「つみたてNISA(積立型の少額投資非課税制度)」は、中長期での資産形成のための制度です。一度始めたら、あとは淡々と積立投資を続けていくことが大切です。しかし、「つみたてNISA」でもいつかは必ず、積み立てた投資信託を売って利益確定をするときがやってきます。
では、いつ売却するのがベストなのでしょうか。それとも非課税期間が終わるまでの20年間は売らずに積立を続けたほうがよいのでしょうか。今回は、多くの人が気になる点でありながら、意外と解説が少ない「つみたてNISA」の“出口戦略”について考えていきましょう。
「つみたてNISA」はいつでも好きな分だけ売却してOK!
一方で非課税期間内に売らなくても税制面の不利はなし
まず、「つみたてNISA」の基本ルールを確認しておきましょう。「つみたてNISA」を非課税で運用できる期間は、最長で20年間です。現状では、一般「NISA」のようなロールオーバー(非課税期間の繰越)はできません。もし、20年たって売却しない場合は、積み立てた資産はその時点の時価で課税口座に移されます。
たとえば、2018年1月から毎月3万円ずつ積立投資をして、20年後の2037年12月末時点で元本720万円が1000万円に増えていたとします。この時点で売却すると、運用益の280万円(1000万-720万円)には税金はかからず、1000万円を丸々手にすることができます。ちなみに、課税口座で投資していた場合は、運用益に20.315%の税金(所得税+住民税+復興特別所得税)がかかり、運用益の280万円は約223万円に目減りします。
一方、売却しない場合は課税口座に移されますが、その際は1000万円が新たな取得価額になります。つまり、売却しなかったとしても、過去20年分の利益、280万円に課税されることはありません。20.315%の税金がかかるのは、非課税期間が終了して以降の運用で得る利益に対してのみです。この点は勘違いしがちなところなので、覚えておいていただきたいと思います。
また、20年間の非課税運用期間はあくまで「最長」であって、「20年間売ってはいけない」ということではありません。「つみたてNISA」は、「iDeCo(個人型確定拠出年金)」や「ジュニアNISA(未成年対象の少額非課税投資制度)」などと異なり、出金の制限はありません。いつでも必要なときに売却して現金化できます。さらに、資産をすべて一度に売却する必要はなく、一部のみを売って残りは運用を続けるということも可能です。
基本は「資金が必要になったら売却」でいいが
なるべく複数回に分けて売るのがおすすめ!
さて次は、いったいいつ売るのがいいかという「売り時」を考えてみましょう。
基本は、「ライフイベントなどでお金が必要な時期に合わせて、売却を検討する」ということです。たとえば、10年後の「子供の高校・大学進学」の資金準備が目的であれば、もちろん20年の非課税期間終了を待つことはありません。資金が必要になったときに、「つみたてNISA」で運用していた資産を売却すればいいだけです。
ただし、お金が必要になったときに必ずしも相場が上昇しているとは限りません。そこで、ライフイベントを迎える2~3年前から相場の状況を見て、大きく上がっているタイミングがあれば、そこで売却を検討すべきです。
また、先ほど説明したとおり、必ずしもすべて一括で売却しなくても構いません。売却後にさらに相場が上昇する可能性もあるため、たとえばまず半分ほど売って、残りは運用を続けてもう少し後から売るやり方もあるでしょう。「つみたてNISA」で買えるのは投資信託(およびETF)ですが、分割して売却できるのが投資信託のメリットの一つです。相場観に自信がある人は別として、なるべく2回以上に分けて売却することをおすすめします。投資するときと同様に、売却する際も「時間分散」をすることでリスクを軽減しましょう。
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⇒「つみたてNISA」で準備していいのは「教育資金」、ダメなのは「住宅資金」! 何かとお金が必要な30代・40代の「つみたてNISA」の上手な活用方法を解説!
「老後資金」が目的の場合は“資産全体”で
取り崩しの順番を考えるのが重要!
