NISA(ニーサ・少額投資非課税制度)は、株式や投資信託への投資で得られた利益が非課税になる制度。金融庁は、2023年度の税制改正要望で「NISAの抜本的拡充」を打ち出し、さまざまな点の改正を要望しています。岸田政権が掲げる「資産所得倍増プラン」を具体化する政策として提案されており、NISA大改正の機運が高まっています。
今回は、日本証券業協会からの提言を踏まえ、NISA改正案の概要をご紹介します。
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「NISA」の大改正で
「資産所得倍増プラン」の実現を目指す
2022年8月31日に金融庁は、「2023年度税制改正要望について」を発表しました。この改正要望の最初に掲げられているのが「『資産所得倍増プラン』関連要望」です。
岸田政権が掲げる「資産所得倍増プラン」とは、家計の貯蓄を投資に回すことで経済を活性化させようとするものです。今回の金融庁のNISA改正案は、この「資産所得倍増プラン」を実現するための具体策といえます。
これまで、NISAには「一般NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA」という3つの制度がありました。また、2024年からは一般NISAが「新しい一般NISA」に変わる予定になっていました。しかし、今回のNISA改正案では「新しい一般NISA」を事実上撤回し、3つのNISAを1本化、または「一般NISA」「つみたてNISA」の併存を目指す形になっています。NISAを「簡素でわかりやすく、使い勝手のよい制度」にすることを目指しているようです。実際、改正案の主なポイントを見ると、全体的にシンプルになっています。
◆「NISA」の改正案の主なポイント
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それでは、具体的に、NISAがどのように改正される可能性があるのかを見ていきましょう。
NISA改正案の要点①
「投資可能期間」の恒久化
これまで、NISAで新たに投資できる期間は「一般NISA」が2028年まで、「つみたてNISA」が2042年まで、となっていました。NISA改正案では、投資可能期間の制限を撤廃して、恒久化することを要望しています。ただし、制度を恒久化しても累計の非課税投資額には一定の上限を設けるとしています。
NISAでの投資可能期間が決まっていると、年を追うごとに累計で投資できる金額が減っていきます。たとえば、つみたてNISAでは、2018年にスタートした人は2042年までの25年間に最大1000万円まで非課税で投資できますが、2022年にスタートした人は2042年までの21年間、最大840万円までと、非課税で投資できる金額が減ってしまいます。このままだと、「2033年にスタートした人は10年間・最大400万円まで」などと、後からスタートした人ほど非課税で投資できる金額がどんどん減ってしまいます。投資可能期間が恒久化されれば、このような非課税投資枠に差が生じる問題を解決できます。
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NISA改正案の要点②
「非課税期間」の無期限化
NISAの投資で得られた利益が非課税になる期間は、現状、「一般NISA」が5年、「つみたてNISA」が20年です。NISA改正案は、この非課税期間もなくして無期限化することを盛り込んでいます。
NISAの非課税期間が無期限になれば、一般NISAで非課税期間が終わる商品を次の非課税投資枠に持ち越す「ロールオーバー」の手続きが不要になります。煩雑な手続きなく非課税の投資を続けられるのは大きなメリットといえます。
また、現状はNISAの非課税期間が終わると、NISAの資産は非課税口座から課税口座に自動的に移されます。しかし、非課税期間が無期限になれば、資産が移される際の出口戦略を考える必要がなくなります。たとえば、「つみたてNISAの非課税期間が終わる20年後に暴落が起きたら?」といったことを考えずに済むのです。
何より、20年どころか30年、40年……と非課税での運用が続けられるのは大きなメリットです。複利効果と非課税の効果を活かしながら、より長期の投資を行うことで、お金を増やしやすくなるでしょう。
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NISA改正案の要点③
「非課税投資金額」の引き上げ
1年間にNISAで投資できる金額は、「一般NISA」で120万円、「つみたてNISA」で40万円となっています。NISA改正案ではこの投資金額を引き上げることも検討されています。
