こんにちは、個人投資家の立川です。6月は配当が多く実施される月でしたが、最近は配当の次に楽しみな株主優待が次々と自宅に届いています。
私はリーマン・ショックのころにQUOカードやギフトカードといった金券類が届く株主優待株をまとめて買いました。数千円分のギフトカードやQUOカードを送ってくれる会社もあるので、だいたい秋ごろまではコンビニやドラッグストアで現金を使う必要がありません。私の仕事は出張も多く、出張先ではコンビニのお世話になることも多いのでQUOカードは非常に重宝します。そのQUOカードが配当とは別にタダで送られてくる……個人株主の確保のための制度だとは思いますが、不思議なものです。
さて、前回のコラムでは「定期預金」や「アパート経営」と比較しながら「増配株」の凄さを紹介しました。
【※連載3回目の記事はこちら!】
⇒増配株は「元本が増える銀行預金」「部屋数が増えるアパート」のようなもの! 追加投資をしなくても配当が増え、価値も上がる「増配株」のスゴさとは?
今回は別の観点、特に個人投資家なら誰もが考える「投資の元本割れリスクを減らしたい!」という視点から「増配株」のすごさを紹介したいと思います。
「増配株」なら投資元本が早く回収できるので、
リスクフリーで「高配当」を受け取れるようになる!
前回、「増配株」の一例として、日本エス・エイチ・エル(4327)という会社を紹介しました。ほぼ毎年、増配をしている「増配株」で、2007年に投資してから10年間で配当金は約2倍、株価も約10倍になっています(※「増配株」の例として日本エス・エイチ・エルを挙げますが、私個人が投資を推奨するものではありません)。
私は2007年に日本エス・エイチ・エルを買って以来、ほとんど買い増しはしませんでした。しかし、ほぼ毎年「増配」しているにもかかわらず、2016年11月に株価が急落して、配当利回りが4%に上昇したため、9年ぶりに買い増しを行いました。
配当利回りが4%ということは、もし増配をしないで配当がそのままだとしたら、25年で受け取る配当金の合計が投資元本と同額になります。つまり、25年間で元が取れてしまうということになります。
【配当利回りが4%の場合】
株価=100円、配当利回り=4%の場合、年間の配当金=4円
100円÷4円=25年
ただし、これは配当の税金を考慮せずに計算した場合で、配当から20.315%が源泉徴収された場合、受け取る配当金の合計が投資元本と同額になる、つまり元が取れるのは32年後ということになります。
【配当利回りが4%の場合(源泉徴収:20.315%)】
株価=100円、配当利回り=4%の場合、年間の配当金=4円で
実際に受け取れるのは4円×(1-0.20315)=3.1874円
100円÷3.1874円=31.4年
いったん、配当金で投資元本を回収してしまえば、その後は低リスクどころか、無リスクな状態で毎年、配当を受け取ることができるようになります。しかし、投資元本を回収できるとはいえ、32年は長すぎると感じる方もいるかもしれません。
ところが、前回紹介したように、日本エス・エイチ・エルはほぼ毎年、増配してきました。つまり、もらえる配当金が毎年増えていくので、実際には32年よりも短い年数で投資元本を回収できるはずです。
では、日本エス・エイチ・エルのように増配することを考慮した場合、はたしてどれくらいの年数で元が取れるのでしょうか。
今回は話をわかりやすくするために、配当利回り4%の株が、毎年5%増のペースで増配する株の場合はどのくらいの期間で元が取れるのかを考えて計算し、同様に毎年10%増、毎年15%増のペースで増配するケースでも計算してみました。その結果は以下のようになりました。
【最初の配当利回りが4%の場合(源泉徴収:20.315%)】
増配なし=32年
毎年5%増配=21年
毎年10%増配=16年
毎年15%増配=13年
これをグラフで表示すると下記のようになります。
年5%増のペースで増配する場合、投資元本を回収するまでの期間は配当から引かれる税金を考慮しても21年です。増配のペースが年10%に上がれば増配がない場合の半分の16年、増配のペースが年15%まで上がれば13年という短期間で投資元本を回収できるのです! しかも、毎年「増配」をして配当金が増えているということは、元を取ったころには株価が高くなっていることも期待できます。
一方、銀行の定期預金はどうでしょうか。メガバンクの金利0.01%の定期預金をした場合、利息で元を取ろうと思ったら1万年かかってしまいます(厳密には、利息からも20.135%が源泉徴収されるので、1万年以上かかります)。
しかし、株の場合は目先の株価変動のリスクはあるものの、配当利回り4%で、毎年増配する「増配株」に投資すれば10~20年で元を取ることができ、その後は銀行預金の利息とは比べ物にならない高い配当金を無リスクで受け取ることができます。しかも、そういったことが可能な「増配株」はたくさんあるのです。
複数の「増配株」に分散投資することで、
株式投資につきものの「倒産リスク」も軽減できる!
