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アマゾンがアファームの「分割払いボタン」の実装テストを開始!
世界中で流行っている「BNPL」ブームに拍車がかかる見通し
8月27日の引け後、アマゾン(ティッカーシンボル:AMZN)が、アファーム(AFFIRM HOLDINGS、ティッカーシンボル:AFRM)の提供する「分割払いボタン」をアマゾンのサイトに実装するテストを行っていることが報道されました。
アファームは米国の無担保消費者金融業者で、そのサービスを利用すると、消費者はモノが欲しいときに分割払い(割賦)で購入することができます。
分割払いのスケジュールは消費者自身で選ぶことができるうえ、金利もなければ隠れたフィー(手数料)も発生しません。そのため、クレジットカードのリボ払いのように、複利で雪だるま式に負債が大きくなることもないのです。さらに、消費者の支払額の上限が明確に設定されており、支払い遅延時や繰り上げ返済のペナルティーもありません。
このような仕組みは「BNPL(Buy Now, Pay Later)」と呼ばれ、今、世界中ですごいブームを巻き起こしています。アマゾンがアファームと提携してBNPLを実装することで、このブームに一層拍車がかかることが予想されます。
また、今回のディールは、アマゾンとアファームの両社だけでなく、クレジットカードを発行している銀行やネット通販業者などにも大きな影響を与えると思います。
そこで今回は、BNPLを可能にしているアファーム、そして、その背後で縁の下の力持ちの役目を果たしているマルケタ(MARQETA、ティッカーシンボル:MQ)について解説していきます。
「BNPL」は従来のクレジットカードとは根本的に異なり、
クラウド上に構築したシステムですべてのデータを管理!
BNPLはクレジットカードと似ていますが、その仕組みは根本的に異なります。
我々がクレジットカードと聞くと、VISAやマスターカードをイメージします。それらは実際には決済ネットワークであり、プラスチックカードの所有者は発行銀行、つまりバンク・オブ・モントリオール(BMO)やシティ(C)、バンク・オブ・アメリカ(BAC)、ウエルズファーゴ(WFC)などの銀行です。例えば「ウエルズファーゴVISA」は、ウエルズファーゴが発行し、VISAの決済網で走るクレジットカードということになります。
近年まで、借り手、すなわち我々消費者の情報は、クレジットカードを発行している銀行のメインフレーム・コンピュータに保管されていました。つまり閉じたシステムです。このような「カード発行者兼顧客情報保持者」のことを「イシュアー・プロセッサー(発行処理者)」と呼びます。
ところが、この従来のクレジットカードの基幹システムは古色蒼然たるプログラミング言語で書かれているため、融通が利かず、新しいサービスをその上に乗せることができません。
そこに目をつけた新興企業のマルケタは、「それら一切のことをクラウドに出してしまえば便利」と提案しました。マルケタは、クラウド上に誰でも利用できるイシュアー・プロセッサー・システムを構築し、銀行や事業会社が「クレジットカードを発行したい」と言ってきたら、そのインフラへのアクセスを許可して利用料を受け取ります。
マルケタのプラットフォームは、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)のようにクラウド上に構築されている関係で、アマゾンやその他のウェブ企業が持っているデータを掛け合わせて変幻自在に新しいサービスを創造することが可能です。
実際、アファームは基本的には表玄関の会社であり、その裏側のシステムはマルケタが担当しています。スクエア(ティッカーシンボル:SQ)が8月初旬に買収すると発表したオーストラリアのアフターペイや、スウェーデンのクラーナもそうした表玄関の会社で、マルケタはこの2社でも裏方を務めています。
一方、アファームのような表玄関となる会社は、ブランドの構築や顧客データの蓄積に力を入れています。そこでは個々の商品レベルでの支払記録など、極めて細かいことまで把握できます。
従来のクレジットカード会社は、カード保持者が勤めている会社名や年齢、性別、おおよその年収、住んでいる場所などの情報をもとに、その借り手の信用力を測っていました。それに加えて、FICO(ファイコ)スコアと呼ばれる「過去の支払いがきっちりなされてきたか?」に関するデータを参考にし、デフォルトリスクを加味した上でクレジットカードの金利を消費者に提示します。
しかし、アファームの場合は蓄積されたデータをもとに、さらに細かい個々の商品レベルでの貸し付けリスクを吟味できるのです。
「BNPL」のコストは、買い手側ではなく売り手側が負担!
