”億り人”の個人投資家3人(かぶ1000さん、立川一さん、DAIBOUCHOUさん)が語る「波乱相場でも負けないワザ」とは?
発売中のダイヤモンド・ザイ2023年3月号は、特集「新春インタビュー&座談会! スゴ腕の個人投資家たちが教える【2023年の投資で負けないワザ】」を掲載! 億り人と呼ばれる個人投資家の多くは、幾多の逆境を乗り越えて資産を増やしてきている。そこで、この特集では、難しい相場になることが予想される2023年に、投資で負けないためのワザや心構えを、さまざまな勝ち組個人投資家に、インタビューや座談会の形式で聞いている。
ここでは、株で億単位の資産を築いたレジェンド投資家3人(かぶ1000さん、立川一さん、DAIBOUCHOUさん)の座談会を公開!
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「2022年は増配する企業が増加して、
私の配当収入も前年から1割増えました」(立川一さん)
──2022年はどんな1年でしたか?
かぶ1000 大きく変わったのは配当。バリュー株の中でも、三井倉庫ホールディングス(9302)のような増配が目立ちました。
立川一 私も配当が好調で、前年に比べると配当収入が約1割増えて、税引後で総額600万円になりました。
DAIBOUCHOU バリュー株って、利益が出ても株主還元がないパターンが多かったですが、中山製鋼所(5408)なんかも増配しましたよね。増配すると当然、株価も上がるので、それを狙った投資もできます。
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──今年、増配が相次いだのはなぜでしょうか?
かぶ1000 アクティビストの動きが大きいですね。今までは「景気がよくない」「コロナ禍だから」と内部留保が許されていました。でも、インフレと円安で、内部留保として現金を持っていると、価値が目減りすることに。それで、株主還元をするようになったのだと思います。
立川一 企業の財務に余裕が出てきたのも大きいです。これまでは「銀行が必要なときに貸してくれるかわからないから、内部留保がないと困る」という企業が多かったのが、業績も向上して、だんだんと配当を出す余裕が生まれてきたようです。
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DAIBOUCHOU 東証プライム市場の上場基準では、100億円以上の流通株式時価総額が必要ですが、ギリギリの企業も多いので、時価総額を増やすために株主還元の努力をし始めた面もあるでしょうね。
かぶ1000 米国と違い、日本の企業はこれまで株主還元に積極的でなかったぶん、配当を増やしていく余地が十分あります。
DAIBOUCHOU そもそも純利益って株主のもので、配当性向は100%にするのが本来の株式会社のあり方です。純利益を「会社のものだ」と勘違いしていた日本企業の認識が、ようやく変わってきた。アクティビストが、自らの利益のためとはいえ、正論を言ってくれたおかげでもあります。
かぶ1000 会社員が給料を上げたかったら労働組合を作って交渉するのと同じで、株主だって会社に不満があったら、行動を起こさなきゃいけないわけです。その最たるものが、アクティビストのやり方。
個人投資家がアクティブな行動をとるようになれば、変わる企業も多いと思いますよ。個人投資家の議決権や総会での発言が、企業の姿勢を変えることもあるので。2人も株主総会には行きますよね?
立川一 この間、2年ぶりに行きました。学習塾のステップ(9795)の株主総会だったんですが、意外と知らないことがあると気づきました。学童教室事業で、塾と同様にカリキュラムや講師を自社で用意し、他社と差別化しているという話は、決算説明資料にも載っていなかったんです。
DAIBOUCHOU かぶ1000さんが投資している会社だと、決算説明会すらやっていないこともあるでしょ?
かぶ1000 逆に、だからこそ燃えるんですよ。きちんと開示している企業はもちろん素晴らしいんだけど、誰でも情報を見られると、自分の優位性は低くなってしまうから。わざわざ株主総会に行くのも、自分だけの情報や気づきがあるからです。僕の場合、持っている銘柄が17しかないし、行く価値はありますね。
「株主総会で一足先に配当の情報をゲット!
