「ひふみプラス」は復活する? 運用責任者の藤野英人さんに聞く“苦戦のワケ”と“巻き返し策”【特別インタビュー・前編】

「ひふみプラス」は復活する? 運用責任者の藤野英人さんに聞く“苦戦のワケ”と“巻き返し策”【特別インタビュー・前編】

2024年6月1日公開(2024年6月10日更新)
ダイヤモンド・ザイ編集部
facebook-share
twitter-icon
このエントリーをはてなブックマークに追加
RSS最新記事
ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ2024

「ひふみプラス」はかつて中小型の成長株への投資で好成績を残し、国民的人気を博した投資信託。ブームを巻き起こし、NISAでも多くの保有者がいる。ところが、コロナ以は降の運用成績は冴えず、とりわけ足元3年間の成績の悪さが目立つ。

「ひふみプラス」は、月刊マネー誌「ダイヤモンド・ザイ」2024年6月号の「ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ」で、不名誉なことに総合点が下位の「もっとがんばりま賞」に選定されてしまった。

一体ひふみに何が起こっているのか。「ひふみプラス」の運用会社レオス・キャピタルワークスの創業者で、長年「ひふみ投信」シリーズの運用責任者を務めてきた藤野英人さんが、一旦運用から退いたこととも関係がありそうだ。2023年1月に再び運用責任者となり立て直しに挑んでいる。
【※インタビューの後編はこちら!】
「ひふみプラス」は復活する? 立て直しに挑戦中の藤野英人さん「1兆円規模ではまだまだ、10兆円規模を目指す」と意欲【特別インタビュー・後編】

「ひふみプラス」は長期での成績はいいものの
直近3年間はTOPIXに大きく見劣りするほど苦戦が続いている

 「ひふみ投信」は藤野英人さん率いるレオス・キャピタルワークスの看板投資信託。レオス直販の「ひふみ投信」と、証券会社や銀行でも買える「ひふみプラス」がある。名前は違うが、両方とも同じ「ひふみ投信マザーファンド」に投資しているので、運用方針や組入れ銘柄に変わりはない。

「ひふみ投信」は2008年に直販型投資信託として運用開始。2012年には同じ運用で銀行や証券などで買える「ひふみプラス」をリリースし、販売網を広げた。
拡大画像表
※TOPIXは2021年1月のひふみプラスの基準価額に合わせて指数化
拡大画像表示

 「ひふみプラス」は中小型の成長株を中心とした運用で好成績を上げ、2017年にテレビ番組「カンブリア宮殿」で取り上げられると人気が爆発。買い手が増え、日本でも有数の巨大ファンドになった。

 ところが、ここ3年間は成績の悪化が目立ち、TOPIXに対しても負けが続き、苦戦が続いている。​

 一体ひふみに何が起こっているのか。かつての栄光は取り戻せるのか。

 藤野英人さんが2023年1月に復帰して、同年10月に、ひふみ史上最大規模での銘柄入れ替えを断行した。ひふみが得意としてきた中小型株、成長株への偏重を捨て、いまのマーケット環境にあわせて大型割安株の比率を上げたのだ。

 インタビューに応じてくれた藤野英人さんに、新たな策をとことん聞いた。

【ザイ投信グランプリ2024】を発表!本当にいい投資信託だけ表彰!

「ひふみらしさ」へのこだわりが最大の敗因!
藤野英人さんが2年前に運用責任者から外れた理由とは?

──「ひふみプラス」は2021年後半から苦戦しています。何が原因なのでしょうか。

藤野英人(ふじの・ひでと)さん●ひふみ投信の最高投資責任者 資産運用会社を経て2003年レオス・キャピタルワークス創業。中小型・成長株を中心に豊富な運用経験。1年前にひふみ投信の運用責任者に復帰。 写真/高野広美

藤野 ひふみらしさが、この3年間の相場とそぐわなかったためです。

 「ひふみプラス」は、成長する企業に投資する成長株志向が高い。ところが、2021年後半から、グロース株(成長株)は厳しい環境が続いています。代わりに日本では大型バリュー株(割安株)が強い相場になりました。

