「ひふみプラス」は復活する? 運用責任者の藤野英人さんに聞く“苦戦のワケ”と“巻き返し策”【特別インタビュー・前編】

「ひふみプラス」は復活する? 運用責任者の藤野英人さんに聞く“苦戦のワケ”と“巻き返し策”【特別インタビュー・前編】

2024年6月1日公開(2024年8月20日更新)
ダイヤモンド・ザイ編集部
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「ひふみプラス」はかつて中小型の成長株への投資で好成績を残し、国民的人気を博した投資信託。ブームを巻き起こし、NISAでも多くの保有者がいる。ところが、コロナ以は降の運用成績は冴えず、とりわけ足元3年間の成績の悪さが目立つ。

「ひふみプラス」は、月刊マネー誌「ダイヤモンド・ザイ」2024年6月号の「ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ」で、不名誉なことに総合点が下位の「もっとがんばりま賞」に選定されてしまった。

一体ひふみに何が起こっているのか。「ひふみプラス」の運用会社レオス・キャピタルワークスの創業者で、長年「ひふみ投信」シリーズの運用責任者を務めてきた藤野英人さんが、一旦運用から退いたこととも関係がありそうだ。2023年1月に再び運用責任者となり立て直しに挑んでいる。
【※インタビューの後編はこちら!】
「ひふみプラス」は復活する? 立て直しに挑戦中の藤野英人さん「1兆円規模ではまだまだ、10兆円規模を目指す」と意欲【特別インタビュー・後編】

「ひふみプラス」は長期での成績はいいものの
直近3年間はTOPIXに大きく見劣りするほど苦戦が続いている

 「ひふみ投信」は藤野英人さん率いるレオス・キャピタルワークスの看板投資信託。レオス直販の「ひふみ投信」と、証券会社や銀行でも買える「ひふみプラス」がある。名前は違うが、両方とも同じ「ひふみ投信マザーファンド」に投資しているので、運用方針や組入れ銘柄に変わりはない。

「ひふみ投信」は2008年に直販型投資信託として運用開始。2012年には同じ運用で銀行や証券などで買える「ひふみプラス」をリリースし、販売網を広げた。
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※TOPIXは2021年1月のひふみプラスの基準価額に合わせて指数化
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 「ひふみプラス」は中小型の成長株を中心とした運用で好成績を上げ、2017年にテレビ番組「カンブリア宮殿」で取り上げられると人気が爆発。買い手が増え、日本でも有数の巨大ファンドになった。

 ところが、ここ3年間は成績の悪化が目立ち、TOPIXに対しても負けが続き、苦戦が続いている。​

 一体ひふみに何が起こっているのか。かつての栄光は取り戻せるのか。

 藤野英人さんが2023年1月に復帰して、同年10月に、ひふみ史上最大規模での銘柄入れ替えを断行した。ひふみが得意としてきた中小型株、成長株への偏重を捨て、いまのマーケット環境にあわせて大型割安株の比率を上げたのだ。

 インタビューに応じてくれた藤野英人さんに、新たな策をとことん聞いた。

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「ひふみらしさ」へのこだわりが最大の敗因!
藤野英人さんが2年前に運用責任者から外れた理由とは?

──「ひふみプラス」は2021年後半から苦戦しています。何が原因なのでしょうか。

藤野英人(ふじの・ひでと)さん●ひふみ投信の最高投資責任者 資産運用会社を経て2003年レオス・キャピタルワークス創業。中小型・成長株を中心に豊富な運用経験。1年前にひふみ投信の運用責任者に復帰。 写真/高野広美

藤野 ひふみらしさが、この3年間の相場とそぐわなかったためです。

 「ひふみプラス」は、成長する企業に投資する成長株志向が高い。ところが、2021年後半から、グロース株(成長株)は厳しい環境が続いています。代わりに日本では大型バリュー株(割安株)が強い相場になりました。

