一昔前、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)が投資の世界で持てはやされました。しかし最近は、ちっとも話題になりません。
それもそのはず、下のグラフからもわかるように、新興国株式(灰色)はずっと先進国株式より出遅れていて、投資家が愛想を尽かしてしまったからです。
なぜ新興国株式は嫌気されたか?
「米国の利上げ」「世界の貿易の低迷」が背景に
それでは、なぜ新興国株式は嫌気されたのでしょう?
その最大の理由は米国の利上げに対する投資家の警戒です。
経験則として、連邦準備制度理事会(FRB)が利上げしはじめると、新興国に投資されていた資金がアメリカに戻されることが知られています。
リーマンショック以降、FRBは超緩和的な金融政策を貫いてきました。しかし2013年5月に量的緩和政策で買い入れる債券の金額を徐々に減らしてゆく、いわゆるテーパーリングの考えが打ち出されました。実質的な引締めのはじまりです。実際のテーパーリングは2014年を通じて実施されました。
また2015年12月からは、いよいよ政策金利の利上げが始まり、これまでに3回の利上げが行われました。
もうひとつ、新興国株式が嫌気された理由は、世界の貿易量の伸びがここ数年、低迷していたことによります。
これにはリーマンショックによる世界的な不景気という要因が関係しています。
それに加えて「人件費の安い新興国でモノを作り、それを先進国に売る」というビジネス・モデルが、だんだん通用しにくくなったことも関係していると思います。
新興国が工場を誘致し、輸出で稼ぐというのは、もっとも効率的な富の移転の方法です。
世界の貿易量は再び活性化!
新興国を巡る環境は好転へ
しかし最近になって、ようやく世界の貿易量は再び活発化の様相を呈しています。
これを受けて、先進国から大幅に後れを取っていた新興国の製造業購買担当者のマインドも、好転の兆しを見せています。
同様のことは消費者についても言えます。
冷え込んでいた新興国の消費者信頼感指数は、反発の兆しを見せています。
FRBは利上げのペースを落とす?
米国の保護貿易主義もトーンダウンで嬉しい展開へ
つぎにFRBの今後の金利政策ですが、ここへきて年内3回の利上げに対して懐疑論が出ています。その理由は、米国の利回り曲線がフラットニング(=平坦になること)を起こしているからです。
下のチャートで、青は3月8日、つまり3月15日の連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ実施前の状態を示しています。橙色は、最近の様子です。橙色の線の傾きは、青にくらべてなだらかになっています。これは(思ったより景気は強くないぞ……)ということをシグナルしており、景気が失速するリスクがあることを物語っています。
したがってFRBは利上げのペースを落とすことが予想されるのです。これは新興国株式にとって嬉しい展開です。
さらに「米国優先」を打ち出し、中国やメキシコをはじめとする新興国に厳しい態度をとっていたトランプ大統領は、ここへきて保護貿易主義の主張を大幅にトーンダウンしています。
つまり世界の投資家が恐れていた、貿易戦争のシナリオは、やや遠のいたのです。
【今週のまとめ】
新興国株式を悩ませてきた
三重苦が和らいだ今が新興国投資のチャンス!
以上のことから、新興国株式を悩ませてきた(1)米国の利上げ、(2)貿易の低迷、(3)トランプ大統領の保護貿易主義、という三重苦が、すこし和らぎました。これは投資家が新興国株式を見直すきっかけになると思います。
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