4月28日の日銀政策決定会合では「異次元」量的緩和やマイナス金利を含む金融政策が、すべて「現状維持」となりました。事前に追加緩和・消費増税再延期の期待が高まっていたこともあり、発表直後から市場は急激に株安・円高に振れました。
日経平均株価は4月28日午前の高値の1万7572円から大引けには1万6666円まで下落、さらに日付が変わり29日のCME日経平均先物(円建て)で1万5880円まで値を下げました。円相場は同じく28日午前に1ドル=111.88円まで円安になっていたのが、29日NY終値で1ドル=106.38円まで円高が進んでいます。
これから日本株は為替は日本経済はどうなってしまうのでしょうか!? 金融・経済のプロも頼りにする刺激的な金融メルマガ「闇株新聞プレミアム」が、独自の切り口から今後の方向性を読み解きます!
G20で追加緩和を示唆した黒田総裁が
2週間で方針転換した舞台裏とは!?
日銀政策決定会合で「現状維持」が発表されてから、急激な株安・円高が進んでいます。市場は完全に「追加緩和があるもの」として盛り上がっていました。それは4月14~15日のG20で黒田総裁が追加緩和について「ほぼ断定的」に示唆していたからです。
何処の国でも中央銀行総裁が国際会議の場で金融政策について「ほぼ断定的」に発言したならば、だいたいその通りに実施するもので(そうでないと中央銀行がマーケットの信頼を失ってしまうから)、黒田総裁もその腹積もりであったはずです。
なぜ黒田総裁はわずか2週間ほどの間に追加緩和→現状維持としたのでしょう? 本紙が得ている断片的な情報から推論するとこうなります。
まず前提として、以下のことを頭に入れておいて下さい。「闇株新聞プレミアム」では既に何度も解説しているところですが、改めてまとめておきます。
・旧大蔵省は国益より「省益」を優先する最強の官僚組織
・彼らの目下最大の省益は「消費増税」、あらゆる手段で実現を画策中
・黒田総裁は財務省出身、旧大蔵省の省益に沿った金融政策を取る
・「黒田バズーカ」は消費増税を実現する政権への「援護射撃」だった
4月8日付本連載「安倍政権は消費増税再延期で衆参同日選挙を決意!? 首相vs旧大蔵省の壮絶なバトルが始まる!」で述べたように、安倍首相は予定通りの消費税10%実施を迫る旧大蔵省勢力に対抗するため衆参同日選挙で国民の支持を得て、消費増税延期を断行する決意でした(消費増税再延期支持者は、政権内でも与党内でも少数派です)。
しかし、4月14日に熊本地震が発生したことで、衆参同日選挙ができる可能性は事実上なくなってしまいました。そうなると自動的に2017年4月からの消費増税実施が確定的になり、さらに万全を期す(日本経済は回復しており増税が実施できる環境が整ったという数値を作る)ために、先日の政策決定会合で追加緩和が行われる手筈になっていたはずです。
では、追加緩和が見送られ「現状維持」となったのはなぜか!? 消費増税を再延期するほとんど唯一の方策(衆参同日選挙)を封じられた安倍首相が、旧大蔵省との間で「消費増税を1年半~2年間再延期する」方向で手打ちをした(あるいはその方向で調整が進んでいる)可能性があります。
再延期を呑む見返りとしては「軽減税率を未来永劫に葬り去る」「再延期後の消費増税実施を何らかの形で担保する」「消費税率は10%で打ち止めではないことをどこかに盛り込ませる」などが考えられます。旧大蔵官僚からすれば、目先の1年半~2年を我慢しても将来までを含めた省益=増税を確保できれば良いという判断です。
恐らく7月の参議院選挙を睨み、どこかで2017年4月の消費増税再延期が発表される可能性があり、これは少なくとも当面の株式市場にはプラス材料となるでしょう。したがって、日本経済に弊害しかない追加緩和(とくにマイナス金利幅拡大)も当面は見送られることになります。
なぜ追加緩和が日本経済にとって弊害しかないのか――簡単に言えば「世界的に経済成長が減速するなかで総需要拡大策である量的緩和には効果が期待できない」「さらにマイナス金利政策を加えることにより長短金利が劇的に下がり日本経済の潜在成長率をマイナスにしてしまうから」です。
そもそも潜在成長率まで引き下げる金融政策を強行しておきながら「2%の物価上昇を実現させる」と主張するのは全くの矛盾であり、支離滅裂と言わざるを得ません。
結局どうなる?株式市場と円相場
闇株新聞が見通す相場のこれから
日経平均と円相場の適正水準とは、民主党政権と白川日銀総裁時代の行き過ぎた円高・株安が、アベノミクスと黒田総裁の「異次元」量的緩和で修正され、さらに行き過ぎた円安・株高を引き起こした2014年10月の追加緩和に至るまでの2014年1~8月の、日経平均1万3900~1万5700円(中間値1万4800円)、1ドル101~105円(中間値103円)あたりと考えます。
これは国内外の株式・中長期投資の動向も考慮に入れた「適正水準」であり、実際にはこれにその時々の材料を加味して「現時点における適正水準」を考えなければいけません。
<日経平均株価>
・2013年以降、積極的な金融緩和→円安→楽観的な業績予想→株高の構図
・ここへきて世界的な経済減速が認識され始めた(減益予想企業の増加)
・とはいえ資産の減損も今期業績予想もまだまだ楽観的で認識が不十分
・経済減速の業績予想への折り込みが世界的な傾向となれば見通しは暗い
・実態の折り込みに加え、株式市場への過剰な期待感の剥落の影響に警戒
・やや悪材料が多い。消費増税再延期の発表はプラスだがタイミング次第
<為替相場>
・マイナス金利導入でますます運用難となった国内資金の海外流出が継続
・中間値に上記の材料を加味しても1ドル=107円台後半は適正水準だった
・米国財務省に「為替監視リスト」に入れられた影響をどの程度加味するか
・日本の官民投資家が気にせず対外投資を続けるなら当面気にせずOK
・現時点での1ドル=106円台は「行き過ぎた円高」と考えてよさそう
日経平均と円相場は「追加緩和で株高・円安になる」と“はしゃいでいた”部分が大きかったので、多少の調整があるのは当然。もし、今回追加緩和、それも量的緩和拡大とマイナス金利幅拡大のセットが強行されていたなら、伸びきった株高・円安が近いうちに大反転していたはずです。
日本経済は辛うじて延命できる「かすかな期待」が出てきたところです。“はしゃいでいた”部分の剥落が早ければその後の日経平均はかえって期待でき、円相場もさらなる急騰に見舞われる事態は避けられるかもしれません。今後の動向を引き続き、見守っていきましょう。
今回の本連載「週刊・闇株新聞」は、「闇株新聞プレミアム5月2日号・速達版」からほんの一部を抜粋の上、再編集したものです。原文ではさらに詳細な解説や為替(米国財務省の「為替監視リスト」に入れられた影響)、資源(産油国の財政事情から需給の判断まで)について、ファンダメンタル/テクニカルの両面から読み解き、具体的なレンジの考え方まで言及しています。
メルマガを継続してお読みいただくことで、報道や実際の値動きに接し「なぜそうなっているのか」が腑に落ち「これからどうなるか」が御自身で予想できるようになるでしょう。目先の値動きに振り回されず、大局を見て市場の先行きを読むために――金融メルマガ「闇株新聞プレミアム」を是非お読みいただき、相場の荒波を乗り切る術としていただければ幸いです。
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