『マンガ恋する株式相場!』の作者で、ホイチョイ・プロダクションズ代表の馬場康夫さんが「日本人に投資は必須」と考える理由とは?
ダイヤモンド・ザイでは、毎号異なるゲストに「お金との向き合い方」について聞くインタビュー記事「おカネの本音!」を掲載中。ダイヤモンド・ザイ9月号のゲストは、ホイチョイ・プロダクションズ代表の馬場康夫さん。
バブル時代からヒット企画や映画を手掛けてきた馬場さん。実は、株式相場を20年近く取材し続けており、投資への造詣は深い。今回は、そんな馬場さんが『マンガ恋する株式相場!』に込めた思いや、おカネを使ううえで自身が心がけていることなどを語ってもらった。
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『マンガ恋する株式相場』では、フツーの投資本では書けない
投資の「本音」や、相場の裏側にあるものを描いている!
──馬場さんの原作によるダイヤモンド・ザイの人気連載『マンガ恋する株式相場!』の単行本第2弾が発売されました。
馬場 今回も、株式投資の基礎知識から最新の時事ネタまで盛り込んでいます。マンガでこれだけの情報を盛り込んだ株式入門書は、おそらくほかにないでしょう。
各分野の専門家に取材して、フツーの投資本では書けない、投資の「本音」を描きました。株式相場では単純に見えるものでも裏があって、それを学ぶことも投資で儲ける秘訣だと思います。
もちろん、面白く読んでもらえるように、見せ方の工夫や演出も凝らしています。この本を読めば、楽しみながら株式投資の知識が身に付くこと請け合いです。
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──馬場さんは制作会社ホイチョイ・プロダクションズの代表として、マンガや書籍などを1980年代から手がけておられますよね。しかも、最初はサラリーマンと“二足のわらじ”を履いていたとうかがっていますが。
馬場 広告マンの日常をコミカルに描いた『気まぐれコンセプト』を「ビックコミックスピリッツ」で連載開始したのが1981年。日立製作所に入社して4年目でした。当時、日立の宣伝部に勤めていたので、会社に出入りする広告マンのユニークな生態はよく観察していた。それを面白おかしく描いてみたい、と思ったのがきっかけです。
──いまと違って、サラリーマンの副業は認められなかった時代ですよね。社内から相当な非難や反発を受けたのではありませんか?
馬場 それはもう(笑)。上司には滅茶苦茶怒られましたし、広告代理店を通じて、出版社に「連載をやめさせろ」と圧力をかけられたりもしました。でも、編集長がとても気骨のある方で「俺が面白いと思っている間は、絶対にやめさせない」と跳ねのけてくれたんです。おかげで長期連載につながり、いままで仕事を続けることができました。
上司が渋々“二足のわらじ”を認めたのは、僕のおじいちゃんが日立の創立者の1人だったことも大きいかもしれませんね。祖父の馬場粂夫は、日立製作所の創業当初の研究開発を支えた技術者で、後に専務取締役も務めています。僕が日立に入社できたのも、おじいちゃんのコネです。
なにしろ、入社した1977年は第2次オイルショックの直前で、空前の就職難でしたからね。当時約10万人いた日立グループ全体で、その年の新入社員はたった400人前後だったのですから。東大、京大卒の優秀な人材を押しのけて入社できたというのは、コネ以外に考えられませんよね(笑)。
小学校から大学まで成蹊に通い、安倍晋三元首相とも同窓生!
周囲の環境に影響を受け、おカネに執着しない性格に
──ご出身は成蹊大学でしたね。ちなみに、昨年亡くなった安倍晋三元首相は、幼稚園から大学までを一緒に過ごした親友の1人とか。
馬場 小・中・高・大と一貫して成蹊でした。成蹊には、ものすごい金持ちの子どもたちも通っていて、なかには戦国時代から東京に広い土地を持っている家の子もいましたね。時代とともに大部分は売り払ったけれど、かつては東京のとある区の大半を持っていた、なんていうスゴイ家の子が。
でも、そんな家の子に限って、乗っているクルマは軽自動車だったり原付バイクだったりと、笑っちゃうくらいケチなんですよ(笑)。先祖が代々築き上げてくれた資産を、自分たちの代で使い果たしてしまっては申し訳ないという気持ちが、どこかにあるんでしょうね。
成蹊小学校のときに、僕や安倍晋三君の担任をしてくださった野村純三先生も、質素倹約の大切さは、常に教えてくれました。そうした先生の教えや、周りの友達を見てきたせいか、僕もおカネに執着しない性格に育ったように思いますね。
──実際、おカネはあまり使わないのですか?