 このことは社内でも議論があって、バリュー株が強い相場が続いているので比率を上げるべきではないかと。もともと、「ひふみプラス」は成長株の比率が高いのですが、短期のパフォーマンス(成績)も大事です。

 しばらく大型バリュー株相場が続きそうなので、昨年10月にバリュー株の比率を上げました。

──規模(純資産額)が大きくなったことも苦戦している要因では。中小型株に投資する投資信託は、運用に支障をきたさないよう規模に上限を設けているものもあります。

藤野 これは大きく誤解されている点です。ひふみは中小型株投信だと言ったことは一度もありません。もともと日本株のプレーンな投資信託です。中小型株や成長株が比較的好きだという傾向はありますけど。

 組入比率では、中小型株が6割くらいだった時もありますが、いまはその逆で大型株が6~7割。小型株の比率が高ければ、足元ではもっと負けていたでしょう。

──あともう一点。成績悪化の大きな要因に、藤野英人さんが運用責任者でなくなったこともあると思います。2022年4月の時点で、なぜ運用から外れたのでしょうか。

藤野 最大の理由は世代交代したかったからです。ただ渡し方が悪すぎた。マーケットがパッとせず、運用が難しい時期に渡してしまった。

 新しく運用責任者になった佐々木靖人さんは合理的な人。成長株に強いという「ひふみらしさ」に遠慮した面もあったと思います。相場環境にあわせて、大胆にバリュー株にシフトチェンジができませんでした。

 それとメンタル的なこともあったと思います。

 我々は運用成績が悪いと、それはもう罵詈雑言を浴びせられるわけですよ。僕は2000年前後のITバブル崩壊も経験しているし、慣れていますから。

 朝、歯を磨きながらスマホでX(旧ツイッター)を見て、「運用ヘタクソ!」とか「デブ」とか「死ね!」とか書いてあっても、別になんとも思わない。大掴みだし大雑把、ラフでタフな人間です。

 でも彼は僕よりももっと緻密で繊細な人。メンタルケアも含めて、大きくて重たいものを乱暴に渡してしまったという反省があります。

 それでもう一度、僕が引き取って改革を進めることにしました。

ひふみ史上で最大規模の銘柄入れ替え!
4000億円規模の売買で、割安株の比率を上げた

──藤野英人さんが運用責任者に復帰したのが2023年1月。そこからどう改革を進めてきたのでしょうか。

藤野 僕が運用責任者に復帰してからも、佐々木靖人さんには運用担当者としてサポートしてもらっていました。でも、お互いに遠慮してしまうので、9月に担当から完全に外れてもらった。

組入れ上位10銘柄のうち、2023年9月まで割安株は39%だったが、10月には50%に。三菱UFJフィナンシャルグループや三井住友フィナンシャルグループ、NTTといった日本を大乗する大型割安株の比率を上げた。
拡大画像表示

 10月から僕が全面的にコントロールする形でポートフォリオ(資産の構成比)を大きく変えました。

 「ひふみプラス」は小型株と成長株の比率が高いのが特徴で、まさにこの2つの要因で苦戦していた。バリュー株の分析に強い若手アナリストの内藤誠さんらの意見を聞きながら、いまのマーケット環境にあわせて大型株とバリュー株の比率を上げました。

 ポートフォリオの入れ替えで2000億円を売却して、新たに2000億円を買った。4000億円規模のディールはこれまでのひふみ史上でも最大規模です。(後編に続く)

【※インタビューの後編はこちら!】
「ひふみプラス」は復活する? 立て直しに挑戦中の藤野英人さん「1兆円規模ではまだまだ、10兆円規模を目指す」と意欲【特別インタビュー・後編】

【※関連記事はこちら!】
【NISA投信グランプリ2024・もっとがんばりま賞】人気なのに成績が悪い「ひふみプラス」「さわかみ投信」は復活できる?

「ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ2024」 
月刊マネー誌「ダイヤモンド・ザイ」2024年6月号で発表した「ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ」で「ひふみプラス」は、総合点500点満点中で139.2点という低スコアに。不本意な「もっとがんばりま賞」に選ばれてしまった。20年までは優秀だったが、21年以降の悪化が足を引っ張り、(1)成績、(2)下がりにくさ、(3)成績の安定度いずれも平均(5割)に届かなかった。
詳しい選定基準はこちら
受賞した投資信託全30本のラインナップはこちら

※本記事は「ダイヤモンド・ザイ」2024年6月号から一部抜粋・再構成したものです。

関連記事
ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ[2024年]の記事一覧
【クレジットカード・オブ・ザ・イヤー 2023年版】2人の専門家がおすすめの「最優秀カード」が決定!2022年の最強クレジットカード(全8部門)を公開!
【クレジットカード・オブ・ザ・イヤー 2023年版】2人の専門家がおすすめの「最優秀カード」が決定!2021年の最強クレジットカード(全8部門)を公開! 最短翌日!口座開設が早い証券会社は? おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

人気の株500激辛分析
日本株再予測
オルカン入門

8月号6月21日発売
定価780円(税込)
◆購入はコチラ!

楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!Amazonで購入される方はこちら!

[人気株500激辛分析/日本株再予測]
◎巻頭企画
2024年後半の日本株大予測&ドル円も!
プロ74人が再予測

・どうなる日経平均?年末は5万円も!?
・半導体や電機は好調維持!
注目業種&テーマは?

・下値余地は小さいが…新興市場どうなる
円安が恩恵の銘柄も!上がる株・下がる株
再び1ドル160円へ!?ドル円の為替は?


◎第1特集
新NISAで勝つ!オルカン(全世界株型の投資信託)入門
・人気の理由をマンガで理解オルカンって何?
・ハマりがちな落とし穴!オルカンの罠

・正しい使い方でキケンを回避!オルカンのトリセツ
プロ&個人投資家6人
「オルカン+αの投資戦略」


◎第2特集
最新決算で買っていい高配当株は90銘柄!
人気の株500+Jリート14激辛診断

儲かる株の見つけ方[1]旬の3大テーマ
10期減配なし/海外進出株/売上と利益が過去最高
・儲かる株の見つけ方[2]5大ランキング
今期会社予想で大幅増収の株/アナリストが強気な株/配当利回りが高い株
初心者必見の少額で買える株/理論株価よりも割安な株
・儲かる株の見つけ方[3]セクター別平均
配当利回りトップ3に建設が登場
2024年夏のイチオシ株
気になる人気株


◎第3特集
人気の米国株150診断
注目業種を探せ
ハイテク以外で電力・エネルギー・ヘルスケア株が狙い目!
・Big8を定点観測!GAFAM+αを分析!
買いの株!大型優良株/高配当株
・人気株を激辛診断
ナスダック/ニューヨーク証券取引所


【別冊付録】

全上場3912社の最新理論株価
理論株価より割安な株は2610銘柄!

 

◎連載も充実!
◆おカネの本音!VOL.24肉乃小路ニクヨさん
「おカネの知識や女装が幸せに生きるための最強の道具になった」
◆株入門マンガ恋する株式相場!VOL.91
「サイコーの教材は“株バトル”!」
◆マンガどこから来てどこへ行くのか日本国
「なぜやめられない?ギャンブル依存症から家族と家計を守れ!」
◆人気毎月分配型100本の「分配金」速報データ!
「本当の利回りが10%超の投信が前月比で増加!」


>>「最新号蔵出し記事」はこちら!
>>【重要】サーバーメンテナンスに伴うサービスの一時停止のお知らせ


「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!


>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

【法人カード・オブ・ザ・イヤー2023】 クレジットカードの専門家が選んだ 2023年おすすめ「法人カード」を発表! 「キャッシュレス決済」おすすめ比較 太田忠の日本株「中・小型株」アナリスト&ファンドマネジャーとして活躍。「勝つ」ための日本株ポートフォリオの作り方を提案する株式メルマガ&サロン

ダイヤモンド不動産研究所のお役立ち情報

ザイFX!のお役立ち情報

ダイヤモンドZAiオンラインαのお役立ち情報