「ニッポン中小型株ファンド」が指数を上回る好成績を続ける秘訣とは? スゴ腕ファンドマネージャー・苦瓜達郎さんインタビュー

「ニッポン中小型株ファンド」が指数を上回る好成績を続ける秘訣とは? スゴ腕ファンドマネージャー・苦瓜達郎さんインタビュー

2024年5月18日公開(2024年5月22日更新)
ダイヤモンド・ザイ編集部
facebook-share
twitter-icon
このエントリーをはてなブックマークに追加
RSS最新記事
ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ2024

三井住友DSアセットマネジメントの投資信託「ニッポン中小型株ファンド」のファンドマネージャー・苦瓜達郎さんにインタビュー。同投資信託は「ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ2024」で、日本中小型株部門の最優秀賞に輝いた。

「ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ」は、NISAで買える成績優秀な投資信託をダイヤモンド・ザイ編集部が公平・中立な立場で審査し、表彰するもの。「ニッポン中小型株ファンド」は、時価総額30億円から1000億円程度で、株価が割安な水準にあるバリュー株を中心に投資する。

5年間の成績は89.5%(2024年4月末時点)で、同時期の指数(ラッセル野村・中小型・配当込)の70.6%を大きく上回っている。3年・1年の成績も抜群だ。スゴ腕ファンドマネージャーとして各種メディアにひっぱりだこの苦瓜さんに好成績の秘訣を聞いた。
【※関連記事はこちら!】
【NISA投信グランプリ2024・日本中小型株部門】最優秀賞は成長期待が高い割安株に投資する「ニッポン中小型株ファンド」!

ファンドマネージャー・苦瓜達郎さん「私は中小型株市場のもう“原住民”
なんですよ。だから銘柄は“発掘”しない。選ぶだけなんです」

苦瓜達郎さん苦瓜達郎(にがうり・たつろう)さん●日本中小型株部門 最優秀賞「ニッポン中小型株ファンド」/三井住友DSアセットマネジメント チーフファンドマネージャー。1991年、大和総研に入社。サービス業のアナリストを経て、2002年に大和住銀投信投資顧問(現:三井住友DSアセットマネジメント)に転籍。一貫して中小型株の運用に携わる。

──「ニッポン中小型株ファンド」が成績優秀で、「ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ2024」の日本中小型株部門の最優秀賞を受賞されました。好成績の原動力は、やはり苦瓜さんが運用されているからですか?(笑)

苦瓜 はい、というのは冗談ですが(笑)。自分の目で見て調べて、割安な株を買っていこうという姿勢をひたすらに貫いてきた姿勢が好成績につながったのかなと。

──どのような視点で銘柄を発掘されているのでしょうか?

苦瓜 あ、私は「発掘」しません。アナリスト時代を含めて、もうかれこれ30年近く、中小型株を調査し続けてきました。中小型株市場という「地域」の、もう「原住民」になっちゃったと思っています(笑)。だから、ここの状況はよく知っているし、「顔なじみ」の銘柄も多い。もちろん、新たに上場してきた銘柄のウオッチも欠かしません。

 そうした銘柄の中から、成長性や経営の質が高いと思える銘柄を選びだして、自分が割安と思ったものから順番に買っていき、割安度が薄れたり、割高になったりしたら手放す。そのスタイルを粛々とずっと維持しています。

──成長性や経営の質をどう見極めているのですか?

苦瓜 見極めることは難しいと思っています。見極めるよりなにより、まずはその企業のことをもっと知りたい。だから、経営者の方々に直にお会いして、生の情報をいただき、その会社に対する自分の実感を得るように心がけています。

 そして、できるだけ多くの会社を知りたい。というわけで、中小型株投資信託のファンドマネージャーになってから20年になりますが、年間600~800社程度の企業取材はずっとしていますね。

──たいへんな数ですね! 取材する企業はどう選んでいるのですか?

苦瓜 特に条件は付けていません。とにかく多くの企業に会いたくて、これはと思う会社には積極的にアプローチしています。会社の他の中小型株のファンドマネージャーが「〇〇社を取材する」と言えば、それに便乗して後ろにくっ付いていく(笑)ということもありますね。

【ザイ投信グランプリ2024】を発表!本当にいい投資信託だけ表彰!

「ニッポン中小型株ファンド」は独自の「基準株価」を活用
40%ほど割安なら買って、20%くらいになったら売却する

──資料によれば、「ニッポン中小型株ファンド」は、「一般的なバリュー株に限らず、利益成長や成長の持続性等を勘案したうえで株価水準が割安と考えられる優良な成長株にも投資する」とあります。成長力のある割安株をどうやって見つけるのですか?

