「お宝銘柄」発掘術!

「ユーロ高」で業績アップが期待できる銘柄を解説!企業の想定為替レートを上回る“円安”が続く中、ユーロ/円の為替差益で業績上振れに期待の銘柄を紹介!

2023年7月6日公開(2023年7月7日更新)
村瀬 智一
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欧州中央銀行の金融引き締め政策の継続により、
一時は1ユーロ=158円台と15年ぶりの円安・ユーロ高水準に!

 現在、為替市場では円安基調が続いており、米ドル/円相場は1米ドル=144円台、ユーロ/円相場は1ユーロ=156〜157円台で推移しています。特にユーロ/円相場に関しては一時158円を突破し、リーマンショックが起きた2008年9月以来、15年ぶりの円安・ユーロ高水準となりました

■ユーロ/円チャート/日足・6カ月
ユーロ/円チャート/日足・6カ月ユーロ/円チャート/日足・6カ月(出典:SBI証券公式サイト)
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 円安の主因としては、日本が大規模な金融緩和を継続しているのに対し、欧米各国の金融引き締めによる利上げが止まらないことが挙げられます。

 欧州中央銀行(ECB)は6月15日の理事会で、予想通り政策金利を0.25%引き上げましたが、これで8会合連続の利上げになります。さらに、根強いインフレを踏まえると、次回7月の会合でも利上げを継続する公算が大きいという見通しを示しました。

 また、米国の連邦準備理事会(FRB)は、6月の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を据え置きましたが、政策金利見通し(ドットチャート)では、年内にあと2回の利上げを行うことを示唆しました。さらに、足元のFRB高官らの発言を聞く限り、次回7月のFOMC以降の追加利上げの可能性を示唆することで、早期の利下げ観測を牽制していると見られます。

 ECBやFRBの政策変更が明確に示されれば現在の円安基調は落ち着くと思われますが、いまのところ欧米の金融引き締めの長期化が警戒されることから、現在の円安の状況はしばらく続きそうです

想定為替レートを上回る現在の円安トレンドを踏まえ、
業績の上振れが期待できる「ユーロ高メリット」銘柄に注目!

 このような状況を踏まえ、今回は「ユーロ高メリット」のある銘柄に注目しました。企業の想定為替レートを見ると、1ユーロ=135〜140円に設定している企業が目立っています。企業が発表する業績予想は想定為替レートを前提としているので、これを上回る現在の円安基調において、為替差益による業績の上振れが意識されやすいでしょう

 具体的な銘柄としては、以下の条件を満たす企業を選定しました。

【「ユーロ高メリット」銘柄の選定条件】
・海外売上高比率が6割を超える
・海外売上高のうち、欧州の比率が高い
・今期増収計画
・セクター内で増収率が相対的に高い
・チャート形状から上昇が期待できる

【マツダ(7261)】
今期は出荷台数の増加による営業増益を計画!

 マツダ(7261)は、5月12日に2023年3月期の決算を発表。営業利益の変動要因として為替が見通しよりも円安に推移したことが挙げられていましたが、為替の影響による「73億円」のうち、ユーロ高の影響が「37億円」でした。2024年3月期については、出荷台数の増加よる営業増益を計画。想定為替レートは前期よりも円高となる1ユーロ=139円、1米ドル=128円で、為替によって519億円の減益(USドル:−170億円、ユーロ:−71億円など)を見込んでいるため、現在の円安傾向がプラス要因になると期待されます。株価は、足元で強い上昇トレンドが継続。2014年12月の高値3271.5円から2020年4月の安値505円までの下落に対する“半値戻し”水準の1890円、さらには節目の2000円までの上昇を期待したいところです。

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マツダ(7261)チャート/月足・10年マツダ(7261)チャート/月足・10年(出典:SBI証券公式サイト)
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【ローランド ディー.ジー(6789)】
全体の7割近い欧米での売上のうち、半分以上を欧州が占める

 ローランド ディー.ジー(6789)は、業務用のインクジェットプリンターやカッティングマシン、3Dプリンターなどを手掛けています。2023年12月期・第1四半期の地域別売上高は欧州が35.3%、米国が34.6%でした。なお、同社の売上高には四半期ごとの季節性があり、第1四半期がボトムシーズン、第4四半期がハイシーズンのため、下半期の売上構成比率が高くなります。想定為替レートは1ユーロ=135円、1米ドル=125円です。株価は、足元の強いリバウンドにより、2021年12月の高値3745円を突破。利食いを交えながらも、2014年9月の高値5080円を意識したトレンド形成が期待されます。

