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「配偶者控除」と「配偶者特別控除」は2018年にどう変わったのかをわかりやすく解説! 大幅な改正で得する人、損する人を世帯主・配偶者の年収別に紹介

【第44回】 2018年3月5日公開(2022年3月29日更新)
風呂内亜矢
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2018年度税制改正の主な内容をおさらいしておこう!

 2017年の12月、2018年度(平成30年度)の税制改正の概要が、財務省より発表されました。

 税制改正といわれても、ピンと来ない人も多いかもしれませんが、これは年度ごとに税金の制度を改正することを指します。各省庁の要望などを踏まえて検討が重ねられ、毎年12月頃に内容が公にされます。

 2018年度税制改正では、主に以下のような内容が発表されました(※多くの人に関連がありそうなものを抜粋)。

【所得税】
 2020年1月から基礎控除を引き上げ、会社員などに適用される給与所得控除を引き下げる。基礎控除はこれまで一律38万円だったが、所得が2400万円超の場合、基礎控除を減額、もしくはゼロにする(※原則、年収850万円超の会社員は増税、自営業・フリーランスは減税。ただし、年収850万円超の会社員でも、22歳以下の子どもや介護が必要な人がいる世帯は増税の対象外)。

【たばこ税】
 紙巻きたばこは、2018年10月から4年で1本あたり3円増税(※消費税率が上がる2019年は据え置き)。加熱式たばこも5年かけて段階的に税率を引き上げ。

【国際観光旅客税】
 新規創設。2019年1月7日以降、日本から出国する人に対し、一回1000円を徴収する。2歳未満の子ども、乗り継ぎ旅客は対象外。

【森林環境税】
 新規創設。2024年度から住民税に上乗せし、年1000円を徴収する見通し。

 ほかにも法人税の減税など、改正点は多岐にわたっています。

(※関連記事はこちら!)
⇒2018年度の税制改正で、増税になるのはどんな人?給与所得控除の縮小で「年収850万円超」の会社員の負担が増加し、出国税や森林環境税も新設・徴収へ!

 改正点はぜひ覚えておきたいですが、上記のとおり、適用時期はどれもまだ先です。直近で関係してくるのは、一昨年12月に発表された2017年度税制改正の変更点です。

 2017年度税制改正の目玉と言われ、私たちの生活に大きな影響を与えるのは、「配偶者控除」と「配偶者所得控除」の大幅変更です。すでに2018年1月から適用されていますが、まだ詳細を把握していない方のために、今回は「配偶者控除・配偶者所得控除」の改正点を解説します。

そもそも「配偶者控除」と「配偶者特別控除」とは?

 「配偶者控除」とは、所得のない、あるいは所得の少ない配偶者を持つ人の税金を安くする制度のこと。「配偶者特別控除」とは、配偶者控除の設定している条件よりも所得がやや高い配偶者を持つ人(配偶者の年収が103万円超の人)に対し、やはり税金を安くする制度です。夫が会社員として働き、妻がパートをしている場合などは、妻の収入次第で夫に配偶者控除および配偶者特別控除が適用されます。

 2018年1月から、この配偶者控除と配偶者特別控除の適用条件が大幅に変わっています。変更のポイントは以下のとおりです。

(1)従来、配偶者控除は本人(所得の少ない配偶者を持つ人、以下「世帯主」とする)の所得制限がなかったが、改正後は所得制限が設けられた

(2)2017年までだと、配偶者特別控除の対象となるのは、配偶者の年収が141万円未満の場合だったが、2018年からは配偶者特別控除の枠が広がり、年収201万円以下まで対象になった(配偶者控除の対象は配偶者の年収が103万円以下の場合で、これは2017年までと変わらない)

(3)配偶者の年収が150万円までは、満額38万円の控除が受けられるようになった

 順に、詳しく説明していきましょう。

世帯主が1000万円以上稼いでいると、配偶者控除は0円になる!

 まずは(1)、世帯主の所得制限について。2017年まで適用されていた配偶者控除では、配偶者の年収が103万円以下の場合、世帯主がどれだけ給与をもらっていても、一律で38万円の控除を受けることができました(※配偶者の年齢が70歳未満の場合。以下、配偶者は70歳未満と仮定する)。なお、年収103万円とは、所得税を負担せずに働ける上限金額です。

 しかし、2018年1月からは、配偶者控除に世帯主の所得制限が設けられ、一定の所得を超えると、段階的に控除額が減額されることに。具体的には、所得が900万円(年収ベースだと1120万円)以下なら、満額の控除(38万円)の対象となりますが、900万円超だと控除が段階的に引き下げられ、所得1000万円(年収ベースだと1220万円)を超えると控除額がゼロになります。

 主婦(主夫)の方で、これまで年収103万円の範囲内でパートすることを心掛けていたケースも多いと思いますが、前述のように世帯主の所得が1000万円を超えていると、配偶者控除の対象から外れてしまうため、年収103万円にこだわる意味はなくなったのです。

年収150万円まで満額38万円の控除が受けられるように!