次に、「増配株」に投資する際、さらにリスクを下げられる方法を紹介します。
私は株式投資をするときは「万一に備えて、10銘柄以上に分散投資する」ことを推奨しています。増配を続けてくれる「増配株」はしっかりしたビジネスを持っている会社がほとんどで、倒産からは程遠い会社が多いのですが、それでも万一の事態はゼロではありません。
実は以前、私自身も投資していた会社が役員の使い込みを発端として、最終的に上場廃止になり、大きな損失を被った経験があります。数字の上ではどんなに素晴らしい投資先に見えても、その内情を投資家が正確に見抜くのは難しく、あっという間に経営に行き詰ったり、株価が崩れてしまったりすることがあるのです。
記憶に新しい例としては、2014年に粉飾が発覚して株価が急落した「リソー教育」、2015年に架空取引が発覚して上場廃止となった「江守グループホールディングス」、さらには「東芝」も粉飾決算が発覚するまでは増配傾向にあったのです。会計の知識がある方は、決算書を読みこんでこれらの銘柄を避けられたかもしれませんが、「増配株」という観点で投資していると大きな損失を出してしまう危険があるのです。
さて、ここでさらに1つ、読者の皆様に考えてもらいましょう。
(問題①)
あなたが配当利回り4%の株を10銘柄買ったとします。残念なことに、そのうちの1銘柄が買った途端に倒産してしまい、株価がゼロになってしまいました。残りの9銘柄の配当金のみで、当初の10銘柄分の投資元本をすべて回収するには何年かかるでしょうか。なお、10銘柄はまったく同じ金額を投資したと仮定し、配当に対する税金は20.315%とします。増配なし、毎年5%増配、毎年10%増配、毎年15%増配の4パターンで考えてみて下さい。
(解答①)
増配なしの場合=35年
毎年5%増配した場合=22年
毎年10%増配した場合=17年
毎年15%増配した場合=14年
続いて、2社が倒産した場合、3社が倒産した場合も考えてみてください。
(問題②)
配当利回り4%の10銘柄に投資して、2社が倒産した場合、残りの8銘柄の配当金のみで投資元本を回収するには何年かかるでしょうか? また、3社が倒産した場合、残り7銘柄の配当金のみで投資元本を回収するには何年かかるでしょうか?
