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ウクライナ情勢の緊迫化に伴うエネルギー価格の高騰を背景に、
岸田首相は「原子力発電所の活用」について言及
ロシアとウクライナを巡る情勢は緊迫感を増しており、停戦に向けた交渉は暗礁に乗り上げた状態が続いています。米国や日本、英国などの主要7カ国(G7)は5月8日、ロシアへの圧力を強化するため、同国からの石油の輸入を段階的に禁止することで一致しました。現在のエネルギー価格の高騰は、しばらくの間、続くことになりそうです。
このエネルギー供給の不安定化を背景に、岸田首相は最近になって原子力発電所の活用について言及するようになりました。4月26日のインタビューでも、新しい規制基準に適合する原子力発電所は可能な限り活用していきたい、という意向を示したそうです。
この岸田首相の「原子力発電所の活用」という発言を受け、足元で東京電力ホールディングス(9501)など電力株への物色が強まっています。原子力発電所の再稼働による収益改善への思惑が高まったようですが、国内では原子力発電所の新設が簡単ではないことから、他の「原子力発電所」関連銘柄への波及効果は限定的となるでしょう。
政府は次世代燃料として「アンモニア」に注目しており、
「2030年時点で年間300万トン」の導入目標を立てる
このようにエネルギーを巡る世界情勢が大きく変化するなか、燃焼してもCO2を排出しない「アンモニア」が、カーボンフリーの次世代燃料として有望視されています。
日本政府も発電燃料としてのアンモニアには注目しており、その利用量を2030年時点で年間300万トン、2050年時点で3000万トンに拡大させる導入目標を掲げています。
また、2020年度には、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業において、石炭火力発電のバーナーにアンモニアを20%混焼した際の安定燃焼と窒素酸化物の排出量の抑制に成功しました。現在は、石炭火力発電所の実機におけるアンモニアの20%混焼の実証が進められているようです。
試算によると、大手電力会社の石炭火力発電を「アンモニア専焼(アンモニアのみを燃料として燃焼)」の火力発電に置き換えた場合、電力部門からのCO2排出量は現在の5割に削減。燃料の20%をアンモニアに切り替える「20%混焼」の場合でも、CO2排出量の1割の削減が可能とされています。
燃料用アンモニアについては、国だけではなく民間企業も力を入れています。
例えば、4月27日に日揮ホールディングス(1963)と東洋エンジニアリング(6330)は、燃料用アンモニアの製造工場とアンモニア受入基地を共同で建設する契約を結んだことを発表しました。また、IHI(7013)は、インドネシアの国営電力会社、PLNの100%子会社であるPJBと共同で、アンモニアの混焼および専焼に向けた技術の検討を開始。さらに、三井物産(8031)は2022年5月、肥料用のアンモニア製造大手である米国のCFインダストリーズ・ホールディングス(CF)と2023年に合弁会社をつくり、2027年までに工場を建設して燃料アンモニアの量産を始める計画だと報じられました。
そこで今回は「アンモニア」の関連銘柄に注目しました。
「アンモニア」の関連銘柄としては、第一に、前出したような商社やプラント企業のほか、電力会社、海運会社などが挙げられるでしょう。しかし、これらの銘柄は株式市場での認知度も高く、大きな値動き期待できないため、今回は、その他のセクターから銘柄を発掘しました。
なお、足元では相場全体の弱い値動きが目立っていることから、「緩やかな上昇トレンドを形成している銘柄」や「調整の動きを見せながらも底入れ感が意識されている銘柄」に絞り込みました。
【富士通(6702)】
アイスランドのベンチャー企業と共同研究をスタート
富士通(6702)は、アンモニアの合成方法の開発を行うアイスランドのベンチャー企業、アントモニアと共同で、ハイパフォーマンス・コンピューティングとAI技術でアンモニアの触媒探索を加速させる研究を2022年4月13日から開始。今後も共同でアンモニア合成手法の確立を目指していくとのことです。株価は、2月1日の安値1万4615円をボトムにリバウンドが続き、5月2日には一時2万670円まで上昇。直近でやや調整を見せていますが、25日移動平均線が水準での底堅さに期待したいところです。
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【ノリタケカンパニーリミテド(5331)】
世界初のカーボンフリー燃料電池用の部品を開発
ノリタケカンパニーリミテド(5331)は、アンモニアを直接燃料にできる世界初のカーボンフリー燃料電池用の部品を開発しました。株価は、1月4日につけた高値5040円をピークに調整が続いていましたが、4月下旬の4000円割れで目先の“底”を形成した格好となり、直近でリバウンドの動きを見せています。
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【昭和電工(4004)】
使用済プラスチックを使用した液化アンモニアを製造
昭和電工(4004)は、使用済プラスチックを原料の一部に使用した液化アンモニア「ECOANN」を開発。ケミカルリサイクルで生産した低炭素水素を利用したアンモニアを生産しています。株価は、3月9日につけた安値1807円をボトムにリバウンドが継続。足元で調整を見せていますので、75日移動平均線辺りでの押し目狙いがおすすめです。
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【豊田自動織機(6201)】
アンモニア燃料用小型エンジンシステムの開発を目指す発
豊田自動織機(6201)は2021年7月16日、大阪ガス(9532)と共同でアンモニア燃料用小型エンジンシステムの技術開発および実証を開始したことを発表。世界初となるアンモニア燃料単体で利用可能な小型エンジンシステムの実現を目指しています。株価は、2021年11月以降、調整トレンドが継続していましたが、足元では7500円辺りでの底固めからリバウンドの動きを見せています。
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【日本触媒(4114)】
アンモニアの新製法と利用技術の開発を進める
日本触媒(4114)は2021年8月1日、2050年のカーボンニュートラルの達成に向け「グリーンイノベーション推進部」を新設。事業の一環として、アンモニアの新製法と利用技術の開発を挙げています。株価は、中期的に調整トレンドが続いていましたが、最近になって5000円辺りでの底堅さが見られており、押し目狙いのチャンスと言えるでしょう。
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【UBE(4208)】
住友化学や三井化学などと共同でクリーンアンモニアの安定性確保を目指す
UBE(4208)は2021年12月21日、住友化学(4005)、三井化学(4183)、三菱ガス化学(4182)と共同で、クリーンアンモニアの安定的確保に向けた検討を開始することに合意したと発表しました。株価は、3月9日の安値1835円をボトムにリバウンドの動きを見せており、直近では上値抵抗線として意識されている75日移動平均線を突破してきました。
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以上、今回は「アンモニア」関連銘柄を発掘しました。
経済産業省は、カーボンニュートラル燃料であるアンモニアや水素の供給に向けた企業の大規模な初期投資に対し、政府が資金支援をする方針を明らかにしています。また、製造、貯蔵、輸送といったサプライチェーンづくりに対しても、一貫して支援していくようです。こうした国の動きも「アンモニア」関連銘柄の追い風となるでしょう。
「アンモニア」関連銘柄については、石炭に代わる「クリーン燃料」の一角として、今後も長期目線で注目していきたいと思います。
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