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スイスの大手金融グループ、クレディ・スイスの破綻がスイス発の世界的な金融危機に発展しかねないとの懸念が強まるなか、同じくスイスの金融グループであるUBSは3月19日、クレディ・スイスを30億スイスフラン(約4300億円)で買収することで合意したと発表しました。UBSはクレディ・スイス株を1株当たり0.76スイスフラン(約110円)で取得します。ただし、中核的自己資本拡充のために、クレディ・スイスが発行していた「その他ティア1債(Additional Tier 1/ AT1債)」約160億スイスフラン(約2.3兆円)相当が無価値になりました。
USBによるクレディ・スイス買収が決定したことで
AT1債市場の混乱は続くものの、スイス発の金融危機は一件落着
AT1債とは、2008年のリーマン・ショックで銀行救済に多額の公的資金が使われた反省から、銀行が自己資本の不足に備えて導入を進めたものです。発行した銀行が、経営上の問題に直面した場合に債券としての特徴が資本としての特徴に転換することで、債務超過圧力の緩和を図ることができます。具体的には、発行体の自己資本比率が一定の水準を下回った場合や監督当局の決定などにより、強制的に元本が削減されたり株式に転換されたりします。
投資家が負うリスクが高い分、上乗せされる金利が高いため、高い利回りを求める投資家が積極的にAT1債を購入しました。なお、世界のAT1債残高の大半を欧州の銀行が保有しているとされており、その金額は2750億ドル(約36兆円)規模と見られています。
クレディ・スイスの件では、弁済の優先順位が低い株式(クレディ・スイス株)がUBS株との交換で一定の価値を得た一方、債券(AT1債)の価値がゼロとなったことで、AT1債に対する投資家からの懸念が出ています。実際、アジア時間の3月20日午前の取引で一部のアジア金融機関が発行したドル建てのAT1債が記録的な下げとなったり、20日のロンドン市場で米国の投資会社のインベスコが運用するAT1債と連動するETFが6.2%安で取引を終えたりしました。
なお、英国のイングランド銀行(中央銀行)は3月20日、クレディ・スイスの発行したAT1債について、英国の金融規制下では自己資本の中核である普通株式などが先に「破綻時に損失にさらされるべきだ」との声明を発表しました。
このように、AT1債市場は混乱しています。しかしながら、UBSのクレディ・スイス買収で、スイス発の金融危機問題は一件落着したと見てよいでしょう。
シリコンバレーバンク破綻に端を発した米国の金融不安も沈静化!
米国債利回りの上昇や円安ドル高の流れが日本株の追い風に
一方、米国では、イエレン米財務長官が3月21日、中小規模の金融機関が経営難に陥った場合、政府は預金の全額保護などの臨時措置を繰り返し講じ得ると表明しました。また、「状況は安定しつつある。米国の銀行システムは健全性を保っている」とも述べました。このため、シリコンバレーバンク(SVB)の破綻に端を発した米国の金融不安も、沈静化しつつあると見てよいでしょう。
ちなみに米国では、3月19日にFRBが「銀行タームファンディングプログラム(BTFP)」を新たに導入することを発表しました。BTFPとは、金融機関を対象に米国債や住宅ローン担保証券を担保として最長1年の融資をするという制度で、FRBが「最後の貸し手」となることで金融システムを守る機能が強化されています。
さらに、FRBは同じ3月19日に、日本銀行など世界の5つの中銀と協調して、あらゆる取引に使われる基軸通貨ドルの供給を拡充することも発表しました。金融不安が高まると、ドルを貯め込む動きが強まり、銀行のドル調達が難しくなって危機を増幅する可能性があるため、ドルを十分に流通させることで民間金融機関の資金繰りを支えることが目的です。
リーマン・ショックの発生とその後の処理や金融システム安定化のプロセスで学習した、欧米の政策当局の迅速かつ適切な対応により、欧米の金融市場は早晩落ち着く可能性が高そうです。
実際、3月21日のNYダウは続伸し、前日比316.02ドル高の3万2560.60ドル。また、ナスダック総合株価指数も続伸し、前日比184.57ポイント高の1万1860.11ポイントでした。物色面では、金融システムが不安定化するとの懸念が和らぎ、金融株への買いが目立ちました。
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一方、欧米の金融不安を受け、安全資産である米国債に逃避した資金の一部が株などリスクの高い資産に再び振り向けられた結果、3月21日の米国10債利回りは、前日比0.12%高い3.61%に上昇しました。これは投資家がリスクオフからリスクオンに転じた結果であり、日本株にも追い風となることでしょう。
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また、米国債利回りの上昇で日米金利差が拡大したことで、外国為替市場では、低リスク通貨として対ドルで買われていた「円」が対ドルで伸び悩んでいます。この円高の一服も我が国の輸出関連企業の買い戻し材料となる見通しです。
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日経平均株価の下降トレンドが一旦終了したことで、
2万7906円~2万8118円が「第一の戻りメド」に
日経平均株価については、3月16日の2万6632.92円で底入れできるかに注目しています。テクニカル的には、14日に下降転換した25日移動平均線の向きが22日時点で上向きに転換したため、下落トレンドは一旦終了したと認識しています。さらに「日経平均株価が5日移動平均線を上回り、かつ5日移動平均線自体が上向きに転換する」という条件をクリアしたため、反発期待が高まり、買い戻しが加速することになると見ています。
そのため、3月10日と13日で空けた窓(2万7906.97円~2万8118.74円)を埋める水準が「第一の戻りメド」、3月9日と10日で空けた窓(2万8424.24円~28558.88円)を埋める水準が「第二の戻りメド」となります。
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逆に、明日以降「日経平均株価が5日移動平均線を上回り、かつ5日移動平均線自体が上向き」の条件が崩れて調整が続くケースでは、1月20日と1月23日で空けた窓(2万6553.53円~2万6788.76円)を埋める水準が「押し目メド」になると考えています。
3月期末の接近で投資家の関心が配当に向かうため、
3月末までは配当権利取りの買いが日本株の下支え要因に!
また、金融不安が収まり、落ち着きを取り戻した投資家の関心は、3月期末の接近で配当に向かう可能性が高そうです。
ちなみに、大和証券の3月6日付けレポートによれば、「2023年3月下旬における配当落ち額は、日経平均では252円、TOPIXでは23.0ptsと試算される。また、パッシブ連動資産がすべて配当落ちに伴う先物買いに動いた場合、日経平均先物で1500億円強、TOPIX先物で9500億円強の配当落ちによる買い需要が予想される」とのことです。
このため、権利付き最終日である3月29日前後の日本株の需給は良好と見てよさそうです。よって、新たな不安材料が突然発生しない限り、3月末までは配当権利取りの買いが需給面での日本株の下支え要因となることでしょう。
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ただし、友人の対面証券の営業マンによれば「3月20日時点で、信用維持率30%割れの口座の数が増え始めているので、もう一段相場が下がるようだと追証がけっこう出るかも」と言っていましたので、信用需給は悪そうです。
このため、信用買い残が積み上がり(将来の売り予約が多い)、信用倍率が高く(信用需給が悪い)、株価が25日移動平均線を下回り、かつ25日移動平均線自体が下向き(チャートが悪化している)の銘柄は「アンタッチャブル(触ってはいけない)」だと思います。よって、信用買い残が少なく、信用需給が良好で、チャートが良好な銘柄だけに狙いを絞って物色することを強くおすすめします。
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