通常、投資で得た運用益には約20%の税金がかかりますが、それがずっとゼロになるのが「新NISA」です。2024年から制度が大幅に改良されて注目を集めています。
ただ、投資は「必ず儲かる」というものではなく、損することもあります。何も考えずに投資を始めても痛い目にあったり、今後訪れる下落相場で焦って売ったりと、お金を増やすために投資を始めたのに減らしてばかりという事態になりかねません。
そこで今回は、新NISAで投資デビューする人に知ってほしい「投資の3原則」をご紹介します。
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そもそも、なぜ「投資」が必要なのか?
預貯金だけでは“インフレ”に対応できないから!
「投資をすれば必ず儲かる」ならば、誰もが投資をするでしょう。でも必ず儲かるということはありません。損することもあります。「値動きによりお金を失う可能性があるから」投資を始められないという人もいるでしょう。
ただ、覚えておいていただきたいのは「投資をせずに預貯金をしているだけでも、お金は減る」ということです。
今はデフレではなく、インフレの時代です。2023年のインフレ率(消費者物価指数(生鮮食品除く))は前年比3.1%。今後も同水準で上昇し続ける可能性は低いとは思いますが、年1〜2%のインフレが継続する可能性は極めて高いと考えられます。というのも、「物価上昇→賃金上昇」のサイクルになるまで、日銀は金融緩和を止めないと意見表明しているからです。
預貯金はインフレリスクに弱い資産です。2024年4月1日時点の定期預金の金利は最も高い水準で0.35〜0.4%となっています。金利よりもインフレ率のほうが高いので、お金の価値はどんどん目減りしていきます。
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一方、投資をすれば、お金が減る可能性もありますが、増える可能性もあります。できるだけお金を減らすリスクを抑えながら、インフレに負けずにお金を増やせたら……。それには、投資の3原則と言われる「長期投資」「積立投資」「分散投資」の実践がおすすめです。「長期投資」「積立投資」「分散投資」の3原則をすべて実践することで、お金が減るリスクを抑えながら、堅実に増やすことを目指せます。
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では、ここからは「長期投資」「積立投資」「分散投資」の3原則とは何か、一つずつ解説していきましょう。
「世界人口の増大→今後も世界経済拡大」なら
早いタイミングで“一括投資”するのが正解
実のところ投資をするならば、時間をかけて積立投資するよりも、とにかく早く一括投資(一度にまとめて投資)したほうがいいと言えます。なぜならば、市場は経済成長に合わせて値上がりするものだからです。
日本の人口は減少しているものの、世界的に見れば人口は増加しています。2023年の世界人口は80億人を突破(国連人口基金「世界人口白書2023」)、2058年には100億人になると推計されています。人口が増えれば、消費が増え、その消費を支えるために生産も増え、経済は拡大していくでしょう。IMF「世界経済見通し」でも、世界全体の経済成長率はおおむね年3〜4%になると推計しています。
20年、30年、40年先……といった将来を考えると、世界全体で見れば、今よりも経済が大きく拡大し、株価も大きく上昇している可能性が高いでしょう。
投資に「絶対」はありませんが、20年、30年、40年先、現在の株価よりも上がっている可能性が非常に高いのであれば、今すぐに投資を始めるのが正解なのです。ウォール・ストリート・ジャーナルなどにも寄稿する全米屈指のデータサイエンティストが書いて日米でベストセラーとなっている『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』(ニック・マジューリ著)でも、できるだけ早く投資することが最適だという話が紹介されています。
ただ、お金を一度にまとめて投資する「一括投資」は精神的にはよくない投資方法です。数十年後という長いスパンで値上がりすることが見込まれる銘柄を購入したとしても、投資した当初に値下がりしたり暴落したりした場合には、「本当に将来的に値上がりするだろうか」と不安になることでしょう。
こうした不安を解消するには「積立投資」が向いています。
投資の3原則①【積立投資】
感情に左右されずに下落局面も味方にしながら資産形成できる!
