9月5日の日経平均株価は、前日比436.80円高の2万1085.94円と、ボックス上限とみていた8月2日と5日とで空けた窓(2万941.83円~2万960.09円)をあっさり埋めるだけでなく上抜き、逆に4日と5日とで窓(2万694.35円~2万787.93円)を空けました。
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私は、従来から、「8月6日の2万110.76円~8月2日と5日とで空けた窓(2万941.83円~2万960.09円)」で形成されるレンジを放れたら、約1000円程度のブレが発生するとみていましたので、今後の日経平均株価については2万2000円付近までの上昇が見込めると、現時点では考えています。
具体的には、日経平均株価は、昨年10月2日の2万4448.07円が1番天井、同年12月26日の1万8948.58円が1番底、今年4月24日の2万2362.92円が2番天井、8月6日の2万110.76円が2番底となったとみています。そのため、まずは4月24日の2万2362.92円方向を目指すというのがメインシナリオです。
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ただし、10月から消費増税実施を考慮すると、上値も限定的で、この2万2362.92円が当面の戻り限界との見方は変更しません。
9月12日のECBの理事会で
量的緩和政策(QE)が再開される可能性は?
とはいえ、それを超える外部環境の改善があれば話は別です。そのきっかけとなり得るのが、欧州中央銀行(ECB)による量的緩和政策(QE)の再開でしょう。
米連邦準備理事会(FRB)は、7月末に約10年ぶりの利下げに動きましたが、これに追随してECBも緩和強化に動くならば、ジャブジャブになったマネーが世界の株式市場への流入を加速させる可能性が高まると考えるからです。そうなると、消費増税による内需低迷が危惧される日本にも、リスクマネーが入ってくるはず。
そのECBは9月12日に理事会を開きます。市場では、ここで「追加利下げ」「銀行へのマイナス金利の影響を和らげる措置」「緩和的政策を巡るガイダンスの強化」「銀行向けの長期資金供給」「QE再開」などが打ち出されるとの観測が囁かれているようです。
ただし、フランス中銀のビルロワドガロー総裁、 バイトマン・ドイツ連邦銀行総裁、クノット・オランダ中銀総裁、ホルツマン・オーストリア中銀総裁などが、QE再開の必要性に疑義をていしているもようで、今回の理事会でQE再開が実現するかどうかは不透明な状況ではあります。
日米株式市場を振り回し続ける
米中貿易戦争にも改善の動きが
それはともかく、日米株式市場を上下に揺り動かす最大級の材料はやはり、米中貿易戦争絡みのニュースです。
9月5日に日経平均株価が大幅高した主因も、やはりそれでした。中国の劉鶴副首相がライトハイザーUSTR代表やムニューシン米財務長官との電話協議で「米中が10月初めに閣僚級の貿易協議をワシントンで開くことで合意した」と伝わったことがきっかけでしたから……。そして、9月9日、ムニューシン氏が「中国の貿易交渉担当者が米担当者と協議を再開したのは、中国の誠意の表れだ」と述べたそうです。
これら一連の流れから、市場では米中貿易交渉が進展するとの期待が強まっています。このため、市場ムードは、「リスク・オン」です。
もちろん、日経平均株価が2万円に接近した場面で押し目買いを敢行した投資家からの「利食い売り」や、下落前に2万1000円台で高値掴みをして、評価損を抱えていた投資家からの「ヤレヤレ売り」が、ここから上値では出てくるでしょう。
その一方で、これまでのボックスを上抜けたことで、売り方の多くが評価損を抱えているはずです。彼らの旺盛な買い戻しニーズが、当面の日経平均株価を押し上げる、または、強力に下支えすることでしょう。
日経平均株価が多少復活しても、
多くの個人投資家にとって相場の体感温度は上がらない
そうはいっても、東証1部の売買代金は相変わらず低迷しています。9月5日(2.4兆円)、6日(2.0兆円)と、活況の目安となる2兆円を上回ったものの、9日は1.7兆円と再び下回っています。ピークを記録した2013年5月の3兆6000億円強の約半分程度に落ち込んだ状況が恒常化しています。市場参加者が激減し、新規資金の流入が乏しく、投資家の活性度が低いことが主因でしょう。
このため、日経平均株価だけが強くても、多くの個人投資家にとっての相場の体感温度は一向に上昇していないと推察されます。
なお、今後、日経平均株価が強い動きなったとしても、やはり個人投資家の復活は難しいと感じています。なぜなら、昨年10月から12月にかけての相場急落、今年のゴールデンウィーク以降の陰湿な調整を経て、完膚なきまでに「ヤラレタ」個人があまりにも多いとみているからです。
日経平均株価が足元堅調だといっても、昨年10月2日の高値2万4448.07円からみれば、まだ3000円も下の水準なのです。例えば、「2000円で買った株がいったん1000円まで下がって、ようやく1500円まで戻った。しかし、まだ500円ヤラレている。だから、身動きが取れない」。そんな感じの個人が多数なのでしょう。だから、日経平均株価が2万4448.07円を超えてくるような上昇が実現しないと、個人の復活は厳しいと考えます。
当分の間、昨年10月までのような上昇相場は訪れないので、
環境に応じた投資戦略の見直しを
このような状況になってしまうのは、多くの個人の「損切りをしない、または、できない」という「悲しい性」が主因です。特に、アベノミクス以降に株を始めた個人の多くは、「損切りをしないで我慢していれば、必ず報われた」という成功体験があるようです。この成功体験が邪魔をして、なかなか「損切り」ができない(しない)ようです。
また、このアベノミクス以降に株を始めた個人のうち、信用取引を活用して資産を爆発的に増やした人達は、通常では考えられないレバレッジを効かせて成功した体験を持っています。この高レバレッジは当然のことながら「両刃の剣」です。上げ相場なら資産はマッハの速度で増加しますが、下げ相場では瞬時に種銭が溶けることになるのです。
確かに、昨年10月まではそれでよかったのですが、残念ながらそれ以降の相場では、その高レバレッジ戦略が仇となり、退場を余儀なくされた個人が多数発生したことでしょう。
正直、当分の間、2012年11月から2018年10月までのような爆発的な上昇相場が訪れることはないとみています。だから、個人投資家は過去の成功体験を忘れて、大きく変化した投資環境に適応した戦略で相場に臨むべきです。
つまり、ジャンピング・キャッチした場合、これまでと違い、お迎えは来ないということを念頭に「損切り」を励行したり、過度なレバレッジを効かせることは身の破滅につながる可能性が高いため自粛したりするなど、相場全体が冴えない環境でも生き残ることを優先した戦略で臨むべきです。
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