためには長期契約は不可欠
4.天然ガスの長期需要見通しは明るい
5.アフリカのモザンビークで進む天然ガス開発に注目
「LNG」とはなにか
LNGとは「液化天然ガス」の略で、天然ガスをマイナス160度まで冷却し、液化したものです。それではなぜ、天然ガスをわざわざ液化するのでしょうか?
それは、気体である天然ガスを液化することで、体積がそれまでの600分の1になり、運びやすくなるからです。
天然ガスはクリーンなエネルギーで、世界の各地域にふんだんに存在します。しかし気体であり、取り扱いが難しいので、これまでは天然ガスが出る生産地に近いところでしか消費できませんでした。パイプラインで天然ガスを輸送することはできますが、距離が遠いとパイプラインを敷くコストがかさみます。
このように「生産地=消費地」というのが、昔の天然ガス業界の常識だったのです。
米国のシェールガス大増産は、ただの「おなら」?
ところで、米国では近年、「シェールガス」がブームとなっています。シェールガスは「頁岩(シェール)」層に閉じ込められた天然ガスのことです。シェールにガスが閉じ込められていることは、昔から知られていましたが、それを効率的に取り出す方法がなかったのです。
1990年代に入ってから、「ホリゾンタル・ドリリング(水平掘り)」という新しい技術が普及しました。これは一旦、地下深くに垂直に掘り進んだ後、ドリルビットを抜いて、代わりに自走式でどの方向へも走れるドリルに入れ替え、横(水平)に掘ってゆくことで天然ガスが閉じ込められている地層を最大限に貫通することができるわけです。
もうひとつの重要な技術は「フラッキング(破砕法)」と呼ばれるもので、水平に掘った穴をまずセメントで固めてから、そのパイプのところどころに爆破装置で穴をあけ、シェール層に亀裂を作って、そこから天然ガスがパイプに流れ込むようにする技術です。
また亀裂を入れたシェール層にはプロペントと呼ばれる特殊液を流し込み、亀裂を広げることで気体を流れやすくします。
このような新技術の導入で、米国の各地でシェールガス開発がおこり、ブームの様相を呈しました。問題は(とても効率的に生産することはムリだろう)と諦めていた場所からどんどん天然ガスを生産することができるようになったので、生産した天然ガスを消費地まで持って行く手段まで頭が回らなかったことにあります。
運搬手段のない天然ガスは、“おなら”と同じです。扱い方がやっかいなだけで、そこに商品価値はありません。
米国で天然ガス価格が低迷したのは、そのような事情があります。
※参考記事(シェールガス採掘法の図解も掲載):「領土問題の背景にもあるエネルギー争奪戦の新星!米国発の「シェールガス革命」は日本の関連銘柄にもビッグチャンスだ!」
「日本の天然ガスは不当に高い」という誤解
これまで説明してきましたように、天然ガスはクリーンなエネルギーだけれども、扱い方がやっかいなので、生産地と消費地が近くなければいけないという制約がありました。
その束縛から逃れ、遠い消費地(例えば日本)に天然ガスを届ける方法が「LNG」なのです。
しかし、天然ガスをマイナス160度に冷却してやるためには、巨大な冷蔵庫のようなプラントが必要になります。またLNGを運搬するために専用のLNG船も必要になります。つまり莫大なインフラ投資が必要になるというわけです。
もともと天然ガスの市況は値動きが荒っぽいことで知られていますので、せっかく巨額の先行投資をしても、天然ガス市況が安定しなければ、生産者は大損してしまいます。そこでLNGの供給契約は15年ほどの長期契約が主流となっています。
言い換えれば、莫大な先行投資をした後で、15年間、安定的にLNGを供給し続けてはじめて元が取れる…、そういう採算の計算のもとで、やっと巨大投資が可能になるのです。
ですから米国での天然ガスの市況が安いのを見て「あそこでは天然ガスがあんなに安いのに、日本はカタールから高い契約を押し付けられている」と嘆くのは、そもそもLNGのビジネスを全く理解していない証拠なのです。