投資金額を具体的にいくらに引き上げるかまでは、金融庁の提言資料には記載がありません。ただ、日本のNISAは英国のISA(Individual Savings Account・個人貯蓄口座)を参考に設計されています。英国のISAでも投資金額の上限が何度か引き上げられ、2017年以降は年間2万ポンド(1ポンド=160円として、320万円)となっています。そこから推定すると、最大300万円程度までと予想できます。
なお、日本証券業協会が7月に発表した提言では、一般NISAの非課税投資枠を120万円から240万円、つみたてNISAの非課税投資枠を40万円から60万円に引き上げ、2つの制度は併用可能とし、年間投資枠の合計を300万円とする案を示しています。
現状のつみたてNISAの上限金額は、12カ月で均等に割り切れません(年40万円÷12カ月=約3万3333円)。そのため、12で割り切れる金額にしてほしいとの声もよく耳にします。いずれにせよ、非課税投資金額が増えることで、より投資による資産形成がしやすくなります。
NISA改正案の要点④
「つみたてNISA」に一本化を目指しつつ、
「一般NISA」と「つみたてNISA」の併用化も視野に
NISAの制度を、「つみたてNISA」に一本化することを目指すことも改正案には盛り込まれています。
2024年に始まる予定だった「新しい一般NISA」では、つみたてNISAの非課税投資枠(20万円)と一般NISAの非課税投資枠(102万円)の2階建ての制度でした。しかも、原則、1階部分のつみたてNISAの非課税投資枠で積立投資をしないと、2階部分の一般NISAの投資ができません。さらに、2028年で制度が終わると、1階部分はつみたてNISAにロールオーバーできますが、2階部分は売却するか課税口座に移行するかしかありませんでした。
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一方、今回の改正案では、このような「新しい一般NISA」の制度を事実上撤回して、「長期・積立・分散投資によるつみたてNISAを基本としつつ、一般NISAの機能を引き継ぐ『成長投資枠(仮)』を導入」することを盛り込んでいます。成長投資枠では、これまでつみたてNISAでは投資できなかった上場株式や、一定の商品性を持った株式投信などにも投資できるようになることが検討されています。「成長投資枠」という名前に変更されるだけで、事実上は「一般NISA」「つみたてNISA」の併用を可能にするということでしょう。なお、現在は「一般NISA」か「つみたてNISA」、どちらかの制度の選択制となっています。
NISA改正案の要点⑤
未成年者でも「つみたてNISA」が利用できるように
NISAの仲間の一つである「ジュニアNISA」は、20歳未満(2023年は18歳未満)の人が利用できる制度です。しかし、ジュニアNISAはすでに2023年末をもって廃止されることが決まっています。NISA改正案では、18歳未満の未成年者もつみたてNISAを利用できるようにすることを盛り込んでいます。今回の改正案が通れば、未成年のうちからつみたてNISAを使って長期・積立・分散投資ができるようになります。
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NISAの利用者拡大のために
「恒久化」と「無期限化」の実現を!
今回紹介した金融庁のNISA改正案は、実現するかどうかは未知数です。しかし、せめてNISAの「恒久化」「無期限」は実現してほしい、というのが筆者の考えです。
上記で紹介したとおり、「つみたてNISA」は始めるのが遅くなるほど非課税で投資できる金額の合計額が減り、長期・積立・分散投資の恩恵を受けにくくなってしまいます。もし、制度が恒久化されれば、こうした問題はなくなります。「貯蓄から投資へ」の流れを加速させたいのであれば、恒久化は必須といえるでしょう。
政府も、NISAの恒久化が重要なことは認識しているようで、岸田総理大臣は2022年9月23日にニューヨーク証券取引所で演説し、日本国内の貯蓄から投資への流れを後押しするため、「NISA」を恒久化する意向を明らかにしました。よってこの改正は間違いなく盛り込まれると考えられます。
実は、金融庁はNISAの恒久化を過去4回要望してきたものの、実現していませんでした。しかし今回は「5度目の正直」が期待できるのではないでしょうか。
それに、NISAの非課税期間が無期限になれば、20年よりさらに長く非課税での投資を続けられるため、その分、お金を堅実に増やしやすくなります。複利効果は、投資期間が長くなるほど大きくなりますし、長期投資によってリスクを抑えやすくなるからです。NISAの非課税期間が無期限になることで、資産形成期や取り崩し期にも活用しやすい制度となるでしょう。