(解答②)
●2社が倒産した場合
増配なしの場合=40年
毎年5%増配した場合=24年
毎年10%増配した場合=18年
毎年15%増配した場合=15年
●3社が倒産した場合
増配なしの場合=45年
毎年5%増配した場合=26年
毎年10%増配した場合=19年
毎年15%増配した場合=16年
どうでしょうか? いくら増配株とはいえ、1社でも倒産してしまったら、残った9銘柄の配当金だけで投資元本を回収するには、もっともっと長い期間が必要だと考えた方も多かったのではないでしょうか。
1社も倒産しなければ投資元本の100%を回収すれば良いのですが、1社倒産した場合は9社で10社分、つまり100%×(10÷9)≒111%を回収しなくてはいけません。同様に2社の場合は125%、3社の場合は143%を回収しなくては、もともとの投資元本を回収することはできません。
しかし、毎年5%増配する「増配株」なら1社が倒産しても22年、2社が倒産しても24年、3社が倒産しても26年で投資元本を回収できるのです。毎年10%、15%増配する「増配株」なら、もっと短い期間で回収できます。
つまり、「増配株」に分散投資をすることによって、その中の1社の株価が大きく下落したとしても、さほど長くない年数で他の「増配株」が株価の下落分を補ってくれるのです。
そもそも、「増配株」を発行している企業は増配できるくらい業績や財務に余裕があるはずなので、倒産の可能性もかなり低いはずです。ということは、もともと倒産の可能性の低い「増配株」に、さらに分散投資をすることによって、株式投資で難しいとされている「株価下落による元本割れリスク」を高い確率で回避できるだけでなく、投資期間が長くなれば「配当」だけで投資元本の回収が可能になるのです。「増配株」でなくても年月さえかければ投資元本を回収することはできますが、あまりに期間が長くなりすぎて、私はこの世にいないかもしれません。
株式投資で投資元本を保全するのはプロの投資家でも難しいことですが、株を買えば誰でも配当金を受け取れますし、時間を味方につければ配当だけで投資元本を回収でき、株は手元に残ります。しかも、「増配株」は倒産や株価下落のリスクが低く、投資元本を回収できたころには配当も株価も最初に投資したころの数倍になっているかもしれません。
上場企業が積極的に株主還元を実施するようになった現在、高配当利回りの銘柄や増配率の高い銘柄はゴロゴロしています。「ザイ・オンライン」や「ダイヤモンドZAi」の特集記事などで「高配当利回り株」「増配株」は何度も紹介されていますので、チェックしてみましょう。
【※関連記事はこちら!】
⇒10万円以下で買えて増配と株価上昇を同時に狙える株初心者におすすめの「増配成長株」を2銘柄紹介! 少額で投資できる増配株はNISA口座とも相性抜群!
⇒7期以上の連続増配を実施中で、業績は増収増益、増配余力もたっぷりの「連続増配株」2銘柄を紹介! 値上がり益と配当益をダブルで増やせる銘柄とは?
それでは、今回のポイントをまとめましょう。
【ポイント①】
「増配株」を保有すると、配当金だけでも短期間で投資元本を回収できる。
【ポイント②】
投資元本さえ回収してしまえば、ノーリスクで配当だけ受け取れるようになる。
【ポイント③】
複数の「増配株」に分散投資をすることで、リスク回避能力は格段に上昇する。
【ポイント④】
「増配株」への投資は、リスクを最小限にしたい個人投資家に向いている。
今回は、それほど長い年月をかけなくても「配当」だけで元を取ることができてしまう「増配株」のメリットを解説しました。
「増配株」を選んで投資するというのは、優れたビジネスモデルを持つ、リスクの低い上場企業を自動的に選択していることになるので、投資にさほど時間をかける必要もなく、自分や家族の時間を大切にしながらじっくりと資産形成ができます。しかも、受け取る配当が毎年増えることで投資元本の回収が早めにできるためリスクを抑えた資産形成が可能になるのです。こんな都合のいい投資方法は、ほかにはなかなかないのではないでしょうか。
そして、次回はさらに新たな投資アイデアをプラスして、もっと短い年数で投資元本を回収するテクニックをお届けしましょう。題して「○○は侮れない! 増配+○○でパワーアップ!」です。次回もお楽しみに!
【※連載第5回はこちら!】
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個人投資家・立川 一(たちかわ はじめ)さん
(『Value Investment since 2004 長期に配当収入増加と資産形成を目指す立川一の投資日記』:https://vis2004.blog.fc2.com/)
40代のサラリーマン投資家。中学生のころから株に興味を持ち、2004年から本格的に株式投資を開始。バフェットの本に影響を受け、最初はバリュー投資からスタートしたが、次第に増配株のメリットに気がつき、現在の投資手法を確立する。趣味である楽器演奏の腕前はかなりのもので、週末にはライブ活動も行っているとか。
■「『夢の配当金生活』実現メソッド」バックナンバー
【第1回】
⇒年収500万円以下のサラリーマンが、投資歴13年で資産1億5000万円、年間配当収入300万円を実現!成功のカギは「増配銘柄への投資」を発見したこと!
【第2回】
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【第4回】
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【第5回】
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【第6回】
⇒増配株に投資する際に参考にすべき「指標」とは?割安・割高の目安になる「PER」、資本効率の良さを表す「ROE」「ROA」など「指標」の使い方を解説!