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ローランド ディー.ジー(6789)チャート/月足・10年ローランド ディー.ジー(6789)チャート/月足・10年(出典:SBI証券公式サイト)
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【シスメックス(6869)】
海外売上高比率が約85%と高い水準で推移

 シスメックス(6869)は、臨床検査機器や試薬、ソフトウェアなどを手掛けています。関係会社や代理店を経由して海外への販売も行っており、売上高に占める海外売上高の比率は2022年3月期が84.7%、2023年3月期が85.4%と高い水準で推移。想定為替レートは1ユーロ=143円、1米ドル=133円です。株価は、2021年12月の高値1万5725円をピークに急落した後、ボトム圏での推移が続いていましたが、足元のリバウンドでボトム水準から上放れてきました。2022年2月以来となる1万円の大台回復でいったんは達成感が意識されるため、押し目狙いのスタンスで。

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シスメックス(6869)チャート/週足・2年シスメックス(6869)チャート/週足・2年(出典:SBI証券公式サイト)
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【朝日インテック(7747)】
第3四半期の円安による売上高増加影響は74億円超

 朝日インテック(7747)は、PCIガイドワイヤーや貫通カテーテルなどのメディカル事業を展開。欧州や米国、中国などへの海外売上高の比率は、2023年6月期・第3四半期時点で83.4%になります。売上高は前年同期比23.1%増の697億7400万円で、そのうち円安による売上高の増加影響は74億8400万円とのことです。想定為替レートは1ユーロ=135円、1米ドル=127円。株価は、5月19日につけた2912円をピークに高値圏での保ち合いが続いていますが、下値が切り上がっており、足元で“煮詰まり感”が意識されます。「三角もち合い」の上放れから、2021年9月の高値3385円、2020年12月の高値3880円辺りが意識されそうです。

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朝日インテック(7747)チャート/週足・3年朝日インテック(7747)チャート/週足・3年(出典:SBI証券公式サイト) ※画像をクリックすると最新のチャートへ飛びます
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【竹内製作所(6432)】
欧米では「建機のベンツ」の愛称で呼ばれる

 竹内製作所(6432)は、ミニショベルや油圧ショベなどを手掛けており、欧米では「建機のベンツ」という愛称で呼ばれています。ミニショベルや油圧ショベル、クローラーローダーの販売が好調で、2024年2月期の業績は、売上高が前期比5.6%増の1890億円、営業利益が同13.1%増の240億円を計画しています。想定為替レートは1ユーロ=136円、1米ドル=127円です。株価は、4月以降の上昇トレンドによって上場来高値を更新しましたが、週足のボリンジャーバンドにおける+1σと+2σの切り上がりに沿った上昇トレンドが続いており、まだ過熱感は高まっていないと見られます。

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竹内製作所(6432)チャート・ボリンジャーバンド/週足・1年竹内製作所(6432)チャート・ボリンジャーバンド/週足・1年(出典:SBI証券公式サイト)
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【オークマ(6103)】
「グローバル70(海外売上高の比率が70%以上)」を目指す

 オークマ(6103)は、大手工作機械メーカーの一角で、NC旋盤やマシニングセンター、複合加工機、研削盤などを手掛けています。「グローバル70(海外売上高の比率が70%以上)」の実現に向け、成長産業である半導体製造や自動車・EVなどの需要を大きくカバーすることで成長を進めています。想定為替レートは1ユーロ=142円、1米ドル=131円を想定。株価は、1月の安値4555円をボトムに上昇トレンドが継続。2018年1月の高値8140円が視野に入ってきており、この水準をクリアすると2007年8月以来となる1万円の大台回復が意識されそうです。

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オークマ(6103)チャート/月足・20年オークマ(6103)チャート/月足・20年(出典:SBI証券公式サイト)
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 以上、今回は「ユーロ安メリット」のある銘柄を発掘しました。

 なお、日銀による為替介入などにより、ユーロ/円相場が急激に円高に振れる局面になった場合、利益確定の流れが強まる可能性があります。ただ、多少円高になっても想定為替レートを上回っての推移が続いていれば、為替による業績の押し上げは期待できるでしょう。

 もし、今回紹介した銘柄とは別に以前から注目している「輸出」関連銘柄があれば、その企業の想定為替レートもチェックしてみるといいでしょう。
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