「大胆な金融緩和」で、日本の株価水準は欧米に追いついた!?
2012年末から2013年5月までの日経平均株価の上昇と円安の進行が急激だっただけに、その後の調整が「アベノミクスの効果が切れた」という印象もあるのかもしれないが、永濱さんは「一本調子に上がり続けるはずはない。あくまでも上昇トレンドの中で上下しているだけ」という。
「そもそもリーマン・ショックの前までは、日本と米国やドイツなど、先進国の株価水準というのは結構連動していたわけです。ところがリーマン・ショック以降、金融政策の違いで米国やドイツは株価が上昇したのに日本は下がってしまった。それがようやく日本が『大胆な金融緩和』を始めるということで、金融政策が米欧に追いついたので、株価も追いついてきたわけです。つまり、2012年末から2013年の春までは日本の株や為替が異常な水準から適正な水準に戻る過程だったから、あれほど急激に動いたわけで、あのペースで上がり続けるはずがない」
また、一方で「バブル」を懸念する声に対しても「バリエーション的にも異常な水準ではない」とも。
「リーマン・ショック以前の関係と比較すると、まだ日本の株価は米国やドイツに追いついていない。米国やドイツと同じくらい回復するのであれば、日経平均株価が1万9000円くらいまで上がってもおかしくないんです。とはいえ、米国やドイツと比べて日本のビジネス環境はまだ遅れていますから、そういった意味では米国やドイツに追いつくためには『3本の矢』の3本目の『成長戦略』が大事になってくると思います。ただ、『成長戦略』はすぐには進まないので、その分を差し引いても、日経平均株価1万6000円という水準は行き過ぎている水準ではないと思いますね。むしろ、これからは異常な円高・株安が解消されたことによって、企業業績がよくなってくるので実体経済にも波及してくるので、株価が大きく下がるということは考えにくいと思いますね」
バブル崩壊以降、初めて「中小企業の非製造業」の景気も回復!
実際、すでに実体経済がよくなってきたのは、数字にも表れている。
「有効求人倍率も6年1カ月ぶりに1倍に回復し、設備投資だって増えています。さらに、日銀短観の『業況判断DI(企業や業界の景況感を示す指数)』では、『中小企業の非製造業』 が21年ぶりにプラスになっています。これはすごいことで、例えば戦後最長の景気回復をした小泉(純一郎)政権のときも、回復しているのは『大企業の製造業』中心でした。就業者全体の中で『大企業の製造業』で働く人は1割もいないので、確かに好景気の実感はなかったですよね。でも、今回はバブル崩壊後初めて、就業者全体の半分以上を占める『中小企業の非製造業』の業況判断がプラス、つまり景気がよくなっていると実感できているわけです」
確かに、日銀短観の「業況判断DI」を見ると、これまではずっとマイナスが続いていた「中小企業の非製造業」がプラスになり、すべての産業で「景気がいい」と実感できる環境になっているのだ。
しかも、「中小企業」だけでなく、今回の景気回復は「地方」にも広がっている。
「地域別でみても、首都圏よりも地方のほうが回復しているんです。もちろん、公共事業の影響もあるんですが、円安で外国人観光客が地方でも増加していて、株高で地方でも消費が盛り上がってきている。小泉政権のときは『輸出主導の回復』でしたが、今回は輸出があまりよくないんですが、個人消費と公共投資、設備投資も少し増えているので、これまでの景気回復とはまったく違います」
就業者の半分以上を占める「中小企業の非製造業」、さらには「地方」でも業況判断がよくなっているということは、景気回復が一部ではなく広範囲に広がっており、底堅いとも言えるのだ。
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