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6月15日、16日に開催されるFOMCでは、
「経済予想サマリー」のコンセンサス予想に注目!
6月15日、16日の2日間に渡り、米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利を決定する会合、連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されます。
現在の米国の政策金利であるフェデラルファンズ・レート(FFレート)は0〜0.25%です。今回、このFFレートに変更は加えられないと思います。
また、FRBは債券買い入れプログラム(QE)を実施しており、毎月、米国財務省証券を800億ドルと住宅抵当証券を400億ドル、合計で1200億ドルの債券を買い入れることで市場に現金を供給しています。今回、このQEにも変更は加えられないと思います。
FRBはFOMCにおいて、四半期に一度のペースで「経済予想サマリー(SEP)」という資料を発表します。これは、連邦準備制度のメンバーの一人ひとりに「今後の米国のGDP成長率やFFレート、失業率、インフレ率はどうなるか」という予想をアンケートして回り、それを集計したものです。
今、市場参加者が最も注目しているのは、「今回、経済予想サマリーのコンセンサス予想に、どのような変化が現れるのか」ということです。ひとつずつ解説していきましょう。
【FFレート】
2023年のコンセンサス予想の数字がポイント
経済予想サマリーにおけるFFレートの予想分布図は、通称「ドットプロット」と呼ばれます。
直近で発表された経済予想サマリーは今年の3月17日のものですが、その時点におけるFFレートのコンセンサス予想は、下のグラフのオレンジ色で示されているとおりです。グラフを見ると、「FFレートは2023年末までまったく動かない」というのがコンセンサス予想であることがわかります。
今回の経済予想サマリーで、FFレートに関しては「2023年のコンセンサス予想の数字が上昇するのか」という点に注目してください。私の考えでは、たぶん少し上昇すると思います。
【GDP成長率】
過去の予想から変化する可能性はあるが、重要度は低め
GDP成長率に関しては、下のグラフがコンセンサス予想となっています。
今回、GDP成長率のコンセンサス予想は、動くかもしれませんし動かないかもしれませんが、他の数字に比べるとそれほど重要ではありません。
【失業率】
2021年のコンセンサス予想が上昇(悪化)する可能性あり
失業率のコンセンサス予想は、下のグラフのとおりです。
失業率に関して、2021年のコンセンサス予想が上昇(=悪化)するかもしれません。
【PCEインフレ率】
上昇が予想されるものの一過性の減少に過ぎない
PCEとは、個人消費支出(Personal Consumption Expenditure)のことです。インフレ率に関する統計にはさまざまな種類がありますが、FRBが好んで使用するのはPCEインフレ率です。
前回のPCEインレフレ率の2021年末におけるコンセンサス予想は下のグラフのとおり2.4%ですが、これは低すぎるので上方修正される可能性があります。
FRBは、米国議会から「インフレ率を2%前後に持ってゆくように」という目標を与えられています。現在の米国の消費者物価指数は前年同月比+5.0%で推移しており、明らかに高過ぎです。
ただし、これは、去年の今頃に景気が極端に低迷し、需要不足から物価が下落圧力を受けていたことや、最近、経済再開が突然起こっている関係でいろいろなところでボトルネックが生じており、それが不自然に価格を吊り上げていることなどの一時要因が影響しています。
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こうした一過性の問題が通り過ぎれば、物価は再び低下するというのがコンセンサス予想となっています。
長期金利を見る限り、過剰なインフレは起こらないが、
FRBがあえて意表を突くメッセージを出す可能性も
過剰なインフレは起こらないという証拠に、米国10年債利回りがここへきて下落(=債券価格は上昇)しはじめています。
米国10年債利回りチャート/日足・1年(出典:SBI証券公式サイト)※画像をクリックすると最新のチャートへ飛びます
拡大画像表示
わかりやすくするためにあえて単純化して説明すると、上のグラフに見られる長期金利は、「政策金利」+「市場参加者が将来のインフレがどうなると考えているか」を合成した数字であると言えます。政策金利はとうぶん動かないと予想されるので、長期金利が下がっているということは、市場参加者が「将来的にインフレ率は逆に下がってくる」と予想しているということになります。
これは、かねてからFRBが主張してきたシナリオと一致しており、その意味で市場参加者とFRBの“気持ち”は同じところにあると言えます。その意味において、今回のFOMCにおいて、FRBは一切メッセージを変更する必要はありません。
しかし、「ずっと金融緩和を続ける」というスタンスがあまりにも明快に出過ぎてしまっているため、「FRBは、自分で自分の将来採りうる選択肢の幅を狭めてしまっている」と形容することもできます。
その状況を少しほぐし、経済がどっちに転んでもいいように裁量の自由度を上げるためには、少々メッセージを撹乱したほうがいいかもしれません。この「やってもいいし、やらなくてもいい」という自由さのことを、ファイナンスの専門用語では「オプショナリティー」と呼んでいます。
「将来の目標は決まっていないけど、とりあえず良い大学へ行っておけば後でどうにでも身の振り方を決めることができるよね」とか、「就活しないといけないけど、どの業種が自分に向いているのかわからないから、とりあえずいろんな業種で役立つキャリアとして経営コンサルでも受けるか」というのは、いずれもオプショナリティーを確保する行為に他なりません。
現在の米国経済の状況は、以前FRBが主張していたとおりの展開になっています。市場参加者も、ズバリそれを言い当てたFRBに敬意を表する格好で、FRBの言うとおりに「将来インフレ率は低くなる」というシナリオに従っています。このような局面では、オプショナリティーの確保のために、逆にFRBはわざと意表を突くメッセージを出すかもしれないのです。
【今週のまとめ】
FOMCの見どころは、経済予想サマリーのコンセンサス予想!
FRBによる撹乱を狙った「意表を突くメッセージ」に警戒しよう
今回のFOMCの見どころは、「経済予想サマリーのコンセンサス予想に、どのような変化があるか」です。
予想としては、2023年のFFレートのコンセンサス予想は少し上昇すると思います。GDP予想は重要ではありません。また、失業率のコンセンサス予想はやや上昇(=悪化)し、PCEインフレのコンセンサス予想も上昇すると思います。
市場参加者は、FRBの主張する「インフレは一過性の現象だ」というシナリオを額面どおりに受け止めています。米国10年債利回りが低下していることが、そのなによりの証拠です。
ただ、FRBの考えに市場参加者が素直について行っているということは、FRBにとっては将来的にどっちに転んでも大丈夫なように、わざとメッセージを撹乱する行動に出る余地があることを示唆しています。そのような意表を突くメッセージを、我々は警戒すべきでしょう。
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