「SAF（持続可能な航空燃料）」関連銘柄を解説！航空業界の脱炭素化に欠かせない「SAF」は、政府も環境整備や開発支援を積極的に進める“国策テーマ”！

バイオマス由来燃料などを原料とした「SAF」は、
航空業界がカーボンニュートラルを実現するための切り札に！

　資源エネルギー庁と国土交通省は2022年4月、持続可能な航空燃料（SAF）の導入促進に向け、共同で「SAF官民協議会」を設立しました。

　SAFとは「Sustainable Aviation Fuel」の頭文字を取った単語で、サトウキビなどのバイオマス由来燃料や、飲食店から出た廃食油などを原料とした航空機向け燃料で、従来の原油由来の燃料に比べて約60〜80％ものCO2削減効果があります。2050年までにカーボンニュートラルを実現するため各業界で脱炭素化の機運が高まっていますが、SAFは航空業界の脱炭素化の切り札として、その利用拡大が必要不可欠と言われています。

　そうした状況のなか、5月26日に、SAFの利用拡大に向けた今後の取り組みなどについて議論するため、「第3回 持続可能な航空燃料（SAF）の導入促進に向けた官民協議会」が資源エネルギー庁で開催されました。その中間取りまとめ（案）では、2030年時点のSAF使用量として「本邦エアラインによる燃料使用量の10％をSAFに置き換える」との目標を設定。この目標達成のため、国際競争力のある国産SAFの開発・製造の推進や、将来的なサプライチェーンの構築などが進められることになりました。

国際競争力のある価格で安定的に「SAF」を供給するため、
今後、日本でも政府による積極的な支援に期待！

　環境推進国である欧州では、欧州域内排出量取引制度（EU-ETS）において、SAFは排出ゼロとして扱い、排出枠の調達は不要とされています。また、EU課税指令では、航空燃料の税率を2023年～2033年にかけて段階的に引上げる一方、2033年までSAFの税率は引き上げず、税制負担ゼロとすることが決まっています。

　日本においても、国際競争力のある価格で安定的にSAFを供給できる体制を構築するための環境整備が必要と思われます。また、SAFの利用・供給目標を法的に設定するとともに、政府による積極的な支援が期待されます。

　そこで今回は「SAF」関連銘柄に注目しました。具体的な銘柄としては、SAFを直接的に製造する企業や、技術・設備面で関わる企業をピックアップ。それらのなかから株価やテクニカル面を考慮して選定しました。

【ユーグレナ（2931）】
ミドリムシ由来のバイオ燃料「サステオ」を政府専用機に供給

　ユーグレナ（2931）は、藻の一種であるミドリムシを活用した食品や化粧品、バイオ燃料の製造・開発、さらには遺伝子解析サービスの提供を行っています。最近では、5月26日〜28日に富士スピードウェイで開催された「NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース」において、次世代バイオディーゼル燃料「サステオ」を供給したマツダ車が、無事24時間完走したことを発表。さらに「サステオ」は、G7広島サミットで自動車業界の展示会会場の発電機に使用されたほか、防衛省が運航する政府専用機へ給油された実績があります。株価は、2月2日につけた1058円をピークに調整が続いていましたが、足元のリバウンドで25日移動平均線を突破。75日・200日移動平均線を捉えており、両線を突破してからの本格的な上昇トレンドへの転換が期待されます。
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【Green Earth Institute（9212）】
木質バイオエタノールの商用化で日本製紙、住友商事と協業

　Green Earth Institute（9212）は、食料や飼料と競合しない植物の茎や葉などを主原料とした、バイオマス由来のアミノ酸やバイオ燃料などの製造を手掛けています。2月3日には日本製紙（3863）、住友商事（8053）と「木質バイオマスを原料とする国内初のセルロース系バイオエタノール」に関する共同検討を開始することに合意したと発表しました。株価は、3月23日につけた高値896円をピークに値動きの少ない膠着した状態が続いていますが、200日移動平均線や52週移動平均線が下値支持線として機能しており、リバウンドを狙いたいところです。

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【ENEOSホールディングス（5020）】
三菱商事と共同でSAFビジネスの早期事業化を目指す

　ENEOSホールディングス（5020）は、石油元売りの最大手です。2022年4月に、三菱商事（8058）とSAFなどの次世代燃料の事業化に向けた共同検討について合意したことを発表。ENEOSホールディングスの技術と三菱商事の原料調達の知見などを生かし、早期の事業化を目指すとのことです。株価は、5月11日にグループ企業のJX金属が株式上場の準備を開始したとの発表を受けて急伸する場面もありましたが、その後は戻り売りに押される展開に。しかし、1月の安値436.4円をボトムとした緩やかな上昇トレンドが続いているので、押し目狙いのスタンスで臨みましょう。

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【伊藤忠エネクス（8133）】
リニューアブル燃料ビジネスに本格参入

　伊藤忠エネクス（8133）は、伊藤忠グループのエネルギー商社です。再生可能資源由来燃料（リニューアブル燃料）を製造する世界最大級のメーカー、フィンランドのNESTEグループとともに陸上輸送分野でのリニューアブル燃料ビジネスに本格参入しており、2022年7月には、西武バスがリニューアブルディーゼルで走る日本初の旅客バスの運行を開始。伊藤忠エネクスは、燃料輸送と給油に係る一連のサプライチェーンの構築を担当しました。株価は、2022年12月の安値997円をボトムに切り上がる13週移動平均線を下値支持線とした強い上昇トレンドを形成。1250円辺りが2015年以降の上値抵抗帯となっており、この水準を明確に上放れてくるようだと上昇の勢いが一段と強まるでしょう。

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【日揮ホールディングス（1963）】
国産SAF製造のサプライチェーン構築を進める

　日揮ホールディングス（1963）は、国内での廃食用油の収集からSAFの製造、輸送・供給に至るまでのサプライチェーン構築に向け、バイオディーゼル燃料を手掛けているレボインターナショナルやコスモ石油とともに事業化検討に取り組んでいます。また、4月からは、28の企業・自治体・団体と共同で、国内資源循環による脱炭素社会の実現に向けたプロジェクト「Fry to Fly Project」を開始しました。株価は、3月17日につけた安値1533円をボトムにリバウンドを見せています。足元で200日移動平均線が上値抵抗線として意識されているので、押し目狙いのスタンスを取りつつ、同線突破を見極めたいところです。

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【三菱重工業（7011）】
米・ボーイング社とSAFなどの研究を協業

　三菱重工業（7011）は2022年7月、米国のボーイングと「持続可能な航空産業の実現」に向けた協業を行う覚書（MOU）を締結しました。両社はSAFのほかにも、水素や電動化、環境に配慮した素材やCO2回収、環境負荷ゼロに貢献する推進技術、新しい機体コンセプトなどの分野で協力体制を構築します。株価は、3月16日につけた底値4439円をボトムに強い上昇トレンドを形成しており、足元で2015年12月以来の水準を回復。2015年6月の高値8050円が意識されます。

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　以上、今回は持続可能な航空燃料「SAF」の関連銘柄を発掘しました。

　なお、政府はSAFについて、2030年時点で、国内向け年間供給量のうち約4割を海外に依存すると見込んでいます。国内調達分だけでは全量を確保できないことが理由ですが、海外依存度を下げるためにも国内のSAF製造施設へのさらなる建設支援が期待されます。
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