東海東京証券によれば、現在の状況は、(1)原油安(2)超低金利(量的緩和)(3)円安という3つのメリットが相場を牽引している。この状況が、1986年に原油価格が急落した際の上昇相場に似ていることから、「ネオ(新)・トリプルメリット相場」が起きると予測している(レポート9)。
「2015年は、原油安が思わぬボーナスを日本経済にもたらしてくれるかもしれない。ここは、迷わず強気の押し目買いでゆこう」と投資を促している。
原油安の恩恵を受けるセクターとしてあげられているのが、運輸、繊維・化学、タイヤ、自動車、電力・ガスなど。一方、原油安が業績悪化につながるのが、石油精製各社やシェールガス権益を持つ商社など。各レポートに掲載された具体的なセクターと銘柄の一部を【図表3】に掲載した。
【図表3】原油下落がメリットになる企業・デメリットになる企業
セクター | 銘柄名(コード) | メリット | デメリット |
運輸 | JAL(9201) | 5,20 | |
ANAHD(9202) | 4,5,20 | ||
日本郵船(9101) | 5,20 | ||
商船三井(9104) | 2,5,20 | ||
川崎汽船(9107) | 2,5,20 | ||
近畿日本鉄道(9041) | 4 | ||
繊維・化学 | 東レ(3402) | 5 | 2 |
昭和電工(4004) | 5 | 4 | |
三井化学(4183) | 2,5 | ||
東ソー(4042) | 2,5,9 | ||
ダイセル(4202) | 2,5 | ||
積水化学(4204) | 2,5 | ||
タイヤ | 東洋ゴム(5105) | 5,9 | |
ブリヂストン(5108) | 5,9 | ||
住友ゴム(5110) | 5 | 2 | |
自動車 | マツダ(7261) | 5 | 2 |
電力・ガス | 関西電力(9503) | 4.5 | |
総合商社 | 住友商事(8053) | 4.19 | |
ヘルスケア・医薬 | テルモ(4543) | 9 | 2 |
燃料・資源 | 出光興産(5019) | 19 | |
昭和シェル石油(5002) | 19 | ||
JXホールディングス(5020) | 19 |
※メリット、デメリット欄の数字は掲載レポート番号(【図表6】参照)
ただし、必ずしも原油安の恩恵を受けて株価が上昇するどうかは個別の銘柄をチェックする必要がある。たとえば、空運株は最近株価が好調だが、「今の業界環境では、原油安メリットだけに注目して空運株を買いあがっていくのは難しいと考えています。また、競争的環境のもとでは、燃料安の効果は、いずれ航空運賃低下によって相殺される可能性」もある(楽天証券、レポート20)。
一方、海運業界は、「バンカーオイル(船舶燃料)の価格低下で恩恵」を受けることから、投資の好機と判断されている(レポート20)。特に、定期船事業の収益改善が大きい日本郵船(9101)と川崎汽船(9107)に注目。また、「来年度は収益の反転を捉えて商船三井(9104)」(SMBC日興証券、レポート2)。
陸運でも近畿日本鉄道(9041)のように、昨年後半から最近にかけて、株価が好調な銘柄が目立つ。ただし、「トラック輸送の場合、コストに占める比率が高いのは人件費」(レポート20)。原油安メリット株というほどではないようだ。
消費者販売を行う小売業は、「間接的にメリットを受けると言えます。ただし、原油下落メリットのほとんどは消費者に取られ、小売業が受けるメリットは、限定的」(楽天証券、レポート20)という見方がある。一方で、資源価格の下落は日本の「b to c関連」銘柄にとっての追い風と考えて銘柄をピックアップしたレポートもある(SMBC日興証券、レポート2)。
「家計支出に占めるガソリン・灯油の割合は、大都市圏で低く地方で高い。原油価格下落の好影響は地方の家計にとってよりプラスに働きやすい」という観点から、地方の「b to c関連」銘柄として、ツルハホールディングス(3391)、ヤマザワ(9993)、ジョイフル本田(3191)など、76銘柄が紹介されている。
原油安がマイナスになるセクターと銘柄
【図表3】では原油急落がデメリットになる銘柄も紹介している。原油安のプラス効果はすぐには現れず、特に、石油精製会社の業績下ぶれが懸念されている。「日本の石油精製会社に70日間の備蓄義務が課せられていて、高値で買い付けた備蓄原油が残っている」ため、今期は在庫評価損が発生する(楽天証券、レポート19)。
ただし、北米でシェールガス権益を取得した住友商事(8053)は、「今期で大きな減損が完了すれば、来期以降、利益は急回復すると予想」されているので、チェックしておきたい。
【図表3】では、東レ(3402)や住友ゴム(5110)、マツダ(7261)のように、メリット欄だけでなく、デメリット欄にも掲載されている銘柄がある。これらは、資源国、欧州に対する売上高比率が高い企業だ(SMBC日興証券、レポート2)。
「ロシアやブラジルをはじめとする資源国経済の悪化は、実体経済面のみならず、金融機関への影響を通じて欧州に波及するリスク」が指摘されている。資源国の実体経済の悪化には、タイムラグがある。そこで、「日本企業の中でも資源国並びに欧州に対するエクスポージャー(リスクにさらされた資産割合)が大きい銘柄は避けるのが無難」として、65銘柄が紹介されている。
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