「つみたてNISA(積立型の少額投資非課税制度)」は、年間40万円の投資金額を上限として最長20年間にわたり積立投資ができ、利益が非課税になるお得な制度です。年間の投資金額の枠が比較的少額ということと、積立期間が長期間であることから、どちらかと言えば「若年層向け」の印象を持つ人もいるのではないでしょうか。
しかし、「つみたてNISA」は、50代半ば以降のリタイア準備世代や、60歳以降のリタイア層にもおすすめできます。今回はその理由や、実際に投資する商品の選び方など、50代後半からの「つみたてNISA」活用法について詳しくお話ししましょう。
【※20代~40代の人の「つみたてNISA」活用法はこちら!】
⇒「つみたてNISA」は少額で投資が始められ、いつでも引き出せる、若年層&投資初心者にピッタリの制度!時間を味方にして、長期の積立で資産運用を始めよう
⇒「つみたてNISA」で準備していいのは「教育資金」、ダメなのは「住宅資金」! 何かとお金が必要な30代・40代の「つみたてNISA」の上手な活用方法を解説!
「預貯金はあるが投資は経験がない」という
50代半ば以降の人こそ「つみたてNISA」が最適!
まず、50代半ば以降の高めの年齢層の中でも、特に「投資は未経験」という人たちに、「つみたてNISA」は向いている制度です。
一般的に言うと、年齢層が高いほうが、若年層より預貯金などの金融資産を多く保有しています。さらに、退職金を一括でもらうと、金融資産が一時的に大きく増えます。
しかし、「お金はあるけれど今まで投資の経験がない」という人が、「長い老後に備えよう」と考えて、大きな額を一気に投資するのは非常に危険です。一括投資で買いのタイミングを見極めるのは簡単ではありませんし、リスクや手数料が高すぎる金融商品を買ってしまうなど、商品選択を誤る危険もあります。
お金を持っている投資未経験者ほど、「時間分散」をしっかり効かせた投資をするべきだと私は考えます。複数回に分けて買うことで、高値つかみのリスクを軽減できるからです。その点、積立投資という形でシステマチックに時間分散ができ、さらに長期の積立投資に適した低コストの投資信託が対象となっている「つみたてNISA」は、投資未経験者が最初に利用するのに非常に向いていると言えるでしょう。もちろん、運用で得た利益が全額非課税というメリットもあります。
ただし、同じ投資未経験者でも、十分な預貯金がない人は別です。金融中央広報委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」によると、50代以上でも実は3割が貯金ゼロ世帯です。そうした人たちは、投資や「つみたてNISA」を考える前に、まずは現預金を貯めることが大切です。
【※関連記事はこちら!】
⇒つみたてNISAに向いている人、向いていない人は?「iDeCo」より「つみたてNISA」を活用すべき人と、「つみたてNISA」を絶対に使ってはいけない人とは?
公的年金だけではインフレリスクに対応できない
「つみたてNISA」で補完して老後に備えるべき!
