北朝鮮が9月9日の建国記念日にミサイル発射などの挑発行為に出なかったことで、週明け11日の日経平均株価は、前週末比270.95円高の19545.77円と大幅反発しました。
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また、大型ハリケーン「イルマ」の被害が警戒したほど大きくないとの見方も加わり、9月11日のNYダウは大幅続伸、前週末比259.58ドル高の22057.37ドル、ナスダック総合株価指数は大幅に反発し、同72.072ポイント高の6432.264ポイントでした。
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このように、週明けの日米株式市場は「リスクオン」となっています。前週末までの「北朝鮮リスクへの警戒」、「イルマ被害への警戒」は共に「杞憂」となり、売り方の買い戻しが加速しました。
日経平均は、9月のSQ値と75日移動平均線の間を
推移するボックス相場に
テクニカル的に見ると、日経平均株価は、9月限の先物・オプションのSQ値である1万9278.13円を上回っている限り、下値不安が強まることはないでしょう。一方、75日移動平均線(同1万9860.04円)を下回っている限り、先高観が強まることもないでしょう。
日経平均株価の先高観が強まるためには、円の対ドルでの先安観が強まることが必要です。円の先安観が強まるためには、米国の長期金利の上昇が必要です。つまり、米金利が上昇しないうちは、日経平均株価は9月のSQ値と75日移動平均線とのボックス相場になるとみています。
需給面では、海外投資家の日本株売りスタンスが転換されない限り、日経平均株価の上値は重いでしょう。
海外投資家は8月第5週(8月28日~9月1日)に日本株を613億円売り越しました。売り越しは6週連続です。彼らが安定的に買い越してこない限り、日経平均株価の先高観が強まることはないとみています。
ちなみに、「国際株ファンド」の日本株の保有比率は軒並み低下しているそうです。これは、日本企業が抱える多額の現預金について、「いつまでもため込むだけ」で、「いずれ有効活用するとの期待が抱けず」、「保有現預金の質」が悪いため、実質的な投資尺度では、日本株は割安ではないと評価されているためだそうです。このあたりの企業サイドの問題点も改善されてこないと、海外投資家の日本株買いが盛り上がることはないのかもしれません。
小型材料株が相次いで下落
高値づかみをした個人投資家が多い
それにしても、日経平均株価に代表される大型株以上に心配なのは、東証マザーズ指数に代表される、個人投資家好みの小型材料株の値動きです。
実際、東証マザーズ市場の売買代金は減少が顕著です。9月5日に1214億円だったのが、5日は941億円と1000億円を割り込み、7日は659億円、8日は596億円、そして、11日は547億円でした。
この売買代金の減少は、マザーズ銘柄中心に小型材料株への投資で、多額の損失を被り市場からの退場を余儀なくされた、または、多額の評価損を抱え「二進も三進もいかなくなっている」個人投資家が続出したためとみています。
例えば、材料株のデジタルアドベンチャー(4772)は、8月31日に945円の年初来高値を付けた後、急落し、9月11日終値は610円です。また、材料株のエコナックホールディングス(3521)は9月4日に129円の年初来高値を付けた後、急落し、11日終値は76円です。そして、ゲーム株の人気株のKLab(3656)は、8月28日高値2329円が9月11日終値は1616円です。
さらに、バイオ関連を見ると、ラクオリア創薬(4579)は、9月1日高値1440円が11日終値は1044円です。もうひとつ例を挙げれば、仮想通貨関連のメタップス(6172)は9月4日の高値4080円が11日終値2924円です。
このように、非常に短い期間で凄まじい下落に見舞われた小型材料が多数存在しています。このため、高値掴みし、投げそびれている個人は相当数に上っているはずです。その結果、個人の投資余力がなくなり、東証マザーズ市場中心に小型材料株人気が離散しているのでしょう。
なお、小型材料株の中では、特に、信用買い残の積み上がった銘柄に関しては、買い残の整理が一巡しないと戻りは期待できないため、安易な押し目買いは控えるべきです。
「北朝鮮問題」と「米国の政治問題」という2大リスクは
一時的に先送りされたが……
ところで、国連安全保障理事会は日本時間9月12日午前、北朝鮮への原油・石油精製品輸出に上限を設けるという、米国が作成した対北朝鮮制裁決議を全会一致で採択しました。当初案では、石油の全面禁輸、金正恩朝鮮労働党委員長を渡航禁止や資産凍結の制裁対象とすることを求めていました。しかし、結局のところ、制裁に慎重な中ロに配慮した妥協の産物のような内容にとどまりました。
個人的には、5大国の拒否権を認めている限り、国連安保理が北朝鮮問題を短期に解決することは不可能だと考えます。つまり、米国が安保理を無視してでも単独行動に踏み切らない限り、北朝鮮リスクは燻り続けるのでしょう。ただし、今回の制裁が緩やかなものとなったことで、北朝鮮の目先的な暴発リスクは低下したため、株式市場的にはポジティブなことでした。
一方、米国では、ハリケーン襲来という自然災害を受け、ようやく政治がまともに動きました。米下院は9月8日、12月までの連邦債務上限の引き上げと暫定予算を含めた一体法案を賛成多数で可決したからです。ただし、これは問題先送りに過ぎません。12月までには再び上限引き上げや予算決定が話題になるはずです。
以上みてきたように、北朝鮮問題も、米国の政治・財政問題も根本的には解決していません。それでも、市場は足元の「モラトリアム」を素直に評価・好感して、短期的にはリスクオンムードが強まるのでしょう。
よって、投資戦略的には、過度の下値警戒感は解くべきです。その一方、2つの大きなリスクが依然残っているため、過度の先高観も抱くべきではないと考えます。
「引かれ玉」を抱えた投資家は、
じっくり構えて次の押し目形成を待とう
では、具体的にはどうするべきなのか?
もちろん、ここ最近までの相場で上手く立ち回り、良好なパフォーマンスを上げている投資家の方には、「今まで通りのやり方で、思いっ切り稼いでください」と言うだけです。
問題なのは、「引かれ玉(値下がりによって一定以上の評価損が出ている買い玉)」を抱えている動けなくなっている投資家です。まず、戻りは売りましょう。一気に売らなくとも、徐々に売り上がり、現金比率を高めていき、リスク許容度を高めるべきです。また、今回の損失をすぐに取り返そうとはせず、じっくりと構えて、次の押し目形成を虎視眈々と待ちましょう。
そして、次こそは、「引かれ玉」にしてしまう前に、傷の浅いうちに損切りを行いましょう。さらに、「5日移動平均線と25日移動平均線を下回った銘柄は、バーゲンハンティング以外では、買わない、持たない、近寄らない!」というルールを徹底しましょう。
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