「つみたてNISA(積立型の少額投資非課税制度)」で買う商品として、日本株に投資する投資信託、中でもTOPIXや日経平均株価などの日本株の株価指数に連動する、インデックス型投資信託を検討する人は多いでしょう。
日本株の投資信託に注目するのは、日本に住んでいてなじみがあるからだと考えられますが、日本株型だけにしか目を向けないのはあまりいい投資法とは言えません。その理由についてお話したいと思います。
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日本株インデックス型投信のメリットは「わかりやすさ」
デメリットは「低成長に甘んじてしまうこと」
「つみたてNISA」で購入できる商品には、株式100%の投資信託、株式を含む複数の資産を組み合わせたバランス型投資信託、そしてETFがあります。さらに、運用の手法によってインデックス型投信とアクティブ型投信がありますが、「つみたてNISA」の対象となる投資信託はインデックス型が中心で(2018年6月6日時点で、148本のうちインデックス型が129本)、またコストや商品特性の面から、現状であえてアクティブ型を選ぶ必要はない、と考えます。
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日本株のインデックス型投資信託は、2018年6月6日時点では全部で32本あり、内訳はTOPIX(東証株価指数)に連動する投資成果を目指すものが12本、日経平均株価連動型が15本、JPX日経インデックス400連動型が5本となっています。
さて、「つみたてNISA」で日本株のインデックス型投資信託を選ぶ理由はどこにあるでしょうか。私は、「わかりやすさ」に尽きると考えます。日経平均株価やTOPIXについてはテレビや新聞で毎日のように目にするのでなじみがあり、これまで投資経験がまったくなかった人でも、なんとなく安心感を覚えるのです。
人には「ホームカントリー・バイアス」という、自国の資産や市場への投資を厚くする傾向があります。つまり、日本人ならまず日本株に投資しようと考えるのは、自然なことと言えるかもしれません。
確かに、日本株のインデックス投信の「わかりやすさ」は、選ぶうえでのメリットと言えます。しかし、「わかりやすさ」の一方で、見逃してはいけない「落とし穴」――デメリットもあります。それは、日本株だけに投資していては「低成長に甘んじてしまう」という点です。
日本はバブルが崩壊した1990年代以降、低成長が続いているのが現実です。そもそも金融庁が「つみたてNISA」の普及に力を入れる背景には、日本が少子高齢化、人口減少などの問題を抱える中、世界の成長を取っていくことで、国民の中長期的な資産形成を実現したいという考えがあります。日本株にだけ投資するのでは、「高い成長を取っていく」ことはできなくなってしまいます。
「日本株への投資」vs「海外株への投資」
長期で見ると資産に数倍の差がつく!
もちろん、日本株も短期的に見れば大きなリターンを取れる場合があります。たとえば、アベノミクスが始まった2012年12月から約4年で日経平均は2倍になっています。しかし、時間軸を長く取った場合には、日本株は結局、日本の経済成長率+α程度、具体的には約1%+αしかリターンが見込めないと考えます。
一方、先進国と新興国を合わせた海外の経済成長率は約3%で、日本との差は約2%あります。この差をどうとらえるか。ここでは100万円を一括で投資し、成長率=リターンと仮に考えた場合の数字でイメージをつかんでいただけたらと思います。
成長率1%の日本株の場合は、100万円が2倍の200万円に増えるまでに約70年かかります。これに対して、成長率3%の海外株に投資していれば200万円になるまでの期間は約24年です。約2%の違いですから、最初の1、2年は両者の増え方にそれほど大きな差は付きません。しかし、時間の経過とともにだんだんリターンの差が開いていき、100万円が2倍になるまでの期間は、海外株なら日本株の3分の1で済むのです。
これはあくまで一括で投資した場合の例ですが、「つみたてNISA」でも考え方は同じです。このような数字を見れば、日本ではなく世界に目を向けて、素直に世界の成長を取っていったほうがいいと実感できるのではないでしょうか。
海外株に投資する場合の注意点は「為替変動」
ただし「つみたてNISA」ならリスクを抑えられる
日本株より高い成長が期待できることが、海外株のインデックス型投資信託に投資するメリットですが、注意点もあります。それは、海外に投資する場合は、株価変動に加えて為替変動の影響も受けるということです。
もちろん、うまくいけば株価と為替のダブルで収益を得られる可能性もありますが、歯車が逆に動けば、株価下落+円高のダブルで損失を被ることもあるのです。2008年のリーマン・ショックの際がまさにその状況で、同年のTOPIXの下落率が-41%だったのに対し、円換算した海外の株価指数(MSCI ACWI)は-53%下落となりました。
さらに、海外株の中でも新興国株は、高い成長が期待できる一方で、先進国に比べて国の仕組みがまだ脆弱なことなどから、株価変動と為替変動のリスクがより大きくなるので要注意です。
もっとも、「つみたてNISA」では複数回に分けて買うことで高値つかみのリスクを抑えるという「時間分散」がしっかり効きます。海外株を対象にしたインデックス型投資信託に投資しても、一括投資に比べればリスクを抑えることが可能です。
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また、日本株も輸出関連銘柄などが主力のため、程度の差と直接か間接かという違いはありますが、実は為替の影響を受けています。
「世界の成長は取りたいが大きなリスクは取りたくない」人は
バランス型の投資信託を利用すればOK!
