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これまで「領海内」に留まっていた洋上風力発電を
「排他的経済水域内」まで拡大する動きが加速
政府は、2050年に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標の実現に向けて、洋上風力発電を将来の主力電源のひとつとして位置づけています。2018年には「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」を閣議決定し、それに基づいて領海内における洋上風力発電の導入拡大の取り組みを進めてきました。
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その取り組みのひとつとして、日本の領土や領海内(海岸線から約22kmまで)だけでは十分な風力を得られる場所には限界があることから、政府は日本のEEZ(排他的経済水域内:海岸線から約44kmまで)に洋上風力発電の施設を設置できるようにするため国連海洋法条約(UNCLOS)に沿う形で検討を行っていました。その結果、2023年1月末に「EEZへの洋上風力発電の設置は国際法上可能」との報告書をまとめました。この報告書により、日本の洋上風力発電の開発は、ますます加速していくことが期待されます。
「2050年の脱炭素社会の実現」に向けて
急速な普及が期待できる「洋上風力発電」に注目!
2022年12月には秋田県の能代港沖で、2023年1月には秋田港沖で、国内初となる大規模な洋上風力発電所が相次いで商業運転を開始しました。秋田県ではほかの海域でも100基あまりの洋上風力発電が計画されており、地元では産業の中核にとの期待も高まっているようです。政府は、洋上風力発電の導入目標として2040年に最大4500万kW(原発45基分)をかかげており、ようやくその一歩が踏み出せた格好です。
また、3月20日に開催された沖縄県の県議会予算特別委員会で、玉城デニー知事は「外部環境の変化に強い再生可能エネルギーの導入を拡大する」と述べ、2023年度に新たに洋上風力発電に適した候補地を探す調査を実施する考えを示しました。
このように日本各地で洋上風力発電の導入が進んでいますが、現状、日本で実施されている案件は、英国やドイツ、米国などと比べて規模が小さいことが課題となっています。その課題の解決につながると期待されているのが、前述した「EEZへの洋上風力発電の設置」です。
現行法制度では、風力発電所の設置は領土、領海内に限定されていますが、前述した報告書をもとに、5月頃に策定が予定されている次期海洋基本計画に「EEZに海域を拡大する」といった文言を盛り込み、早期の法整備を目指すようです。
もし、EEZへの洋上風力発電所の設置が可能になれば、2050年の脱炭素社会の実現や電源の選択肢を確保することができると考えられ、株式市場においても関連する企業への追い風になりそうです。そこで今回は「洋上風力発電」関連銘柄に着目しました。
具体的な銘柄としては大手ゼネコンや海洋土木企業、ブレードを回転させるためのベアリング企業、さらには大手商社などが挙げられますが、今回はそうした主力銘柄ではなく、「洋上風力発電」に関連するサービスや測定機器などを手掛けている銘柄を中心に取り上げました。
なお、欧米発の金融不安などの外部環境から来る不透明要因から、どの銘柄も株価は総じて軟調な推移が継続しており、ボトム水準に接近しています。そのため、基本的に「押し目狙い」のスタンスになるでしょう。
【東洋炭素(5310)】
風力発電機用カーボンブラシを国内大手業者などが採用
東洋炭素(5310)は3月8日、同社が開発した風力発電用カーボンブラシが再生可能エネルギーの国内大手事業者やメンテナンス会社などに採用されることが決定したと発表しました。風力発電機用のカーボンブラシは、回転体に接触して安定的かつ断続的に電気を供給する消耗部品。東洋炭素の開発したカーボンブラシは耐久性が高く、寿命が約85%アップしており、交換頻度の低減につながるとのことです。株価は2月21日につけた高値4605円をピークに調整が続いており、200日移動平均線が位置する3500円辺りを底値と想定した押し目狙いのスタンスとなります。
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【日本製鉄(5401)】
グループ会社が洋上風力発電向けのビジネスを本格化
日本製鉄(5401)は、グループ会社の日鉄エンジニアリングが洋上風力発電所の設計から製作・施工まで総合的なサービスを提供。初の受注案件となる北海道石狩市の案件では、やぐら状の基礎構造物「ジャケット」の製造が順調に進んでおり、5月にも製作工場から搬出して現地での据え付けに入る見通しとのことです。株価は年初以降、強いトレンドを継続し、3月9日には3294円まで買われました。その後は調整を見せていますが、13週移動平均線が下値支持線として意識されます。
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【ウェザーニューズ(4825)】
洋上風力発電市場向けサービス「ANEMOI(アネモイ)」を提供
洋上風力発電所の建設やメンテナンスには、高精度な波・風の予測データが必要不可欠です。ウェザーニューズ(4825)はそうしたニーズに応え、3月7日に洋上風力発電市場向けの海上作業支援サービス「ANEMOI(アネモイ)」の提供を開始することを発表しました。株価は、切り下がる13週移動平均線に上値を抑えられる形での下落が続いており、まずは6500円辺りでの底固めを見極めたうえで、そこからのリバウンドに期待したいところです。
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【アジア航測(9233)】
洋上風力発電の導入支援サービスを展開
航空測量大手のアジア航測(9233)は、洋上風力発電の事業化に向けた適地調査や環境影響評価(環境アセスメント)などの支援サービスを展開。政府が全国で「促進地域」を定めて洋上風力発電の稼働を推進していることから、事業者への売り込みを進めています。株価は、25日移動平均線を下値支持線とした上昇トレンドを形成しており、3月13日には878円まで買われました。その後は調整を見せ、25日移動平均線に接近しているので、押し目狙いのチャンスと言えるでしょう。
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【共和電業(6853)】
風力発電向けのメモリレコーダーやアナライザーを提供
共和電業(6853)は計測機器を手掛ける企業です。風力発電向けでは高度な機能と高速処理能力を持ったメモリレコーダーやアナライザーを提供しており、発電機のトルク計測や温度、タワー部の振動やひずみなどさまざまな測定を可能としています。株価は足元の調整で200日移動平均線まで下げてきており、押し目狙いのタイミングとして意識されます。
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【ナブテスコ(6268)】
風力発電機の故障回避や長寿命化のための監視機器を提供
ナブテスコ(6268)は、風力発電機の故障回避や長寿命化を実現する、独自のモーションコントロール技術を結集した故障回避機能付き状態監視機器(CMFS)を手掛けています。診断サービスでは、リアルタイムで外力の分析データと異常発生履歴を見える化することで、異常時の警告通知や余寿命予測を可能としています。株価は1月30日につけた3795円を戻り高値に調整が続いており、2022年9月28日につけた直近安値2917円に接近しているため、そこからのリバウンドに期待したいところです。
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以上、今回は「洋上風力発電」関連の銘柄を発掘しました。
昨年から続くウクライナ問題により、世界規模でエネルギー危機が深刻化しています。日本も国産エネルギー導入を加速する必要が迫られており、洋上風力発電についてもプロジェクト規模の拡大や事業の早期稼働も迫られると考えられるので、要注目のテーマと言えるでしょう。
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