「夢の配当金生活」実現メソッド

増配株に投資する際に参考にすべき「指標」とは?割安・割高の目安になる「PER」、資本効率の良さを表す「ROE」「ROA」など「指標」の使い方を解説!

【第6回】 2017年9月13日公開(2022年3月29日更新)
個人投資家・立川 一(たちかわ・はじめ)
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 こんにちは、個人投資家の立川です。

 さて、今回の本題に入る前に、前回までの内容をおさらいしてみましょう。

 個人投資家、特に大切な家族を持つサラリーマン投資家にとって最も大切なことは何でしょうか。それは、リスクをできるだけ抑えながら資産の拡大を図ることです。そして、投資決定に至るプロセスがシンプルで、時間がかからないことです。

 株式投資で成功するためには、優れたビジネスモデルを持ち、しっかりとした経営をしている会社の株を、割安なときに買って保有することが条件になります。とはいえ、3000社以上ある上場企業のビジネスモデルや経営内容を研究して、投資対象を決定するには、それなりの勉強と時間が必要です。しかし、投資先を「増配株」に絞ることによって、極めて単純な分析で投資先を絞り込むことができます

 どんな投資方法にもある程度の勉強は必要ですが、増配株投資なら比較的少ない時間で勉強や銘柄選択が可能です。仕事が忙しい方、家族との時間を大切にしたい方、趣味を楽しみたい方など、投資に費やす時間を少なくしたい方に向いていることでしょう。

 また、増配株は20~30年間、保有し続けて配当を受け取るだけで、元本を回収できる可能性が高く、さらに株主優待も加味すれば、元本の回収に要する年数は短くなります。しかも、元本を回収してしまえば、その後はリスクフリーとなり、株価を気にすることなく配当と株主優待を受け取ることができるのです。

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増配株の中でPERが低い「割安」な銘柄を選んで
分散投資をすれば、リスクはさらに減らせる!

 さて、これまで紹介してきたように、「増配株」への投資は非常にリスクの低い(やり方によってはリスクがなくなる)投資方法ですが、今回はまだまだ慎重派の読者の方々のために、さらにリスクを低くすることを考えてみたいと思います。

 読者の皆さんは、きっと「Yahoo!ファイナンス」の個別銘柄の画面を開いたことがあることでしょう。

日本エス・エイチ・エル(4327)「Yahoo!ファイナンス」の「日本エス・エイチ・エル」の詳細ページ
拡大画像表示

 右の画像はこのコラムでもたびたび取り上げている日本エス・エイチ・エル(4327)のページですが、右下に「参考指標」という欄があります。すでにこのコラムでも取り上げている配当利回りをはじめ、さまざまな数字が並んでいますね。

 この「指標」とは、「その会社が保有する資産や生み出す利益に対して、株価はどれくらいなのか?」「株主から預かったお金を元に、効率よく利益をあげているか」など、上場企業の投資判断をするために、さまざまな尺度から計算された数字です。表示された用語が耳馴染みのない場合は、「用語」ボタンをクリックすれば解説が表示されます。

 また、「Yahoo!ファイナンス」で表示されている「PER」「PBR」「EPS」などのほかに、「ROE」「ROA」といった指標を参考にする投資家も多いです。これらの指標の数字を見て、今、この銘柄に投資すべきかどうかを判断するのです。

 指標として最もポピュラーなPERは「株価収益率」と呼ばれており、「時価総額÷純利益」または「株価÷1株当たり純利益」で計算される指標です。PERが意味するところは「この会社を丸ごと買ったとして、何年で元が取れるか?」という数字です。「PERが20倍」というような言い方をしますが、この場合は「今後、この会社が現在と同水準の利益(税引後)が続いた場合、この会社を丸ごと買ったとしたら、20年で元が取れる」と考えることができます。数字が低いほど割安で、高いほど割高となります。たいていの場合、PERを計算する純利益や1株当たり純利益は今期の会社予想数値を元に計算するので、「予想PER」と言うこともあります。

 また、PERの逆数は「益回り」と呼ばれており、通常「%」で表します。例えば、PER20倍の銘柄は
PER20倍の益回り(%)=1/20=0.05=益回り5%
 と、表現します。これは「この会社を丸ごと買ったとして、その利益のすべてを配当に回したら、どれくらいの利回りになるか?」を表しています。

 実際には利益の一部を配当し、残りは留保されるのが普通です。例えばPER20倍(=益回り5%)、配当利回り2%という銘柄があった場合、益回りと配当利回りの差である3%は会社に留保されているということになります。ちなみにこの留保された分は、事業拡大のための設備投資や研究開発、買収に利用されたり、財務改善のために借入金を返済したり、株主還元のために自社株買いをしたり……というふうに使われています。

