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スマホの充電にも活用される「ワイヤレス給電」は、
技術的に主に3種類の方式が存在する
すでに日常生活で活用している方もいらっしゃると思いますが、「ワイヤレス給電」は非常に便利な技術です。例えば、スマホの充電の場合、これまでならスマホ本体に電源コードをつなぐ必要がありましたが、ワイヤレス給電の技術を用いると、一見コースターのような装置の上にスマホを置いておくだけで、いつの間にか充電が完了してしまいます。
そんな便利なワイヤレス給電には技術的に複数の方式が存在しており、主なものを挙げると以下の通りです。個人投資家の方は、この3つを頭の片隅に置いておくと良いでしょう。
【主な「ワイヤレス給電」の種類】
1)電磁誘導方式
2)磁界共鳴方式
3)電波受信方式(空間伝送型)
「磁界伝導方式」は、送電側と受電側との間で発生する誘導磁束を利用する方式で、スマホのワイヤレス充電器にも採用されている現時点でもっとも一般的な方式になります。
「磁界共鳴方式」は、主にEV(電気自動車)向けに開発が進められている方式で、EVに搭載された受電側と地面などに組み込まれた送電側を磁界共鳴させて電力を伝送します。
最後の「電波受信方式」は、「空間伝送型」とも呼ばれる技術です。送信側は、電流を電波(電磁波)に変換して送信。受電側は、受信した電波(電磁波)を電流に再変換することで、給電を行います。
「電波受信方式」の最大のメリットは、電波を使うという性質上、伝送距離が長いこと。例えば「電磁誘導方式」を使った現在のスマホ用ワイヤレス充電器であれば、スマホを直接充電台の上に置かなければなりませんが、「電波受信方式」なら家に送電機器を1台設置しておけば「スマホを持って家の中にいるだけで、勝手に充電される」という未来的な生活が実現します。当然、充電切れの心配がなくなるため、デジタル機器の利便性は飛躍的に高まるでしょう。
伝送距離の長さから、さまざまな活用方法が考えられる
「空間伝送型(電波受信方式)ワイヤレス電力伝送システム」に注目
ワイヤレス給電技術の進歩は、さまざまな恩恵をもたらします。
例えば、EV(電気自動車)のリチウムイオンバッテリーの重さは現在300~500キロ程度ありますが、走行中でもワイヤレスで給電できるようになれば電池のサイズを小さくできるため、軽量化による燃費効率の改善や価格低下に繋がるでしょう。同様に、飛行中のドローンにワイヤレスでの給電が可能になれば、運用における安定性が飛躍的に増します。
さらに、伝送距離の長い「電波受信方式」の研究開発がさらに進めば、ワイヤレス給電の活用範囲は飛躍的に広がります。
例えば、2020年に九州で起こったような大規模な自然災害が発生し、電力網が寸断されてしまった際、ワイヤレス給電を使って、近接する他の地域から電線を使うことなく送電することが可能となります。
さらに、宇宙空間に巨大なソーラー発電設備を建設し、地上に電気を送る「宇宙太陽光発電システム」を支えるのもワイヤレス給電の技術となります。送電効率や送電可能な電力に課題があるため、実現はかなり先の話となりますが、夢のある魅力的な構想と言えるでしょう。
こうしたワイヤレス給電を活用した社会の実現に向け、総務省は1月14日、「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの導入のための制度整備」の一環として、「電波法施行規則等の一部を改正する省令案等についての意見募集」を開始しました。日本において、空間伝送型(電波受信方式)ワイヤレス電力伝送システムを導入するためには、現行の電波法施行規則などの一部を改正する必要があるため、その実現に向けて国が動き出したわけです。
そこで今回は、「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システム」に関連する銘柄を発掘したいと思います。具体的には、「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システム」の技術や設備機器の開発を進める企業のなかから、要注目の銘柄をピックアップしました。
【ソフトバンク(9434)】
京都大学や金沢工業大学と共同で研究開発を進める
2021年11月にソフトバンク(9434)と京都大学、金沢工業大学は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の「Beyond 5G研究開発促進事業」に係る公募で、「完全ワイヤレス社会実現を目指したワイヤレス電力伝送の高周波化および通信との融合技術」が研究課題として採択されました。これにより、共同で基地局電波の電力利用などの技術について研究開発を進めると見られます。ソフトバンクの株価は、1600円が上値抵抗線として意識されるなか、11月下旬以降は下落が続いていましたが、足元で1450円水準での底堅さが意識されてきており、押し目狙いのスタンスがおすすめです。
