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東京証券取引所が「PBR1倍割れ」の企業に対して、
株価水準の具体的な改善策の策定と開示を強く要請!
東京証券取引所は3月31日、東証プライム市場と東証スタンダード市場に上場する約3300社を対象に、株価水準を分析して改善するための具体策を公表するよう要請しました。具体的には「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」として、以下の3点について通知したとのことです。
(1)資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応
(2)株主との対話の推進と開示
(3)建設的な対話に資する「エクスプレイン」のポイント・事例
東証の要請のなかでもっとも重要と思われるのが「PBR1倍割れ」の企業に対するスタンスです。改善要請自体は東証プライム市場と東証スタンダード市場の全上場銘柄が対象となっており、また要請に応じない企業に対する罰則もありませんが、東証が2023年1月30日に公表した「論点整理を踏まえた今後の東証の対応」という資料では、改善策について「継続的にPBRが1倍を割れている会社には、開示を強く要請」という強い言葉を使っています。
また、今回発表した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」でも、東証プライム市場の約半数、東証スタンダード市場の約6割の企業がPBR1倍未満、ROE8%未満だと指摘しています。それだけ東証は「PBR1倍割れ」の企業が多いことに危機感を持っているのでしょう。
実際、現在の東証プライム市場と他の先進国市場を比較すると、PBRやROEに大きな違いがあります。例えば、PBRが2.0倍以上ある企業の割合を見ると、S&P500指数では72%に達するのに対して東証プライム市場では23%しかありません。また、ROEが15%を超える企業の割合は、S&P500指数では55%に達しているのに対し、東証プライム市場ではわずか20%です。
このまま低PBR企業や低ROE企業を放置したままだと、海外の投資家から「日本の会社は企業価値を高め、株価を引き上げようという意識が低い。投資先として魅力がない」と見なされるリスクが高まると考えられます。
一方、今回の通知で東証が「PBR1倍割れ」の企業を中心に上場企業全体に対して資本効率の改善を促したことで、日本の株式市場の再評価につながることが期待されます。
「PBR1倍割れ」「ROE10%以下」「時価総額5000億円以上」
などの条件で注目すべき「PBR1倍割れ」銘柄を選定
こうした状況のなか、株式市場では、他社に先駆けて企業価値の向上に取り組むことが期待できる企業を探る動きが強まりそうです。そこで今回は「PBR1倍割れ」の銘柄に着目。以下の条件で銘柄をスクリーニングしました。
【スクリーニング条件】
(1)東証プライム上場銘柄
(2)PBRが1倍以下
(3)25日平均売買代金が10億円以上
(4)時価総額が5000億円以上
(5)ROEが10%以下
(6)自己資本比率が50%以上
4月3日時点では、まず(1)東証プライム上場の銘柄数は1835社で、そのうち(2)PBR1倍以下の銘柄は約48%の884社でした。このなかから、流動性を考慮して(3)25日平均売買代金が10億円以上の銘柄に絞り込むと142社に、さらに(4)時価総額5000億円以上の銘柄にすると78社に。最後に(5)ROE10%以下、(6)自己資本比率50%以上として、以下の6社に絞りました。
なお、ROEについて東証は「8%未満」を基準としていましたが、一般的には「ROEは15%以上が望ましい」との見方もあるのので、今回は「10%以下」で絞り込みました。
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■スクリーニングで絞り込んだ6銘柄のデータ | |||||
銘柄 | 自己資本比率 (%) |
時価総額 (億円) |
PBR (倍) |
ROE (%) |
売買代金 25日平均 (百万円) |
京セラ(6971) | 73.3 | 26,086 | 0.83 | 5.4 | 7,554 |
キヤノン(7751) | 61.1 | 39,713 | 0.97 | 8.1 | 9,682 |
凸版印刷(7911) | 59.7 | 9,428 | 0.64 | 9.2 | 3,052 |
大日本印刷(7912) | 58.2 | 11,091 | 0.91 | 9.1 | 4,920 |
SUBARU(7270) | 53.4 | 16,437 | 0.80 | 3.8 | 5,604 |
豊田自動織機(6201) | 51.5 | 23,819 | 0.61 | 5.0 | 6,383 |
※2023年4月3日時点 |
【京セラ(6971)】
産業向けの太陽光パネルは中国メーカーへの生産委託に切り替え
京セラ(6971)は電子部品大手で、太陽光パネルを使った設備など再生エネルギー事業への投資を積極的に行っています。中国との競争が激化するなか、2022年9月に中国・天津の太陽光パネル工場を閉鎖し、中国メーカーからの調達に切り替えました。国内工場は、採算を確保しやすい住宅向けの製品に絞り、蓄電池などと組み合わせた付加価値の高い分野に注力する一方で、産業向けについては中国メーカーへの生産委託に切り替えることで立て直しを図るようです。株価は、1月16日につけた安値6355円をボトムに緩やかなリバウンドが継続しており、13週移動平均線を下値支持線に足元で26週移動平均線を突破してきました。52週移動平均線が位置する7080円辺りを目先のターゲットとしつつ、同線突破からの一段の上昇に期待したいところです。
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【キヤノン(7751)】