「生涯投資家」(村上世彰)『生涯投資家』(村上世彰・著) 村上ファンドを率いて、ニッポン放送や阪神電鉄などに投資、「モノ言う株主」として注目を集めた村上氏の自伝。
拡大画像表示

 ただし、上場企業のなかには、利益から配当した残りを事業拡大などに生かさずにひたすら貯め込んでいる会社もあり、そうした会社の姿勢に対して大株主が株主に還元するよう圧力をかけることもあります。

 今年6月に自伝ともいえる著書『生涯投資家』を出版して話題になった村上世彰氏は、自身が運用する「村上ファンド」で保有していたいくつかの会社に、株主還元の拡大を要求したことで有名です。

 少し話が逸れましたが、PERは会社が想定している利益に対して、現在の株価が割安かどうかを判断できる指標なのです。具体的に言うと、数字が小さければ割安、大きければ割高と考えることができます。私は増配株投資をする時に、「PERが20倍以下で、それに加えて配当利回りが2%以上」の複数の増配株に分散投資をするように心掛けています。こうすれば、リスクは相当低くなるのではないかと思います。

PERが高い銘柄は予想以上の利益を出して当たり前で、
もし予想を下回れば株価は大きく下落してしまう!

 PERが高めで株価が割高な銘柄(私は30倍以上を割高と考えています)は、多くの投資家による「未来の業績」に対する期待が株価に反映されているケースが多いです。PER30倍と言うことは、「この会社を丸ごと買ったとしたら、元を取るのに30年かかる」ということになりますが、利益が成長することにより、30年よりももっと短い期間で元が取れるだろうという投資家の期待が込められているのです。

 このようなPERが高い銘柄は株価の変動も激しく、見通し以上の利益を出すことが当たり前となっています。そのため、見通しどおりの利益が出せなくなったという企業の発表(=業績下方修正)があったら、株価は大きく下がりますし、配当も減らされるかもしれません。また、投資家が期待する高い成長を望めなくなったと判断されても株価が下落します。

 逆にPERが低い銘柄は、投資家の期待がそもそも大したことがないと言えます。例えば、少子化で今後は大きな成長が難しいと考えられている塾産業などはPERが低いケースが多く、私が投資しているステップ(9795)も常に東証の平均PERを下回っています。PERが低い株の場合、業績が発表されるごとに徐々に株価に反映されるため、増益するだけで徐々に株価が上がって行く、ということになりやすいのです。仮に減益の発表などのネガティブサプライズがあっても、そもそも期待が低いので株価も大きくは下がりにくいという特徴があります。

 また、景気の動向に業績が左右されがちな銘柄(景気循環株と呼ばれています)には、PERがかなり低い銘柄が多いです。ただし、景気循環株は利益がブレやすく、増配を継続しにくいという特徴があるので、いくらその時点で株価が割安で配当利回りが高くても、長期的に保有する投資対象には不向きです。しかし、連続増配の銘柄に絞って投資することで、景気循環株を避けることにつながります。

 PERは算出方法がそれほど複雑な指標ではありませんが、過去の実績、将来への期待、事業内容が景気の影響を受けやすいかどうか、知名度や株式の日々の取引量など、さまざまな判断材料によって多くの投資家に取引された結果がPERに反映されていると言えるでしょう。ただ単に配当利回りの高さや連続増配の有無を見るだけでなく、PERも判断材料に加えることにより、よりリスクの低いポートフォリオを組むことができます。

PBRやROEなど、PER以外の指標はどう使う?
日本の上場企業の投資判断に使うには不向きな面も

 PERのほかにいくつか投資の参考とされる指標がありますので、有名なものを3つほど紹介しましょう。

 PBR(株価純資産倍率)とは「Price Book-value Ratio」の略で、株価が1株当たり純資産(BPS:Book-value Per Share)の何倍まで買われているかを指します。

 ROE(自己資本利益率)とは「Return On Equity」の略で、 自己資本を「元手」として、1年間でどれだけの利益を上げたかを表します。

 ROA(総資産利益率)とは「Return On Asset」の略で、当期純損益を総資産で割った数値で、総資産を如何に効率的に活用して利益に結びつけているかを示しています。