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【トレックス・セミコンダクター(6616)】
日本碍子や米・Ossia社と共同で受電レシーバーキットを開発
トレックス・セミコンダクター(6616)は2021年11月、日本碍子(5333)およびワイヤレス給電に関して独自技術を持っている米国のOssia社と共同で、空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの普及に向けた協業を開始したと発表しました。トレックス・セミコンダクターの低消費電力電源ICと日本ガイシのリチウムイオン二次電池、さらにOssia社の空間伝送型ワイヤレス電力技術を組み合わせ、新たな受電レシーバーキットの開発を進めるとしています。株価は、2021年11月末につけた高値3960円をピークに下落が続いていましたが、足元で52週移動平均線付近での底入れが意識されており、ここからのリバウンドに期待したいところです。
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【丸文(7537)】
米・Ossia社とワイヤレスIoTセンサーを共同開発
丸文(7537)は半導体商社で、2021年12月に米国のOssia社の空間伝送型ワイヤレス電力伝送技術を実装したワイヤレスIoTセンサーを共同開発したことを発表しました。電力供給のための配線や電池交換が不要、かつ無線通信機能を備えており、さまざまなIoT機器に組み込めるよう設計されています。株価は、2021年11月の高値959円をピークに調整が続いていたものの、直近で700円を割れが後はリバウンドの動きを見せています。
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【パナソニック(6752)】
「高速データ伝送」と「ワイヤレス給電」を両立
パナソニック(6752)は、「数Gbpsクラスの高速データ通信×50W未満のワイヤレス給電」をキーワードに、高速データ伝送とワイヤレス給電を両立する「無接点コネクタ技術」の開発を業界に先駆けて進めています。また、総務省からの委託を受け、電力伝送システムに関連する技術研究にも取り組んでいます。京都大学との実証実験では、5Wの空中線電力で10m先のセンサーを駆動させる社会実証などを行っています。株価は、今年に入って75日移動平均線に上値を抑えられる格好で調整を見せていますが、足元で1200円を割り込み、2021年5月の安値1163.5円に接近したことで、「二点底」形成からのリバウンドを期待したいところです。
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【ミネベアミツミ(6479)】
マイクロ波無線送電技術を活用した走行モニタリング実験を実施
ミネベアミツミ(6479)は2020年10月、京都大学と共同で、「電波受信方式」の一種であるマイクロ波無線送電技術を活用した実証実験を行うことを発表しました。この実験では、トンネル内に設置されたセンサーに対して走行車両から送電し、それと同時にセンシング情報を回収する「巡回型インフラモニタリングシステム」を活用。社会インフラの実現に向けた取り組みとして注目されます。株価は、2022年に入ってから下落が続いていましたが、足元で2600円付近での底固めからリバウンドの動きを見せてみます。
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【オムロン(6645)】
電池不要なワイヤレスセンサー向け技術を開発
オムロン(6645)は、電池が不要なワイヤレスセンサー向けのマイクロ波安定給電技術を開発しています。株価は、年明け以降は調整を続けており、直近では部材調達が不足している影響から業績予想を下方修正したことなどが嫌気され、一段安となりました。ただし、2021年の最安値である7850円付近まで下げてきたこともあり、悪材料出尽くしからの仕切り直しに期待したいところです。
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以上、今回は「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システム」の関連銘柄を発掘しました。
将来的にドローンやロボット、完全自動運転車などが本格普及するころには、「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システム」による自動充電や非接触給電は標準機能になっている可能性は高いでしょう。そのため、「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システム」の実用化の動きを見極めつつ、同時に関連銘柄の情報を見逃さないように気を配り、やや中長期視点で注目しておくといいでしょう。さらに、物色が拡大し、他の関連銘柄を探る動きも続けておきたいところです。
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