時代によって資金の流入先は移り変わる
~株価が動く理由(3)「国内外の経済」~
★景気~家計、企業、雇用の動向を知る
国内外の経済の動向も株価に影響します。景気動向を知るために便利なのが、さまざまな経済指標です。国内の指標の例としては「景気ウォッチャー調査」(街角の景況感)、「消費者態度指数」(消費者マインド)、設備投資の先行指標である「機械受注」など、いろいろあります。
これらの指標は、発表された時点の数字だけでなく、これまでの推移や方向性を見る必要があります。つまり、「前回に比べてよくなった、わるくなった」「右肩上がりになっている」などです。その際に便利なのが、ネット証券でチェックができるアナリストレポートです。たとえば、SMBC日興証券が毎週発行する「Weekly Outlook」では、こういった経済指標のグラフが掲載され、寸評が読めます。
2015年7月の景気ウォッチャー調査のコメントには次のようなコメントが書かれていました。
・家計、企業、雇用の3分野すべての指数が改善。緩やかな回復基調が続いている。
・住宅関連などが悪化
・サービス・小売関連が改善
・円安に伴う輸入コスト上昇への懸念
・設備投資増
・求人意欲の高さ
こういった国内外の景気動向を知ることは、銘柄探しのヒントにもつながります。「Weekly Outlook」(8月20日号)では、円安を背景に、米国景気指標の回復持続を読み取って、「業績好調が見込まれる外需銘柄の例」として、富士重工業(7270)、ニフコ(7988)など10銘柄が紹介されました。
★金利~低金利の時代に有利な商品とは?
金利は財務面を通じて企業業績と密接なつながりがあります。特に大量の資金を調達して行う事業の場合、低金利が追い風になります。そこで、金利敏感株としては、金融、建設・住宅、不動産株などがあげられます。
現在は、金融緩和策によって低金利となっています。従来、銀行は資金を国債で運用してきましたが、【図表4】を見てもわかるとおり、10年国債の利回りでも0.36%しかありません。そこで、最近では銀行は、個別株やJ-REIT(上場不動産投資信託)などの運用比率を高めています。
【図表4】金利比較 | |||||
株(配当利回り) | 株(益回り) | 10年国債長期金利 | J-REIT平均分配金利回り | 資金調達原価(都銀) | 資金調達原価(地銀) |
約1.5% | 5~6% | 0.36% | 約3.5% | 0.77% | 0.99% |
※2015年8月時点。株式は東証1部銘柄 |
株の配当利回りを見ると、現在約1.5%。株式益回りが5~6%です。ちなみに、株式益回りは「1株あたり利益(EPS)÷株価」で求められます。「株価は利益に連動する」と前述しました。ですから理論的には、利益が伸びる企業の株価は上昇し、利益が減る企業の株価は下落します(ただし、株価の上昇は約束されたものではありません)。
予想利益と株価を比較したものが「益回り」です。つまり、現在、株に投資すれば約1.5%の配当金と、5~6%の値上がり益が理論上は狙えることになります。これは、長期国債の金利に比べるとかなり有利な状況です。
また、J-REIT(取引所に上場しており、株と同様に取引できる不動産投資信託)の平均利回りは、現在約3.5%ですから、やはり長期金利に比べると遥かに高利回りです。
長期金利が低い現在では、高配当株やJ-REITの有利さが際立ち、資金が流れ込みやすいと言えます。一方、今後長期金利の上昇局面がやってくるとすれば、金利敏感株やJ-REITは資金を調達しにくくなり、株価の上昇が鈍る可能性があります。
金利の高低によって、株やREITに資金が流れ込みやすい(つまり、株価が上がりやすい)時期と、そうでない時期があるのです。株式投資を行う場合には、こういった時代の特徴を踏まえておくことが重要です。
★為替~外国人から日本市場はどう見えているか
為替の円安・円高も株価に影響を与えます。円安になると、直接的には電気、精密、自動車といった輸出関連企業がメリットを受けます。資源の乏しい日本では、円安が追い風になる傾向があります。
たとえば、アベノミクス相場がはじまった2012年末頃、ドル円相場は1ドル80円を割り込む水準でした。その後、円安が進むのと一緒に日経平均も大きく上昇しました。為替が株価に大きな影響を与えていたのです。
一方、円高メリットを受ける企業としては、輸入企業ですから、石油、電力・ガス銘柄などがあげられます。
また、為替は日本市場のメインプレーヤーである外国人の投資姿勢に影響を与えます。日経平均株価が上昇していても、円安が進む局面では、ドル建てで取引する外国人の目から見れば、日本株の上昇が相殺されて、日本国内から見るほど上昇は大きく見えません。
一方、為替が動かないか、円高の局面で日経平均が上昇すれば、外国人にはより大きな上昇に見えるため、投資資金を日本に振り分けてくる可能性があるのです。
次のページ>> 外国人投資家から日本株がどう見えるかも重要
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