暗視性能に優れたSPADセンサー搭載の新型カメラを開発
キヤノン(7751)は、カメラ・ビデオなどの映像機器や複写機などの事務機器、デジタルマルチメディア機器、半導体・ディスプレイ製造装置などを製造。4月3日に、肉眼で見えないレベルの微弱な光も認識可能なSPADセンサー搭載の新型高感度カメラを開発したと発表。高い望遠性能を持つ放送用レンズと組み合わせることで、国境や港湾、空港、駅、発電所などの重要なインフラ施設における高度監視用途への活用が期待されます。株価は、1月16日につけた安値2754.5円をボトムに緩やかなリバウンドが継続しており、13週移動平均線での攻防を経て、足元で26週移動平均線に接近してきました。26週移動平均線や52週移動平均線を目先のターゲットとしたリバウンド狙いのスタンスとなります。
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【凸版印刷(7911)】
デジタルツイン型メタバースサービスを開発
凸版印刷(7911)は、2023年10月1日付で持株会社化し、社名を「TOPPANホールディングス」にすることを3月9日発表。さらなる事業ポートフォリオ変革を推進していく意思を込めて「印刷」を含めない商号にしたとのことです。DX関連事業と紙の印刷や包装材などの事業は、4月27日付で吸収分割契約を結ぶ「TOPPANデジタル」と「TOPPAN」にそれぞれ引き継がれます。また、3月31日には、デジタルツイン型メタバースサービス「デジタルツイン・ワールドトリップ」を開発し、2023年4月から「LINKSPARK 大阪」において実証実験を開始すると発表しました。株価は、1月17日につけた安値1847円をボトムに上昇が続き、3月10日には一時2840円まで買われました。その後2500円割れまで調整しましたが、足元で再びリバウンドの動きを見せています。目先の目標として、2006年3月の高値3296円が意識されます。
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【大日本印刷(7912)】
次世代半導体パッケージ向け「TGVガラスコア基板」を開発
大日本印刷(7912)は3月20日、次世代半導体パッケージに向けたTGVガラスコア基板を開発したと発表。従来の樹脂基板をガラス基板に置き換える製品で、従来技術よりも高性能な半導体パッケージの提供が可能になるとのことです。また、パネルの製造プロセスを適応させることで高効率・大面積化にも対応できるとのことで、今後の需要拡大が期待されます。株価は、1月17日につけた安値2497円をボトムにリバウンドの動きを見せ、3月10日には一時4160円まで買われました。その後は過熱を冷ます調整がありましたが、足元では再動意を見せており、2006年3月の高値4380円が射程に入ってきました。
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【SUBARU(7270)】
2023年2月の生産・販売が国内外ともに堅調!
SUBARU(7270)は2023年2月の生産・国内販売・輸出実績で、国内の生産台数が前年同月比22.4%増と2カ月ぶりに前年を上回ったほか、海外についても同37.2%増と4カ月ぶりに前年を上回りました。また、国内販売合計は15.2%増と9カ月連続で前年を超過。さらに、WRXやクロストレックの好調により、北米スバルの販売台数は2.1%増でした。なお、4月5日から開催されるニューヨーク国際オートショーでSUV「ウィルダネス」シリーズの新型車を発表すると予告しており、注目度が高まっています。株価は下落トレンドが継続していますが、1月安値と3月安値とのダブルボトム形成後にリバウンドの動きを見せており、足元で25日・75日移動平均線を捉えてきました。25日・75日移動平均線を突破してからの200日移動平均線が目先のターゲットになりそうです。
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【豊田自動織機(6201)】
エンジン認証での法規違反による悪材料は織り込み済み
豊田自動織機(6201)の株価は、3月10日に8710円まで買われましたが、その後、3月17日に発表したフォークリフト向けエンジンの試験不正問題が嫌気され、3月28日には6540円まで下落しました。検査不正があったエンジンを搭載した機種は累計約16万台販売されており、約7万台分をリコールし、対象機種の国内出荷も停止しました。米国系証券の試算によると、リコール費用は150億~250億円程度と想定されます。ただし、証券各社の格下げが相次いだものの、目標株価の下限レベルまで調整したことから悪材料は織り込んだ格好と言えるので、押し目狙いのスタンスで注目です。
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以上、今回は「PBR1倍割れ」の銘柄を発掘しました。
前述のとおり東証は、東証プライム市場と東証スタンダード市場に上場する約3300社を対象に、株価水準を分析して改善するための具体策を公表するよう要請しました。今回の銘柄選定では東証プライム市場にフォーカスしましたが、状況は東証スタンダード市場においても同じです。そのため、東証プライム市場よりも相対的に流動性の低いスタンダード市場銘柄においても、思惑的な動きが強まる可能性はありそうです。
なお、東証スタンダード市場の「PBR1倍割れ、自己資本比率70%以上」の銘柄としては、SECカーボン(5304)、ニレコ(6863)、大正製薬ホールディングス(4581)、藤商事(6257)、寺崎電気産業(6637)、システムズ・デザイン(3766)などが注目されそうです。
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