サントリーホールディングス(以下、サントリー)が米国のビーム社(Beam Inc.)を160億ドル(約1.7兆円)で買収するというニュースが飛び込んできた。日本企業による海外企業の買収案件としては過去事例含めて最大級に匹敵する。今回はこの買収が「高値掴み」か否かを検証したい。
買収金額は売上高の6倍超、EBITDAの20倍超。安い買い物ではない
ビーム社はニューヨーク証券取引所に上場しており、サントリーのプレスリリースにもあるように1株当たりの買収価格はビーム社の直前や過去3か月間の加重平均株価に対して約25%のプレミアムを乗せた水準である。買収プレミアムが25%というのは、M&A案件としては通常のプレミアムの範囲内だ。
しかし、ビーム社の直近の売上高は25億ドルでしかない。今回の買収金額はビーム社の売上の6倍を超えている。
実は、サントリーが発表したプレスリリースの日本語版と英語版では内容が少し異なる。
日本語版では記載がないが、英語版では、今回の買収金額がビーム社のEBITDA(税前減価償却前利益)の20倍を超えることが記載されている。EBITDAとは営業利益に減価償却費を足した金額に等しいが、企業が毎年生み出すキャッシュフローの簡易指標である。買収金額の妥当性を判断する際は、買収金額がこのEBITDAの何倍かがよく用いられる。
業界によって、そして時期によってもその妥当な倍率は異なるが、概ね8倍~12倍程度で収まることが多い。買いたいという企業が多くて、オークション状態になれば当然買収金額も上昇するため、EBITDAの倍率は上がっていくわけだが、それにしてもEBITDAの20倍以上の買収金額というのは安くないことは分かるだろう。
過去のサントリー自身の買収案件でも、EBITDA倍率は13倍程度であった(参考記事:サントリーが英国飲料事業買収オランジーナの成功再来となるか)。
寡占化された市場という特殊性を加味しても…やっぱり高い
この表面上はやや割高な買収金額を正当化しうるロジックとしては、アルコール飲料業界の特殊性がある。
日本市場でもそうであるが、メジャーなアルコール飲料企業は数が限られており、市場は寡占状態である。参入障壁が高く、また、市場シェアが急激に低下するリスクもあまりない。製薬業界のように特許切れの心配をする必要もない。
もっとも、先進国では人口減少により市場全体のパイが縮小するという可能性はあるものの、世界的に見てみると途上国を中心に拡大の余地はまだある(ただし、途上国の方が独占企業が市場を牛耳っているところも存在するが)。その意味では、たばこ産業にも近い特性を有している。
つまり、ダウンサイドリスクが限定されている一方で、プレーヤーの数は限られる。それであれば、買収金額の将来収益による回収年月が他の業界よりも多少長くとも妥当ということになりえる。
それが、アルコール飲料業界でのやや割高に見える買収金額のロジックになるわけだ。しかし、それにしても、20倍超というのは高い印象だ。何らかのコストシナジーや売上アップが求められる水準である。
株式市場の反応は中立的
そんなサントリーの今回の買収戦略に対して株式市場はどう反応したかと言うと、子会社のサントリー食品インターナショナルの株価は、今のところ中立的な反応である。株価は高騰することも急落することもなく大きな反応は示していない。様子見と言ったところであろうか。
同社は、海外企業の買収を行うと宣言をして株式上場(サントリー食品インターナショナル)をしたので、有言実行の側面は評価されているであろう。今回の買収劇は上場していなかったならば実現は難しかった案件である。
以前のコラム(連載第90回:非上場の代表格・サントリーが満を持し株式公開へ!)でも指摘したが、サントリー食品インターナショナルの上場は、実質的にはオーナー企業であり続けることができるIPOのスキームではあったものの、それでも株式を上場させることの抵抗はオーナー一族には少なからずあったはずである。それを、グローバル企業化するためにはいとわないという決断を下し、巨額買収という形で実行したというあたりは、逆にオーナー企業だからこそできた決断力なのかもしれない。
国内のアルコール飲料業界が頭打ちなのは誰の目にも明らかであり、海外でのプレゼンス拡大は絶対にやらないといけないことである。これは、日本企業にだけ言えることではなく、欧米のアルコール飲料業界でも同様であり、アルコール飲料業界では世界中のビッグプレーヤーがM&Aで巨大化を図っている。
その意味では、早いもの勝ちの側面もある業界なので、その意味ではある程度の高値掴みと思われる条件も後になってみると妥当だったと評価される可能性はある。
買収後のマネジメントが「高値掴み」か否かを決定する
日本企業による海外企業の買収はこの数年活発に行われている。どれも、頭打ちの国内市場からの脱皮を目指すものであるが、買収後のマネジメントに関しては必ずしもうまく行っていないケースが多い。
楽天、ファーストリテイリングのように、やってみななれの企業が英語公用語化なんて施策を打つ、あるいは、JT(日本たばこ)のように海外本社をスイスに置く策をサントリーが導入する日が来れば、サントリー食品インターナショナルの社名通り真にインターナショナルな企業となりうるであろう。
その意味では、この後、どこまで本気にインターナショナルな企業となるのか、そこが買収価格への評価の分水嶺かもしれない。
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