株ニュースの新解釈
【第85回】 2012年10月12日 保田 隆明

【緊急寄稿】超大型買収報道で株価急落
ソフトバンクの株価は回復する可能性が高い!

無借金宣言に共鳴していた株主は失望した可能性も

 ソフトバンクほど財務戦略の授業で扱いやすい企業はない。それは、お金を貸す人たちはこの会社危ないなあ、と思いながらヒヤヒヤしつつお金を貸す、それがソフトバンクである。格付けが高くないことからもわかる。

 一方、株式投資はリスクが比較的好きな人達が行うものであり、そういう株式投資家からは孫社長のリスクテイカーぶりがまぶしい。しかし、この1年間程度の孫社長の言動は無借金経営を目指すなど、以前のソフトバンクからは考えられない経団連企業的発言が目立っていた。

 その無借金への方向を評価していた株主にしてみると裏切られたという気持ちにもなろう。それが今般の株価大幅下落となっていると思われる。

日本でパイの奪い合いと、海外に打って出るのとどちらが正しいか

 今後の国内の携帯電話市場はビール市場に似てくるはずだ。

 参入障壁は高い、市場はある程度の大きさがある。それを3~4社で奪い合う。ビール会社は今必死に海外市場を開拓している。しかし、やや出遅れた感は否めない。海外のビール企業は大型のM&Aを繰り返しグローバルプレーヤーとなっている。

 日本のビール企業はローカル企業であり、アジアオセアニア地域で買収をして盛り返しを狙うが、グローバルプレーヤーの方が様々なシナジーを作りやすいので、日本企業が買収をしようとすると買収金額が割高になってしまう。

 ソフトバンクが今のタイミングでリスクを冒してまで米国のスプリント社を買収しようとするのは、目先ではたしかに両者ともiPhoneを扱うという共通性が存在するが、いつまでもiPhoneの牙城が続くかはわからないので、向こう10年、20年先のことを見据えてのことであろう。

 10年、20年経ってもソフトバンクがまだ日本市場のみでオペレートするローカル企業であったなら、きっと孫社長は後悔するに違いない。

 利用者にしても、今は海外で自分の携帯電話が使えるが、それでも通信料の面でも操作性の面でもまだまだ使い勝手が悪い。もしスプリントを買収することでアメリカでも自分の携帯が国内同様自由に使えるようなことになれば、それこそゼロゼロワンダフルである。

 有利子負債調達能力は高まっており、為替環境もよい。自社より大きな規模の企業を買収して経営することはボーダフォンで学んでいる。そう考えるとソフトバンクの今回の戦略は理にかなう。問題は市場がそれに対して自信を持てるかどうか、である。