「ひふみプラス」は復活する? 立て直しに挑戦中の藤野英人さん「1兆円規模ではまだまだ、10兆円規模を目指す」と意欲【特別インタビュー・後編】

「ひふみプラス」は復活する? 立て直しに挑戦中の藤野英人さん「1兆円規模ではまだまだ、10兆円規模を目指す」と意欲【特別インタビュー・後編】

2024年6月8日公開(2024年6月10日更新)
ダイヤモンド・ザイ編集部
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ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ2024

アベノミクスが始まり、2013年からの5年間はバツグンの成績を残した投資信託「ひふみプラス」。ブームを巻き起こし、NISAでも多くの保有者がいる。ところが、コロナ以降の運用成績は冴えず、とりわけ足元3年間の成績の悪さが目立つ。

「ひふみプラス」は、月刊マネー誌「ダイヤモンド・ザイ」2024年6月号の「ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ」で、不名誉なことに総合点が下位の「もっとがんばりま賞」に選定されてしまった。

「ひふみ投信」の顔である藤野英人さんは「ひふみらしさへのこだわりが最大の敗因」と語る。2023年1月に復帰し、立て直しに挑んでいる藤野英人さんに、前編に続き話を聞いた。
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ひふみは大型株にシフト!
コロナ禍の3年間で日本の大企業が変化した

藤野英人(ふじの・ひでと)さん●ひふみ投信の最高投資責任者 資産運用会社を経て2003年レオス・キャピタルワークス創業。中小型・成長株を中心に豊富な運用経験。1年前にひふみ投信の運用責任者に復帰。 写真/高野広美

──ひふみといえば、小型株に強いイメージですが、今回は大型株の比率が増えたんですね。

藤野 過去、ひふみが大型株を選好してこなかったのは、日本の大企業はスリーピング&ボアリング(眠たくて退屈)な企業が多かったから。これがコロナを経験した3年間で大きく変わりました。経済活動が停滞し、それまでの企業カルチャーが壊れていく中で、企業の中に危機バネができた。

 2022年後半から2023年にかけて、大企業の経営陣は団塊の世代からその下の世代へと政権交代が進みました。いまはトヨタ自動車もソニーグループもJR東日本も、社長は50代です。

 実際にお会いした第一生命ホールディングスの菊田徹也社長や、三越伊勢丹ホールディングスの細谷敏幸社長は、老舗企業の社長という印象とはほど遠く起業家マインドをお持ちでした。経営計画では新しいビジネスモデルを掲げ、数値目標も積極的です。

 こうした日本の大企業の質的な変化は捉えないといけません。

──一方で「ひふみプラス」は海外株にも相変わらず投資をしています。

藤野 「ひふみプラス」は海外株を5~15%組入れる設計です。もとは日本の大型株の成長の不足を米国大型株で埋めたくて始めました。

 海外株の比率が15%くらいだった時期もありましたが、最近は日本に成長する銘柄が増えてきたので8%程度に下がっています。

 ただエヌビディアとか、肥満症薬が強みのイーライ・リリーとか、日本には見当たらないビジネスをやっている銘柄は入れています。

 運用の連続性も大事なので、海外株も一定程度は入れていきます。

──3月には小型株に特化した「ひふみマイクロスコープpro」を出しました。中小型株が多かった以前のひふみ投信に近いものでしょうか。

藤野 「ひふみマイクロスコープpro」は小型株ばかりに投資します。それがいい人は、こちらを選択してください。

──「ひふみプラス」のほうは純資産額が大きくなって、成長株も割安株も大型株も、さらに海外株も入っている。特徴がわかりづらくなりました。

藤野 イケてる経営者や成長企業に投資するという原則は変わりません。株価が割安なので割安株という括りですが、成長株になりうる、つまり業績が伸びて株価が上がる可能性のある銘柄に投資しています。

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ひふみは社長クラスにはまだ無名の存在!?
1兆円では規模が小さい、10兆円を目指したい

藤野 あと強調したいのは1兆円という規模はむしろ小さい。もっと大きく10兆円規模にしたいと思っている。

 これは残念な事実ですが、いまのひふみの規模は投資企業に対するインパクトが小さい。ブラックロックとかフィデリティとか世界の名だたる運用会社に比べると、我々のサイズは小さすぎる。だから大企業の社長にはなかなか会えないのが実情です。

 持ち株会社のSBIレオスひふみが上場したこともあり、僕も経団連に入りました。パーティーで名刺交換をしても「ひふみって何をやっている会社ですか?」と聞かれてしまう。

 同じ運用業界や大手企業でもCFO(最高財務責任者)には知られていますが、社長クラスにはまだ無名の存在です。

 もっと大きく投資をして社長と面会できるようになれば、よりいろんな話が聞けるし、こちらからも資本効率を上げてほしいとか株主として提案しやすくなります。

──規模の大きさと運用成績は両立するということですか。

藤野 日本のアクティブ型の投資信託は、兆円サイズの規模のものがもっとたくさんあってもいい。日本株型の中では、ひふみだけがサイズが大きくて目立っていますが、海外にはファンドの規模と運用成績は関係ないという論文もあります。

──この先の具体的な改革案について教えてください。

藤野 昨年10月にポートフォリオをガラッと入替えて、形としてはひとまず落ち着きました。あとはいかに勝ちを積み上げていくか。年初~3月末の成績ではTOPIXに勝っています。メンバーとともに、いい個別銘柄を発掘していくという運用スタイルは以前と変わりません。

2023年10月に大胆に銘柄を入れ替えるまで、成長株と小型株の比率が多かったため、TOPIXに対し運用成績(月間騰落率)で負けが続いていた。10月以降は勝ち星をとる回数が増え、負け幅も縮小。2024年年初から3月末までの累積リターンはTOPIXを上回った。しかし、4月は組入れている米国株が不調で対TOPIXでは負け、5月も下回る結果に。
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ひふみの後継者問題は一旦置いて、
藤野英人さんは当面、運用に専念していく

──後継者の育成が最大の課題として残りました。藤野さんはいつまで運用責任者を続けるのでしょうか。

藤野 一度、僕が運用責任者に戻ったからにはすぐに辞めるつもりはありません。

 まずはちゃんとマーケットの中で勝てるようになって、「やっぱりひふみっていいよね」という評価を取り戻したい。その次に内藤誠さん(株式戦略部シニア・アナリスト)とか若手メンバーの成長を見て考えます。いまこの瞬間はむしろ後継者問題については考えないようにしています。当面は運用に専念します。【完】


 当面は運用に専念するという藤野さんの意思表示は、「ひふみ投信」「ひふみプラス」の保有者にとってはうれしいのではないだろうか。投資信託は、長期目線で投資するもので、短期の成績が悪いからといってすぐに売る必要はない。ただ、今後も成績悪化が続くのであれば乗り換えの検討も。私たち個人投資家は、定期的に成績を注視していく必要がある。

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「ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ2024」 
月刊マネー誌「ダイヤモンド・ザイ」2024年6月号で発表した「ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ」で「ひふみプラス」は、総合点500点満点中で139.2点という低スコアに。不本意な「もっとがんばりま賞」に選ばれてしまった。20年までは優秀だったが、21年以降の悪化が足を引っ張り、(1)成績、(2)下がりにくさ、(3)成績の安定度いずれも平均(5割)に届かなかった。
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※本記事は「ダイヤモンド・ザイ」2024年6月号から一部抜粋・再構成したものです。

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