もともと販売代理店は
売上の半分を持っていく
どんな商品でも、購入してもらうには宣伝、広告活動が欠かせない。それら宣伝、広告活動には費用がかかり、通常は広告代理店に費用として払う。また、商品を販売するに当たっては販売代理店を通すこともある。その場合は、販売代理店に売り上げの半分ほどを持って行かれることが多い。
ふるさと納税の場合、特産品を提供している農家(企業)は、この通常の商品販売で言うところの宣伝、広告機能と、販売代理機能の二つを担っていると考えられる。
この特産品があるからこそ、ふるさと納税を実施したという人が多い現状からは、その特産品がなければ、それらの人たちは別の自治体に寄付をしてしまっているはずだ。したがって、特産品を提供する農家(企業)は、自治体の代わりにふるさと納税をアピール、販売をし、1万円で売れたら販売代理手数料として5000円をもらっている、そのように考えることができる。
ふるさと納税のうち、半分を持って行かれるのではなく、彼ら特産品提供者の存在がなければ、そもそも1万円のふるさと納税はその自治体にやってこないのだ。
一方で、哲学として特産品を提供しない自治体もある。本来の趣旨は寄付金であるのだから、お礼の品(特産品)を提供する必要はない、あるいは、その行為はおかしいという考えである。その考えは、それはそれで正しいと思う。しかし、ふるさと納税に限らず、地方交付税にしても、自治体は、税収が限られた中での税金の奪い合い競争を日々繰り広げていると考えられる。手数料を払って優先レーンを行くのか、手数料を無駄な経費あるいはモラルの低下と考えるか、これは各自治体の判断ということになる。
ふるさと納税で
マクロでは税収は増える
ふるさと納税でもう一つ言われる課題は、ふるさと納税は単なる納税地の付け替えであって、ゼロサムだから意味が無いという指摘である。
しかし、これは正確ではない。
というのは、ふるさと納税では2000円は寄付金控除の対象外となるため、その分、納税者が支払う納税額の総額は増える。したがって、マクロで見るとその分の税収はアップするわけだ。また、確定申告が面倒で税金の控除を受けない人もいるので、その分も税収アップにつながる(ふるさと納税をしても確定申告をしない人は結構多い)。
もっとも、ふるさと納税の半分は、先に見たように特産品の提供者に流れていくので、税収がマクロでアップしても、自治体に純粋に残る真水部分という比較ではマクロでも減るかもしれない。しかし、全体ではより大きなお金となって動いていることは分かるであろう。
ふるさと納税が従来の補助金と異なるのは、
地域経済への波及効果は大きいこと
いかに雇用を生み出すか、これが地方経済にとっては最重要課題である。
私も2010年から2014年まで札幌に住んでいたが、東京から北海道に移って一番感じたのは雇用の重要性であった。行政のほぼすべての政策が、最終的には何らかの形での雇用対策につながっている、あるいは少なくとも意識されている。
北海道の冷涼な気候を生かして、大型のデータセンターを誘致すると、建設の仕事などが発生するため一時的な投資効果はある。しかし、ひとたび完成すれば、運営には大人数を必要としないため、継続的な雇用はない。アベノミクスの効果が地方であまり感じられないというのも、この雇用面でのプラス効果があまりないことが大きい。
ふるさと納税による特産品の需要が増えれば、生産量を増やす必要があるため、雇用増加につながる。追加で設備が必要ということになれば、設備投資にもつながる。
これまでも、地方での雇用対策には補助金という形で税金が使われてきたが、補助金が切れると雇用を維持できないケースがままある。雇用対策補助金の期間中に企業側は自らのチカラだけで雇用を維持できるほどに収益力を高めないといけないのだが、それが容易ではない。
ふるさと納税の場合は、全国的に見ても商品力の高い特産品を提供する企業で雇用を生み出すこととなるため、その雇用維持効果は高い。
第2次安倍政権においては、地方経済の活性化のために、地方の特産品を増やすことがうたわれているが、わざわざ政府がおせっかい的に躍起になってバラマキをしなくとも、このふるさと納税がうまく回っていれば、全国的に競争力のある特産品は自ずと作られてくる。そして雇用も生み出す。さらに最終的には、各地域を訪問するふるさと納税者が増えれば、交流人口の増加からの経済効果が生まれるであろう。
実際、以前取り上げた上士幌町(ふるさと納税での資金調達額、日本トップクラスの北海道上士幌町は他の市町村となにが違っているのか?)では、ふるさと納税者との交流イベントを2月に実施する予定だが、定員1000人に対して3500人を超える申し込みがあったとのことで、ふるさと納税者の納税先自治体との「交流意欲」の高さがうかがえる。
ふるさと納税がこれほど盛り上がる理由、それはふるさと納税が唯一、納税者が自分の支払う税金の支払先、使い道を指定できることであろう。
それは、日々、自分の払った税金がどこに使われているか分からない、無駄に使われているのではないかという疑念、税金の恩恵を受けている実感が乏しいなど、税金に対する不信感が根底にあると思われる。ふるさと納税をきっかけとして、税金の使い道についての意識が高まれば、ふるさと納税はより健全な発展を遂げていくはずだ。
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