つまり米国の「安い」天然ガスを日本まで持ってこようと思うと、やはり米国にLNG輸出用の高価な設備を建設する必要が生じます。そういう運搬や処理施設の費用まで込みで計算すると、結局、米国から日本へ輸入されるLNGも高くつくことになるのは、言うまでもありません。
言い換えれば、米国における天然ガス市況の低迷は、増産で割安になっている天然ガスを、もっと有利に売れるところまで運搬することができないという輸送手段のミスマッチが原因なのです。
このミスマッチは、今後ゆっくりと是正され、現在のような極端な価格差はいずれ縮まると思われます。
天然ガスの長期需要予想は明るい見通し
さて次に、天然ガスの長期的な需要がどうなりそうかを見ていきましょう。
下のグラフは、エクソン・モービル社がまとめた2040年までのエネルギー需要の長期予想です。

天然ガスは石油に次ぐ大きなカテゴリーであり、しかも2025年にかけて急成長すると見込まれている点に注目してください。
この急成長を支える要因の1つが、LNGの普及なのです。
日本はどこからLNGを輸入しているか
日本は歴史的に、マレーシアやオーストラリアからLNGを輸入してきました。

近年、カタールで大型のLNG処理設備が完成したことから、同国からの輸入も増えています。加えて、ナイジェリアや赤道ギニアなどのアフリカ諸国もぐんぐんシェアを伸ばしています。しかしマレーシアやカタールとの供給契約は長期契約で硬直的ですので、今後は新しい供給元を探す必要があります。
モザンビークの天然ガス開発が注目されている
今後のLNGの大型供給国として脚光を浴びているのが、アフリカ大陸のモザンビークです。天然ガスの埋蔵量は、最大で60兆立方フィートと言われています。上のグラフでいえば、将来はインドネシアくらいの存在になる可能性を秘めているわけです。
この国の天然ガス田は沖合50kmのところにあり、比較的陸地に近いので開発がしやすい特徴があります。またモジュール方式で6段階に分けてLNG輸出施設を順次追加していけるので、プロジェクトのプランが立てやすくなっています。
またモザンビークはアフリカ大陸東岸に位置しており、ペルシャ湾のホルムズ海峡などの緊張区域を通らなくても日本へ輸出できるのもメリットの1つです。
ガス田はいつかの鉱区に分けられ、世界の石油・天然ガス会社が開発に乗り出しています。そのうち「エリア1」と呼ばれる鉱区は米国のアナダルコ・ペトロリウム(ティッカー:APC)が36.5%、三井物産(8031)が20%、ENH(モザンビーク国営石油会社)が15%の権益を持っています。「エリア1」の埋蔵量は17~30兆立方フィートです。
先週金曜日(12月21日)にアナダルコ・ペトロリウムは別の鉱区である「エリア4」を開発しているイタリアのENI(炭化水素公社)と1兆円かけてLNG基地を建設する意向を発表しました。その一環で、フロント・エンド・エンジニアリング&デザイン(FEED)と呼ばれる基本設計を3つの企業連合に発注しました。それらは、
1)日揮(1963)、フルアー(ティッカー:FLR)連合
2)千代田化工建設(6366)、シカゴ・ブリッジ&アイアン(ティッカー:CBI)連合
3)ベクテル(非上場)
です。請負業者の選定は2013年中、最初の生産開始は2018年を予定しています。どの企業連合が選定されるのか、注目されます。
※アナダルコ・ペトロリウムは米国の石油ガス生産会社、フルアー、シカゴ・ブリッジ&アイアン、ベクテルの3社は米国の建設・エンジニアリング企業
(編集部注:日本のSBI証券と楽天証券で取引可能な3社のティッカーは以下のとおり。アナダルコ・ペトロリウム:APC、フルアー:FLR、シカゴ・ブリッジ&アイアン:CBI。またマネックス証券では、アナダルコ・ペトロリウム:APC、フルアー:FLRの2社の取引が可能。)
※「世界投資へのパスポート」次回の更新は、2013年1月7日の予定です。
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