日経平均株価の終値ベースの年初来高値は、12月2日の2万3529.50円です。9日には、一時2万3544.31円で寄り付き、これを超える場面がありました。しかし、終値は2万3430.70円と、2日を超えることはできませんでした。また、ザラ場ベースの年初来高値は11月26日の2万3608.06円です。
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このように、2万3500円オーバーでの上値は重く、日経平均株価は足元で調整しています。
米中貿易協議に対する“不安感”が日経平均株価の重しに!
ただし「第1段階の合意」まではクリアできる見通し
日経平均株価の上値が重くなっている主因は、12月15日のトランプ米政権による対中制裁関税の「第4弾」が全面発動する前に、積極的な上値追いを手控える投資家が増えているためです。
第4弾は、ぼぼすべての中国製品が対象となります。第4弾の関税自体は、9月1日に発動されました。しかし、米通商代表部(USTR)は8月13日、スマートフォンやノートパソコン、玩具など特定品目の発動を12月15日に先送りすると発表していました。
これら代表的な消費財に対しても制裁関税が発動されれば、米国の個人消費や中国発のサプライチェーン(供給網)への悪影響が甚大となるため、市場は米中貿易協議の行方に戦々恐々としているのです。
なお、8月時点での延期決定に関しては、トランプ大統領は、クリスマス商戦におよぼす影響に配慮したと説明しました。このためトランプ政権は、自国経済・景気を悪化させてまで貿易戦争を行う意思はないとみてよいでしょう。
一方、中国に関しても、決して強硬ではありません。実際、中国商務省の任鴻斌次官補は12月9日、できるだけ早期に中国と米国の双方が納得する通商合意を得られることを期待すると述べたそうです。このように、中国も自国経済への悪影響を最小限にとどめたいという意思が感じられます。
よって、米中貿易協議の「第1段階の合意」に関して、私は悲観していません。
「第1段階の合意」に関して、市場では「協議継続・再延期(発動回避)」が有力とみています。もちろん、第4弾の全面発動ということになれば、ネガティブ・サプライズということになります。ですが、中国国務院は12月6日、米国産の大豆や豚肉について追加関税の免除を続けると発表するなど、中国側も歩み寄りの姿勢をみせています。このことからも、両国は少なくとも、「第1段階の合意」程度まではクリアできると見込んでいます。
なお、米中貿易協議の行方に関して、ポジティブなニュースヘッドラインが出れば「株価指数先物買い」、逆にネガティブなニュースが出れば「株価指数先物売り」を出すという、極めてシンプルなアルゴリズムトレードが行われていると観測されています。これが足元の日経平均株価を激しく上下させる攪乱要因になっています。
政府は、事業規模26兆円の「大型経済対策」を閣議決定!
「災害対策」が第1の柱に
ところで、政府は12月5日、「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」を閣議決定しました。財政支出は13.2兆円程度、事業規模は26.0兆円程度です。(1)災害からの復旧・復興と安全・安心の確保(財政支出:5.8兆円程度、事業規模:7.0兆円程度)、(2)経済の下振れリスクを乗り越えようとする者への重点支援(財政支出:3.1兆円程度、事業規模:7.3兆円程度)、(3)未来への投資と東京オリンピック・パラリンピック後も見据えた経済活力の維持・向上(財政支出:4.3兆円程度、事業規模:11.7兆円程度)を3つの柱としています。政府は、実質GDP(需要)押上げ効果を現時点で概ね1.4%程度と見込まれると、試算しています。
まず、「災害からの復旧・復興と安全・安心の確保」については、今年の台風第15号および第19 号などの相次ぐ自然災害による甚大な被害に対して、復旧・復興を加速し、地域における経済活動の停滞を一刻も早い解消を目指します。あわせて、「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」に加え、ソフト面も含めた水害対策を中心に、防災・減災、国土強靱化をさらに強力に進めます。
この項目での注目するべきセクター・テーマは、老朽インフラの更新投資が見込まれる建設業などの公共投資関連銘柄です。とりわけ、
(1)氾濫発生の危険性が高い河川における河道掘削・堤防強化
(2)雨水貯留施設等の整備
(3)集合住宅や住宅団地における浸水被害防止
(4)高波などによる護岸等の倒壊防止、
(5)災害拠点へのアクセスルートの無電柱化)
(6)台風情報の向上のための気象レーダー、アメダスなどの観測体制の強化
などで恩恵を受ける企業群に注目しましょう。
第2の柱は、中小企業・小規模事業者への支援!
「スマート農業技術」関連にも注目
次に、「経済の下振れリスクを乗り越えようとする者への重点支援」については、中小企業・小規模事業者に、IT・デジタル技術実装や人材などへの投資、大企業との取引構造の適正化、事業承継や事業再構築の促進など幅広い支援を行い、生産性向上のための環境整備を加速化します。また、就職氷河期世代には、活躍の場を広げられるよう官民一体となって重点的な支援を大胆に講じます。
この項目では、特に中小企業向けに特化した企業群に注目しましょう。また、「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」も挙げられているため、農業のIT化関連にも要注目です。
第3の柱は、未来への投資と経済活力の維持・向上!
「Society 5.0」が重要なテーマに
そして、「未来への投資と東京オリンピック・パラリンピック後も見据えた経済活力の維持・向上」については、国を挙げて「Society 5.0」という新しい時代の実現を加速させます。
次代の競争力の源泉となり、地球環境問題などSDGs(持続可能な開発目標)の実現を含む社会的課題解決に資するイノベーションを力強く促進します。同時に、子育てしやすい環境整備とともに、Society 5.0 時代を担う人材の育成に大胆に取り組みます。
なお、Society 5.0とは、第5期科学技術基本計画において、我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱された概念です。Society 5.0で実現する社会は、IoT(Internet of Things)によりすべての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有されます。また、人工知能(AI)によって必要な情報が必要な時に提供されるようになり、ロボットや自動走行車などの技術で、少子高齢化、地方の過疎化、貧富の格差などの課題が克服されます。
この項目では、Society 5.0関連に注目するべきです。具体的には、AI、量子、バイオ、海洋資源開発、5G、介護ロボット、自動車自動運転、ドローン、サイバーセキュリティ、マイナンバー、キャッシュレスなどが、その中心になるでしょう。
また、令和5年度までに、義務教育段階において、全学年の児童生徒1人1人がそれぞれ端末を持って十分に活用できる環境の実現を目指すことが決まっているため、そのための施策でメリットを享受する業界にも要注目です。
米中貿易協議が不調に終わった場合は、
経済対策関連のテーマ株が投資資金の受け皿に!
当面の株式市場では、この大型経済対策でメリットを受ける銘柄群が物色の中心になるはずです。
これらの銘柄群は米中貿易協議などの外部要因の影響を受け難い、内需セクターが中心です。よって、万が一、米中が合意に至らず「ネガティブ・サプライズ」となった場合でも、投資資金の逃避先・受け皿となる可能性が非常に高いと考えています。
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