投資初心者には、「世界の成長は取っていきたいけれど、リスクはあまり取りたくない」という方もいるでしょう。先述のとおり、「つみたてNISA」なら時間分散の効果によってある程度リスクを抑えることができますが、ここからは、そうした投資初心者の方向けに商品選びの基本を説明していきます。
まず1つめは、バランス型投資信託を利用することです。「つみたてNISA」では、2018年5月28日時点で58本のバランス型投資信託が対象になっています。このうち3本は日本株のみに投資するものなので除外して、残りの55本のうち株式比率の低いものを選べば、世界にも投資しながらリスクを抑えることが可能になります(ただし株式比率が低いほどリターンも低くなります)。
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日本株1本+海外株1本で組み合わせるのも手
その場合は海外の比率を6~7割と多めに!
1本ではなく、日本株に投資する投資信託と、海外株に投資する投資信託の2本を組み合わせて持つという方法もあります。その場合、考えなければならないのは日本と海外の比率です。わかりやすさから5:5としたくなりますが、成長率を考えると、海外のウェイトを高めにして、日本4:海外6、あるいは日本3:海外7くらいにしたほうがよいと思います。
日本株のインデックス型投資信託は225銘柄にのみ投資する日経平均株価より、東証に上場している銘柄に広く分散投資するTOPIXに連動するものを選ぶのが基本ですが、組み合わせる海外株は、「日本を除く先進国」の株価指数に連動するもの、「日本を除く全世界」の株価指数に連動するものどちらでも構いません。ただ、全世界株型は新興国が加わる分、ややリスクが高くなるので、初心者であれば最初は先進国の株価指数に連動するものを選ぶことをおすすめします。
また、米国株の株価指数(S&P500)に連動する商品も選択肢になります。単一の国を投資対象とするのは通常はリスクが高くなりますが、米国は株高を目指すことが「国策」となっているのに加えて、世界経済の中心でもあるので、他の先進国経済も新興国経済も結局、米国経済次第という面があるからです。
さらに言うと、もしも「つみたてNISA」口座以外にも資産があり、そこで保有しているのが円資産(現預金を含む)であれば、「つみたてNISA」では海外株を対象にした投資信託だけに投資するという形でも構いません。
いずれにしろ、「つみたてNISA」で長期的に資産形成していこうと考えた場合、日本株だけでは大きな成長は見込めません。自分が取れるリスクと相談しながら、海外株にも投資していくことが重要なポイントです。
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(構成:肥後紀子)
ファイナンシャルリサーチ代表。AFP、1級ファイナンシャルプランニング技能士。クレジット会社勤務を3年間経て1989年4月に独立系FP会社に入社。1996年1月に独立し、現職。あらゆるマネー商品に精通し、わかりやすい解説に定評がある。主な著書に『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない』『ジュニアNISA入門』(ダイヤモンド社)など多数。
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150本 | 137〜2200円 (約定代金による) |
− | 540本 | − |
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投資信託 | 株式売買手数料(税込) | 投資信託 | ||
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91本 | 実質無料 | − | 332本 | − |
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※手数料などの情報は定期的に見直しを行っていますが、更新の関係で最新の情報と異なる場合があります。最新情報は各証券会社の公式サイトをご確認ください。売買手数料は、1回の注文が複数の約定に分かれた場合、同一日であれば約定代金を合算し、1回の注文として計算します。投資信託の取扱数は、各証券会社の投資信託の検索機能をもとに計測しており、実際の購入可能本数と異なる場合が場合があります。※1 年会費無料のクレジットカードの場合。※2 1約定ごとプランで約定金額240万円までの売買手数料。 |