「ニッポン中小型株ファンド」が指数を上回る好成績を続ける秘訣とは? スゴ腕ファンドマネージャー・苦瓜達郎さんインタビュー
三井住友DSアセットマネジメントの投資信託「ニッポン中小型株ファンド」のファンドマネージャー・苦瓜達郎さんにインタビュー。同投資信託は「ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ2024」で、日本中小型株部門の最優秀賞に輝いた。
「ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ」は、NISAで買える成績優秀な投資信託をダイヤモンド・ザイ編集部が公平・中立な立場で審査し、表彰するもの。「ニッポン中小型株ファンド」は、時価総額30億円から1000億円程度で、株価が割安な水準にあるバリュー株を中心に投資する。
5年間の成績は89.5%(2024年4月末時点)で、同時期の指数(ラッセル野村・中小型・配当込)の70.6%を大きく上回っている。3年・1年の成績も抜群だ。スゴ腕ファンドマネージャーとして各種メディアにひっぱりだこの苦瓜さんに好成績の秘訣を聞いた。
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⇒【NISA投信グランプリ2024・日本中小型株部門】最優秀賞は成長期待が高い割安株に投資する「ニッポン中小型株ファンド」!
ファンドマネージャー・苦瓜達郎さん「私は中小型株市場のもう“原住民”
なんですよ。だから銘柄は“発掘”しない。選ぶだけなんです」
──「ニッポン中小型株ファンド」が成績優秀で、「ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ2024」の日本中小型株部門の最優秀賞を受賞されました。好成績の原動力は、やはり苦瓜さんが運用されているからですか?(笑)
苦瓜 はい、というのは冗談ですが(笑)。自分の目で見て調べて、割安な株を買っていこうという姿勢をひたすらに貫いてきた姿勢が好成績につながったのかなと。
──どのような視点で銘柄を発掘されているのでしょうか?
苦瓜 あ、私は「発掘」しません。アナリスト時代を含めて、もうかれこれ30年近く、中小型株を調査し続けてきました。中小型株市場という「地域」の、もう「原住民」になっちゃったと思っています(笑)。だから、ここの状況はよく知っているし、「顔なじみ」の銘柄も多い。もちろん、新たに上場してきた銘柄のウオッチも欠かしません。
そうした銘柄の中から、成長性や経営の質が高いと思える銘柄を選びだして、自分が割安と思ったものから順番に買っていき、割安度が薄れたり、割高になったりしたら手放す。そのスタイルを粛々とずっと維持しています。
──成長性や経営の質をどう見極めているのですか?
苦瓜 見極めることは難しいと思っています。見極めるよりなにより、まずはその企業のことをもっと知りたい。だから、経営者の方々に直にお会いして、生の情報をいただき、その会社に対する自分の実感を得るように心がけています。
そして、できるだけ多くの会社を知りたい。というわけで、中小型株投資信託のファンドマネージャーになってから20年になりますが、年間600~800社程度の企業取材はずっとしていますね。
──たいへんな数ですね! 取材する企業はどう選んでいるのですか?
苦瓜 特に条件は付けていません。とにかく多くの企業に会いたくて、これはと思う会社には積極的にアプローチしています。会社の他の中小型株のファンドマネージャーが「〇〇社を取材する」と言えば、それに便乗して後ろにくっ付いていく(笑)ということもありますね。
「ニッポン中小型株ファンド」は独自の「基準株価」を活用
40%ほど割安なら買って、20%くらいになったら売却する
──資料によれば、「ニッポン中小型株ファンド」は、「一般的なバリュー株に限らず、利益成長や成長の持続性等を勘案したうえで株価水準が割安と考えられる優良な成長株にも投資する」とあります。成長力のある割安株をどうやって見つけるのですか?
苦瓜 そのために独自の「基準株価」を算出しています。現実の株価が基準株価よりも低い銘柄を割安、高い銘柄を割高と判定しています。それに照らし合わせて、割安度が高い順に買っていき、割安度が薄れたり、割高になった銘柄を手放すということですね。
──先ほどもおっしゃっていたように、そこは粛々と進められるわけですね。その「基準株価」とは、証券会社などで発表している「目標株価」のことですか?