50代半ば以降の人に「つみたてNISA」をおすすめするもう一つの理由が、インフレリスクへの対応です。老後の暮らしの支えになるはずの国民年金や厚生年金、国民年金基金などの公的年金・準公的年金は、残念ながらいずれも物価上昇に対して弱い制度です。物価が上がっても、支給額は増えにくい仕組みになっているからです。そのため、老後への備えとして、公的年金だけではなく、インフレリスクに対応できる金融商品を活用する必要があります。
「でも、インフレ率は上がっていないし、そんなに気にしなくても大丈夫なのでは?」と思われる方もいるでしょう。確かに数字だけを見ると、消費者物価指数(総合)の上昇率は1%未満で、日銀が目標としている物価上昇率の2%には届きそうもありません。しかし、消費者物価指数には、我々の実生活を必ずしも正しく反映しているわけではないという問題があります。
たとえば、量を減らして価格を据え置くという「ステルス値上げ」が増えています。こうした“実質的な値上げ”は、物価指数には反映されにくい面があります。また、消費者物価指数の中でも、生活への影響が大きい「エネルギー」(ガソリン、電気・ガス料金など)は5.6%、「食料品」(生鮮食品を除く)は1.1%上昇しています(いずれも2018年5月のデータ)。さらに、日銀の超金融緩和で預金金利がずっと低いままになっているため、我々の生活は数字以上に値上げの影響を受けているはずなのです。
このように現時点でも見えない形で物価上昇が進んでいるうえに、今後の経済情勢によっては、インフレが加速する可能性もないとは言えません。50代のリタイア準備世代や65歳以上のリタイア層が今後のインフレリスクに備えることはやはり重要です。そして、利益が全額非課税という有利な形で株式などの積立投資ができる「つみたてNISA」は、インフレリスクへの備えとして非常に適している制度と言えるのです。
50代半ば以降から老後資金作りをスタートするなら
「iDeCo」より「つみたてNISA」のほうがおすすめ
「老後資金を作る」というと「iDeCo(個人型確定拠出年金)」を思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、50代半ば以降で始める場合、「iDeCo」にはおすすめできない点もあります。
まず、「iDeCo」は制度上、60歳までしか掛金を拠出できません。50代半ば以降にスタートするのでは、積み立てられる期間が非常に短くなってしまいます。しかも、加入期間が10年未満だと、受給開始年齢は遅くなります。たとえば55歳での加入だと、5年分しか掛金を拠出できないのに、現金を受け取れるのは63歳になってしまうのです。
また、「iDeCo」では必ず口座管理料が徴収されます。「iDeCo」口座を作る金融機関の手数料が無料でも、国民年金基金連合会などへの支払いが月167円必要になります。さらに「iDeCo」の場合、会社員や公務員では拠出額は最大でも年間27万6000円と少額のため、手数料が占める比率も高くなります。先述の通り60歳以降は掛金の拠出はできませんが、その場合(運用指図のみ)でも月64円の手数料がかかります。
「つみたてNISA」と同じく、「iDeCo」でも運用益は全額非課税ですが、それはあくまで運用の結果、利益が出た場合の話であって、最初から当てにはできません。もちろん、大きな違いとして「iDeCo」には掛金が所得税・住民税の控除の対象になるという、「入口」部分での節税効果があります。それを生かしたいのであれば、60歳までは「iDeCo」で、それ以降は「つみたてNISA」という「リレー式」で老後資金を作っていくのも一つの方法です。
ただ、最長20年間にわたって積立投資が可能なことを考えると、50代半ばからの老後資金作りのメインには「つみたてNISA」のほうが向いていると、私は考えます。
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⇒「つみたてNISA」で老後資金を賢く作る方法とは?長期で資産を増やすための商品選び&運用のコツと、自営業・会社員それぞれにおすすめの活用法を紹介!
年齢だけで考えるのは危険!50代半ば以降の人が
「つみたてNISA」で買うべき商品とは?
さて、50代半ば以降の世代は、「つみたてNISA」でどのような商品を選べばよいでしょうか。
投資のセオリーでは「年齢層が高くなるほどリスク許容度は下がるので、リスクが低めの商品を選ぶべき」と言われています。しかし、「つみたてNISA」で扱っているのは、株式100%の投資信託・ETFと、バランス型投資信託のみです。では株式100%の投資信託は避けて、株式の比率が低めのバランス型投信を選ぶのがいいのでしょうか。
実は「正解」は、その人の投資経験や保有している資産額、金融資産に占めるリスク資産の割合などによって異なります。年齢だけで考えるのは危険です。
たとえば、「50代半ばで投資経験はなく、金融資産は2000万円あるがその内訳はほとんどが預貯金」という人がいたとします。その人が「つみたてNISA」で株式100%の投資信託を年間40万円×20年間積み立てたとしても、リスク資産は全体の3割程度ですから「リスクを取り過ぎ」というほどではないでしょう。
一方、同じ金融資産2000万円でも、「その4割を個別株や外貨預金で持っている」という人だと話は違ってきます。同じように「つみたてNISA」で株式100%の投資信託を買うと、20年後はリスク資産が約6割になってしまい、普通に考えればリスクを取り過ぎです。
