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最先端の「2ナノ半導体」の国産化を目指し、
政府はラピダスに対して9000億円の助成金を決定
日本政府は11月22日に閣議決定した「総合経済対策」において、半導体やAI(人工知能)の関連産業の強化策として、2030年度までに次世代半導体の研究開発や量産化などに対して10兆円以上の公的支援を行う方針を打ち出しました。
その公的支援のなかでも特に大きいのが、次世代半導体の国産化を目指す民間の半導体製造会社・ラピダスへの支援です。経済産業省はラピダスに対して研究開発費として合計9200億円の助成金をすでに決めていますが、ラピダスが次世代半導体の量産化を実現するにはさらに4兆円ほどの資金が必要とされており、政府による出資や金融機関の融資への保証など検討されています。
ラピダスは、世界最先端のロジック半導体の開発と製造を目指し、トヨタ自動車(7203)やソニーグループ(6758)などの出資により2022年8月に設立された企業です。現在、ラピダスが量産化を目指して開発を進めているのが、回路の線幅が2ナノメートル(10億分の1メートル)の半導体です。
現在、量産化ができているなかで回路線幅がもっとも小さいのは3ナノメートルの半導体で、2ナノ半導体の量産化については、まだ世界のどの企業も実現できていません。そんな状況においてラピダスは、パートナーシップを結んだ米国のIBM(IBM)の技術を使って2025年4月から2ナノ半導体の試作品の製造をはじめ、2027年から量産を開始する計画だとしています。
なお、ラピダスとIBMは12月9日、世界で初めて、2ナノ半導体を性能通りに動かすための中核技術として、微細な回路から電気が漏れないように絶縁膜をつくるSLR(選択的薄膜化)技術の開発に成功したと発表しました。この技術により、電圧を細かく制御し、少ない電力で複雑な計算処理をこなすことができるようになるとのことです。
ラピダスによる「2ナノ半導体」の開発・量産化は、
日本の半導体産業の再興に向けた最重要プロジェクト!
日本の半導体産業は、1980年代こそ世界シェアの5割を占めていましたが、近年は競争力をすっかり失っています。そのため、ラピダスの2ナノ半導体の開発は、政府も「日本が改めて次世代半導体に参入するラストチャンス」として、日本の半導体産業の再興に向けた重要なプロジェクトと位置づけています。
ただ、2ナノ半導体の開発を進めているのは日本だけではありません。台湾のTSMC(TSM・台湾積体電路製造)と韓国のサムスン電子も、2025年から2ナノ半導体の量産を開始する計画を明らかにしています。また、アメリカのインテル(INTC)も、2027年までに回路線幅が1.4ナノメートル相当の半導体の量産化を目指していると伝えられています。
AIやIoT(モノのインターネット)、5G(第5世代移動通信システム)などの技術革新が進んでいますが、これらのテクノロジーを支えるには、より高性能で小型化された半導体が不可欠です。2ナノ半導体は、3ナノ半導体に比べて処理性能が10~15%アップし、消費電力が25~30%削減されることが見込まれており、量子コンピューターや生成AI、データセンター、自動運転装置、医療・創薬など、今後高い成長が見込める幅広い分野での活用が期待されています。
そこで今回はラピダスが開発を進める「2ナノ半導体」に関連する企業に着目しました。具体的な銘柄としては、2ナノ対応の技術や製品に取り組んでいる企業や、ラピダスの量産化に向けた動きが追い風になると見込まれる企業を選定しました。
【大日本印刷(7912)】
「2ナノ半導体」のフォトマスクに必要な微細なパターンの解像に成功
大日本印刷(7912)は12月12日、2ナノ世代以降のロジック半導体向けのフォトマスクに要求される微細なパターンの解像に成功したと発表。また2024年には、ラピダスが参画している国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」にも参画しています。株価は、11月13日に発表した2025年3月期の上期決算を受けて下落の勢いが強まり、12月初旬には8月の急落局面でつけた安値2136円に接近する場面も見られました。ただ、足元では2200~2250円辺りでの底堅さが意識されており、今後25日移動平均線を上回ってくるようだと底入れからのリバウンドが期待されます。
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【東京エレクトロン(8035)】
ラピダスの新工場の近接地にグループ会社が拠点を設置