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【第9回】
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【第10回】
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【第14回】
⇒「配当金」を再投資すれば、複利効果によって配当金 &資産増加のスピードが加速する!「増配株投資」の 優位性をさらに高める「配当金」の使い道を伝授!
【第15回】
⇒株式投資に「損切り」は必要なのか? 悪材料が出た 場合の「損切り」の必要性や増配の継続性を判断する 方法など、ネガティブなニュースへの対処法を検証!
【第16回】
⇒インフラファンドが抱える「出力制御」「自然災害」「売電価格の低下」という“3つのリスク”を解説!投資対象としてのインフラファンドに未来はあるか?
【第17回】
⇒個人投資家は「株価暴落」にどう対応すべきなのか?株価の急変に右往左往しないためには「株価の変動を気にしなくていい投資手法=増配株投資」を選ぶこと
【第18回】
⇒「資産運用」は、40~50代から始めても遅くない!40~50代が定年退職や老後に備えて「増配株投資」で資産運用するメリットと注意点をわかりやすく解説!
【第19回】
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【GMOクリック証券のおすすめポイント】 1日100万円まで取引は売買手数料無料! 1約定ごとプランの売買手数料も最安レベルで、コストにうるさい株主優待名人・桐谷広人さんも利用しているとか。信用取引の売買手数料と買方金利・貸株料も最安値レベルで、一般信用売りも可能だ! 近年は、各種ツールや投資情報の充実度もアップ。米国株の情報では、瞬時にAIが翻訳する英語ニュースやグラフ化された決算情報などが提供されており、米国株CFDの取引に役立つ。商品の品揃えは、株式、FXのほか、外国債券やCFDまである充実ぶり。CFDでは、各国の株価指数のほか、原油や金などの商品、外国株など多彩な取引が可能。この1社でほぼすべての投資対象をカバーできると言っても過言ではないだろう。なお、国内店頭CFDについては、2023年末まで10年連続で取引高シェア1位を継続。頻繁に売買しない初心者やサラリーマン投資家はもちろん、信用取引やCFDなどのレバレッジ取引も活用する専業デイトレーダーまで、幅広い投資家におすすめ! |
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1約定ごと(税込) | 1日定額(税込) | 投資信託 ※1 |
外国株 | |||
10万円 | 20万円 | 50万円 | 50万円 | |||
◆SBIネオトレード証券(旧:ライブスター証券) ⇒詳細情報ページへ | ||||||
0円 (1日定額) |
0円 (1日定額) |
0円 (1日定額) |
0円/日 | 49本 | ○ (米国株CFD) |
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【SBIネオトレード証券のおすすめポイント】 以前はライブスター証券だったが、2021年1月から現在の名称に。売買手数料を見ると、1日定額プランなら1日100万円まで無料。1日100万円超の価格帯でも大手ネット証券より割安だ。そのうえ信用取引の売買手数料が完全無料と、すべての手数料プランにおいてトップレベルの安さを誇る。そのお得さは株主優待名人・桐谷さんのお墨付き。2023年10月に新取引ツール「NEOTRADER」が登場。PC版は板情報を利用した高速発注や特殊注文、多彩な気配情報、チャート表示などオールインワンの高機能ツールに仕上がっている。また「NEOTRADER」のスマホアプリ版もリリースされた。低コストで日本株(現物・信用)やCFDをアクティブにトレードしたい人におすすめ。また、売買頻度の少ない初心者や中長期の投資家にとっても、新NISA対応や低コストな個性派投資信託の取り扱いがあり、おすすめの証券会社と言える。 |
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【積極的に売買する短期トレーダーに人気!】 | ||||||
※手数料などの情報は定期的に見直しを行っていますが、更新の関係で最新の情報と異なる場合があります。最新情報は各証券会社の公式サイトをご確認ください。売買手数料は、1回の注文が複数の約定に分かれた場合、同一日であれば約定代金を合算し、1回の注文として計算します。投資信託の取扱数は、各証券会社の投資信託の検索機能をもとに計測しており、実際の購入可能本数と異なる場合が場合があります。 |
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