苦瓜 そのために独自の「基準株価」を算出しています。現実の株価が基準株価よりも低い銘柄を割安、高い銘柄を割高と判定しています。それに照らし合わせて、割安度が高い順に買っていき、割安度が薄れたり、割高になった銘柄を手放すということですね。

──先ほどもおっしゃっていたように、そこは粛々と進められるわけですね。その「基準株価」とは、証券会社などで発表している「目標株価」のことですか?

苦瓜 私が独自に算出しています。まあ、目標とか適正というと強すぎるイメージになるので、基準という、ちょっとペラッとした表現(笑)にしていますが。

──基準株価の算出方法を教えてください。

苦瓜 1株当たり純利益に、適正PERを掛け合わせています。適正PERは、成長率や成長が見込める期間、成長の確実性、それに財務状況を基にして算出しています。

──適正PERで、先ほどの成長力や成長の持続性を考慮しているというわけですね。

苦瓜 はい。適正PERの例ですが、高成長は望めないものの業績が下向きにはならない銘柄の場合は10倍、一般的な安定成長銘柄は15倍、数年間にわたって30%以上の利益成長が見込める高成長株の場合は50倍という感じです。もちろん、その時々の状況に合わせて変化させていきます。

 売買の基準ですが、基準株価よりも現実の株価が40%くらい割安なら買って、割安度が20%程度に、つまり買った時よりも20ポイントくらい割安度が縮小してきたら売却するという感じですね。もちろん、これはその時々の状況にもよりますが。

──割安度が縮小して手放した後、株価が急騰した銘柄があったら悔しいですね(笑)

苦瓜 まあ(笑)。でも、そこは軸、基本方針がぶれないように心がけています。自らが割安と判断した株に投資して、割高に近づいた銘柄は売却して、次の割安株に投資する。そうしたことの繰り返しですね。

(※編集部注:PERとは、現在の株価が、その企業の利益と比べて、割高か割安かを判断するのに使われる指標。「株価÷1株当たり純利益」で計算する。株価300円で1株当たり純利益が10円の場合はPERは30倍、1株当たり純利益が20円の場合はPERは15倍となる。基本的には数字が大きいほど割高、小さいほど割安と判断される)

苦瓜さん「できるだけ長期の目線で投資しますが
先のことはわからない。予断はしません」

──今回、「ダイヤモンド・ザイ」では3つの基準(成績の上昇度・下がりにくさ・安定度)で評価して、受賞投資信託を選出しました。「ニッポン中小型株ファンド」は、全部門で好成績を獲得し、バランスの良さが際立ちました。特に成績の安定度は高く、大型株に注目が集まった2023年も、他の中小型株投資信託が点数を落とす中、2022年と同じ得点を獲得しています。

ニッポン中小型株ファンド上昇率

苦瓜 そうですね、10年間あれば7、8年くらいは安定的に推移するという自信はあります。

──逆に苦戦する時はどういう時でしょうか?

苦瓜 株価がものすごく上がったり、ものすごく下がったりする時期です。相場がバブル化してPERが高い銘柄でもどんどん買われる時期、先のコロナ禍の時のように、全体相場が低迷して企業の利益予想自体が出ない、出ても信用されない時期は、ともに苦戦します。

──まあ、それはどの投資信託でも同様でしょうね。そうした状況がありうることも踏まえて、どう対応されていくお考えでしょうか?

苦瓜 できる限り、長期の目線で投資していく。でも、先のことはわからないから、業種や為替の影響などさまざまな要素を考えて幅広く分散投資していく。当たり前ですが、こうした姿勢を今後もずっと貫くことが大切だと思っています。「こうなったら株価が上がるだろう」といった予断はしないようにしています。


 「ニッポン中小型株ファンド」の月次レポートでは、組入上位10社の特色や強みが端的にわかる紹介文が掲載されている。これを読むだけでも参考になるが、それに加えて、「ファンドマネージャーコメント」のページも光る。上位10社ではない銘柄について、A4サイズ1ページを使い、その沿革から強み、さらには苦瓜さんが注目している特色などを詳細に説明してくれている。苦瓜さんは「面白さ重視で書いている」というが、これを読み続ければ、あなたも中小型株市場の「住民」になれるかもしれない。

※「ニッポン中小型株ファンド」は2024年5月17日時点で、新規申し込みを一時停止中です。

【※その他の日本中小型株部門受賞ファンドはこちら!】
【NISA投信グランプリ2024・日本中小型株部門】最優秀賞は成長期待が高い割安株に投資する「ニッポン中小型株ファンド」!