では、「つみたてNISA」の利用目的が「老後資金」の場合は、売却のタイミングはいつがベストでしょうか。
「老後資金」が目的の場合、「つみたてNISA」だけを見て「いつ売ればいいか」と考えるのはよい方法とは言えません。なぜなら、多くの人は「つみたてNISA」だけで老後資金を準備するわけではないからです。「iDeCo」や預貯金などを併せ、自分の保有資産全体をきちんと把握して、どこから取り崩していくのが最も得策かという順番を検討することが重要です。
総務省統計局の「家計調査」によると、高齢者世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の無職世帯)の家計収支は、平均毎月約5.5万円、年間で約66万円の不足となっています(2017年)。この不足分を、どの資産から出して賄うのかを考えなければなりません。
たとえば、「つみたてNISA」の運用が非常にうまくいき含み益が大きくなっているなら、まずそこから取り崩すというやり方もあります。逆に、運用状況があまりよくないなら、「つみたてNISA」はそのまま運用を続けて相場の回復を待ち、別のところから充当するのが得策になるかもしれません。
「iDeCo」は、一時金であれば70歳までに、年金形式の場合は原則60歳から5~20年の間で受け取る決まりです。一方、「つみたてNISA」は年齢による受け取り方の制限はありません。そこで60~70歳の10年間は「iDeCo」を取り崩して、その後で「つみたてNISA」を取り崩すという方法もあるでしょう。
「つみたてNISA」なら、老後が近づいてきたら毎月の積立は中止して運用だけを続けるということもできますし、20年間の非課税運用期間が終わった後は課税口座に引き継いで運用を続けることも可能です。基本ルールのところで説明したように、20年以内に売らなくても税制面で損をするわけではなく、持ち続けても大丈夫です。
なお、老後資金で重要なのは、資産の取り崩しの方策だけではありません。たとえば定年時に住宅ローンが残っているならば、まず「つみたてNISA」で住宅ローンの一括返済をしたほうがいいかもしれません。また、定年後も70歳くらいまでは働き続ける、公的年金を繰り下げ受給するなど、資産の取り崩しと併せて、総合的に老後のキャッシュ・フローを豊かにする方法を考えていくことが大切です。
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⇒「つみたてNISA」は50代半ば以降の人が老後資金を作る最適な制度!「iDeCo」との比較や商品の選び方など、50~70代の「つみたてNISA」活用術を解説!
含み損が出ているときに売るのはNG!
一時的な損失でへこたれずに積立投資を続けよう
ここまで見てきたように、「つみたてNISA」は、利用者それぞれの事情に応じて運用期間を自由にできるので、非常に使い勝手のいい制度です。「20年間」という長い非課税運用期間は上手に生かしたいところですが、それにこだわらず、各人のライフプラン、ライフイベントに合わせて、必要になったときにはいつでも売却して構いません。
さらに、特に資金が必要なライフイベントがなくても、たとえば元本の2~3倍以上になるなど、大きく儲かったときには、「つみたてNISA」の一部あるいは全部(なるべく一括で売らないほうがいいと思いますが)を売却してもいいでしょう。
唯一、「売らない」という選択をしたほうがいいのは、含み損が出ているときです。投資経験が少ないと「損が大きくならないうちに売ってしまおう」と考えがちですが、過去の経験則から言えば、積立投資では長く続ければ続けるほど「時間分散」が効いて、負ける確率は減っていきます。一時的に運用がマイナスに陥っても、逆に「安く買えるチャンス」と考えて、いい「売り時」が来るまでは愚直に積立投資を続けていきましょう。
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⇒つみたてNISA(積立NISA)を始めるなら、おすすめの証券会社はココだ!手数料や投資信託の取扱数などで比較した「つみたてNISA」のおすすめ証券会社とは?
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(構成:肥後紀子)
ファイナンシャルリサーチ代表。AFP、1級ファイナンシャルプランニング技能士。クレジット会社勤務を3年間経て1989年4月に独立系FP会社に入社。1996年1月に独立し、現職。あらゆるマネー商品に精通し、わかりやすい解説に定評がある。主な著書に『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない』『ジュニアNISA入門』(ダイヤモンド社)など多数。
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150本 | 137〜2200円 (約定代金による) |
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※手数料などの情報は定期的に見直しを行っていますが、更新の関係で最新の情報と異なる場合があります。最新情報は各証券会社の公式サイトをご確認ください。売買手数料は、1回の注文が複数の約定に分かれた場合、同一日であれば約定代金を合算し、1回の注文として計算します。投資信託の取扱数は、各証券会社の投資信託の検索機能をもとに計測しており、実際の購入可能本数と異なる場合が場合があります。※1 年会費無料のクレジットカードの場合。※2 1約定ごとプランで約定金額240万円までの売買手数料。 |