株ニュースの新解釈
【第73回】 2012年4月27日 保田 隆明

ヤクルトの敵対的買収報道は意図的なリークの可能性も。投資家はヤクルト株に飛びつくな!

スズキ-VWに似た構図
敵対的買収はできない

 ヤクルトには買収防衛策は導入されていない。ゆえに、ダノンは比較的敵対的買収を仕掛けやすい状況にはある。

 しかし、敵対的買収を仕掛けてホワイトナイトが登場すると、買収金額が高くつくだけでなく、場合によってはホワイトナイトにヤクルトを取られてしまう可能性もある。ホワイトナイトに取られても、保有しているヤクルト株式を高値で売却できればいいじゃないかという意見があるかもしれないが、そこはマネーゲームとは異なり、ダノンにとってヤクルトは戦略的にどうしても欲しい企業である。

 したがって、やすやすと手放すわけにはいかない。敵対的買収は手っ取り早いが、ダノンにとってのリスクも非常に大きく、これは抜くに抜けない刀だと考えるべきである。それはスズキ-VW(フォルクスワーゲン)の事例からもうかがえる。

 軽自動車のスズキは、昨年、同社株の19.9%を保有するVWに戦略的提携の破断を申し入れ、株式の売却を迫った。しかし、VWはそれには応じず、硬直状態が続いている。自主独立を維持したいスズキの状況は、ヤクルトと似ている。

 スズキのケースでは、昨年提携解消の動きとなった時点では、スズキの株価はVWが株式を取得した時よりも下がっていたこともあり、VWは株を売るという選択肢は取れなかったはずである。むしろ株価が下がっているならば、スズキに対して敵対的買収を仕掛けるという選択肢も考えられたであろう。

 しかし、そういう行動には出ていない。その理由のひとつは、当初は非常に友好的であった関係(少なくとも表面上は)に対して、たった2年弱で敵対的TOBに踏み切るわけにいかないということが考えられる。そして、一番大きな理由としては、まだ日本では敵対的買収の成功事例がほとんど存在しないことであろう。

 ダノン、VWともに、事業戦略上どうしても手放したくない株式だからこそ、敵対的買収に打って出にくいという状況なのである。