 続いて、変更のポイントとしてご紹介した、(2)「2017年までだと、配偶者特別控除の対象となるのは、配偶者の年収が141万円未満の場合だったが、2018年からは配偶者特別控除の枠が広がり、年収201万円以下まで対象になった」と、(3)「配偶者の年収が150万円までは、満額の38万円の控除が受けられるようになった」について併せて解説します。

 配偶者特別控除も配偶者控除と同様で、世帯主の所得が1000万円超(年収ベースで1220万円超)の場合には適用されません。所得900万円以下(年収ベースで1120万円以下)であれば、配偶者の収入次第で満額受け取れますが、所得900万円超になると段階的に控除額は引き下げられます。

 世帯主の年収が900万円以下の場合、2018年からの改正によって、配偶者の年収が150万円までであれば、満額38万円の控除(配偶者控除と同等の控除)を受けられるようになりました。従来は配偶者の年収が103万円までだったので、大きな変化です。

 また、世帯主の所得だけでなく、配偶者の収入次第でも配偶者特別控除は減額されていきますが、2018年からは配偶者の年収が201万円の場合まで控除が受けられるようになりました。従来は配偶者の年収が141万円未満でなければ控除対象とならなかったので、こちらも大きな変化と言えそうです。

 上記の内容をざっくりとまとめると、以下のようになります。

・世帯主の所得が900万円以下で、配偶者の年収が103万円以下の世帯⇒改正の影響なし
・世帯主の所得が900万円以下で、配偶者の年収が103万円超201万円以下⇒減税

・世帯主の所得が900万円超で、配偶者の年収が103万円以下⇒増税
・世帯主の所得が900万円超で、配偶者の年収が103万円超⇒配偶者の収入次第で異なる。減税になる場合も、増税になる場合もあり。

働き方を考える際は「配偶者手当」と「社会保険料負担」も視野に

 これらの改正点を踏まえて、新たに働き方を見つめ直さなければならない方も多いと思いますが、さらに付け加えて注意しておきたいことも紹介しておきます。

 まず、多くの企業では、配偶者のいる従業員に「配偶者手当」を支給しています。企業によってルールは異なりますが、多くの企業が配偶者控除に基準を合わせ、「配偶者の年収が103万円以下」であることを支給条件としています。

 今回配偶者控除と配偶者特別控除が変更されたことで、支給上限を引き上げる可能性もあるかもしれませんが、それも含めて世帯主の勤務先の手当を改めて確認したほうがいいでしょう。

 加えて、配偶者の収入が130万円を超える場合、世帯主の扶養から外れて、配偶者自身が社会保険に加入する義務が発生します。その場合は当然のことながら、社会保険料を納めなければなりません。

 給料から社会保険料が差し引かれると、大幅に手取りが減ってしまいます。たとえば年収130万円の人だと、手取りは30万円くらい減る計算になります。これは大きな痛手になるでしょう。

 ちなみに、2016年10月からは社会保険の適用拡大がスタートし、条件を満たす企業で年収106万円を超えると、厚生年金や健康保険などの社会保険に加入できるようになっています。当初は従業員501人以上の企業での適用でしたが、2017年4月からは労使で合意がなされた場合、500人以下の企業でも適用できるようになりました。

 国民年金や国民健康保険とは違い、厚生年金や健康保険に加入できる場合、将来の年金受給額の増額や、病気やけがをした時の傷病手当金などの保障も手厚くなるため、手取りが減ることが一概に不利とも言えません。社会保険料を負担しつつ、収入アップを狙っていくことに一考の余地があります。

 さて、今回は主に配偶者控除と配偶者特別控除について解説してきました。冒頭でもお話ししたように、2018年度税制改正でも所得税の変更が明記されており、日本の税制は少しずつ変化しています。知らないままでいると、不意に損をしてしまうリスクもあるので、日ごろから情報収集をしていきたいですね。
(取材/麻宮しま)

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