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英国のISAは1999年にスタートしていますが、制度の恒久化や非課税投資金額の引き上げといった改善が行われたのがきっかけに、成人人口の約半数が利用する制度になりました。日本のNISAの口座数(一般NISA・つみたてNISA・ジュニアNISA合計)は1699万口座(2022年3月末時点)で、20歳以上の人口(約1億人)から考えるとまだ約17%です。制度改正によって「恒久化」「無期限」が実現すれば、NISAのさらなる利用者拡大につながるはずです。
また、ジュニアNISAがなくなることをうけて、未成年者がつみたてNISAを活用できるようになるのは「お金教育」の面でも素晴らしい試みだといえます。2022年4月から高校の家庭科の授業で金融教育がスタートしています。実際に、つみたてNISAで長期・積立・分散投資を行い、資産形成が堅実にできる様子を見ることは、何よりも生きた教育になるでしょう。
筆者としては、つみたてNISAにあえて一本化しなくても、「一般NISAとつみたてNISAが併用できるようになる」といった変更でもいいと考えます。一般の人に広くNISAを使って欲しいならば、やはり「簡素でわかりやすく、使い勝手のよい制度」を目指すべき。その視点で考えると、新しい一般NISAの「1階部分のつみたてNISA商品に投資しないと2階部分に投資できない」仕組みや、今回のNISA改正案の「成長投資枠」の仕組みなどは正直ややこしいので、不要ではないでしょうか。
あらかじめ「年300万円」などと非課税投資枠を用意し、その中で自由に株や投資信託に振り分ける制度でもいいと考えます。たとえばAさんは「株300万円」、Bさんは「株200万円・投資信託100万円」、Cさんは「投資信託300万円」といった具合で、自分がしたい投資に合わせて自由に併用できるようになると便利です。
あるいは、「株・ETF(上場投資信託)の非課税枠」「投資信託の非課税枠」という具合に、金融商品別の非課税枠を設ける考え方があってもいいでしょう。
さて、今回は金融庁の「2023年度税制改正要望」にて発表されたNISA改正案を紹介してきました。今後、審議が行われ、最終的には2022年12月中旬ごろに発表される税制改正大綱にて制度の詳細が明らかになる見込みです。NISAが誰にとっても「簡素でわかりやすく、使い勝手のよい制度」になっていくかどうか、注目しましょう。
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サービス手数料: 資産残高の0.693〜0.733%(年率・税込)※ |
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【ウェルスナビ(WealthNavi)の新NISA口座のおすすめポイント】 国内外のETFに分散投資をするロボアドバイザー「ウェルスナビ」はNISA口座にも対応。5つの質問に答えるだけで最適なポートフォリオを提案し、毎月自動的に積立投資をしてくれるので、初心者でも簡単に効率的な運用を実行できる。2024年からの新NISAなら、つみたて投資枠と成長投資枠の両方で資産を購入することで最大で年360万円まで投資可能! 運用コストとしては、一般的な証券会社のような売買手数料ではなく、資産残高に対して決まった割合のサービス利用料を負担する形なので要注意。また、楽天証券と提携した「ウェルスナビ×R」も提供している。その場合、楽天カードや楽天キャッシュを利用し、楽天ポイントを貯めたり、楽天ポイントを利用した購入・積立が可能となる。 ※ NISA口座に自動積立だけで入金した場合で試算した手数料。リスク許容度(ポートフォリオ)により異なる。また、各商品の値動きによりポートフォリオのバランスが崩れた場合は、手数料が表記の範囲を超えて変動する可能性がある。 |
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※手数料などの情報は定期的に見直しを行っていますが、更新の関係で最新の情報と異なる場合があります。最新情報は各証券会社の公式サイトをご確認ください。売買手数料は、1回の注文が複数の約定に分かれた場合、同一日であれば約定代金を合算し、1回の注文として計算します。投資信託の取扱数は、各証券会社の投資信託の検索機能をもとに計測しており、実際の購入可能本数と異なる場合が場合があります。※1 年会費無料のクレジットカードの場合。※2 1約定ごとプランで約定金額240万円までの売買手数料。 |