契約をまとめて証券化することで、信用リスクを回避する仕組みも
BNPLで消費者がモノを購入する際に「金利コストゼロ」にできる理由は、商品のマーチャンツ(売り手)がそれを負担するからです。
マーチャンツの目線からすれば、売れ残った商品をバーゲンセールで叩き売りするより、金利コストを払ってでも値引きせずに商品を買ってもらったほうがブランド・イメージを毀損しなくて済みます。これが、BNPLでマーチャンツが金利を負担する動機です。
また、アファームやマーチャンツが消費者の信用リスク、つまり支払い遅延などのリスクを負わなくて済む仕組みもつくられています。
具体的には、まず小口の販売を繰り返して数多く集めたBMPLの契約は、全部を束にして証券化します。これは、例えば住宅ローンを束にし、住宅抵当証券(MBS)として転売するやり方によく似ています。そして、つくられた証券は機関投資家に買われていきます。
アファームは、一定の案件が溜まるまで、ニュージャージーのクロスリバー・バンクという地銀にそれを保管してもらいます。この作業をウエアハウジングと言います。そして、保管された案件がまとまったサイズになり次第、証券化して転売します。
そのため、景気暗転局面になって消費者の支払い遅延が増えた場合でも、リスクを被るのは証券を買った機関投資家となり、アファームやアマゾンが貸し付けにまつわるリスクを負うことはありません。
もし将来的に焦げ付きが増えれば、BNPLの金利コストが上昇する形で消費者に転嫁されることが予想されます。
なお、マルケタは、事業会社にも「カード出しませんか?」と勧誘しています。例えば、フードデリバリー会社のドアダッシュ(DASH)はクレジットカードを発行していますが、ここも事業会社であって銀行ではありません。ドアダッシュの場合、オハイオのサッター・バンクという地銀を使ってクレジットカードを発行しています。アファームが、クロスリバー・バンクを利用しているのと同じような形と言えるでしょう。
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「BNPL」は、法規制の枠組みから外れる「抜け道ビジネス」!
成長性が高い反面、消費者金融市場の健全性を毀損するリスクも
BNPLは、今までの法規制の枠組みが想定していなかった“抜け道ビジネス”です。その関係で、銀行の自己資本規制に類するような規制が存在しません。このため、旺盛な需要に応えるだけで爆発的に伸びる可能性があります。
ただ、BNPLを提供する業者の中には、支払い遅延を起こした消費者をFICOに報告する企業もありますが、報告しない企業もあります。業界内で統一が取れていないのです。このことは、今後BNPLが爆発的に普及すれば、銀行のクレジットカード残高やFICO平均スコアの推移を追うだけでは、消費者金融市場全体の健全性が測れなくなることを意味します。
アマゾンがアファームを実装すれば、今まで以上に幅広い品目でBNPLが使われるようになると予想されます。そうなったときに、信用リスクがどのような形で顕在化するかは予測不可能な面があります。
なお、与信が行われてしばらくの間は、消費者はまじめに返済しようとすると思われるため、BNPLのリスクが顕在化するのは少なくとも半年から数年先だと思います。
【今週のまとめ】
アマゾンの「BNPL」実装は大きなニュースとなるので、
アフォームやその裏側にいるマルケタをチェックしておこう!
アマゾンがアファームを実装することは、銀行業界に衝撃を与えました。消費者がアマゾンで商品をカートに入れ、チェックアウトする際、サイトに登録されているクレジットカード決済情報のページに到達する前に、アファームのボタンが押されてしまうと商売をごっそり持って行かれてしまうからです。
BNPLは、今すごいブームになっています。その表玄関を担当する企業がアファームであり裏方を務めている企業がマルケタです。どちらの株も今回のニュースで注目を浴びると思いますので、チェックしておくといいでしょう。
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