苦瓜 私が独自に算出しています。まあ、目標とか適正というと強すぎるイメージになるので、基準という、ちょっとペラッとした表現(笑)にしていますが。
──基準株価の算出方法を教えてください。
苦瓜 1株当たり純利益に、適正PERを掛け合わせています。適正PERは、成長率や成長が見込める期間、成長の確実性、それに財務状況を基にして算出しています。
──適正PERで、先ほどの成長力や成長の持続性を考慮しているというわけですね。
苦瓜 はい。適正PERの例ですが、高成長は望めないものの業績が下向きにはならない銘柄の場合は10倍、一般的な安定成長銘柄は15倍、数年間にわたって30%以上の利益成長が見込める高成長株の場合は50倍という感じです。もちろん、その時々の状況に合わせて変化させていきます。
売買の基準ですが、基準株価よりも現実の株価が40%くらい割安なら買って、割安度が20%程度に、つまり買った時よりも20ポイントくらい割安度が縮小してきたら売却するという感じですね。もちろん、これはその時々の状況にもよりますが。
──割安度が縮小して手放した後、株価が急騰した銘柄があったら悔しいですね(笑)
苦瓜 まあ(笑)。でも、そこは軸、基本方針がぶれないように心がけています。自らが割安と判断した株に投資して、割高に近づいた銘柄は売却して、次の割安株に投資する。そうしたことの繰り返しですね。
(※編集部注:PERとは、現在の株価が、その企業の利益と比べて、割高か割安かを判断するのに使われる指標。「株価÷1株当たり純利益」で計算する。株価300円で1株当たり純利益が10円の場合はPERは30倍、1株当たり純利益が20円の場合はPERは15倍となる。基本的には数字が大きいほど割高、小さいほど割安と判断される)
苦瓜さん「できるだけ長期の目線で投資しますが
先のことはわからない。予断はしません」
──今回、「ダイヤモンド・ザイ」では3つの基準(成績の上昇度・下がりにくさ・安定度)で評価して、受賞投資信託を選出しました。「ニッポン中小型株ファンド」は、全部門で好成績を獲得し、バランスの良さが際立ちました。特に成績の安定度は高く、大型株に注目が集まった2023年も、他の中小型株投資信託が点数を落とす中、2022年と同じ得点を獲得しています。
苦瓜 そうですね、10年間あれば7、8年くらいは安定的に推移するという自信はあります。
──逆に苦戦する時はどういう時でしょうか?
苦瓜 株価がものすごく上がったり、ものすごく下がったりする時期です。相場がバブル化してPERが高い銘柄でもどんどん買われる時期、先のコロナ禍の時のように、全体相場が低迷して企業の利益予想自体が出ない、出ても信用されない時期は、ともに苦戦します。
──まあ、それはどの投資信託でも同様でしょうね。そうした状況がありうることも踏まえて、どう対応されていくお考えでしょうか?
苦瓜 できる限り、長期の目線で投資していく。でも、先のことはわからないから、業種や為替の影響などさまざまな要素を考えて幅広く分散投資していく。当たり前ですが、こうした姿勢を今後もずっと貫くことが大切だと思っています。「こうなったら株価が上がるだろう」といった予断はしないようにしています。
「ニッポン中小型株ファンド」の月次レポートでは、組入上位10社の特色や強みが端的にわかる紹介文が掲載されている。これを読むだけでも参考になるが、それに加えて、「ファンドマネージャーコメント」のページも光る。上位10社ではない銘柄について、A4サイズ1ページを使い、その沿革から強み、さらには苦瓜さんが注目している特色などを詳細に説明してくれている。苦瓜さんは「面白さ重視で書いている」というが、これを読み続ければ、あなたも中小型株市場の「住民」になれるかもしれない。
※「ニッポン中小型株ファンド」は2024年5月17日時点で、新規申し込みを一時停止中です。
【※その他の日本中小型株部門受賞ファンドはこちら!】
⇒【NISA投信グランプリ2024・日本中小型株部門】最優秀賞は成長期待が高い割安株に投資する「ニッポン中小型株ファンド」!
月刊マネー誌『ダイヤモンド・ザイ』では毎年、良い投資信託を表彰。第2回となる今回は、“新NISAで買える”好成績のアクティブ型投信30本を表彰した。本グランプリの特徴は、「5年以上の運用成績があり、みんなが買っている分野・投信に限定し、1.どれだけ上がったか(成績)、2.どんな時も下がらない(下がりにくさ)、3.ずっと優等生(成績の安定度)」の3つの基準で選定している点。完全な実力主義で評価し、「個人投資家にとって本当にイイ投資信託」かという点にこだわっている。特別枠として5年未満の好成績投資信託を厳選し、フレッシャー賞を設けている。
⇒詳しい選定基準はこちら
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