※「ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ2024」とは?
月刊マネー誌『ダイヤモンド・ザイ』では毎年、良い投資信託を表彰。第2回となる今回は、“新NISAで買える”好成績のアクティブ型投信30本を表彰した。本グランプリの特徴は、「5年以上の運用成績があり、みんなが買っている分野・投信に限定し、1.どれだけ上がったか(成績)、2.どんな時も下がらない(下がりにくさ)、3.ずっと優等生(成績の安定度)」の3つの基準で選定している点。完全な実力主義で評価し、「個人投資家にとって本当にイイ投資信託」かという点にこだわっている。特別枠として5年未満の好成績投資信託を厳選し、フレッシャー賞を設けている。
詳しい選定基準はこちら
受賞した投資信託全30本のラインナップはこちら
関連記事
ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ[2024年]の記事一覧
今日の注目株&相場見通し!!
【クレジットカード・オブ・ザ・イヤー 2023年版】2人の専門家がおすすめの「最優秀カード」が決定!2021年の最強クレジットカード(全8部門)を公開! 最短翌日!口座開設が早い証券会社は? おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

人気の株500激辛分析
日本株再予測
オルカン入門

8月号6月21日発売
定価780円(税込)
◆購入はコチラ!

楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!Amazonで購入される方はこちら!

[人気株500激辛分析/日本株再予測]
◎巻頭企画
2024年後半の日本株大予測&ドル円も!
プロ74人が再予測

・どうなる日経平均?年末は5万円も!?
・半導体や電機は好調維持!
注目業種&テーマは?

・下値余地は小さいが…新興市場どうなる
円安が恩恵の銘柄も!上がる株・下がる株
再び1ドル160円へ!?ドル円の為替は?


◎第1特集
新NISAで勝つ!オルカン(全世界株型の投資信託)入門
・人気の理由をマンガで理解オルカンって何?
・ハマりがちな落とし穴!オルカンの罠

・正しい使い方でキケンを回避!オルカンのトリセツ
プロ&個人投資家6人
「オルカン+αの投資戦略」


◎第2特集
最新決算で買っていい高配当株は90銘柄!
人気の株500+Jリート14激辛診断

儲かる株の見つけ方[1]旬の3大テーマ
10期減配なし/海外進出株/売上と利益が過去最高
・儲かる株の見つけ方[2]5大ランキング
今期会社予想で大幅増収の株/アナリストが強気な株/配当利回りが高い株
初心者必見の少額で買える株/理論株価よりも割安な株
・儲かる株の見つけ方[3]セクター別平均
配当利回りトップ3に建設が登場
2024年夏のイチオシ株
気になる人気株


◎第3特集
人気の米国株150診断
注目業種を探せ
ハイテク以外で電力・エネルギー・ヘルスケア株が狙い目!
・Big8を定点観測!GAFAM+αを分析!
買いの株!大型優良株/高配当株
・人気株を激辛診断
ナスダック/ニューヨーク証券取引所


【別冊付録】

全上場3912社の最新理論株価
理論株価より割安な株は2610銘柄!

 

◎連載も充実!
◆おカネの本音!VOL.24肉乃小路ニクヨさん
「おカネの知識や女装が幸せに生きるための最強の道具になった」
◆株入門マンガ恋する株式相場!VOL.91
「サイコーの教材は“株バトル”!」
◆マンガどこから来てどこへ行くのか日本国
「なぜやめられない?ギャンブル依存症から家族と家計を守れ!」
◆人気毎月分配型100本の「分配金」速報データ!
「本当の利回りが10%超の投信が前月比で増加!」


>>「最新号蔵出し記事」はこちら!
>>【重要】サーバーメンテナンスに伴うサービスの一時停止のお知らせ


「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!


>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

【法人カード・オブ・ザ・イヤー2023】 クレジットカードの専門家が選んだ 2023年おすすめ「法人カード」を発表! 「キャッシュレス決済」おすすめ比較 太田忠の日本株「中・小型株」アナリスト&ファンドマネジャーとして活躍。「勝つ」ための日本株ポートフォリオの作り方を提案する株式メルマガ&サロン

ダイヤモンド不動産研究所のお役立ち情報

ザイFX!のお役立ち情報

ダイヤモンドZAiオンラインαのお役立ち情報