そこで、後者の場合は「つみたてNISA」では株式比率の低いバランス型投信を購入する、株式100%の投信を購入したいなら代わりに保有しているリスク資産を売却する、積立金額を減らすなど、何らかの調整をして、資産全体でリスクを取り過ぎないように気を付けることが重要です。
「つみたてNISA」を上手に活用して
老後資金の取り崩しスピードを遅らせる
「人生100年時代」を迎えて、公的年金と、現預金中心の資産の取り崩しだけでは、いずれ老後資金が足りなくなる心配があります。しかし、「つみたてNISA」で積立投資をして、期待リターンが年率2~3%程度の運用ができれば、資産を取り崩すスピードを遅らせることができます。「つみたてNISA」で年率2~3%のリターンは、無理のある数字ではありません。
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⇒「つみたてNISA」による資産の増え方や節税効果をシミュレーションした! 毎月1万円でも、投資先によって利益は100万円超、節税額は40万円超の差に
仮に、50代半ばから「つみたてNISA」を始めて20年間続ければ、ちょうど75歳以降の後期高齢期に備えることができます。60歳、70歳でスタートする場合でも、先ほど述べた商品の選び方などの考え方の基本は変わりません。ただし、70歳を過ぎてから「つみたてNISA」を始めるのであれば、株式100%よりはバランス型、その中でも株式比率の低いものを選んで、50代、60代と比べてリスクを抑えた商品で積み立てを行うことをおすすめします。
また、必ずしも20年間ずっと積み立てを続ける必要はありません。たとえば、60歳から10年間だけ積み立て、あとは新たな積み立ては行わずに持ち続けて、相場がいいときに売る、というのでもいいのです。高年齢層に限りませんが、「つみたてNISA」ではそのような使い方をすることも可能です。
老後への備えを作る、あるいは老後資金を長持ちさせるために、投資は重要な手段です。失敗して資産を減らしてしまっては元も子もありませんが、「つみたてNISA」なら投資初心者でも無理のない形で資産運用ができます。また年齢に関係なく利用でき、いつでもやめられるという自由度の高さも魅力です。「つみたてNISA」をうまく活用して、豊かな老後を送っていただきたいと思います。
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⇒つみたてNISA(積立NISA)を始めるなら、おすすめの証券会社はココだ!手数料や投資信託の取扱数などで比較した「つみたてNISA」のおすすめ証券会社とは?
⇒「確定拠出年金」の50代からのベストな運用方針は?積立期間が終了するタイミングを見据えて、運用のリスクの低減や、利益確定も視野に入れていこう!
(構成:肥後紀子)
ファイナンシャルリサーチ代表。AFP、1級ファイナンシャルプランニング技能士。クレジット会社勤務を3年間経て1989年4月に独立系FP会社に入社。1996年1月に独立し、現職。あらゆるマネー商品に精通し、わかりやすい解説に定評がある。主な著書に『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない』『ジュニアNISA入門』(ダイヤモンド社)など多数。
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【2024年10月6日時点】 2024年にスタートした新制度を解説! 「新NISA」の取扱商品や売買手数料を徹底比較! ※表内のデータは、情報更新時に公表されている「新NISA」の情報をまとめたものです。 |
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236本 | 無料 | 無料 | 1117本 | 1.0% |
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投資信託 | 株式売買手数料(税込) | 投資信託 | ||
国内株 | 米国株 | |||
150本 | 137〜2200円 (約定代金による) |
− | 536本 | − |
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投資信託 | 株式売買手数料(税込) | 投資信託 | ||
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91本 | 実質無料 | − | 332本 | − |
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※手数料などの情報は定期的に見直しを行っていますが、更新の関係で最新の情報と異なる場合があります。最新情報は各証券会社の公式サイトをご確認ください。売買手数料は、1回の注文が複数の約定に分かれた場合、同一日であれば約定代金を合算し、1回の注文として計算します。投資信託の取扱数は、各証券会社の投資信託の検索機能をもとに計測しており、実際の購入可能本数と異なる場合が場合があります。※1 年会費無料のクレジットカードの場合。※2 1約定ごとプランで約定金額240万円までの売買手数料。 |