「つみたてNISA(積立NISA)」は、年間40万円までの積立投資による運用益がすべて非課税になる、新しいタイプのNISA(少額投資非課税制度)です。
いよいよ「つみたてNISA」がスタートする2018年1月が近づいてきて、「つみたてNISA」を利用すべきかどうか、悩んでいる人は少なくないでしょう。
そこで今回は、「つみたてNISA」を利用したほうがいいのはどんな人なのか、反対に「つみたてNISA」よりも、従来の「NISA」や「iDeCo(個人型確定拠出年金)」を使ったほうがいい人もいるのかなど、「つみたてNISA」との相性、向き・不向きについてお話したいと思います。
自営業者、50代半ば過ぎ、20~30代の若い世代など、
「つみたてNISA」はさまざまな人に向いている制度
最初に言ってしまいますが、「つみたてNISA」にまったく向いていないという人はあまりいません。積立投資専用のNISAなので、少額からコツコツと資産を増やしていけて、従来の「NISA」の非課税期間5年に比べると、20年という各段に長い期間にわたって非課税のメリットを受けられるため、さまざまな活用の仕方が考えられるからです。
とはいえ、同じ「積立投資」をするなら、「つみたてNISA」と同じく株の利益が非課税になるうえに、「つみたてNISA」とは違って「所得控除」という大きなメリットも受けられる「iDeCo(個人型確定拠出年金)」を優先すべきです。
しかし「iDeCo」は、積み立てられる金額に限度があります(会社員なら掛金の上限が月1万2000円~2万3000円など、職業などによって異なる)。「つみたてNISA」は、「iDeCo(や国民年金基金など)」と併用して長期の積み立て投資で老後の資金をさらに確保したい人にも向いています。
また「つみたてNISA」と比較すると、「iDeCo」には「60歳までしか積立ができない」「60歳にならないと掛金を引き出せない」というデメリットがあります。
つまり、これらの「iDeCo」のデメリットを容認できない人で、従来の「NISA」よりも長期間の運用をしたい人、もしくは現時点でまとまった資金がないものの少額を積立投資したい人には「つみたてNISA」が向いていると言えます。
【※関連記事はこちら!】
⇒「iDeCo」「NISA」「つみたてNISA」の中で、最も優先すべきなのは節税メリットが高い「iDeCo」だ!60歳までに必要ない資金は必ずiDeCoで運用しよう!
一方、「預貯金がない人」は「つみたてNISA」だけでなく「iDeCo」も後回しにしたほうがいいでしょう。「つみたてNISA」はあくまで投資制度です。そして、投資に「絶対」はありません。何かあったときに備える預貯金がまったくない状態で、「つみたてNISA」を使って投資しようというのは避けてください。
では、前述した「つみたてNISA」に向いている人の例を、具体的に挙げてみましょう。
(1)自分で「3階建て」の年金を作りたい自営業の人
(2)50代半ば以降で老後資金を積み立てていきたい人
(3)20~30代でまだライフプランが定まっていない人
ここからはひとつずつ詳しく見ていきましょう。
【「つみたてNISA」が向いている人(1):自営業の人】
「3階建て」の年金受給の仕組みを自分で作れる!
「つみたてNISA」が向いている人のうち、最初に取り上げるのは「自営業者」、別の言い方をすれば「国民年金の第1号被保険者」です。
会社員など第2号被保険者の年金制度は、「国民年金+厚生年金+企業型拠出年金(または確定給付型年金)」のいわゆる「3階建て」になっています。これに対して、自営業者の場合は何もしなければ「国民年金」だけの「1階建て」です。
「1階建て」のみでは、老後資金としてあまりに心もとない状況です。そこで、「2階建て」部分として「国民年金基金」がありますが、「国民年金基金」は年金が終身で受け取れるメリットがある一方、インフレリスクには弱いという側面があります。
プラスαとして、20年間にわたって非課税で運用していける「つみたてNISA」を活用すれば、インフレリスクに備えつつ自分で「3階建て」の年金を作ることが可能になります。「国民年金+国民年金基金+つみたてNISA」で「3階建て」。つまり、自営業の人にとって「つみたてNISA」は非常にはまりやすい制度と言えるのです。
なお、ここでは「2階建て」部分として、「iDeCo(個人型確定拠出年金)」ではなく「国民年金基金」を取り上げました。その理由は、人生100年と言われる時代、一生涯のキャッシュフローを確保するという観点では、5年以上20年以下の有期年金か一時金で受け取るiDeCoよりも、生涯年金を受け取れる国民年金基金のほうがよいのではないかと考えたためです(第1号被保険者の場合、国民年金基金とiDeCoは合算して年額81万6000円が限度。限度内であれば併用も可)。
【「つみたてNISA」が向いている人(2):50代半ば以降の人】
60歳以降も定期的に積み立てて、老後資金を作っていける!
50代半ば以降で、コツコツ積み立てて老後資金を作っていきたい人にとっても、「つみたてNISA」は使い勝手のいい制度です。
自分で老後資金を作っていく制度と言えば、まずiDeCo(個人型確定拠出年金)が思い浮かびます。しかし、iDeCoは60歳までしか掛金を拠出することができません。そのため、50代、それも半ば以降となると、わずかな期間しか掛金を拠出することができません。
一方で、私たちの就労期間は以前に比べて延びているため、50代半ばあるいは60歳を過ぎても、働いている間は積み立てを続けて老後資金を作っていきたいと考える人は多いでしょう。そうした人たちにも、「つみたてNISA」はマッチしやすい制度と言えます。
もちろん、60歳まではiDeCoが使えますので、60歳まではiDeCo→60歳を過ぎたら「つみたてNISA」という「リレー方式」で老後資金を作っていくという使い方でも構いません。60歳を超えてからも、それまでに貯めたお金を少しずつ「つみたてNISA」で運用に回していけば、75歳以降の後期高齢者時代に備えることが可能です。
【「つみたてNISA」が向いている人(3):20~30代の若い世代】
将来の夢が変わったときなどにいつでもお金を引き出せる!