東京エレクトロン(8035)は、グループ企業の東京エレクトロンFEが半導体やディスプレイ製造装置のフィールドエンジニア事業を展開。顧客の工場で稼働している装置の修理や調整、改造、装置の立ち上げなどを手掛けています。ラピダスの工場が北海道千歳市に建設されたのに伴い、東京エレクトロンFEも千歳駅隣接の複合商業施設である「千歳ステーションプラザ」に拠点を設置しています。株価は、4月の高値4万860円をピークに下落が続いていましたが、足元では13週移動平均線付近での攻防を見せています。今後、13週移動平均線を明確に上抜けてくるようだと、52週移動平均線水準をターゲットにしたリバウンドが期待できるでしょう。
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【セイコーエプソン(6724)】
北海道の千歳事業所内にラピダスの研究開発拠点を構築
ラピダスは10月3日、セイコーエプソン(6724)が北海道に持つ千歳事業所内にクリーンルームを構築し、半導体の後工程の研究開発拠点「Rapidus Chiplet Solutions」を開設することを発表。同拠点で「2nm世代半導体のチップレットパッケージ設計・製造技術開発」をテーマに量産技術の開発を進めていくとのことです。セイコーエプソンは、次世代半導体の設計・製造確立に貢献する形となります。株価は、上向きで推移する13週・26週移動平均線を下値支持線とした上昇トレンドを形成しており、10月の高値2893円の突破からのさらなる上昇に期待したいところです。
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【ソシオネクスト(6526)】
2ナノプロセスのCPUチップレット開発でTSMCなどと協業
ソシオネクスト(6526)は、「SoC(System-on-Chip)」と呼ばれる半導体製品のグローバルサプライヤーです。2023年10月には、台湾のTSMC(台湾積体電路製造)の2ナノメートルプロセステクノロジーを用いた革新的な32コアCPUチップレットの開発において、英国のArmおよびTSMCと協業することを発表しました。株価は、4月の高値5250円をピークに下落が続き、11月27日には一時2284円まで売られました。しかし、その後のリバウンドによって上値を抑えていた13週移動平均線を一時突破しており、底入れからの反転上昇が見込めます。
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【SCREENホールディングス(7735)】
半導体製造装置の新規セットアップやメンテナンスなどのサポートを提供
SCREENホールディングス(7735)は、半導体製造装置の新規セットアップやメンテナンスに加え、生産デバイス変更に対する装置の最適化改造や周辺機器の販売、安全ツールの提供など、徹底したサポートを提供。顧客の全拠点に対して迅速な対応ができるよう、サービス拠点の場所とエンジニア配置人員の最適化を図っています。SCREENホールディングスも前出の東京エレクトロンと同じく、ラピダスの新工場近くに位置する「千歳ステーションプラザ」に拠点を設けています。株価は、3月の高値2万440円をピークに下落が続いていましたが、8月以降は底固めの動きを見せており、リバウンドに期待したいところでしょう。
⇒SCREENホールディングス(7735)の最新の株価はこちら!
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【荏原製作所(6361)】
2ナノ対応の半導体研磨装置の開発を進め、2025年の実用化を目指す
荏原製作所(6361)は、ポンプや環境プラント、半導体関連装置などを展開。半導体関連としては、シリコンウェーハの表面を平坦化するための研磨装置(CMP装置)が主力となっています。4月3日には、2ナノメートルに対応する半導体研磨装置の開発に目処がついたと報じられました。現在は半導体メーカーと共同で開発を進めており、2025年ごろの実用化を目指しているとのことです。株価は9月以降、リバウンドを見せており、上向きで推移する52週移動平均線が下値支持線として機能しています。2600円辺りが心理的な抵抗になっており、この水準をクリアしてくるようだと4月の高値2859円の突破を意識したトレンド形成が期待されます。
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以上、今回はラピダスが量産化を進める「2ナノ半導体」関連銘柄を発掘しました。
現在、日本国内で製造できる半導体は「40ナノ世代」までで、先端半導体は輸入に依存しています。北朝鮮によるミサイルの脅威や中国と台湾の間で緊張が高まっている情勢を考慮すると、台湾や韓国に大きく依存している現状は地政学的なリスクが高いと言えるでしょう。
こうした問題を解決するため、国内での半導体製造を強化して安定的な供給体制を構築することは国を上げての重要な課題となっています。「2ナノ半導体」の関連銘柄に関しては「国策に売りなし」の格言通り、長期的な値上がりに期待したいところです。
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