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東証の資料から「PBR1倍割れ・ROE8%未満」の銘柄が狙い目と判明!“中長期的な企業価値の向上”に向け、低PBR&低ROEな銘柄の「増配」や「自社株買い」に期待

2023年2月21日公開(2023年4月6日更新)
藤井 英敏
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東証が2022年4月に実施した「市場区分の見直し」に対する
「フォローアップ会議」が市場の関心を集める

 現在、市場の一部で東証の「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」への関心が高まっています

 ご存じのように、東証は「上場会社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上を支え、国内外の多様な投資者から高い支持を得られる魅力的な現物市場を提供すること」を目的として、2022年4月4日に現物市場の市場区分の見直しを行い、3つの新市場区分(プライム市場、スタンダード市場、グロース市場)を創設しました。

 東証は、この市場区分見直しの実効性の向上を図る観点から「フォローアップ会議」を設置し、2022年7月から議論を重ねています。会議のメンバー構成は、エコノミスト、投資家、上場会社、学識経験者、その他の市場関係者です。

 そして東証は2023年1月30日、これまでの「フォローアップ会議」での議論について論点の整理を行うと同時に、その内容を踏まえ、今後、東証が対応を進める事項を公表しました。具体的には「上場維持基準に関する経過措置の終了時期の明確化」「プライム市場とスタンダード市場を中心に、中長期的な企業価値向上に向けた自律的な取り組みの動機付けとなる枠組みづくり」の2つです。

上場維持基準に関する経過措置は、
市場再編後の「3+1」年で終了することに

 まず「上場維持基準に関する経過措置の終了時期の明確化」ですが、これは市場区分の見直しを行った際、上場維持基準を満たしていない企業でも新市場にとどまることができるように設けた「経過措置」を、いつ終了させるか明確にするということです。

 今回公表された内容では、市場再区分の見直しの約3年後である2025年3月以後に到来する基準日から、本来の上場維持基準を適用することとしました。さらに基準に抵触した企業が1年以内(改善期間)に改善しなかった場合は、監理銘柄・整理銘柄(原則として6カ月間)に指定されます。つまり、市場再編からの3年+原則1年の改善期間の「3+1」年で経過措置を終了するということです

 市場区分見直しの前日において市場第一部に所属し、現在プライム市場に上場している会社については、改めてスタンダード市場を選択する機会を設けます。また、上場維持基準に適合せず、上場廃止が決定した銘柄については、いったん整理銘柄へ指定し、当該上場維持基準の判定に関する基準日の翌日から起算して6カ月間を経過した日に上場廃止となります。

「中長期的な企業価値向上に向けた取り組みの動機付け」は、
「低PBR・低ROE」の企業に対して非常に厳しい内容に

 一方、「中長期的な企業価値向上に向けた取り組みの動機付け」としては、2023年春からプライム上場銘柄とスタンダード上場銘柄を対象に、経営陣や取締役会が自社の資本コストや資本収益性を的確に把握し、その状況や株価・時価総額の評価を議論のうえで、必要に応じて改善に向けた方針や具体的な取り組みやその進捗状況などを開示することを要請します。特に、継続的にPBRが1倍を割れている会社に対しては、開示を強く要請するということです。

 ちなみに、2022年12月28日開催の「フォローアップ会議 第五回」で公表された「東証説明資料」には、

「特に、PBR1倍割れの上場会社については、改善に向けた取組のロードマップを公表し、それに基づき投資者と対話する等の形でPDCAサイクルを回すことを求めていくことも一案」
「取引所において、PBRやROEの一覧を公表することも考えられる」
「全上場会社の約半数がPBR1倍割れやROE8%未満という状況にメスを入れない限り意味がなく、PBRやROEなどの財務指標の改善に向けて、一歩踏み込んだことができるかどうかが本会議の論点」

などと、低PBR(1倍未満)・低ROE(8%未満)の企業に対して、非常に厳しい内容が記載されています。

 このため、低PBR・低ROEの企業は、中長期的な企業価値の向上に向けた取り組みを加速させなくてはならない状況に追い込まれていると言えるでしょう

「低PBR・低ROE」銘柄は、「増配」「自社株買い」などの
株価水準を押し上げる対策を実施してくる可能性が高い!

 また、東証は中長期的な企業価値の向上に向け、必要な情報の英文開示の義務化を目指しており、プライム市場の上場維持基準に関する経過措置の終了にあわせて、英文開示対象書類の拡充や日英のタイムラグの解消を促進する考えです。なぜならば、海外投資家からの資金を呼び込むためには、英文開示の充実が重要だからです。

 さらに、東証は2023年の春から「投資者との対話の実効性向上」を目的に、プライム市場において、経営陣と投資家の対話の実施状況やその内容などをコーポレート・ガバナンス報告書に記載することを要請します。 

 しかし、こういった対応だけでは「低PBR・低ROE」の状況を脱することは難しいでしょう。よって、多くの投資家にとって、わかりやすい「具体的な高株価実現策(株価水準を押し上げる対策)」を打ち出す必要があります。具体的には、「増配」や「配当性向の引き上げ」「自社株買い」「自己株式消却」「株主優待の新設・拡充」「積極的なIRの実施」「新製品の開発」「新規事業の開始」「M&A」、そして裏技の「優良親会社によるTOB(親子上場解消)」などです。

 つまり、「低PBR・低ROE」の企業は、非常に高い確率で2025年3月までに、あの手この手で高株価実現策を講じてくるはずです。よって、逆説的ですが「低PBR・低ROE」銘柄のほうが、「高PBR・高ROE」銘柄よりも投資対象としては魅力的と言えます。もちろん、高株価実現策を講じたくても体力的に実行できない、財務面で厳しい銘柄は投資対象外です。

インフレ懸念が強い間は米国の金利が下がり難いため、
日米ともにバリュー株が物色されやすい傾向が続く

 ところで米国では、1月の米・CPIや米・PPIがいずれも市場予想を上回って上昇したことを受け、ゴールドマン・サックスとバンク・オブ・アメリカが政策金利の見通しを引き上げました。両社は、FRBが3月、5月、6月のFOMCでそれぞれ0.25%ずつ利上げし、政策金利を5.25~5.5%にすると見込んでいます。

 一方、FRB高官らのタカ派発言も相次いでいます。米セントルイス連銀のブラード総裁は2月16日、次回3月のFOMCで0.5%利上げすることに関して「排除するつもりはない」と語りました。同日、クリーブランド連銀のメスター総裁は「政策金利を5%超に引き上げ、しばらくの間はそこにとどめる必要がある」と発言しました。

 いずれにせよ、インフレ懸念が強い間は、米国の金利が下がりづらいため、日米ともに高PERのグロース株の上値は重そうです。逆に、バリュー株が物色されやすくなっていると言えます。そして、米国の金利が下がるまでは、この物色傾向が続くと見ています。

 このため当面は、高株価実現策を講じる可能性の高い「低PBR(1倍未満)・低ROE(8%未満)」銘柄や、すでに市場の評価は高いものの現在の株価ベースでも「低PBR・低PER・高配当利回り・高ROE」を実現している好業績のバリュー株に狙いを絞ることをおすすめします。
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