「積立投資」とは、毎月1万円など、定期的に一定額ずつ継続して投資をすることです。株や投資信託などは常に価格(価額)が動いています。上がるときもあれば下がるときもありますが、積立投資ならば、そうした上がり下がりをあまり気にせず、淡々と投資ができます。
しかも、淡々と投資するだけなのに、自動的に価格(価額)が安いときには多く購入し、価格(価額)が高いときには少ししか購入しないことになるため、平均購入単価を下げる「ドル・コスト平均法」の効果も得られます。
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たとえば、投資信託を月1万円ずつ「積立投資」した場合の例を見てみましょう。投資信託が上の図のように値動きした場合、7000円に値下がりした月には多くの口数を購入できたので、基準価額(投資信託の値段)が1万円に戻っていないにもかかわらず、すでに1857円の利益が出ています。
一方で、最初に3万円分を「一括投資」した場合は、依然3000円の損失が出ている状態です。基準価額が1万円まで戻ってはじめてプラスマイナスゼロとなります。同じ投資信託を同じ投資資金で買っているのに「積立投資」と「一括投資」では損益分岐点が違ってきます。
タイミングを見計らって投資しようとすると、感情に邪魔されます。「感情は投資の最大の敵」とよく言われますが、感情に左右されずに、下落局面も味方にしながら資産形成できるのが積立投資の大きなメリットです。
参考までに、下落相場から積立投資を始めるとどうなるのかを過去の相場で確認しておきます。100年に1度の大暴落といわれた「リーマンショック」は2008年9月に起こりました。その2008年9月から2023年1月まで毎月1万円ずつ、米国株価指数「S&P500」と連動する投資信託に投資した場合の資産推移は次の通りです。
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毎月1万円ずつ投資しているので、積立元本は185万円。それに対して、資産総額は約707万円と4倍近く増えています。S&P500は一直線で右肩上がりになっているわけではなく、所々、大きく下げている時期が見受けられます。しかし、ドル・コスト平均法で、下がっているときに多く買い付けていることで、平均購入単価を下げ、結果として着実に資産を築けていることがわかります。
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積立投資は下落相場や暴落をチャンスに変えることができる投資方法なのです。
投資の3原則②【分散投資】
大きく損することや損する回数を減らしながら堅実に増やす!
「分散投資」とは、投資資金を値動きの異なる複数の資産や地域に分けて投資することです。
投資先を分けておくと、そのうちのどれかが値下がりしても自分の資産全体で見れば損失は大きくなりません。それどころか、他の資産の値上がりでその損失をカバーできる可能性もあります。
一般的に、株と債券は逆の値動きをする関係にあります。景気がいいときには企業の業績が上がるため、株価が上昇します。株価が上がっていくのであれば、債券で保有するよりも株式で運用したほうがいいと考える人が増えるので、債券を売って、株を買うという動きが出てきます。それにより、債券価格は下がり、株価はさらに上がるのです。
反対に、景気が悪くなると企業の業績が下がり、株価も下落します。株価が下がれば、売却して、株よりもリスクを低くしながらリターンが得られる債券を購入する動きが増えます。これにより、株価はさらに下がり、債券価格は上がっていきます。
そこで、株と債券のように、異なる値動きをする資産を組み合わせて保有すれば、資産全体の値動きを抑えて運用できるというわけです。
株と債券を組み合わせた分散投資を実践しているのが、日本の年金を運用している「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)」です。GPIFは年金積立金(現役世代が納めた年金保険料のうち、年金の支払いに充てていない分)を運用して増やし、将来時点で不足する年金の財源にあてようとしています。
GPIFは今や、世界一の機関投資家です。国内株式・国内債券・外国株式・外国債券の4つの資産に25%ずつ分散して投資することで、お金を減らさずに増やす運用をしています。
GPIFの運用成績を見てみましょう。
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GPIFが運用を開始したのは2001年度のこと。2023年度第3四半期までの約22年間で累積収益額は132.4兆円であり、年率換算すると収益率は3.99%となっています。棒グラフを見ると、損している時期もありますが、損することを減らしながら大局的には堅実に増やせていることがわかります。
資産配分に迷ったら、GPIFと同じように、国内外の株式と債券の4資産に分散投資するのが一つの手と言えそうです。
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投資の3原則③【長期投資】
「複利効果」を味方につけながら、元本割れリスクを下げる!
「長期投資」とは、長い時間をかけて投資を行うことです。
長期的には株式市場は今よりも成長していく可能性が高いので、長期投資をしていれば、その成長に合わせて、お金を増やすことができます。
また、長期投資は「複利効果」を味方につけることができます。複利効果は、運用で得た利益を元本に組み入れて再投資することで、運用金額が増え、リターンも増えていく効果のことを言います。複利効果は、アインシュタインが「人類最大の発明」と言ったとされているほど、お金を増やすためには大切な概念です。
たとえば、毎月1万円ずつ積み立てて、年3%で運用できたとします。
30年後の元利合計は単利が約522万円、複利が約584万円となり、62万円もの大きな差がつきます。
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上記の例では、わかりやすくするために値動きがないように見せていますが、実際は先ほどのS&P500のように、値動きは常に上下しています。実際に投資信託や株式で運用する場合には、直線に近い形にはならないことに注意してください。「年3%で運用」とは、毎年確実に年3%のリターンが得られるということではなく、「長期的な視点で見れば結果として年平均3%の収益率となった」と理解することが重要です。
とはいえ、複利効果を得るには「時間を長くかけること」が重要だと、上記のグラフで直感的にわかるかと思います。複利効果を大きくしたいなら、時間を味方につける必要があるのです。
人間が複利効果を軽んじてしまう傾向にあるのは、行動経済学の言葉で言えば「見えない数字の過小評価」によるものです。計算してみないとわからないような事柄は無視されがちです。
元本割れせずに堅実に増やしたいなら「15年以上」の長期投資を行うことが一つの目安になります。投資の名著とされる『ウォール街のランダム・ウォーカー<原著第13版>』(バートン・マルキール著)では、1950年以降のデータとして、15年以上の長期投資をした場合は元本割れしないという分析結果を紹介しています。
あくまでも過去データの検証なので、将来も絶対に元本割れしないという保証はありませんが、15年以上の長期で投資を続けていれば、仮にその間に暴落があったとしても元本割れしない可能性は高いと考えられます。
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「長期・積立・分散」という投資の3原則で
お金を減らさずに堅実に増やそう!