 いずれもよく耳にすると思いますが、これらの指標は気にしなくて良いのでしょうか。

 PBR、ROE、ROAといった指標は、「資本の効率」を表す指標で、日本株と比べると米国株はこれらの指標が全般的に高い傾向にあります。なぜなら、米国の企業は配当などで利益を積極的に株主に還元しているからです。無駄に内部留保をせずに、少ない資産で利益を生みだす(=資本効率が良い)状態になっているので、その結果として資本効率を表すこれらの指標が高くなります。

 一方、日本の企業が株主還元を積極的にするようになってきたのはつい最近なので、まだまだ現金を貯め込み、過剰な資産をだぶつかせている会社が多いのが現状です。そのため、当然ながら資本の効率を表すROEなどの指標は低くなりがちです。

 しかし、これは逆に言うと、今後、日本の上場企業には配当を増やしたり、自社株買い(=流通している自社の株式を会社自身が買うことを指し、1株当たりの価値を高める効果がある)をするなど、株主に報いる余力が多く残っていることになります。

 このような理由から、私はこれらの「資本の効率」を表す指標、特にROEを投資判断に使うのは疑問に感じています。ROE(自己資本利益率)とは、「純利益÷自己資本」で計算され、自己資本を元手に1年でどのくらいの利益を上げたのかを表します。しかし、ROE10%の会社が資本を2倍にしたら売上も利益も2倍になる(=ROE10%を維持する)とは限りません。たまたま、ある年の資本金や総資産を基準にして、そのときに生んだ利益の金額でROEやROAが決まるのです。その翌年に同じ利益を生んでも、前年に利益の一部を内部留保すれば資本は増加するので、ROEもROAも下がってしまいます。

 ROEやROAの指標の数字を改善するには、利益をすべて配当して、借金して自社株買いをすればよいのですが、借金が増えれば金利上昇時には利益を圧迫しますし、内部留保が少なければ財務の健全性も損なわれます。つまり、ROEが高いことは資本効率の良さはあらわすものの、個人投資家の投資対象として良いとは限らないのです。私は増配株のみならず、企業のビジネスモデルを分析して投資することがありますが、一度もこれらの指標を参考にしたことはありません。大切なのは売上・利益を増やし、結果的に配当を増やしてくれることです。そのため、私はあまりに割高に評価されすぎていないかの参考としてPERを使用しています。

PERを投資判断に利用する際は「特別利益・特別損益」に注意!
また、PERが低い理由がわからなければ投資対象から外せばOK!

 ただし、PERを使うときに注意したいのは、PERは「純利益」を元に計算しているので、例年は発生しない利益や損失(特別利益・特別損失と言います)が発生すると、本来の実力とはかけ離れた低いPER、または高いPERになることがあるということです。

 また、PERは投資家の会社に対する期待が反映されているわけですが、例えばある会社のPERが低いのはたまたま注目度が低いからなのか、多くの投資家が危険を察知して買うのを控えているのか、簡単には分かりません。PERが低い理由を判断するには、その会社が持つビジネスを分析したり、損益計算書をじっくり見たりする必要があるので、判断が難しいと感じたら投資対象から外してもいいのです。現在、日本の証券取引所には3000以上の会社が上場しているので、自分が判断できる範囲の銘柄に投資をしても、十分に投資対象は見つかると思います。先ほど提示した「PER20倍以下程度で、かつ配当利回り2%以上の増配銘柄」という判断基準でも、かなりの数の銘柄があるはずです。

 そして、「PER20倍以下程度で、かつ配当利回り2%以上の増配銘柄」をいくつか見つけて分散投資をするのがおすすめです。分散投資をする際は、ゆっくり増配しているが高利回りな銘柄、増配速度は早いが各種指標が高い銘柄、指標もそこそこ割安で適度に増配している銘柄など、タイプが異なる銘柄に複数投資するのもいいと思います。とはいえ、残念ながら、会社は人が経営するものですから、完璧はありえません。経営判断のミスをまったくしない企業を探し当てることはほぼ不可能です。しかし、「PER20倍以下程度で、かつ配当利回り2%以上の増配銘柄」という条件を満たす銘柄に分散投資をすることで、仮に1~2銘柄が経営に失敗しても残りの銘柄がフォローしてくれて、資産が大きく目減りするのは防げるはずです。

 では、最後に今回のポイントをまとめてみましょう。

【ポイント①】
投資対象を増配銘柄に絞った上で、PERを確認して分散投資をすれば、一段とリスクが軽減できる。
【ポイント②】
PERが極端に高くない銘柄を選ぶ。また、低すぎる銘柄にも注意する。
【ポイント③】
ROEやROAといった「資本効率の良さ」を表す指標は、必ずしも個人投資家の投資判断材料に向いているとは言えないので気にする必要はない。
【ポイント④】
指標の数字の判断が難しい場合は、こだわらずに他の銘柄を探す。

