<6638> Mimaki 1649 +12
ミマキエンジニアリング<6638>は、産業用インクジェットプリンタ、カッティングプロッタ、フルカラー3Dプリンタなどを手掛ける開発型メーカーであり、売上の7割超を海外が占めるグローバル企業である。プリンタ本体だけでなく、プリンタ本体に付加価値をもたらすインク、ソフトウェアも最適なものを独自開発し、一体的に提供している。同社製品はプラスチック、ガラス、木、布など多種多様な素材にプリントでき、100万円台-1,500万円ぐらいまで、プリントスピードや大きさ、搭載するインクにより多様となっている。同社の事業はSG(サイングラフィックス)、IP(インダストリアルプロダクツ)、TA(テキスタイル・アパレル)を主軸とし、「紙以外のものへのデジタル印刷」という明確なポジションを確立している。
同社の競争優位の中核は、インクジェットプリンタの心臓部であるヘッド制御技術にある。ヘッド自体は自社開発ではなく、国内外の複数メーカーから調達しているが、用途・素材・印刷品質要件に応じて最適なヘッドを選定し、それを精緻に制御する技術に強みを持つ。特に紙以外の素材では、薄膜フィルムの伸縮や歪み、搬送時の不安定さを克服する高度な制御が不可欠であり、同社はこの領域で多くの特許を保有している。長年取り組んできたUVプリント分野においても、紫外線硬化プロセスやインク挙動に関する技術蓄積が他社との差別化につながっている。
ビジネスモデルの観点では、装置販売に加え、インクおよび保守・部品といったストック型収益の積み上がりが特徴的である。直近の売上構成は、製品本体35%、インク40%、保守・部品9%、その他14%となっており、ストック収益比率は約5割に達する。単一市場だと製品ライフサイクルの狭間で売上に谷ができるが、同社ではSG、IP、TA市場向けに毎年順番に新製品を投入(位相差投入)し、常に右肩上がりの売上構造を形成している。また、装置導入後も継続的にインク需要が発生するため、台数の積み上がりが中長期的な収益安定性を支える構造となっている。
市場別に見ると、SG市場ではローランドDGと中高価格帯で激しい競争を続けている。販売台数ベースのシェアは調査機関によって変動があるものの、同社は高付加価値製品を主力としているため、台数ベースでは見劣りする場合がある。一方、IP市場では小型フラットベッドUVプリンタ(UJFシリーズ)を中心に、立体物・小物への高付加価値印刷で強いポジションを築いてきた。ただ、足元では後継機投入の空白期間が影響し、業績面では一時的な弱さが顕在化している。TA市場では、Tシャツ向けを中心としたDTF(Direct to Film)が過去2年ほど成長を牽引してきたが、2025年春先以降、国内の競合参入が増加し、価格競争が激化している。ただ、同社は品質・ランニングコスト面等で優位性を強調しており、現時点で市場全体を大きく侵食する動きは限定的との認識を示している。
2026年3月期第2四半期決算は売上高39,379百万円(前年同期比3.8%減)、営業利益3,990百万円(同15.1%減)で着地した。製品市場別は、SGはエコソルベントモデルやUV-DTFが堅調に推移。IPは新製品の端境期にあたり主に小型FB (フラットベッド)モデルが減少TAはDTFモデルの販売が競争激化により減収、FAは大幅な減少となった。一方、インク・本体機種においてプロダクトミックスの改善が進捗したこと等、原価低減活動の定着は奏功した。
通期業績予想は下方修正しており、売上高82,500百万円(従来計画88,600百万円、前期比1.7%減)、営業利益8,500百万円(同9,200百万円、同6.7%減)を見込んでいる。背景には、春先の米国政治動向を受けた顧客の設備投資先送りに加え、IP市場での製品更新遅れ、TA市場での競争環境変化が重なったことがある。特にTA市場向けでは、展示会シーズン(春・秋)に合わせた新製品投入が一部遅延し、今期下期に予定していた複数機種の上市が来期にずれ込む見通しとなっている。ただ、需要消失ではなく、来期以降に売上として顕在化する可能性が高い。
中期経営計画「MI30」では、売上高CAGR10%以上を継続し、2030年3月期に売上高1,500億円、営業利益率8%以上を目指す方針を掲げている。成長の軸はあくまでSG・IP・TAのコア3市場であり、3DプリンタやFA事業は現時点では業績寄与は小さいものの、プリンタ前後工程の自動化や新市場開拓を通じたシナジー創出の役割を担う。高粘度インクへの対応や新素材への印刷など、IP市場を中心に新たな用途拡張も進めており、加えてフレキシブル有機ELシートやセカンドブランドによる周辺機器展開など、次の成長オプションも仕込み段階にある。新製品売上高比率 (NPVI)は30%の達成を目指す。市場自体もSG市場はデジタル化の進展により緩やかな成長、IP・TA市場は年率2桁程度の成長が見込める。中でも「紙以外のデジタル化」という構造変化は長期的に続くテーマであり、用途の広がりとともに同社の技術優位性が発揮される余地は大きい。
株主還元については、明確な数値目標は掲げていないものの、業績の成長に見合った成果の配分を安定的かつ継続的に実施している。また、東証からのIR強化要請も踏まえ、今後は機関投資家・個人投資家の双方に対する情報発信を強化し、市場認知度の向上に取り組む方針。「印刷=紙」という固定観念が市場に残っている点を課題と捉えており、同社の技術ポテンシャルや事業領域の広さを積極的に訴求していく考えを示した。
総じて、足元は製品サイクルの端境期や競争環境の変化により調整局面にあるものの、ヘッド制御技術を核とした差別化、ストック型収益モデル、グローバルに分散した市場基盤を踏まえれば、中長期的な成長ストーリーに大きな毀損はないと評価できる。MI30の進捗と、新製品投入によるIP・TA市場の回復度合いが、今後の注目点となろう。
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