馬場 モノにおカネをかけることは、ほとんどありませんね。こういう仕事をしていると、高級ブランド品をいろいろ持っているのではないかと思われがちですが、時計はスウォッチですし、財布も東急ハンズで1万円ぐらいで買ったものです。
クルマだって、いまでこそ240万円のフィアットに乗っていますが、若いときはカローラ、サニー、ファミリアといった大衆車ばかり乗っていました。なにしろ日立の給料は安かったですからね(笑)。
──でも、映画や書籍で社会現象になるほどヒットした作品もあります。かなり稼いだのでは?
馬場 もちろん、本やDVD化された映画の印税収入はそれなりに入ってくるのですが、がっぽり儲かるというほどではありません。じつは、日立を辞めて『私をスキーに連れてって』を監督して以来、5本の映画を撮っているのですが、いずれも自分でおカネは出していないんです。
出資をして映画が当たれば、出資比率に応じた分け前が得られるけれど、外れると、逆に損失を被ることになってしまいます。それは絶対に避けたいので、おカネは出さず、監督業に徹してきました。
『私をスキーに連れてって』を撮った後、尊敬する伊丹十三監督から「自分で出資しないと大儲けできないぞ」と言われました。その後、伊丹さんの作品の興行収入が振るわないことがあって、苦しんでおられた姿を思い返すと、言われたとおりにしなくてよかったとも思います。伊丹作品は大好きなんですけどね。
いずれにしても、常にローリスク・ローリターンを心掛けているので、世間で見られているほど儲かる商売じゃないんですよ。
「おカネさえあれば何でも手に入る」という
勘違いを世の中に広めてしまったことは、バブルの罪!
──モノにはあまりおカネをかけないということですが、それ以外にはおカネをかけられるのですか?
馬場 食事や観劇、旅行といった体験には、惜しみなくおカネを注ぎ込んできました。コロナ前までは、毎年のようにニューヨークのブロードウェイや、ロンドンのウエストエンドで演劇を観ていました。それに、食事を楽しむためにマカオにもよく行きましたね。
マカオは、レストランジャーナリストの犬養裕美子さんに紹介されて行くようになったのですが、ポルトガル料理と広東料理との融合によって、とてつもなくおいしい料理が食べられるんです。体験におカネをかけるのは、もちろん純粋に楽しいからですが、クリエイターとしての引き出しを増やす目的もあります。
いろいろな経験を引き出しの中にストックしておくと、そのうち、まったく関連性がないと思っていた「何か」と「何か」が結び付く。それが、新しい作品づくりのきっかけになるのです。ストックを少しでも多くするため、普段の仕事でも、リサーチには相当おカネをかけていますよ。
たとえば、女性を口説くためのレストランガイド『東京いい店』(スマートフォンアプリ)は、iモードで情報提供していた時代から25年ぐらいやっていますが、課金収入の5倍ぐらいはリサーチにおカネを使っているはずです。
──ストックを多くすることは、おカネを蓄えること以上に大切だと考えているわけですね。
馬場 バブルの前後はおカネはなくても好奇心が旺盛な若者がいたので、何でも見聞きしようという風潮があった。一方で、いまのY世代(25~40歳くらい)の人たちは「わからないことはスマホで調べればいい」という感じで、知識をストックしようというモチベーションは希薄です。
学ぶ意欲が失われ、「学び方」もわからなくなったことが、バブル崩壊後30年以上に及んでいる日本経済低迷の一因でしょう。それにY世代以下の人々から見たバブル世代の“醜さ”が、上の世代から学ぶ意欲を失わせたのかもしれない。
バブルには功罪があったと思いますが、最大の罪は「おカネを使えば何でも手に入る」という勘違いを世の中に広めてしまったこと。勘違いした醜い行動を見て、「あんなふうにはなりたくない」と思われてしまったのでしょう。
──『恋する株式相場!』の単行本第2弾にも、日本経済が凋落した理由が詳しく描かれていますね。
馬場 日本経済がどれほどダメになっているのかということは、この本を読んでもらえればよくわかるはず。国がダメになってしまった以上、これから生きていくためには自助努力しかありません。いまから、しっかり投資を行っておくことです。
本にも描きましたが、これから株式投資をするのであれば、成長著しいアジアに進出して稼いでいる日本企業の株や、世界株全体に投資できる投資信託などを買うのがいいと思います。
日本の実質賃金は全然上がらず、韓国にも追い抜かれてしまったけど、アジアの国々は賃金がどんどん上昇している。食品や日用品、化粧品などの需要も拡大するはずなので、現地でそんな商売をしている日本企業には注目しています。
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