 このことは社内でも議論があって、バリュー株が強い相場が続いているので比率を上げるべきではないかと。もともと、「ひふみプラス」は成長株の比率が高いのですが、短期のパフォーマンス(成績)も大事です。

 しばらく大型バリュー株相場が続きそうなので、昨年10月にバリュー株の比率を上げました。

──規模(純資産額)が大きくなったことも苦戦している要因では。中小型株に投資する投資信託は、運用に支障をきたさないよう規模に上限を設けているものもあります。

藤野 これは大きく誤解されている点です。ひふみは中小型株投信だと言ったことは一度もありません。もともと日本株のプレーンな投資信託です。中小型株や成長株が比較的好きだという傾向はありますけど。

 組入比率では、中小型株が6割くらいだった時もありますが、いまはその逆で大型株が6~7割。小型株の比率が高ければ、足元ではもっと負けていたでしょう。

──あともう一点。成績悪化の大きな要因に、藤野英人さんが運用責任者でなくなったこともあると思います。2022年4月の時点で、なぜ運用から外れたのでしょうか。

藤野 最大の理由は世代交代したかったからです。ただ渡し方が悪すぎた。マーケットがパッとせず、運用が難しい時期に渡してしまった。

 新しく運用責任者になった佐々木靖人さんは合理的な人。成長株に強いという「ひふみらしさ」に遠慮した面もあったと思います。相場環境にあわせて、大胆にバリュー株にシフトチェンジができませんでした。

 それとメンタル的なこともあったと思います。

 我々は運用成績が悪いと、それはもう罵詈雑言を浴びせられるわけですよ。僕は2000年前後のITバブル崩壊も経験しているし、慣れていますから。

 朝、歯を磨きながらスマホでX(旧ツイッター)を見て、「運用ヘタクソ!」とか「デブ」とか「死ね!」とか書いてあっても、別になんとも思わない。大掴みだし大雑把、ラフでタフな人間です。

 でも彼は僕よりももっと緻密で繊細な人。メンタルケアも含めて、大きくて重たいものを乱暴に渡してしまったという反省があります。

 それでもう一度、僕が引き取って改革を進めることにしました。

ひふみ史上で最大規模の銘柄入れ替え!
4000億円規模の売買で、割安株の比率を上げた

──藤野英人さんが運用責任者に復帰したのが2023年1月。そこからどう改革を進めてきたのでしょうか。

藤野 僕が運用責任者に復帰してからも、佐々木靖人さんには運用担当者としてサポートしてもらっていました。でも、お互いに遠慮してしまうので、9月に担当から完全に外れてもらった。

組入れ上位10銘柄のうち、2023年9月まで割安株は39%だったが、10月には50%に。三菱UFJフィナンシャルグループや三井住友フィナンシャルグループ、NTTといった日本を大乗する大型割安株の比率を上げた。
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 10月から僕が全面的にコントロールする形でポートフォリオ(資産の構成比)を大きく変えました。

 「ひふみプラス」は小型株と成長株の比率が高いのが特徴で、まさにこの2つの要因で苦戦していた。バリュー株の分析に強い若手アナリストの内藤誠さんらの意見を聞きながら、いまのマーケット環境にあわせて大型株とバリュー株の比率を上げました。

 ポートフォリオの入れ替えで2000億円を売却して、新たに2000億円を買った。4000億円規模のディールはこれまでのひふみ史上でも最大規模です。(後編に続く)

【※インタビューの後編はこちら!】
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月刊マネー誌「ダイヤモンド・ザイ」2024年6月号で発表した「ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ」で「ひふみプラス」は、総合点500点満点中で139.2点という低スコアに。不本意な「もっとがんばりま賞」に選ばれてしまった。20年までは優秀だったが、21年以降の悪化が足を引っ張り、(1)成績、(2)下がりにくさ、(3)成績の安定度いずれも平均(5割)に届かなかった。
詳しい選定基準はこちら
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※本記事は「ダイヤモンド・ザイ」2024年6月号から一部抜粋・再構成したものです。

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