 さて、次回以降ですが、今までのコラムで紹介した知識を生かし、いよいよ株式投資の実践に向かう読者の皆さんの前に立ちはだかる壁をいかに乗り越え、資産形成への第一歩を踏み出すかについて、何回かに分けて紹介いたします。題して「株式投資へ、一歩踏み出そう!」です。乞うご期待!
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個人投資家・立川 一(たちかわ はじめ)さん
(『Value Investment since 2004 長期に配当収入増加と資産形成を目指す立川一の投資日記』:https://vis2004.blog.fc2.com/)
40代のサラリーマン投資家。中学生のころから株に興味を持ち、2004年から本格的に株式投資を開始。バフェットの本に影響を受け、最初はバリュー投資からスタートしたが、次第に増配株のメリットに気がつき、現在の投資手法を確立する。趣味である楽器演奏の腕前はかなりのもので、週末にはライブ活動も行っているとか。

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MUFGグループとKDDIグループが出資するネット証券で、SB証券や楽天証券などと並んで5大ネット証券のひとつ。日本株は、1日定額制なら1日100万円の取引まで売買手数料が無料(0円)!「逆指値」や「トレーリングストップ」などの自動売買機能が充実していることも特徴のひとつ。あらかじめ設定しておけば自動的に購入や利益確定、損切りができるので、日中に値動きを見られないサラリーマン投資家には便利だ。板発注機能装備の本格派のトレードツール「kabuステーション」も人気が高い。その日盛り上がりそうな銘柄を予測する「リアルタイム株価予測」など、デイトレードでも活用できる便利な機能を備えている。投資信託だけではなく「プチ株(単元未満株)」の積立も可能。月500円から株を積み立てられるので、資金の少ない株初心者にはおすすめだ。「J.D.パワー 2024年カスタマーセンターサポート満足度調査<金融業界編>」において、ネット証券部門で2年連続第1位となった。 
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1日100万円まで取引は売買手数料無料! 1約定ごとプランの売買手数料も最安レベルで、コストにうるさい株主優待名人・桐谷広人さんも利用しているとか。信用取引の売買手数料と買方金利・貸株料も最安値レベルで、一般信用売りも可能だ! 近年は、各種ツールや投資情報の充実度もアップ。米国株の情報では、瞬時にAIが翻訳する英語ニュースやグラフ化された決算情報などが提供されており、米国株CFDの取引に役立つ。商品の品揃えは、株式、FXのほか、外国債券やCFDまである充実ぶり。CFDでは、各国の株価指数のほか、原油や金などの商品、外国株など多彩な取引が可能。この1社でほぼすべての投資対象をカバーできると言っても過言ではないだろう。なお、国内店頭CFDについては、2023年末まで10年連続で取引高シェア1位を継続。頻繁に売買しない初心者やサラリーマン投資家はもちろん、信用取引やCFDなどのレバレッジ取引も活用する専業デイトレーダーまで、幅広い投資家におすすめ!
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以前はライブスター証券だったが、2021年1月から現在の名称に。売買手数料を見ると、1日定額プランなら1日100万円まで無料。1日100万円超の価格帯でも大手ネット証券より割安だ。そのうえ信用取引の売買手数料が完全無料と、すべての手数料プランにおいてトップレベルの安さを誇る。そのお得さは株主優待名人・桐谷さんのお墨付き。2023年10月に新取引ツール「NEOTRADER」が登場。PC版は板情報を利用した高速発注や特殊注文、多彩な気配情報、チャート表示などオールインワンの高機能ツールに仕上がっている。また「NEOTRADER」のスマホアプリ版もリリースされた。低コストで日本株(現物・信用)やCFDをアクティブにトレードしたい人におすすめ。また、売買頻度の少ない初心者や中長期の投資家にとっても、新NISA対応や低コストな個性派投資信託の取り扱いがあり、おすすめの証券会社と言える。
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◆株主優待名人の桐谷さんお墨付きのネット証券は? 手数料、使い勝手で口座を使い分けるのが桐谷流!
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※手数料などの情報は定期的に見直しを行っていますが、更新の関係で最新の情報と異なる場合があります。最新情報は各証券会社の公式サイトをご確認ください。売買手数料は、1回の注文が複数の約定に分かれた場合、同一日であれば約定代金を合算し、1回の注文として計算します。投資信託の取扱数は、各証券会社の投資信託の検索機能をもとに計測しており、実際の購入可能本数と異なる場合が場合があります。

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◆目指せ!お金名人
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