現在の米国株式市場は、
ドットコム・ブームの真っ只中の状況に酷似
現在の米国株式を取り巻く市場環境は、ドットコム・ブームの真っ只中だった1998年頃と酷似しています。
当時アメリカは、インターネットの勃興を背景として長い景気拡大局面を享受していました。世界の中で抜きん出て経済が好調だったため、「パックス・アメリカーナ(アメリカの繁栄)」という言葉が流行語になりました。
現在も、中国経済や欧州経済に陰りが見える中、アメリカだけは安定感があります。
もう一つの類似点として、長短金利差の状態が当時とそっくりです。
現在の長短金利差は「0」に一瞬タッチした後、再び拡大しつつあります。
1998年9月にも同様のことが起こりました。あの時も長短金利差が一瞬「0」になった後、再び拡大し、2000年7月に再び長短金利差がマイナスになるまで景気は堅調でした。結局、株式市場が大天井をつけたのは1998年9月の長短金利差「0」から起算して23カ月後、そして全米経済研究所が景気後退入りを宣言したのは30カ月後でした。
つまり、長短金利差が一瞬「0」になった以降、まるまる2年も上昇相場、ならびに景気拡大は続いたのです。
今回の景気拡大局面は、リーマンショック後から始まっているので、すでに118カ月となっています。つまり、景気のサイクル的には前半や中盤ではなく、終盤に近いということです。
ただ、終盤に近いというのは、すぐに景気が暗転することを意味しするわけではありません。このような「長いブーム」が、しつこく続く可能性が高いのです。
市場の主役は、GAFAのような「消費者相手のビジネス」から、
「事業会社相手のビジネス」へ
景気拡大局面がしばらく続くとしても、成長のけん引役は自ずと主役交代してきています。具体的には、長い間ブームを引っ張ってきたGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)の成長にはさすがに陰りが見えてきています。
たとえば、アマゾンの売上高成長率は下のチャートのように鈍化してきています。
同様に、アップルのiPhoneの売れ行きも伸び悩んでいます。
考えてみれば、GAFAはいずれも消費者を主な商売相手にした商売です。つまり、消費者向けインターネット・サービスは、もうかなり浸透し尽くしたと言えるのです。
このため「未だガンガン成長している分野」を探すのは以前より格段に難しくなっています。しかい、そういう分野が無いわけではありません。たとえば、事業会社を相手にしたソフトウェアの商売は好調です。実際、ビジネス・ソフトウェア分野では、下表のように急成長企業が多く見られます。
| ■ビジネス・ソフトウェア分野の注目企業 | ||||||
| 銘柄名(コード) | 事業内容 | 最新株価 | ||||
| オクタ(OKTA) | クラウドを通じたID管理サービス | |||||
| トゥイリオ(TWLO) | 電話・テキストメッセージ作成プログラム | |||||
| ゼットスケーラー(ZS) | クラウドを通じたウェブ・セキュリティー | |||||
| トレードデスク(TTD) | プログラマティック・ウェブ広告買い付けソフト | |||||
| モンゴDB(MDB) | クラウドベースのドキュメント指向データベース | |||||
| プルーラルサイト(PS) | ITエンジニアの継続教育プログラム | |||||
| ドーモ(DOMO) | ビジネス・インテリジェンス用ツール | |||||
これらのグループが、GAFAに代わって今後の相場のけん引役になると思われます。ひとつずつ紹介していきましょう。
【オクタ】
クラウドを通じたID管理サービス
オクタは、クラウドを通じてID管理をする企業です。現代のビジネスマンは、オフィスや出先からスマホを通じてセールスフォース、スラックなど、いろいろなアプリにアクセスして仕事の能率を上げます。
その際、いちいち本人確認するのが大変ですし、プロジェクトに応じては自社の社員であってもアクセス制限を行いたい場合も出てきます。そのようなプロジェクトのライフサイクルに合わせたアクセス管理を可能にするのが、オクタのアイデンティティー・クラウドです。
このサービスは、サブスクリプション(定期購読)型であるため将来の売上高が読みやすいです。
【トゥイリオ】