出席者は自分一人のこともありますが、行く価値は大」(かぶ1000さん)
かぶ1000 今年、自分の利益の3分の1は、MBO(マネジメント・バイアウト。経営陣が株を買い取って、経営権を取得すること)した銘柄で取ったんです。
そのような動きがありそうな銘柄を見つけるには、プライベートマーケットバリュー(事業家的市場価値)を考えます。要するに、自分がこの企業を買収すると仮定したときに、どのくらいの価値になるかということ。時価総額とのギャップが非常に大きい場合、他社に買収されたり、経営陣が株を買い戻したりする可能性が高いと想定できる。
MBOの前触れがわかるとまでは言わないですけど、そういう企業の株主総会でつっこんだ質問をしたら、社長が嫌がる表情をしたことがあって。怪しいと思っていたら2年後にMBOになったことも。
立川一 かぶ1000さんがMBOさせようと、けしかけたんじゃないの(笑)。
かぶ1000 違います! 株主総会に来て確かめてくださいよ。出席者が僕1人ってこともあるんだから。
DAIBOUCHOU 私は議決権行使はしますが、株主総会に行くことはないです。文字起こしや資料を読んで、疑問があったらIRに問い合わせます。
かぶ1000 株主総会に行くと何がいいかというと、IRへの問合わせと違って、総会では議事録に残ること。答えの重みが全然違います。
無配だった企業に「そろそろ株主資本的にも大丈夫でしょうし、配当を出す予定は?」と聞いたら、社長が「今年は出そうと思う」と答えたことがあって。これはいけると思って買い増しました。配当の予定は四季報にも載っていなくて、数人しかいなかった株主総会出席者しか知らなかった。実際に復配したら、ストップ高になりました。
DAIBOUCHOU 最近はIRの人がツイッターで発信したり、個人投資家向けのIR説明会が増えたり、より投資家に企業のことを伝える努力がみられるようになりました。
立川一 企業側も、目先の業績で動かざるをえない機関投資家より、長期目線の個人投資家に株主になってほしいと思っているんですよ。ちゃんと情報発信をする企業が増えると、詳しく調べる余裕がない人でも銘柄を選びやすくなりますね。
かぶ1000 投機ではない、本当の意味での「投資」が日本に浸透してほしいですよね。
立川一 企業分析を一生懸命やらなくても、まあまあ優良な銘柄を長期的に持てば、そこそこの資産形成は可能ですからね。
かぶ1000 「○万円が○億円に」みたいな謳い文句に食いつく人が多いじゃないですか、僕の最初の本もそうですけど(苦笑)。
でも、投資未経験者はまず「損するのがイヤ」と言う。これって矛盾していて、株は何十倍のリターンが期待できるものと考えているのに、リスクには敏感すぎるとなると、うまくいくはずがないんです。株を始めた人の9割が、損してやめちゃうという話も聞きます。
立川一 昔、証券会社で「30万円が27万円になってしまった」と言って、解約手続きしていた人がいて。そのくらいの損で嫌になってしまう人が多いのかも。
かぶ1000 あと「出せても少額だけ」と言われることも多い。本当は、少額を何十倍にするという発想ではなく、ある程度の金額を複利で数%ずつ時間をかけて育てる、という考え方がよいかなと。
立川一 ただ、セミナーで私が「増配傾向にある株をじっくり持っていれば資産形成できます」という話をすると、年配の方々から「私たちには時間がなくて……」と言われてしまうんですよ。ご年配だからこそ、損もできないと思うんですが。
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DAIBOUCHOU やっぱり、退職金をもらう前にある程度の投資スキルを身につけておきたいですよね。
立川一 老後に株をやるなら、せめて50代からちょっとずつ取り組んでほしいです。知り合いでも、退職金でいきなりデイトレードを始めて、ゼロにしちゃった人がいますから。
「2023年は、モノを抱える企業にインフレの恩恵があるはず。
システム刷新を支えるIT請負にも注目」(DAIBOUCHOUさん)
──初心者が負けないためには、どういう投資から始めればいいですか?
かぶ1000 自分がわかっている分野から始める。これが大事です。僕に相談に来る人は、知り合いや証券会社に薦められた株を買って、損しているパターンばかり。
知らない人にお金を渡さないのと同じで、株もその会社にお金を託すわけだから、知らない会社に投資してはダメ。まず外食や小売りといった、現場を見られる業種から始めるのがいいと思います。
DAIBOUCHOU 始めてから1年間、儲からなくてもいいんですよ。その間はコツコツと決算を読むといった習慣を身につけていけば。
立川一 僕もとりあえず「1~2年、何かの株を持って、自分の気持ちがどう変化するか観察してみて」と言うんです。毎日のように気になってしまう人もいれば、何も見ない人もいる。やっていくうちに、自分に合うやり方が見つかるはずです。
かぶ1000 そういえば、2022年の自分にとって大きな変化は、ブログをやめたこと。ありのまま取引について書いていたんだけど、それに乗っかって売買する人も多くて、中小型株の株価が動くようになってしまった。そうしたら「相場操縦につながる」とか「かぶ1000はそれで儲けてるんだ」とか言われるようになって。
立川一 僕は、そもそも証券会社のレーティングが責められないで、なんで個人投資家が責められるのって思いますけどね。証券会社のほうがよっぽど影響力が大きいわけじゃないですか。
DAIBOUCHOU 誰かの後追いで買う「イナゴ」がいちばんダメですね。他人が薦める銘柄をもし買うなら、その人以上に調べて詳しくなってからにしないと。
立川一 大多数の人は、そんなに株への熱量はないけど儲けたい。だから、儲かっている人を真似すれば、なんとかなるんじゃないかと思ってしまう。そういう単純思考で儲かることもあるけれど、続かないですから。
──2023年は何に注目して投資していきますか?
立川一 日常生活でも物価高を感じるようになりました。そうすると、ちゃんと給料を払わない企業には、優秀な人材が集まらない。インフレで人材採用のあり方が変わってくると思います。
より質の高い即戦力人材を採用したい一方で、自社でやらなくてもいい部分は外部に委託していく、そういうメリハリをつけた人材戦略のニーズが高まっていくと見ています。人材、アウトソーシングを手掛ける企業に注目です。
DAIBOUCHOU 注目しているのはIT請負です。DX化やクラウド化など、大きなシステム刷新の動きが進んでいて、人材業界でもIT人材の単価が上がっているようです。
もう一つ、インフレによって、モノをいっぱい持っている企業には恩恵があります。たとえば自動車リース企業なら、中古車をリースアップで売却する際の価格が、想定より上昇することになります。そういった企業の資産価値にも注目します。
かぶ1000 米国の景気後退が懸念されているけれど、そこまで心配していないです。米国は金利が高い状態なので、それを下げれば景気を上向かせられる余地がある。日本企業の業績はかなりいいし、株主還元にも前向きになっているので、日本株は上がる確率のほうが高いと思います。
あと、ESG(環境・社会・ガバナンスへの配慮)に取り組まない企業は、外国人投資家から買われなくなっています。バリュー株はそういうところに疎いからこそ、これから姿勢の転換が見られそうな企業に注目です。
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