「どれくらい長く、積立・分散投資をやれば安定した運用成果が得られるのか?」という分析は、金融庁の『はじめてみよう!NISA早わかりガイドブック』にも掲載されています。
こちらでは、1989年以降、毎月同じ金額ずつ国内外の株式と債券に積立投資した場合の年間収益率が紹介されています。
■「長期・積立・分散」投資で値下がりリスクはおさえられる
上の図の左側の「保有期間5年」の場合を見ると、100万円が5年後には74万~176万円になっています。投資収益率の分布では、確かに年率10%、12%などと、大きく増やせていることもありますが、元本割れ(マイナス)の時期もあることがわかります。
次に、上の図の右側の「保有期間20年」の場合を見ると、100万円が20年後に186万円~331万円になっています。投資収益率の分布では年率2%~8%の間に収まっていることがわかります。少なくとも1989年以降のデータでは元本割れしていません。
上記の結果は、前述の『ウォール街のランダム・ウォーカー<原著第13版>』の分析と同じく、過去の実績をもとにしたものであり、将来の投資成果を保証するものではありません。しかし、「長期・積立・分散投資」をすることで、お金を減らさずに堅実にお金を増やせる可能性は高いと言えるのではないでしょうか。
今回は、新NISAで投資デビューする人に知ってほしい「投資の3原則」をご紹介しました。投資の3原則を実践しても、損する可能性はゼロにすることはできませんが、損する可能性を低くしながら増やすことは目指せます。
相場がずっと好調をキープすることはありません。いずれ下落相場、暴落が訪れます。
そんな時にこの記事を思い出していただければと思います。
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(株)Money&You代表取締役/マネーコンサルタント
中央大学商学部客員講師。経済評論家。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に創業し、現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用 新NISA対応改訂版』(宝島社)など書籍90冊、累計140万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。
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【2024年12月7日時点】 2024年にスタートした新制度を解説! 「新NISA」の取扱商品や売買手数料を徹底比較! ※表内のデータは、情報更新時に公表されている「新NISA」の情報をまとめたものです。 |
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250本 | 無料 | 無料 | 1281本 | 0〜 0.5% |
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投資信託 | 株式売買手数料(税込) | 投資信託 | ||
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234本 | 無料 | 実質無料 | 1179本 | 0.73〜 1.1% |
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244本 | 無料 | 無料 | 1145本 | − |
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239本 | 無料 | 無料 | 1137本 | 0.5% |
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投資信託 | 株式売買手数料(税込) | 投資信託 | ||
国内株 | 米国株 | |||
149本 | 137〜2200円 (約定代金による) |
− | 540 | − |
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投資信託 | 株式売買手数料(税込) | 投資信託 | ||
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91本 | 実質無料 | − | 332本 | − |
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サービス手数料: 資産残高の0.693〜0.733%(年率・税込)※ |
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【ウェルスナビ(WealthNavi)の新NISA口座のおすすめポイント】 国内外のETFに分散投資をするロボアドバイザー「ウェルスナビ」はNISA口座にも対応。5つの質問に答えるだけで最適なポートフォリオを提案し、毎月自動的に積立投資をしてくれるので、初心者でも簡単に効率的な運用を実行できる。2024年からの新NISAなら、つみたて投資枠と成長投資枠の両方で資産を購入することで最大で年360万円まで投資可能! 運用コストとしては、一般的な証券会社のような売買手数料ではなく、資産残高に対して決まった割合のサービス利用料を負担する形なので要注意。また、楽天証券と提携した「ウェルスナビ×R」も提供している。その場合、楽天カードや楽天キャッシュを利用し、楽天ポイントを貯めたり、楽天ポイントを利用した購入・積立が可能となる。 ※ NISA口座に自動積立だけで入金した場合で試算した手数料。リスク許容度(ポートフォリオ)により異なる。また、各商品の値動きによりポートフォリオのバランスが崩れた場合は、手数料が表記の範囲を超えて変動する可能性がある。 |
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※手数料などの情報は定期的に見直しを行っていますが、更新の関係で最新の情報と異なる場合があります。最新情報は各証券会社の公式サイトをご確認ください。売買手数料は、1回の注文が複数の約定に分かれた場合、同一日であれば約定代金を合算し、1回の注文として計算します。投資信託の取扱数は、各証券会社の投資信託の検索機能をもとに計測しており、実際の購入可能本数と異なる場合が場合があります。※1 年会費無料のクレジットカードの場合。※2 1約定ごとプランで約定金額240万円までの売買手数料。 |