認証用アクセスコードの自動送信プログラムを販売
トゥイリオは、2重認証などを行う際、ユーザーのスマホにアクセスコードを自動送信するソフトウェアを提供しています。トゥイリオのソフトウェアを使うと、デベロッパーは簡単に電話やテキストメッセージを送受信するプログラムを作成できます。
自動送信されたメッセージのボリュームに応じて課金されるため、一度採用されると後は左団扇でどんどん追加の売り上げが発生する美味しいビジネス・モデルとなっています。
【ゼットスケーラー】
クラウドを通じてウェブ・セキュリティーを提供
ゼットスケーラーは、クラウドを通じてウェブ・セキュリティーを提供する企業です。今日の企業は、社内にデータセンターを設けて自社でハードウェアを抱え込むことをしません。そのことは、従来のファイアウォールを中心としたネットワーク・セキュリティー体制がどんどん意味をなさなくなってきていることを意味します。
社員が社外のクラウド上のアプリにアクセスして仕事を進める以上、ウェブ・セキュリティーもクラウドのレベルで提供されるべきなのです。
ゼットスケーラーは、クラウド・セキュリティーのサービスをサブスクリプション・モデルで提供しています。オクタ同様、将来の売上数字が読みやすいビジネスモデルと言えます。
【トレードデスク】
プログラマティック広告を効率化するプラットフォーム
トレードデスクは、ネット広告のバイヤーがデータ分析に基づいて最も効率的なキャンペーンを展開できるよう、プログラマティックにウェブ広告を自動買い付けするセルフサービス型のプラットフォームを、クラウドを通じて提供しています。
トレードデスクのサービスは、プログラマティック市場の2倍の速度で急成長しています。
【モンゴDB】
ドキュメント型のデータベースをクラウドで提供
モンゴDBは、ドキュメント指向のデータベースを、クラウドを通じて提供しています。その特徴は、取り扱いがシンプルで、しかも無限にスケールできる点にあります。
データベースのビジネスは、オラクルのような既存の企業が居座っており、最後までクラウドへの移行が遅れていました。しかし、いま堰を切ったようにクラウドへの移行が起ころうとしています。
【プルーラルサイト】
ITエンジニアを対象とした継続教育サービス
プルーラルサイトは、ITエンジニアの継続教育を行うサイトです。ソフトウェアの進歩は日進月歩であり、いかに優良企業のトップ・エンジニアであってもすべての新分野でエキスパートになることは不可能です。
したがって、有能で、既に高いスキルを持っているエンジニアが、次々に新しいノウハウを吸収してゆくためのオンラインコースが必要になっているのです。それを提供しているのがプルーラルサイトです。
プルーラルサイトは、「プルーラルサイトIQ」という習熟度スコアを提供しており、英会話のTOEICのようにスキルを数値化することが出来ます。
【※プルーラルサイトの関連記事はこちら!】
⇒プルーラルサイトは「ITエンジニアへの継続教育」を行う注目の企業! 企業のニーズに応え、最先端のカリキュラムをサブスクリプション・モデルで提供!
【ドーモ】
さまざまな経営情報を一カ所に集約して、スマホで閲覧可能に
ドーモは、社内のさまざまな経営情報、ビジネス・データを一カ所に集約し、それにスマホなどからアクセスすることで分析、レポート、経営判断をしやすくするサービスを提供しています。そのようなサービスのことを、ビジネス・インテリジェンスといいます。
このような経営に関する情報は、以前は社長などごく一部の経営トップだけが見ることができました。しかし近年は、そうした情報を中間管理職などともシェアすることで、組織としてより良い経営判断が迅速に下せるよう機動力を高める企業が増えてきています。
【今週のまとめ】
GAFAに代わって、今後市場の主役になりうる企業を
今のうちからチェックしておこう!
米国の景気拡大は後半戦に入っています。最近、長短金利が「0」になったというニュースがありましたが、過去の経験では、その後、2年くらいは相場も景気も持続することが知られています。だからあまり心配には及びません。
ただ相場の主役はこれまでのGAFAからビジネス・ソフトウェア企業へと移ってゆくと思われます。
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