<5185> フコク 1802 +9
フコク<5185>は、PER10倍台かつPBR0.6倍台で推移している中、配当利回り5.7%付近とインカムゲインを享受しながらキャピタルゲインを待てる状況にある。
同社は独立系のゴム部品メーカーとして確固たる地位を築いている企業である。1953年の創業以来、「Yes, We Do!」の精神のもと、自動車部品を中心にグローバルニッチトップ戦略を展開してきた。事業セグメントは、機能品(2025年3月期売上高構成比47%)、防振(同42%)、金属加工(同4%)、ホース(同6%)、ライフサイエンス(同1%)の5つのセグメントを軸に事業展開している。主力の機能品事業では、ワイパーブレードラバーで国内シェア約90%以上、グローバルシェア約60%という圧倒的な市場支配力を有している。また、防振事業ではエンジンマウントや建設機械用のビスカスマウント(国内シェア70%)、ライフサイエンス事業の細胞培養バッグ(国内シェア35%)などを提供している。生産拠点は日本国内のみならず、ASEAN、インド、中国、欧米など世界各地に広がり、地産地消の体制を整えている。2020年版経済産業省のグローバルニッチトップ企業100選に選出されている。
同社の強みは、第一に、材料の開発・配合から設計、金型製作、量産までを一貫して行う「ソリューションビジネス」を展開している点にある。これにより、顧客のニーズに合わせた最適な材料設計と高精度な製品提供が可能となり、競合他社に対する決定的な差別化要因となっている。第二に、ワイパーブレードラバーにおける世界首位級の圧倒的な市場シェアとブランド力である。長年培った高度なゴム加工技術により、極めて高い品質と信頼性を実現しており、世界中の主要な自動車メーカーから厚い信頼を獲得している。ソリューションビジネス展開していることから中国における新規の拡販も進めている。第三に、次世代モビリティへの高い適応力と事業の将来性である。電気自動車化が進展してもワイパーの需要は消失せず、むしろバッテリー周辺の放熱部材など、EV化に伴う新たな高付加価値製品の需要を取り込む成長余力を備えている。
直近の業績について、5月15日に発表した2026年3月期の売上高は90,025百万円(前期比0.4%増)、営業利益は3,806百万円(同19.4%減)で着地した。機能品事業で放熱ギャップフィラーなどの新製品拡販が堅調であった一方で、防振事業の受注伸び悩みや、金属加工事業での採算向上に向けた事業再編の影響があった。ライフサイエンス事業はバイオ関連製品の受注が堅調に推移した。売上高が伸び悩む中で、生産性向上や合理化、変動対応等の取り組みを進めたものの、原材料費の高止まりや労務費上昇等を、合理化や変動対応等で吸収しきれなかったようだ。
併せて、2027年3月期の通期見通しは、売上高85,000百万円(前期比5.6%減)、営業利益3,300百万円(同13.3%減)を見込んでいる。2026 年度の売上は、各国地域で中東情勢の影響等を一定程度織り込んでおり、売上に関してはカーメーカーの予測を元に前年比 5%程度の売上減、営業利益は売上減に伴う操業度の低下や、原材料費・輸送費の高騰などを今時点でわかる範囲で盛り込んでいるもよう。ただ、今年度は様々な変革プロジェクトにより、利益向上策などに取り組み、今期の計画は達成できると考えているようだ。
今回、中期経営計画2026で掲げていた2026年度売上高1,200億円、営業利益率8.0%、ROE12%という目標を取り下げた。本計画は、自動車産業におけるBEV化進展やグローバル需要回復、半導体需要の拡大を前提としていたが、BEV化市場の停滞、OEM各社の生産変動、原材料の高止まり等、同社を取り巻く事業環境は大きく変化しており、内部努力だけでは対処しきれない状況下にあるため、一定の見直しが必要と考えたようだ。ただ、2026 年度を「変革フェーズ」と位置づけ、経営が強くコミットし変革に取り組んでいく。「稼ぐ力の更なる向上」として赤字・不採算製品の削減、原価低減を進め、「市場戦略強化」として同社製品・市場の強みが活かせる市場への取組を強化。また、「モノづくり力強化」や「M&A も活用した新規事業の立ち上げ」などにも積極的に取り組んでいく。2026 年度の変革を踏まえ、2027 年度を初年度とする次期中期経営計画では、稼ぐ力の
強化を軸に収益性・資本効率を高め、持続的な成長と企業価値の向上を目指すようだ。
成長戦略に変化はなく、市場におけるテクニカルセンターの機能強化を通じた中資系自動車メーカーへの拡販であり、2030年にはワイパーのグローバルシェアを65%まで引き上げる方針である。また、インド市場においても現地R&D機能の設置や生産体制の強化を進めており、市場の成長速度を上回るペースでの拡大が期待される。さらに、日本の実績をASEANへ拡大しており、インドネシアでは参入障壁の高い鉄道関連部品を受注。インドネシア国産鉄道の車両の国産化率向上に貢献しており、今後もASEANでの拡販を図っていく。
さらに、成長事業として、ライフサイエンス分野と宇宙分野の強化も図る。ライセンス分野では、迅速微生物検査キットや細胞培養関連製品の量産体制を確立。5月19日には、活性化NK細胞大量培養キット「Phicello NK/Tシリーズ」を新発売した。本製品はT細胞などの細胞増殖を抑制し、ヒト末梢血由来細胞からNK細胞のみを選択的に活性化・増殖させる利便性の高い製品で、同社独自の閉鎖系バッグ容器の活用で、異物、細菌やウイルス等のコンタミリスクを低減しているようだ。半導体関連分野でも、シリコンウェーハ製造向けにウレタンローラーを供給しており今後の受注増が期待される。会社側も同分野において事業領域の拡大を目指している。また、宇宙分野では、JAXAの宇宙戦略基金事業に採択された。「高G対応非線形ゴムアイソレータ」や「極低温対応ワイヤアイソレータ」の開発など、これまでに培ってきたロケット・人工衛星向け振動減衰技術の開発実績を基盤に、打上げ環境から軌道上まで搭載された機器類を一貫して保護できる振動減衰機能を構築していくようだ。これら高付加価値製品の比率向上により、長期的な収益基盤の飛躍的な向上が見込まれている。
株主還元については、連結配当性向30%から40%に変更した。2027年3月期の年間配当金予想は100円(増配:前期比15円増)を計画しており、安定的な収益成長を背景に還元額も着実に増加傾向にある。直近のPBRは0.6倍台と1倍を割り込んでおり、会社側もROE改善や対話強化を通じて早期の1倍超えを目指している。
総じて、同社はゴム加工技術を核とした圧倒的な世界シェアを基盤に、自動車産業の構造変化をチャンスに変える強固な経営体質を有している。足元のコスト増を吸収する合理化策の進展や、EV化に伴う新製品の拡販、さらには成長市場であるインドや中国での戦略的な事業展開など、将来の成長に向けた布石は着実に打たれている。株主還元に対する前向きな姿勢も考慮すれば、現在の割安な株価水準からの見直し買いが期待できる状況にある。グローバルニッチトップとして確固たる地位を築きながら、宇宙事業・ライフサイエンス事業の推進や、新たな事業領域への挑戦を続け、中長期的な成長を見込むことができる同社の今後の躍進に期待したい。
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