20~30代でまだライフプランが定まっていない、今後やりたいことや夢が変わっていくかもしれないという人には、iDeCoよりもまず「つみたてNISA」で資産を作るのが向いていると言えそうです。
前述のように、「iDeCoは運用益が非課税なだけでなく、掛金が全額所得控除になるので「つみたてNISA」よりも圧倒的に有利な制度ですが、iDeCoでは60歳まで掛金の払い出しが一切できないことを忘れてはいけません。
今後、ライフプランを変更しようと急にまとまったお金が必要になった場合、「つみたてNISA」ならそれまでに積み立てて運用したお金を払い出して、新しい夢やチャレンジに使うことができます。しかし、iDeCoだと口座にはお金があっても引き出すことができません。かと言って、金利の高いローンで資金を用意するという選択が望ましくないのは言うまでもないことです。
そう考えると、ライフプランがある程度はっきりしてくるまでは、「つみたてNISA」のほうが安心ではないかと個人的には考えます。iDeCoは掛金が全額所得控除になるという「入口」の節税効果にばかりに目が行きがちですが、60歳まで払い出せないという「出口」のことも考えて慎重に選択する必要があります。
逆に、若い世代でもある程度ライフプランや将来のことが決まっているのであれば、「iDeCo」を優先したほうが有利でしょう。
教育費、住宅資金など、将来のライフイベントの資金には、
「つみたてNISA」が向いていないケースもあるので注意!
さて、ここまで「つみたてNISA」に向いている人を紹介してきましたが、逆にあまり向いていないのはどんな人でしょうか?
「つみたてNISA」を使って、子どもの教育費用や住宅購入の資金など「近い将来のライフイベント」のお金を作りたいと考えている人も多いでしょう。しかし、近い将来のライフイベントには「つみたてNISA」は必ずしも向いているとは言えません。
なぜなら、使いたいときに必ず利益が積み上がっていて資産が増えているとは限らないからです。今のように、株式市場が好調だとどうしても「運用益が増えていくはず」と思いがちですが、甘い見込みでは失敗するリスクがあります。
5年以内の「近い将来」のライフイベントの場合は、金利が低くても安全確実なもので資金を準備するようにしてください。一方、10年以上先であれば、「つみたてNISA」を活用して資金を準備しても構わないでしょう。たとえば、教育資金の準備なら、18歳まで払い出し制限のある「ジュニアNISA」よりも、「つみたてNISA」のほうが使いやすいと言えます。
ただし、10年以上先のライフイベントであっても「つみたてNISA」だけに資金を頼るのは避けてください。ベースに預貯金や、教育資金の場合なら学資保険などを用意した上で、プラスαとして「つみたてNISA」を活用するというスタンスが安全です。
「『つみたてNISA』が最も向いていない人」とは、
一定額以上の預貯金の確保ができていない人
近い将来のライフイベントの資金を目的とする人以上に「つみたてNISA」を始めるのに向いていないのが、冒頭でも説明したとおり、「預貯金がまったくない人」です。向いていないと言うか、そんな人は「つみたてNISA」に限らず、すべての投資をやってはいけません。
では、最低いくらの預貯金があれば「つみたてNISA」を始めてもよいでしょうか。
ひとつの目安と言えるのが、生活費の4ヵ月分の預貯金の確保です。なぜ4ヵ月分かと言えば、自己都合で会社を退職した場合、失業保険の給付が受けられるのが約4ヵ月後(待期期間7日間+3ヵ月)だからです。つまり、会社を辞めて失業保険がもらえるまでの生活費分くらいは確保しておいた上で、初めて投資に一歩踏み出してよいということです。
さて、「つみたてNISA」は従来の「NISA」とは併用ができず、どちらかを選ぶ必要があります。自分には「つみたてNISA」と従来の「NISA」のどちらが向いているのかで悩む人もいるのではないでしょうか。実は今回紹介した「つみたてNISA」に向いている人のなかにも、従来の「NISA」のほうが向いている人もいます。
そこで次回は、「つみたてNISA」と従来の「NISA」のどちらを選べばいいのか、従来の「NISA」から「つみたてNISA」に切り替える場合はどうしたらよいのかなどを解説します。
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⇒つみたてNISA(積立NISA)を始めるなら、おすすめの証券会社はココだ!手数料や投資信託の取扱数などで比較した「つみたてNISA」のおすすめ証券会社とは?
(構成:肥後紀子)
ファイナンシャルリサーチ代表。AFP、1級ファイナンシャルプランニング技能士。クレジット会社勤務を3年間経て1989年4月に独立系FP会社に入社。1996年1月に独立し、現職。あらゆるマネー商品に精通し、わかりやすい解説に定評がある。主な著書に『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない』『ジュニアNISA入門』(ダイヤモンド社)など多数。
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※手数料などの情報は定期的に見直しを行っていますが、更新の関係で最新の情報と異なる場合があります。最新情報は各証券会社の公式サイトをご確認ください。売買手数料は、1回の注文が複数の約定に分かれた場合、同一日であれば約定代金を合算し、1回の注文として計算します。投資信託の取扱数は、各証券会社の投資信託の検索機能をもとに計測しており、実際の購入可能本数と異なる場合が場合があります。※1 年会費無料のクレジットカードの場合。※2 1約定ごとプランで約定金額240万円までの売買手数料。 |